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VAIO S13は決定版的な性能と魅力が詰まった、ジャスト1kgのモバイルノート

 ハイブリッドワークの流れもあり、ノートPCカテゴリでは各社が14型クラスに力を入れている昨今。しかし、ひと回りコンパクトなモバイルPCとして、ある意味伝統的な13.3型を求めるユーザーも少なくないだろう。

 そんな人にとって、新型「VAIO S13」は気になるモデルになりそうだ。発売前にメーカーからお借りすることができたので、前モデルの性能とも比較しながら紹介しよう。受注開始は本日8月29日、配送は最速で9月8日、価格は15万9,800円からだ。

1kgでMILスペック準拠、防汚処理が施された長く使えるモデル

 VAIO S13は、VAIOシリーズの中ではミドルクラスの性能を持つモバイルビジネスノートに位置付けられる。前モデルと比較したときの違いは、おおざっぱに言うと主に「基本性能の向上」だが、ハードウェアやソフトウェアの細部にブラッシュアップが図られ、正統進化と言える中身になっている。

VAIO S13
試用機のスペック
VAIO S13
OSWindows 11 Pro
CPUCore i7-1355U
(10コア12スレッド、最大5GHz、Processor Base Power 15W)
GPUIntel Iris Xe Graphics
メモリ32GB (最大32GB)
ストレージ512GB (NVMe/M.2、PCIe 3.0 x4、最大1TB)
ディスプレイ13.3型1,920×1,200ドット
インターフェイスUSB 10Gbps(Type-C)、USB 5Gbps(Type-A)×3、HDMI、ヘッドセット端子
通信機能Wi-Fi 6、Bluetooth、Gigabit Ethernet
WANLTE対応モデルあり
カメラ内蔵 (1,920×1,080ドット)
セキュリティWindows Hello顔認証・指紋認証
バッテリ駆動時間約21.5時間
サイズ約299.3×221.1×17.7~19.6mm
重量約1.072~1.084kg
カラーブラウン (ブラック選択可)
価格15万9,800円~

 今回お借りした試用機は、上記スペック表で示した通り、CPUに第13世代Core i7-1355U(10コア12スレッド)とメモリ32GBを搭載したハイグレードなもの。販売チャネルや個人・法人向けの違いでスペックのバリエーションは異なるが、第13世代Core iシリーズを採用していることと、ディスプレイやインターフェイスを始めとする筐体の大部分の仕様は共通だ。

第13世代Core i7-1355Uを搭載。GPUはCPU内蔵のIntel Iris Xe Graphics

 ボディカラーはブロンズとブラックの2種類をラインナップする。デザインの評価がもともと高いVAIOシリーズということで、今回のVAIO S13もブラスト処理されたかのような天板のマットな質感と手触りは上質だ。

 キーボード面は光沢のあるヘアライン仕上げのアルミ1枚板で高級感をかもし出していて、内と外のメリハリのある質感のギャップは飽きがこない。

 外装の表面処理はブロンズとブラックともに共通だが、今回はより大人なテイストが感じられるブロンズが特に目を引く。ブラックよりユニセックスな方向性と思われるブロンズだけれど、男性ユーザーの人気も集めそうな予感がする。

ボディカラーは2種類、ブラック(左)とブロンズ(右)をラインナップ
ブロンズの天板。マットなさらさらとした質感
キーボード面はアルミの1枚板で、光沢のあるヘアライン仕上げ
ブロンズの天板奥側のエッジ部分は黒
ブラック
ブラックの天板
ブロンズの天板エッジ部分はシルバー

 本体重量はスペックシート上だと1.072~1.084kg、試用機は実測で1.069kgだった。ジャスト1kgと言っていいだろう。1kgを切るまでにはいたっていないものの、軽さは存分に体感できる。

 14型よりも主に横幅がコンパクトになっているため、ビジネスバッグへの収まりの良さも一段上だ。その余裕分でモバイルバッテリを持ち運び、稼働時間をさらに延長させるのもアリ。それでも13.3型ならではの高い機動力は維持できるはず。

試用機の本体重量は実測で1.069kg

 ちなみに筐体は、メーカー独自の品質試験に加え、いわゆるMILスペック(MIL-STD-810H)を基準にした試験なども実施しており、耐久性の高さは折り紙付き。

 キートップには耐指紋・防汚処理が施されており、手指の皮脂や摩耗でテカってしまうような症状も抑えられるとしている。このあたりは長期間使用し続けないと価値として捉えにくい部分とは言え、重要なポイントだ。日常使用の快適さを追求しつつ、できるだけ長く使い続けられるように、細部までこだわっていることが分かる。

