Hothotレビュー

15インチMacBook Airはすばらしい。1.6kg切りで実動作16時間以上を満たす大画面モバイル

Apple「15インチMacBook Air」19万8,800円~

 Appleは15インチMacBook Air(以下15型MBA)を6月6日に発表、6月13日より販売開始した。初代MacBook Airが発売されたのが2008年。それから11.6インチ、13.3インチの2つのディスプレイサイズで製品が展開されてきたが、今回のモデルは歴代MacBook Airの中で最大のディスプレイサイズを搭載した。

 なおAppleは15.3インチで厚み11.5mm、重量約1.51kgの15型MBAを「世界で最も薄い15インチノートブック」と記載しているが、「LG gram SuperSlim」(5月25日発表)は15.6インチで10.99mm/約990gだ。15インチの薄型軽量ノートPCを探している方は留意してほしい。

 それはさておき15型MBAがMacBookシリーズの中で、大画面と携帯性を両立した魅力的なモデルであることは間違いない。まずは13インチMacBook Air(以下13型MBA)との違い、15型MBAの使い勝手を解説したうえで、冷却ファンを搭載したM2版MacBook Pro、M1版MacBook Airとパフォーマンスを比較してみよう。

カラーは13インチ版と同様にシルバー、スターライト、スペースグレイ、ミッドナイトの4色を用意。今回借用したのはスターライトだ

ディスプレイを大型化、6スピーカーでサウンドも強化

 15型MBAはOSに「macOS Ventura バ-ジョン13.4」、SoCに「Apple M2」を採用。メモリは8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ、ストレージは256GB/512GB/1TB/2TB SSDから選択できる。

 最小構成はメモリ8GB/SSD 256GBで19万8,800円、最大構成はメモリ24GB/ SSD 2TBで36万6,800円だ。なおACアダプタは「デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ」と「70W USB-C電源アダプタ」のいずれかを選択できるが、価格は変わらない。

筐体には100%再生アルミニウムを採用。中央ロゴ部以外は手脂の付着は目立たない
ゴム足は4隅に配置。ゴム足も含めた高さは13.65mm
ディスプレイは15.3型IPS液晶(2,880×1,864ドット、224ppi、光沢、500cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応)を搭載
キーボードはTouchID搭載バックライトMagic Keyboardの「日本語(JIS)」がデフォルト。ほかの6言語のキーボードにも無料で変更できる

 ディスプレイは15.3型IPS液晶(2,880×1,864ドット)を搭載。ディスプレイ上部の切り欠き部には1080pのWebカメラ「FaceTime HDカメラ」を内蔵。

 オーディオ機能は、2組のフォースキャンセリングウーファと2つのツイーターで構成される6スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)、3アレイマイクが搭載されている。

本体前面(上)と本対背面(下)
右側面には3.5mmヘッドフォンジャック、左側面にはMagSafe 3充電ポート、Thunderbolt 3×2(充電、DisplayPort、Thunderbolt接続時最大40Gb/s、USB 4接続時最大40Gb/s、USB 3.1 Gen 2接続時最大10Gb/s)を用意

 インターフェイスはMagSafe 3充電ポート、Thunderbolt 3×2(充電+映像出力対応)、3.5mmヘッドフォンジャックを用意。

ワイヤレス通信はWi-Fi 6、Bluetooth 5.3をサポートしている。14/16インチMacBook Pro、Mac mini、Mac Studio、Mac Proなどですでに採用されているWi-Fi 6Eのサポートは見送られている。

 本体サイズは340.4×237.6×11.5mm、重量は約1.51kg。66.5Whのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は最大15時間のワイヤレスインターネット、最大18時間のApple TVアプリのムービー再生と謳われている。

 15インチMBAを持ったときの第一印象はやはり薄さ。15.3型ディスプレイを搭載しているぶんフットプリントが大きいが、それにより11.5mmボディは薄さが際立っている。それでいて100%再生アルミニウムを使用した筐体は剛性に不安はない。

