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15.6型なのに薄い、持ち運びやすい。まさにハイブリッドワーク向けな「Zenbook Pro 15 OLED」

ASUS「Zenbook Pro 15 OLED」

 数年前まではモバイルノートとして13型クラスが高い人気を誇っていたが、テレワークの本格化で、持ち運びのしやすさより大きな画面を求める傾向が強くなったように思う。ところがオフィス勤務への回帰、あるいはテレワークとオフィスワークのハイブリッドへと移行しつつある今、再びモビリティ性能を考えなければならなくなってきた。

 ただ、そうは言っても一度大画面の利便性の高さを味わってしまうと、小さなモバイルノートに戻りたいと思えないことも確か。大画面は維持したい、でも持ち運びにも不都合がないようにしたい。そんな向きにしっくりきそうなモデルがASUSの「Zenbook Pro 15 OLED UM3504DA」(以降、Zenbook Pro 15 OLED)だ。15.6型でありながら薄型、コンパクトで持ち運びに便利なモデルとなっている。ASUS Storeでの価格は19万9,800円。

最新Ryzen 7000シリーズに高解像度有機ELディスプレイ搭載

【表】Zenbook Pro 15 OLED UM3504DAの主な仕様
OSWindows 11 Home
CPURyzen 7 7735U(8コア/16スレッド、最大4.75GHz、TDP 28W)
GPUCPU内蔵Radeonグラフィックス(Radeon 680M)
メモリ16GB(LPDDR5-6400、最大16GB)
ストレージ512GB(NVMe/M.2、PCIe 4.0 x4)
ディスプレイ有機EL(2,880×1,620ドット、120Hz、光沢)
インターフェイスUSB4、USB 3.1 Type-C、USB 3.0、HDMI出力、ヘッドセット端子
通信機能Wi-Fi 6E(USB Gigabit Ethernetアダプタ付属)
WAN-
カメラ207万画素(Windows Hello対応)
サウンドステレオスピーカー(1W×2)
キーボード102キー日本語キーボード
バッテリ容量リチウムポリマー 67Wh
バッテリ駆動時間約7.3時間
バッテリ充電時間約2.1時間
同梱品USB Gigabit Ethernetアダプタ、ACアダプタ
ソフトウェアMicrosoft Office Home and Business 2021
サイズ354.8×226.6×14.9~16.45mm
重量約1.55kg(実測約1,396g)
カラーポンダーブルー
価格19万9,800円

 Zenbook Pro 15 OLEDは、15.6型サイズのビジネス向けノートPC。従来のZenbook Pro 15(もしくはZenbook 15)の後継として各部を進化させたモデルだ。フルHD(1,920×1,080ドット、60Hz)のディスプレイをもつZenbook 15に対し、今回紹介するZenbook Pro 15は2,880×1,620ドットで120Hzという高解像度かつハイリフレッシュレートの有機EL光沢ディスプレイを搭載しているのが主な特徴となる。

 CPUはRyzen 7 7735U(8コア/16スレッド、最大4.75GHz)を搭載、GPUはCPU内蔵のRadeonグラフィックスとなる。メインメモリは16GB LPDDR5-6400で、ストレージは512GB(NVMe SSD、PCIe 4.0 x4接続)。OSはWindows 11 Homeで、Microsoft Office Home and Business 2021(またはWPS Office 2 Standard Edition)がプリインストールされる。

Ryzen 7 7735Uを搭載
「CPU-Z」および「GPU-Z」によるハードウェア情報

 このあたりの基本的なスペックはZenbook 15と共通だが、特にメモリ・ストレージ容量がカスタマイズ不可なのは、ヘビーに使いたいユーザーにとっては少し気になるところだろうか。

 インターフェイスは本体左側面にUSB 3.0が、右側面にUSB4、USB 3.1 Type-C、ヘッドセット端子、HDMI出力が、それぞれ設けられている。USB4も含め、2個のType-CポートはいずれもDisplayPort Alternate Modeによる外部モニター出力と、USB PDによる給電に対応する。15.6型というサイズではあるが、SDカードスロットなどは残念ながら用意されていない。

 ネットワークはWi-Fi 6E対応の無線LANとBluetoothを利用可能。加えてUSB接続のGigabit Ethernetアダプタが付属している。普段はWi-Fi接続で身軽に使い、Web会議やオンラインゲームなど安定性が求められるときには有線LANで接続する、というように、購入直後から使い分けできるのはありがたい。

