Hothotレビュー
ASUS「Fonepad ME371MG」
~初のIntel搭載Androidタブレット。SIMロックフリーで3Gにも対応
(2013/5/7 00:00)
「Fonepad ME371MG」(以下Fonepad)は、ASUSが4月25日に発売した7型Androidタブレットだ。オープン価格で、実売価格は29,800円前後。
最大の特徴は国内のAndroidタブレットで、初めてIntel製のプロセッサ「Atom Z2420」を搭載したこと。また、携帯電話キャリアではなくメーカーとして販売するタブレットながら3G通信に対応しており、別途SIMカードを用意して装着することで通話およびモバイルデータ通信が利用可能だ。
メーカーから発売される3G対応7型Androidタブレットとしては、同じくASUSが発売する「Nexus 7」の3G対応モデルが存在し、市場価格は29,800円とほぼ同額。本レビューではNexus 7の3G対応モデルと比較しながらFonepadの使用感をレビューする。
7型タブレットとして標準的なスペック。外側カメラが特徴
Fonepadの本体サイズは、120.1×196.6×10.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約340gと、7型サイズとしては標準的。Nexus 7と比べると本体サイズはほぼ同程度ながら、重量は10gほど軽く、Nexus 7のSIM非対応モデルと同じ重さ。厚さもNexus 7とほぼ同じながら、手にした感じはFonepadの方がやや薄く、持ちやすいと感じる。
CPUには1.2GHzシングルコアのAtom Z 2420を搭載し、メモリは1GB、内蔵ストレージは8GB。ディスプレイは800×1,280ドット表示で10点タッチ対応7型IPS液晶を搭載し、OSはAndroid 4.1.2を採用する。CPUを除いたスペックは、ディスプレイやメモリは同スペックで、内蔵ストレージはNexus 7が32GBと上回っている。
カメラは本体前面に120万画素の内側カメラ、背面に300万画素の外側カメラを搭載。画素数だけで見ると、さほど高いスペックではないものの、カメラが内側カメラのみのNexus 7と比べると、写真などを撮る上でここは大きな差別化ポイントとなる。
本体左側面には電源ボタンと音量ボタン、本体底面にMicro USBとイヤフォンジャックを搭載。本体上部の濃いグレー部分は着脱式のバックコンパートメントで、中にmicroSDカードスロット、 Micro SIMカードスロットを備える。
モバイルデータ通信の対応周波数帯はGSM/EDGE(2G)が850/900/1,800/1,900MHz、W-CDMA(HSPA+/3G)が850/900/1,900/2,100MHzで、国内ではNTTドコモとソフトバンクモバイルの帯域に対応する。SIMサイズはスマートフォンでも多く使われているMicro SIMカード(NTTドコモではminiUIMカード)が利用できる。
その他ワイヤレス関連ではIEEE 802.11b/g/n無線LAN、Bluetooth 3.0、GPS(A-GPS/Glonass対応)に対応。Nexus 7が対応するNFCは、Fonepadでは非対応となっている。バッテリ容量は4,270mAhで、駆動時間はWi-Fi通信時が約11.5時間、3G通信時が約9.5時間を公称する。
スペックをNexus 7と総合的に比較すると、外側カメラ搭載という点ではFonepadが優れるが、内蔵ストレージはNexus 7と比べ物足りない数値。OSはNexus 7がマルチユーザー機能を搭載した最新のAndroid 4.2を採用するのに対し、Fonepadは現時点で4.1.2となっている点も違いだ。
【表1】Nexus 7とのスペック比較 | ||
---|---|---|
Fonepad | Nexus 7 | |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 120.1×196.6×10.4mm | 120×198.5×10.45mm |
重量 | 約340g | 340 g |
ディスプレイ | 800×1,280ドット10点マルチタッチ対応IPS液晶 | |
OS | Android 4.1.2 | Android 4.2 |
CPU | Atom Z2420 1.2GHz | Tegra 3 1.3GHz |
メモリ | 1GB | |
内蔵ストレージ | 8GB | 32GB |
内側カメラ | 120万画素 | 120万画素 |
外側カメラ | 300万画素 | × |
microSD | ○ | |
無線LAN | IEEE 802.11b/g/n | |
Bluetooth | ○ | |
GPS | ○ | |
NFC | × | ○ |
バッテリ | 4,270mAh | 4,325mAh |
ホーム画面はAndroid標準。ショートカット機能が充実
ホーム画面は5画面の標準的な構成。ソフトボタンには、Android標準の「戻る」「ホーム」「マルチタスク」に加え、一番右に“浮動アプリ”を起動できるボタンを加えた4ボタンを搭載する。