 言うまでもなく質感も非常に高く、手に持ってみれば、所有欲を満たしてくれるデザインであることに同意するはずだ。

ディスプレイの最大展開角度は実測133度
パッケージには15型MBAの薄さをアピールする写真が掲載
背面にはシリアルナンバーやシステム構成などが記載されたシールが貼られている
パッケージには、デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ、USB-C - MagSafe 3ケーブル(2 m)、説明書類、ロゴシールが同梱
USB-C - MagSafe 3ケーブル(2 m)は繊維状の被膜で保護されている
デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタの型番は「A2571」。仕様は入力100-240V~1A、出力20V 1.75A、15V 2.33A、9V 3A、5V 3A、容量35W
本体の実測重量は1,508g
USB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタとUSB-C - MagSafe 3ケーブル(2 m)の合計実測重量は161.4g
【表1】「MacBook Air (15インチ, M2, 2023)」、「MacBook Air (M2, 2022)」、「MacBook Air (M1, 2020)」の主なスペック
MacBook Air (15インチ, M2, 2023)MacBook Air (M2, 2022)MacBook Air (M1, 2020)
OS※発売時macOS Ventura バ-ジョン13.4macOS Monterey バ-ジョン12.4macOS Big Sur バ-ジョン11.0
SoCApple M2
(8コアCPU[高性能コア×4、高効率コア×4]、10コアGPU、16コアNeural Engine、100GB/sのメモリ帯域幅)
Apple M1
(8コアCPU[高性能コア×4、高効率コア×4]、7コアまたは8コアGPU、16コアNeural Engine)
メモリ8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5)8GB/16GBユニファイドメモリ(LPDDR4)
ストレージ256GB/512GB/1TB/2TB SSD
ディスプレイ15.3型IPS液晶
(2,880×1,864ドット、224ppi、光沢、500cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応)
13.6型IPS液晶
(2,560×1,664ドット、224ppi、光沢、500cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応)
13.3型IPS液晶
(2,560×1,600ドット、227ppi、16:10、光沢、400cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応)
オーディオ6スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)、3アレイマイク4スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)、3アレイマイクステレオスピーカー、3アレイマイク
通信Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0
WWAN
インターフェイスMagSafe 3充電ポート、Thunderbolt 3×2(充電+映像出力対応)、3.5mmヘッドフォンジャック×1Thunderbolt 3×2(充電+映像出力対応)、3.5mmヘッドフォンジャック×1
カメラWebカメラ(1080p)Webカメラ(720p)
バッテリ容量66.5Wh52.6Wh49.9Wh
バッテリ駆動時間最大15時間のワイヤレスインターネット、最大18時間のApple TVアプリのムービー再生
バッテリ充電時間
本体サイズ340.4×237.6×11.5mm304.1×215×11.3mm304.1×212.4×4.1~16.1mm
重量約1.51kg約1.24kg約1.29kg
セキュリティTouch ID(指紋認証センサー一体型電源ボタン)
同梱品デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ、USB-C - MagSafe 3ケーブル(2 m)デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタまたは30W USB-C電源アダプタ、USB-C - MagSafe 3ケーブル(2 m)30W USB-C電源アダプタ、USB-C充電ケーブル(2m)
カラーシルバー、スターライト、スペースグレイ、ミッドナイトシルバー、スペースグレイ、ゴールド

14/16インチMacBook Proに次ぐサウンド品質を実現

 まずキーボードについてだが、基本的に13型MBAと違いはないと思われる。キーピッチは実測19mm前後、キーストロークは実測1.2mm前後。キーストロークは浅めだが明確なクリック感が備わっている。底打ちしなくても「チャッ」というような打鍵音が発生するが、耳障りなほど大きくはない。

 タッチパッドはキーボード面のサイズアップに合わせて、実測149×92.5mmと大型化されている。ジェスチャー操作がさらに快適になった。

 個人的にMacBookシリーズで一番気に入っているのがテンキーレスキーボードであること。WindowsノートPCでは15型以上のモデルのほとんどにテンキーが搭載されているが、筆者はホームポジションが左寄りになることに強い違和感を覚える。同じように感じる方なら15型MBAのキーボードは快適に打鍵できるはずだ。

