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現時点最高のポータブルゲーミングPC「ROG Ally」レビュー。ハード、ソフトの仕上がりも隙なし!
2023年5月29日 11:00
ASUS JAPANはWindows 11搭載ポータブルゲーミングPC「ROG Ally」の日本発売を5月29日に発表した。「Ryzen Z1 Extreme」搭載上位モデル「RC71L-Z1E512」(10万9,800円)の予約開始日は6月2日、発売日は6月14日。「Ryzen Z1」搭載下位モデル「RC71L-Z1512」(8万9,800円)の予約開始日と発売日は2023年夏予定だ。
今回はRyzen Z1 Extreme搭載機しか借用できなかったが、「Ryzen 7 6800U」搭載機と比べてどのぐらいのゲーミング性能を備えているのかに特にスポットを当ててレビューしたい。Ryzen Z1搭載機のパフォーマンスについては後日検証したいと思う。
5月30日(火)21時より、「ROG Ally」の実機検証ライブ配信を実施します。Ryzen Z1 Extreme搭載の「RC71L-Z1E512」を用意して、実際のゲームの動作やPCとしての使い勝手などをレポート。ベンチマーク結果、仕様、ラインナップ解説も交えて、発売が迫る本機の特徴を詳細にお伝えします。出演はPC Watchデスクの劉 尭とPAD プロデューサー佐々木修司。これを機に公式チャンネル"PAD”のチャンネル登録もお願いします!
Ryzen Z1はZen 4、RDNA 3アーキテクチャのプロセッサ
ROG AllyにはRyzen Z1 ExtremeとRyzen Z1を搭載した2モデルがラインナップ。どちらもZen 4アーキテクチャのCPU、RDNA 3アーキテクチャのGPUを内蔵しているという点は同じ。大きな違いはGPU性能で、Ryzen Z1 Extremeが8.6TFLOPS、Ryzen Z1が2.8TFLOPSと謳われている。
プロセッサ以外のスペックは同じ。メモリは16GB(LPDDR5-6400、オンボード)、ストレージは512GB(PCIe Gen4 x4 M.2 2230 SSD)だ。なおストレージの換装について説明会会場で質問したが、メーカー保証については明確な回答は得られなかったものの、換装作業自体は難しくはないとのこと。今回ROG Allyを分解したわけではないし、メーカー保証がどうなるかの回答は現時点でもない。挑戦する場合は自己責任となる。
ディスプレイは7型IPS液晶(1,920×1,080ドット、315ppi、500cd/平方m、120Hz、7ms、光沢、ペン非対応、タッチ対応、Corning Gorilla Glass Victus)。サウンド機能はDolby Atmos対応のステレオスピーカー(1W×2)で、イヤフォン接続時はハイレゾ音源の再生に対応する。ウェブカメラは非搭載だが、アレイマイクは前面に内蔵されている。
インターフェイスはROG XG Mobileインターフェイス×1、USB 3.1 Type-C(データ転送、映像出力、本体への給電対応)×1、microSDメモリーカードスロット(UHS-II)×1、3.5mmコンボジャック×1を用意。外付けVGA用ドック「ROG XG Mobile」を接続すれば、3Dグラフィックス性能を強化し、またインターフェイスを増加できる。
本体サイズは280.0×111.38×21.22~32.43mm、重量は約608g。ROG Allyの開発には5年の歳月がかけられており、多くのモックアップを試作することで薄型化、軽量化、操作性の向上を実現したとのこと。
バッテリは40Whのリチウムポリマーが内蔵されており、バッテリ駆動時間はJEITA 2.0基準で約10.2時間、ヘビーゲームプレイ時で約2時間、クラウドゲームプレイ時で約6.8時間、動画再生時で約6.8時間とされている。
パッケージには本体、ACアダプタ、説明書、スタンドが同梱。スタンドはおそらくポリカーボネート製の簡素なものだが、軽量なROG Allyは安定して立てられる。実測9.5gと非常に軽量なので、日々の携帯に便利だ。
【表1】「ROG Ally」のスペック | |
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OS | Windows 11 Home 64bit |
CPU | RC71L-Z1E512:AMD Ryzen Z1 Extreme(8コア、16スレッド、3.3/5.1GHz、45W、4nm)、Zen 4アーキテクチャ RC71L-Z1512:AMD Ryzen Z1(8コア、16スレッド、3.2/4.9GHz、45W、4nm)、Zen 4アーキテクチャ |