浮動アプリは、ホーム画面や他のアプリを起動中に別のアプリを表示できる機能で、電卓やスケジュール、ToDoなどのウィジェットが登録されているほか、追加でアプリを登録することも可能だ。登録できるアプリはプリインストールのものだけではなく、FacebookやTwitterクライアント「Twicca」などもウィジェットとして登録が可能だった。地味な機能ではあるが、いちいちホーム画面に戻らずアプリを操作できるという点では非常に便利だ。
スリープ復帰時の画面は右にフリックでスリープを解除、左にフリックでカメラを起動できる。ただし、カメラ起動はセキュリティを「スライド」に設定している時のみで、パターンやパスワードなどを設定すると利用できない。
画面下部のドックにはアプリケーションメニューを中心として左右それぞれ3つまでアプリを設定できる。7型ながらも通話機能を備えているため、「電話」アプリが標準で登録されている点が特徴的だ。
通知エリアは各種アプリの通知に加え、無線LANやモバイルデータ、省電力設定、テザリングといった設定のショートカットが利用可能。さらに無線LAN設定、オーディオ設定、本体設定のショートカットも用意されている。
ベンチマークはNexus 7をやや下回るが実用には十分なスペック
ベンチマークの測定は「Quadrant Professional Edition」「AnTuTu Benchmark」「MOBILE GPUMARK」で実施。Nexus 7とで比較を行なったところ、いずれの測定結果もコア数、周波数とも上回るNexus 7が高い結果となった。なお、Fonepadが搭載するAtom Z 2420はシングルコアだが、Hyper Threadingテクノロジ搭載のためシステムからはデュアルコアと認識されている。
【表2】ベンチマーク結果 | |||
---|---|---|---|
ベンチマークアプリ | Fonepad | Nexus 7 | |
Quadrant Professional | 3064 | 3440 | |
AnTuTu | RAMのパフォーマンス | 1052 | 1836 |
CPUの整数性能 | 671 | 3133 | |
CPUの浮動小数点演算性能 | 398 | 2680 | |
2D描画 | 640 | 788 | |
3D描画 | 2302 | 2660 | |
データベースのIO | 425 | 470 | |
SDカードの書込速度 | 142 | 98 | |
SDカードの読込速度 | 193 | 177 | |
CPU周波数 | 1,200MHz(×2) | 1,300MHz(×4) | |
MOBILE GPUMARK | 19293 | 39540 |
実際の操作も同時にブラウザを操作するとNexus 7に対してFonepadがやや遅れて表示されるものの、比べてわかる程度の違いであって、実際に操作している範囲ではもたつきを感じるほどではない。ホーム画面はもちろんブラウザやアプリもキビキビと動作し、フルHDの動画をYouTubeで再生しても途中で途切れることなく滑らかに再生された。
約10時間のバッテリ駆動が可能
バッテリ容量は4,270mAhで、交換はできない本体一体型。無線LANに接続し、GPSをオン、Bluetoothをオフにした状態でTwitterクライアントで3分おきに新着をチェックしつつ、フルHD解像度の動画を輝度を最低にした状態で再生し続けたところ、満充電から9時間半でバッテリが残り10%となり、10時間半でバッテリが空になった。公称値である無線LAN接続時の11時間はほぼ満たした数値だ。
実際にSIMを装着して使っていてもバッテリの持ちは非常に良く、写真アップロードや地図の閲覧などを積極的に利用しても1日は十分にバッテリが持続した。インターネットの利用状況にもよるがバッテリは安心できるレベルだろう。
ただし、鞄などに入れて持ち歩いている時、気がつくと電源が勝手にオフになっている状況にたびたび遭遇した。Fonepadで電源をオフにするには本体ボタン長押しに加えてタッチ操作が必要なため、偶然何回も発生したとは考えにくく、他のスマートフォンやタブレットもほぼ同様の操作ながら電源がオフになったことはない。原因は不明だが、さっと取り出して使いたいときに電源がオフというのは使いにくいので、改善を希望したい。
カメラや文字入力、プリインストールアプリは充実
カメラは300万画素ながらホワイトバランスや露出補正、ISO感度設定といった基本機能に加え、「パノラマ撮影」、「グレイスケール」、「ネガ」、「セピア」3種類のエフェクト機能などを搭載。オートフォーカスにも対応しているため、スナップ写真程度であれば十分に撮影できる。
文字入力はFSKARENをベースとしており、QWERTYキーボードやフリック対応の10キーに加えて手書き入力にも対応する。なお、入力時の予測変換はやや特殊で、Spaceボタンで変換する場合は予測変換の候補から選択し、入力した文字を文節単位で変換したい場合は画面下に表示される「文節変換」を選択する仕組みになっている。