キーピッチは実測19mm前後
キーストロークは実測1.2mm前後
文字キー(Fキー)の押圧力は0.53N
キーボードバックライトは環境光に合わせて輝度を自動調節可能。またスライダーで好みの明るさに変更できる
圧力感知機能を搭載した感圧タッチトラックパッドの面積は実測149×92.5mm(13型MBAは実測128×80mm)
生体認証は電源ボタンを兼ねた指紋認証センサー「Touch ID」で行なう

 ディスプレイの色域についてはカラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」で計測したところ、sRGBカバー率は99.9%、Adobe RGBカバー率は86.4%、DCI-P3カバー率は97.2%という値が出た。

 13型MBAがsRGBカバー率は99.9%、Adobe RGBカバー率は87.3%、DCI-P3カバー率は97.1%だったので、個体差、計測誤差程度の違いだ。ここまで値が近いということは、同じメーカーの液晶パネルが使われている可能性が高い。

視野角が深くなれば、輝度、彩度は変化するが、45度ぐらいまでは一定の視認性が保たれ、ほぼ真横からでもなにが映っているのか判別できる
15.3型IPS液晶は、輝度自動調節、発色自動調節「True Tone」対応。環境に応じて明るさや発色が自動調節される
実測したsRGBカバー率は99.9%、sRGB比は132.4%
Adobe RGBカバー率は86.4%、Adobe RGB比は98.2%
DCI-P3カバー率は97.2%、DCI-P3比は97.6%

 13型MBAに対する大きなアドバンテージがサウンド。13型MBAは4スピーカー、15型MBAは6スピーカーが搭載されており、ボリュームだけでなく、臨場感も明らかに向上している。14/16インチMacBook Proにはおよばないが、両機種に次ぐサウンド品質を実現したことは間違いない。

キーボード奥に2組のフォースキャンセリングウーファと2つのツイーターで構成される6スピーカーが内蔵
スピーカー開口部はヒンジ部に配置
YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生した際の音圧レベルは最大83.7dB(50cmの距離で測定)

 Webカメラについては室内灯下でも明るく、自然な発色で撮影できる。iPhoneのカメラをWebカメラとして利用するmacOS Venturaの「連係カメラ」は、動画配信以外では必要ないと思えるだけの画質だ。

 ただ、画質については大満足だが、ベゼルの中にカメラ、センサー、インジケータを収めて、切り欠きをなくしてほしいとは正直思う。小さなカメラに変更することで画質が低下しても構わない。自分の顔を綺麗に写すよりも、切り欠きのないディスプレイで作業したいからだ。

ディスプレイ上部のノッチ(切り欠き部)には1080p Webカメラを内蔵
カメラアプリ「Photo Booth」で撮影。室内灯下でも明るく、自然な発色で撮影可能だ

高負荷かつ長時間のベンチマークでは冷却ファン搭載機より性能が低下

 今回パフォーマンスについては、以下の4製品で比較してみた。

  • MacBook Air (15インチ, M2, 2023)
  • MacBook Pro (13-inch, M2, 2022)
  • MacBook Air (M2, 2022)
  • MacBook Air (M1, 2020)

 3機種がApple M2、1機種がApple M1を搭載しているが、MacBook Proのみ冷却ファンを内蔵している。Apple M1からどのくらいパフォーマンスがアップしているのか、冷却ファンのあるなしでどのような影響があるのかに注目して、スコアをご覧いただきたい。

【表2】検証機のスペック
MacBook Air
(15インチ, M2, 2023)
MacBook Pro
(13-inch, M2, 2022)
MacBook Air
(M2, 2022)
MacBook Air
(M1, 2020)
SoCApple M2Apple M2Apple M2Apple M1
CPU高性能コア×4
高効率コア×4
高性能コア×4
高効率コア×4
高性能コア×4
高効率コア×4
高性能コア×4
高効率コア×4
GPU10コア10コア10コア8コア
Neural Engine16コア16コア16コア16コア
メモリ16GB16GB8GB16GB
ストレ-ジ512GB1TB512GB1TB

 まずCPU性能については、Cinebench R23.200のCPU(Multi Core)を1回実行した際のスコアはMBA(M1,2020)を除いて横並びだ。

 しかし連続で10分間実行すると、MBA(15インチ,M2,2023)はMBP(13インチ,M2,2022)の92%相当のスコアに落ち込んでしまった。高負荷な処理が続くと、冷却ファンなしでは最大パフォーマンスを維持できないわけだ。