GPU | AMD Radeon Graphics(RC71L-Z1E512:最大8.6TFLOPS FP32、RC71L-Z1512:最大2.8TFLOPS FP32)、RDNA 3アーキテクチャ |
メモリ | 16GB(LPDDR5-6400、オンボード) |
ストレージ | 512GB(PCIe Gen4 x4 M.2 2230 SSD) |
ディスプレイ | 7型フルHD IPS液晶(1,920×1,080ドット、315ppi、500cd/平方m、120Hz、7ms、光沢、ペン非対応、タッチ対応、Corning Gorilla Glass Victus) |
ワイヤレス通信 | Wi-Fi 6E(11ax)、Bluetooth 5.1 |
インターフェイス | ROG XG Mobileインターフェイス×1、USB 3.2 Gen2 Type-C(データ転送、映像出力、本体への給電対応)×1、microSDメモリーカードスロット(UHS-II)×1、3.5mmコンボジャック×1 |
サウンド | ステレオスピーカー(1W×2)、Dolby Atmos対応、ハイレゾ対応(イヤフォン利用時)、アレイマイク |
バッテリ容量 | 40Wh(リチウムポリマー) |
バッテリ駆動時間(最大) | JEITA2.0:約10.2時間、ヘビーゲーム:約2時間、クラウドゲーム:約6.8時間、動画再生:約6.8時間 |
バッテリ充電時間 | 約1.6時間 |
本体サイズ | 280.0×111.38×21.22~32.43mm |
重量 | 約608g |
セキュリティ | 指紋認証センサー一体型電源ボタン |
同梱品 | ACアダプタ、製品マニュアル、製品保証書、「必ず初めにお読みください」 |
カラー | ホワイト |
価格 | RC71L-Z1E512:10万9,800円、RC71L-Z1512:8万9,800円※5月29日時点 |
ROG Allyは前述のとおりROG XG Mobileインターフェイスが用意されており、外付けGPUドック「ROG XG Mobile」を利用可能。現在、直販サイトのASUS Storeでは下記の3モデルが掲載されている。RTX 3080搭載モデルはASUS Storeでは在庫切れとなっているが、記事執筆時点でAmazonでは購入可能だった。
ROG XG Mobileを接続すれば3Dグラフィックス性能を大幅に向上し、ディスプレイをはじめとしたPC周辺機器を接続するハブとしても利用できる。外付けHDDを接続しておけば、ROG Allyのストレージ不足も解消可能だ。
ただ個人的には、39万9,800円のRTX 4090搭載ROG XG Mobileを購入するのであれば、ROG Allyとは別に30万円前後のゲーミングPCを購入したほうが使い勝手がよいようにも思う。ROG XG Mobile自体は魅力的な周辺機器なので、GeForce RTX 4060、RTX 4070を搭載したエントリー、ミドルレンジモデルが発売されることを期待したい。
- 「ROG XG Mobile GC33Y (GC33Y-021)」39万9,800円
NVIDIA GeForce RTX 4090 Laptop GPU搭載 - 「ROG XG Mobile GC31 (GC31S-026)」18万8,800円
NVIDIA GeForce RTX 3080 Laptop GPU搭載 - 「ROG XG Mobile GC32L (GC32L-021)」12万4,800円
AMD Radeon RX 6850M XT モバイル・グラフィックス搭載
ROG Allyの発売に合わせて、ゲーミングコントローラ「ROG Raikiri」(価格未定)、充電・データ転送・映像出力に対応するドック「ROG Gaming Charger Dock」(価格9,980円)、専用ケース「ROG Ally Travel Case」(価格3,980円)が発売される。
ただし、ROG Ally Travel Caseについては、ROG Allyの購入と、レビューサイトへの投稿という条件を満たすとプレゼントされる全員キャンペーンが実施される。ROG Allyを購入するのなら忘れずに応募しておこう。
ROG AllyのコントローラはNintendo Switch、Steam Deckと同等の出来
まずゲームコントローラとしての使い勝手からお伝えしよう。今回ROG Allyを試用してみて、スティック、ボタン、バンパー、トリガーの感触は軽めだと思った。