耐指紋・防汚処理が施されたキートップ。使っていてもたしかに皮脂は目立ちにくい

Type-Cは1つになるも画面解像度は拡大、デュアルSIMモデルも用意

 13.3型としてはインターフェイスの充実度もそこそこ高い。本体側面にはType-CのUSB 10Gbpsポートが1つ(LTE搭載モデルはThunderbolt 4)と、Type-AのUSB 5Gbpsポートが3つ用意され、HDMI出力とGigabit Ethernetもある。Wi-Fi 6にも対応しているため、13.3型ながら安定性重視の有線接続と、機動性重視の無線接続とで使い分けできるのはうれしい。

本体右側面。USB Type-A×2とUSB Type-C、HDMI、有線LANポートがある
左側面はUSB Type-Aとヘッドセット端子。左隅に電源入力端子が見える

 あえて「そこそこ」と書いたのは、前モデルと比較してUSB Type-C(Thunderbolt 4)ポートが2つから1つに減っているためだ。代わりにType-Aポートが1つ増設されているわけだが、複数のType-C周辺機器を同時に使いたいユーザーには少し残念に感じる部分かもしれない。

 これは前モデルのType-Cポートが充電用も兼ねていた(専用の電源入力端子が省かれていた)のに対し、新型では電源入力端子が復活したことが関係しているものと思われる。給電しながら使用する状況なら使い勝手の面で差はないだろう。もちろん新型もType-CポートはUSB PDに対応しているので、汎用のUSB充電器から給電することも可能だ。

付属ACアダプタはDCプラグ。出力最大65W

 13.3型の液晶ディスプレイは1,920×1,200ドットの解像度で、アスペクト比16:10の縦に広いタイプとなった。メーカーによると、この縦サイズは14型のVAIO F14(フルHD、16:9)のディスプレイと同等とのことで、筐体はコンパクトながらも上位サイズに迫るワークスペースを確保している。縦スクロールするコンテンツやアプリケーションが多い中、少しでも画面が縦に広がるのはありがたい。

13.3型の液晶ディスプレイ、解像度は1,920×1,200ドットで縦に広い

 キーボードはフルサイズの約19mmピッチ。キーレイアウトにイレギュラーなところはなく、安心感のある使い心地だが、1点気になるのはタイプ音だろうか。

 タイプ時のフィーリングに違和感はないものの、昨今の静音キーボードよりは少しだけノイズ成分が多めだ。連打時に周囲がうるさく感じるほどではないとしても、Web会議中にタイプすると相手にノイズが伝わる可能性があるので気を付けたい。

ピッチ約19mmのフルサイズキーボード
タイプフィーリングは良好だが、タイプ音はノイズ成分がやや多いかも
タッチパッドは小さめ。左右クリックボタンを備えるオーソドックスなタイプ
ディスプレイを開くと本体後部が自然と持ち上がるチルトアップヒンジも踏襲

 ビジネスユーザーにとって重要度の高いセキュリティ機能は、電源ボタン一体型指紋センサーによる指紋認証と、Webカメラ(赤外線カメラ)による顔認証の2つを標準装備している。いずれもWindows Hello対応となっており、情報漏洩や不正アクセスに備えたい法人ユーザーには心強い。

電源ボタン一体型の指紋センサーはWindows Hello対応
カメラはWindows Helloの顔認証に対応する
物理シャッターも内蔵

 なお、LTE対応モデルは物理SIMとeSIMのデュアルSIM構成となる。頻繁に海外に行くような人は、物理SIMの差し替えなしにモバイルネットワークを切り替えられるeSIMは利便性が高い。

 よく行く出張(ワーケーション)先と普段の仕事場所とで電波の強いキャリアが異なるときに、SIMを切り替えることで仕事効率を高める、といった運用もしやすいだろう。ちなみにLTE対応モデルはブラックのみとなる。ブロンズにLTE対応モデルは用意されない。

LTE対応モデルでは、Nano SIMスロットが本体底面に用意
Wi-Fiアクセスポイントのない場所でも手軽に通信できる

カメラ、バッテリに関係するソフトウェアの進化にも注目

 WebカメラはフルHD解像度(1,920×1,080ドット)のスタンダードなものだが、今回から「Temporal Noise Reduction」というより効果的なノイズ低減処理が実装されているとのことで、クリアな映像を相手に届けることができる。

 また、Webカメラの画質調整が行なえるプリインストールアプリの「VAIOの設定」には、カメラ設定に新たに「美肌効果」というエフェクト機能も追加され、見栄えを“最適化”可能だ。

 ノイズの少なさや美肌の効果がどれほどのものか、VAIO F14のWebカメラ映像と比べてみたのが以下の画像となる。

こちらはVAIO F14のWebカメラ映像
VAIO S13のWebカメラ映像。外の明るさなどの条件は異なるが、全体的にざらざらしたノイズが減っている
美肌効果 : オフ
美肌効果 : Lv1
美肌効果 : Lv3