Cinebench R23.200
Cinebench R23.200実行中の消費電力は最大37.53W、平均10.67W、アイドル時の消費電力は平均10.77W
Cinebench R23.200を10分間実行後のキーボード面の最大温度は41.3℃(室温24.5℃で測定)
底面の最大温度は43.6℃

 Geekbench 5.4.6ではApple M2搭載機ではシングルコア、マルチコア性能ともにほぼ横並び。MBA(M1, 2020)と比較すると、Apple M2搭載機はMulti-Core Score(Apple Sillicon) で117~118%相当のスコアを記録している。

 グラフィックス性能ではさらに差が広がっていて、Apple M2搭載機はMBA(M1, 2020)に対して、Compute(Metal)で145~147%相当のスコアを発揮している。

 Apple M2はApple M1に対して最大の電力レベルで最大35%高いパフォーマンスを発揮すると謳われているが、今回のベンチマークではそれを上回るスコアを記録したわけだ。

Geekbench 5.4.6

 ストレージベンチマークについては、Blackmagic Disk Speed TestとAmorphousDiskMark 4.0のどちらでもMBA(15インチ,M2,2023)は一部項目を除き、最も高いスコアを記録している。

 性能が低いと言われている256GB SSDではなく、512GB SSDを搭載しているMBA(M2,2022)のシーケンシャルライトが低い結果となっているのが気になるところだが、再度前回と同じ貸出機を手配できないので確認は難しい。

 いずれにしてもMBA(15インチ,M2,2023)が14/16インチMacBook Proにはおよばないものの、今回の機種の中では最高クラスの性能を備えていることは間違いない。

Blackmagic Disk Speed Test
AmorphousDiskMark 4.0

 実際のアプリケーションのベンチマークでは、LightroomでMBA(15インチ,M2,2023)はMBP(13インチ,M2,2022)より10秒遅い131秒という結果になった。これはCPUベンチマークと同様に、高負荷が長時間続いたために冷却が間に合わなかったのが原因だろう。

 なお、MBA(M2,2022)の所要時間が極端に長いのはストレージ速度が遅かったことが理由である可能性があるが、前述の通り追試できなかったため今回の結果は参考に留めてほしい。

Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像

 Premiereではなぜか4機種とも綺麗にほぼ横並びの結果となったが、iMovieではApple M2搭載機がMBA(M1,2020)の約50%以下の所要時間で処理を終えている。

 PremiereもAppleシリコンに最適化されたUniversalアプリなのだが、今回の結果を見ると、単純なプロジェクトファイルの書き出しではiMovieのほうがApple M2の恩恵を受けられることになる。

Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し
iMovieで実時間5分の4K動画を書き出し

 一方バッテリ駆動時間については、ディスプレイの明るさ6/16、音量6/16という条件でYouTube動画を連続再生したところ、16時間33分34秒まで動作した。MBP (13インチ,M2,2022)、MBA(M2,2022)よりバッテリ駆動時間が183~186分短くなっているのは、ディスプレイサイズが大きいのが原因である可能性が高い。

 それでも公称の「最大15時間のワイヤレスインターネット」を大きくクリアしているのだから、Appleシリコン搭載ノートブックのモバイル性能が突出していることは確かだ。

YouTube動画を連続再生した動作時間
YouTube動画を連続再生したところ、16時間33分34秒まで動作した

WindowsノートPCをメインに使っていた方にも魅力的に映るマシン

 15インチ以上、1.6kg未満、テンキーなしという条件でノートPCを探してみても、選択肢は非常に少ない。さらに実動作で16時間以上という条件を追加すると、15インチMacBook Air以外に候補が思い浮かばなかった。

条件が限定的すぎると思われる方もいるだろう。しかし、これは筆者がいま実際に探しているノートPCの絶対条件で、同じ条件で探している方も一定数いるだろう。

 16インチMacBook Proほどのパワーは必要ないが大画面で作業したいという方に15インチMacBook Airは最適解だ。そしてこれまでWindowsノートPCをメインに使っていた方にも魅力的に映るマシンであり、満足感も非常に高いはずである。