ただ、これは筆者個人の好みであり、実際にゲームをプレイしていて操作しにくいと感じたわけではない。筆者はGameSirのゲームコントローラを普段利用しており、Nintendo SwitchやSteam Deckのコントローラも軽く感じる。というわけでNintendo Switch、Steam Deckのコントローラが快適なのであれば、ROG Allyでも同じ感想を抱かれると思う。
ソフトウェア面もポータブルゲーミングPCとして充実。まず気に入ったのが、ゲームプレイ中に利用できる「コマンドセンター」。ディスプレイ左にあるコマンドセンターボタンを押すと、ゲーム画面の上に表示されて、パフォーマンス、コントローラの設定、リフレッシュレートなどを素早く切り替えられる。ゲーミングスマホを長年手がけてきたASUSだからこそ、レイアウト、パネルのカスタマイズ機能などの実装もこなれている。もちろん解説も含め、丁寧に日本語化されている点もASUSならではだ。
ASUS独自の統合ユーティリティ「Armoury Crate」も、ROG Allyに特化した形で搭載。上部には「Game Library」、「設定」、「コンテンツ」のタブが用意。「Game Library」ではゲームごとに個別に設定が可能で、「設定」ではすべてのゲーム、アプリに対してパフォーマンスやコントローラをカスタマイズできる。「コンテンツ」には、メディアギャラリー、システム、ゲームプラットフォーム、ユーザーセンター、アップデートセンター、特集、ヘルプセンター、接続されているデバイス……などの項目が並んでいる。
少々機能を欲張りすぎているようにも感じるが、ポータブルゲーミングPCとして使う際に「Armoury Crate」だけで完結するように設計されているのだろう。
なお、1つ注意点がある。オペレーティングモードでは、Windowsの初期設定を使用する「Windows」、動作音を低減する「サイレント」、性能・温度・ノイズのバランスを取る「パフォーマンス」、処理性能を最大化する「Turbo」、自由に設定が可能な「手動」の5つのモードが存在する。サイレントでは9W、パフォーマンスでは15Wで動作するが、TurboではACアダプタ接続時に30W、非接続時に25Wで動作する。つまりTurboで最大パフォーマンスを発揮させるにはACアダプタを接続する必要がある点には留意してほしい。
ROG Allyはディスプレイについて色域を公表していない。そこでカラーキャリブレーション機器で実測したところ、sRGBカバー率は94.1%、AdobeRGBカバー率は73.2%、DCI-P3カバー率は72.7%という値が出た。昨今のモバイルノートPCのディスプレイとしては標準的な色域だ。
しかし実際に画面を見ると、500cd/平方mの輝度、光沢表面処理のおかげで、非常に鮮やかに感じる。なによりポータブルゲーミングPCとしては初めて120Hzのリフレッシュレートを実現している。フレームレートが1,920×1,080ドットで60fpsを大きく上回るゲームがどのぐらいあるのかという疑問はあるが、解像度を1,280×720ドットに落としても滑らかさを優先させたいプレイヤーには歓迎されるはずだ。
ROG AllyはDolby Atmos対応のステレオスピーカー(1W×2)を搭載している。音量は決して大きくはないのだが、音質についてはかなり高いレベルだ。本体正面に大きくスピーカーの開口部を開けているおかげか、音の抜けがよく、低・中・広域のバランスがいい。ボディは小さいのに音の広がりも感じられる。ゲーム世界に没入するだけでなく、映像、音楽コンテンツを鑑賞するのにも十分活用できるクオリティだ。
Cinebench R23でRyzen 7 6800U搭載機の129~134%のスコアを記録
最後にパフォーマンスをチェックする。今回比較対象としては、Zen 3+のCPUアーキテクチャ、RDNA 2のGPUアーキテクチャを採用する「Ryzen 7 6800U」(8コア、16スレッド、最大4.7GHz)を搭載する「ONEPLAYER 2」と「AYANEO 2」を使用した。
Zen 4アーキテクチャのCPU、RDNA 3アーキテクチャのGPUを採用するRyzen Z1 Extremeを搭載し、デュアルファンを内蔵したROG Allyがどのぐらいのパフォーマンスを発揮するのか見てみよう。
なお、ベンチマークを実施するにあたっては、ROG AllyにACアダプタを接続したうえで、「Armoury Crate」の「オペレーティングモード」を「Turbo」に設定して実施している。
まずCPU性能だが、ROG Allyは2機種に対して、Cinebench R23のCPU(Multi Core)で129~134%相当、CPU(Single Core)で108~109%相当のスコアを記録している。マルチスレッド処理をサポートしているクリエイティブ系アプリや、一部のゲームでは、大きな恩恵を受けられるわけだ。