 Webカメラの画質調整については、従来からある「背景ぼかし」や「自動フレーミング」、明るさの自動調整に関する設定項目も利用できる。

 さらに、「AIノイズキャンセリング」機能付きのマイクとスピーカーも他機種と同様に搭載されており、明るく見やすい映像とノイズの少ない音声で、Web会議の円滑なコミュニケーションをサポートしてくれるだろう。

「VAIOの設定」アプリのカメラ設定
マイクやスピーカーの「AIノイズキャンセリング」機能も従来機種と同様に利用可能

 「VAIOの設定」アプリでは「バッテリー節約設定」も利用できる。これはVAIO F14から追加された新しい要素で、バッテリ駆動時に独自のアルゴリズムでCPUなどを制御することにより、パフォーマンスを大きく損なうことなく節電を実現する仕組みだ。

「バッテリー節約設定」をオンにするとさらなる節電が可能に

 この「バッテリー節約設定」のオン/オフでどれだけ違いが現れるのかを示したのが下記のベンチマーク結果。ベンチマークソフト「PCMark 10」の「Modern Office Battery Test」では、パフォーマンススコアこそ低下したもののバッテリ動作時間は50分延びている。

※ディスプレイ輝度50%、Wi-Fi接続状態

処理性能は最新世代CPUで順当な進化

 それ以外のPCパフォーマンスも見ていこう。最新のVAIO S13がどれだけ性能面で進化したのか、一部項目を除き前モデルと比較しながらベンチマークテストを実行してみた。いずれも測定にあたっては「VAIOの設定」アプリの「電源・バッテリー」で「パフォーマンス優先」としている。

試用機と比較用PC(2022年型VAIO S13)のスペック
VAIO S13VAIO S13(前モデル)
OSWindows 11 ProWindows 11 Pro
CPUCore i7-1355U
(10コア12スレッド、最大5GHz、Processor Base Power 15W)
Core i7-1255U
(10コア12スレッド、最大4.7GHz、Processor Base Power 15W)
GPUIntel Iris Xe GraphicsIntel Iris Xe Graphics
メモリ32GB16GB
ストレージ512GB (NVMe/M.2、PCIe 3.0 x4)256GB (NVMe/M.2 PCIe 3.0 x4)
ディスプレイ13.3型1,920×1,200ドット13.3型1,920×1,080ドット
「Cinebench R23」の結果
「PCMark 10」の結果
「PCMark 10 Applications」の結果
「3DMark」の結果
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果
「サイバーパンク2077」のベンチマークモードの結果
「CrystalDiskMark」の結果

 「Cinebench R23」はマルチコアで約1割スコアが上昇し、1世代分の順当な進化が見られる。「PCMark 10」もほとんどが5~15%程度のパフォーマンスアップ。「3DMark」は「Time Spy」でわずかに後れを取っているが、他では好成績を収めているため、基本的に3D性能も高まっていると考えていいだろう。

 ビジネス向けのモバイルノートなのでゲーム性能はあまり期待してはいけないが、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」についても前モデルより高いスコアを叩き出している(諸条件が異なっている可能性があるため参考値)。「ノートPC標準品質」であれば無理なく遊べるようだ。

 しかし、よりヘビーな3D性能が求められる「サイバーパンク2077」はさすがに荷が重く、ドットバイドットの解像度だと「低」クオリティでも快適なプレイは難しかった。

 内蔵SSDは、今回の試用機についてはPCIe 3.0接続のものが使われている。それもあってか、「CrystalDiskMark」の結果はリードで3,000MB/s超という十分な性能を持つ一方で、ライトは900MB/sと振るわない。

 実作業で遅さを体感することはないかもしれないが、最新のノートPCであることを考えるともう少しがんばってほしいな、というのが正直な気持ちではある。

ポストコロナの決定版的モデルになるか

 新しいVAIO S13は、CPUの世代変更による全体的なパフォーマンス改善がメイン。そのうえで、コロナ禍のテレワーク中心のワークスタイルを経て、モバイルノートとしての機能を改めて取捨選択し、現在のニーズにフィットさせる形でブラッシュアップが図られた。

 ディスプレイの拡大や電源入力端子の復活、カメラやバッテリ周りの機能拡充、といった点がそれに当たるわけだが、これらは地味ながらも細かな使い勝手を高める意外と大事なポイントだ。

 筐体のデザインや耐久性の面でも満足度、安心感の高い作りになっており、それでいて(下位グレードにはなるが)15万円台からという良心的な価格帯での提供となっている点も魅力だ。

 14型の影に隠れがちな13.3型クラスノートに再びスポットライトが当たるきっかけとなるような、ポストコロナの決定版的モデルになるポテンシャルを秘めているようにも思う。