プリインストールアプリはファイラーアプリ「ファイルマネージャ-」、ToDoアプリ「やることリスト」、アプリをパスワードでロックできる「App Locker」、撮影した写真で絵本のようなストーリーを作成できる「ASUS Story」、写真管理アプリ「ASUSスタジオ」、写真加工アプリ「MyPainter」、電子雑誌閲覧アプリ「Zinio」など充実。また、オンラインストレージ「WebStorage」は、5GBまでの容量を永久に利用できる。
組み合わせる3G回線は低価格SIMがお勧め
Fonepadの特徴である3G対応についても触れておこう。Fonepadは仕様上、NTTドコモとソフトバンクモバイルの2キャリアに対応する。
【お詫びと訂正】初出時に、「ソフトバンクモバイルはSIMカードの単体提供を行なっていない」、「APN情報も非公開」としておりましたが、実際には提供しており、APN情報も公開されています(ただし、Micro SIMの単体提供はなし)。お詫びして訂正させて頂きます。
NTTドコモの場合は、単体提供されているSIMカードのほか、スマートフォンやタブレットで利用しているSIMカードを差し替えて利用することも可能だが、他社端末でNTTドコモの回線を利用する場合、spモードは利用できず、別途「mopera U」を契約する必要がある。なお、spモードと合わせてmopera Uを契約する場合、NTTドコモの「ISPセット割」を適用することで月額315円が割り引かれるため、最安値の「mopera U ライトプラン」であれば実質無料で追加可能だ。
とはいえ、NTTドコモの場合、回線を契約することでスマートフォンやタブレットを安価に入手したり、毎月の割引を受けられるため、FonepadのためにSIMカードのみを契約するのはもったいない。2年契約前提であれば、Fonepadの端末価格29,800円でよりスペックの高いNTTドコモのタブレットが手に入ってしまう。
低価格ながら3G対応というFonepadの魅力を最大限に活かすためには、NTTドコモの回線を利用したMVNO事業者がお勧めだ。NTTドコモの回線を利用しているためFonepadで利用できるだけでなく、NTTドコモよりも低価格に運用できるプランが揃っている。
以下は最近注目が集まっている月額1,000円以下の料金プランは、いずれも100kbps~200kbps程度の低速度でしか通信できないが、メールやTwitter、Facebookといったアプリであれば十分に利用可能。200kbpsの速度があればWebブラウジングも十分だろう。追加料金を支払うことで高速な通信も可能になっており、利用シーンに応じて使い分けられる。
【表3】月額1000円以下の低価格プラン | |||
---|---|---|---|
月額 | 速度 | 追加の100MB | |
ServersMan SIM 3G 100 | 490円 | 100kbps | 263円 |
BB.exciteモバイルLTE | 787円 | 200kbps | 525円 |
IIJmio:高速モバイル/D | 945円 | 200kbps | 525円 |
hi-ho LTE typeDシリーズ | 980円 | 200kbps | 472.5円 |
b-mobile スマートSIM 月額定額980 | 980円 | 150kbps | 525円 |
楽天ブロードバンドLTE | 980円 | 100kbps | 525円 |
なお、Fonepadは3Gには対応しているがLTEには非対応のため、LTEのみでしか通信できないサービスは利用できない。例えばNTTコミュニケーションズの「OCN モバイル エントリー d LTE 980」は現状3G端末に対応していないが、5月23日から3G端末でも利用可能になる。
Nexus 7とほぼ同等スペック。カメラと内蔵ストレージが選択のポイント
7型タブレットはNexus 7やiPad miniの発売で非常に人気のジャンルとなっており、低価格帯の製品もラインアップが拡充されているが、メーカー発売のSIMロックフリーという点ではさほど端末は多くない。SIMロックフリーのAndroidタブレットを利用したいユーザーにとって、FonepadはNexus 7に並ぶ選択肢だろう。
CPUスペックは比較すればNexus 7のほうが上ではあるものの、実利用としては十分なスペック。内蔵ストレージが8GBと物足りないものの、外側カメラで写真が撮影できるという点ではFonepadが勝る。その他の基本スペックは大きく変わらないため、内蔵ストレージを取るかカメラを取るかでどちらの端末かが決まるだろう。また、細かいながらNexus 7はNFCを搭載しているため、NFCを活用したいユーザーもNexus 7ということになる。
SIMロックフリー端末の魅力を生かすためには前述の通りNTTドコモ回線が必要だが、MVNO事業者が提供する低価格サービスを利用すれば月額の運用コストも抑えられる。追加料金を支払うことで高速化したり、NTTドコモユーザーの場合は手持ちのSIMカードを差し替えて使うことも可能。2台目のタブレットとして非常に魅力的な1台だ。