一方3Dグラフィックス性能については「3DMark」で計測したところ、ROG AllyはONEPLAYER 2の106~118%相当(平均112%)、AYANEO 2の106~132%相当(平均115%)のスコアとなった。ただし、AYANEO 2のPort RoyalのスコアはONEXPLAYER 2よりかなり低いので、なんらかの原因で正常に計測できなかった可能性がある。
AYANEO 2でPort Royalを除いた平均スコアは113%だ。となると、ROG Allyは2機種に対して平均で112~113%相当のパフォーマンスを発揮した……というのが実情に近いと思われる。
実際、「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」では、ROG AllyはONEPLAYER 2の111~114%相当のスコアを記録している。3DMarkのスコアと同じ傾向であり、その結果を裏付けていると言える。
総合ベンチマーク「PCMark 10」の総合スコアでは、ROG AllyはONEPLAYER 2の105%相当、AYANEO 2の103%相当のスコアとなった。App Start-up ScoreとVideo Conferencing Scoreのスコアが足を引っ張ったようだ。
次はROG Allyだけで、ROG XG Mobile(RTX 4090)あり、ACアダプタあり、ACアダプタなしという3つの条件でパフォーマンス差を見てみよう。ここではCPUとGPUを合わせた総合性能を見るため、「Cyberpunk 2077」のフレームレートを「MSI Afterburner」で計測してみた。
結果は、ACアダプタありに対してROG XG Mobile(RTX 4090)ありでは211~244%相当、ACアダプタなしに対してACアダプタありでは106~108%相当のスコアとなった。
同じTurboモードでも、ACアダプタありでは30W、ACアダプタなしでは25W動作となるが、今回のフレームレートの差を見た限りではACアダプタのありなしを気にする必要はなさそうだ。
ストレージ速度については「CrystalDiskMark 8.0.4」で、ROG Allyはシーケンシャルリード(1M Q8T1)では123%相当のスコアを記録したものの、それ以外は46~90%相当(平均62%)のスコアに留まっている。ROG Allyは512GBのPCIe Gen4 x4接続SSD「Micron_2400_MTFDKBK512QFM」が搭載されている。スコアは微妙な結果となったが、体感的に大きな差を感じることはないはずだ。
バッテリ駆動時間についてはディスプレイ輝度を50%に設定し、ふたつのテストを実施した。「PCMark 10 Modern Office Battery Life」をサイレントモードで実行した際のバッテリ駆動時間は4時間48分、「Cyberpunk 2077」をパフォーマンスモードでプレイした際のバッテリ駆動時間は1時間22分17秒となった。
ディスプレイ輝度が500cd/平方mなのでもう少し暗くしても実用的な視認性は得られるが、長時間プレイする際にはACアダプタやモバイルバッテリを接続したほうがよさそうだ。
本体の発熱については、ACアダプタを接続し、Turboモードに設定したうえで、「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」を連続で10分間実行したあとにサーモグラフィーカメラで計測したところ、背面の最大温度は49.8℃となった(室温27.5℃で測定)。
サーモグラフィーカメラの画像では上面からの排気が左右バンパー、トリガーに触れている指に当たりそうに見えるが、試用していて熱気を感じることはなかった。多くのモックアップで形状を検討しただけに、ファンやヒートパイプ、排気口の位置やサイズについても入念に設計されているようだ。
多くのポータブルゲーミングPCにとっての強力なライバルが登場
ROG Ally はAMDと協業開発したRyzen Z1 Extreme/Ryzen Z1という競合メーカーを上回るプロセッサを搭載しつつ、下位モデルでは512GB版で9万9,800円の「Steam Deck」を下回る戦略的な価格に設定。
16GBメモリはともかく512GBストレージは物足りなく感じるものの、リフレッシュレート120Hzの7型フルHD IPS液晶ディスプレイを搭載し、スペック的に非常に魅力的なモデルに仕上げられている。ハードウェア、ソフトウェアの完成度という点でもASUSならではの隙のない仕上がりだ。多くのポータブルゲーミングPCにとって、非常に強力なライバルが登場したことは間違いない。