左側面はUSB 3.0が1つ
右側面にはUSB4、USB 3.1 Type-C、ヘッドセット端子、HDMI出力
付属ACアダプタは最大65W出力
USB接続のGigabit Ethernetアダプタが標準で付属

 Webカメラは207万画素(最大1,920×1,080ドット、30fps)と一般的な性能だが、Windows Helloの顔認証にも対応する。下記のスクリーンショットで示す通りカメラ映像の明るさ、画質はともに良好で、視野角も広め。Web会議などの用途には十分だろう。

Webカメラは207万画素、Windows Helloの顔認証に対応
物理シャッターは備えていないが、マルチメディアキーでカメラをオフにできる
Webカメラの映像は視野角が広めで明るく、精細度も高い
「AIノイズキャンセリングマイク/スピーカー」機能があり、周囲のノイズを低減しながら相手とやりとり可能

無理なく持ち運べるコンパクトさと美しいディスプレイ

 Zenbook Pro 15 OLEDの魅力は、筐体のコンパクトなデザイン、それと高性能な有機ELディスプレイだろう。深い藍色をなすポンダーブルーのボディカラーはシックな雰囲気を漂わせており、マットな質感で手触りもいい。天板には大きくラインが刻まれているものの、ロゴは隅に小さくさりげなく配置されていて、ビジネスシーンを意識した落ち着いたデザインになっている。

天板のラインは目立つが、ロゴは控えめで落ち着いた外観
ディスプレイはほぼ180度まで開くことが可能

 開いたときのキーボード面も同様で、タッチパッドも含め質感に統一性をもたせている。キーボードは若干詰め込み感はあるもののテンキー付きで、主要なキーのピッチは約19mmとなっている。一部のキー(特に左シフトキーとエンターキー)でパチパチという音が聞こえることはあるが、十分に静音と言えるキーボードだ。

キーボードとタッチパッド周り

 上下左右キーはかなり細いものの、かえってほかのキーとの違いがはっきりしていて指先で探り当てやすいことや、キートップに刻印されたアルファベット・記号の視認性が高く、それでいてデザイン性を損なっていないのも個人的には好印象だ。

 ちなみにこのキーボード面全体には「ASUSアンチバクテリアガードプラス」というウイルスや細菌の繁殖を抑制する特殊な銀イオンコーティングが施されているとのこと。筐体自体も「MIL-STD-810H」準拠の高い耐久性をもっており、安心感は高い。

「ASUSアンチバクテリアガードプラス」でウイルスの繁殖を抑制。上下左右キーは細いが、ほかとの区別がはっきりしていて意外と打ちやすい

 サイズは354.8×226.6×14.9~16.45mmで、横幅は15.6型相応だ。しかし画面専有率86.7%という狭額縁のディスプレイは、アスペクト比が16:9と横長であることから、幅に比べて奥行きは相対的に浅く感じられる。これがZenbook Pro 15 OLEDを一段とコンパクトに感じさせる要因となっており、しかも薄型であること、重量も実測約1.4kg(スペックシート上は約1.55kg)と重すぎないこともあって、意外なモビリティ性能の高さを予感させる。

 実際、自宅にあった標準的な15型クラスのノートPCと比べて2cmほど奥行きが短く、それが入らないバッグにもZenBook Pro 15 OLEDは問題なくすっぽり収まった。バッグで持ち運ぶときは軽快とまでは言えないけれど、通勤くらいは平気でこなせるだろう。

最薄部14.9mm。手に持つとさらに薄さを実感する
実測した重量は1,396g
いつも使っているバッグのノートPC収納スペース、ここにすっぽり収まってくれた

 そして有機ELディスプレイが映し出すグラフィックは、とにかく色鮮やかで美しい。高解像度らしいドット感のない滑らかな表示で、120Hzのリフレッシュレートによる画面スクロールなどのスムーズさも実感できる。

 DCI-P3 100%を謳う色域と、印刷向けのPANTONEカラー認証を受けていることもあり、ビジネスだけでなく動画などのエンタメ用途には十分以上の性能。このディスプレイと、harman/kardon監修のDolby Atmos対応内蔵ステレオスピーカーの組み合わせは、Netflixなどの映像体験がなかなかに贅沢なものとなる。

高解像度、高リフレッシュレートで、鮮明にグラフィックを描写する有機ELディスプレイ
スピーカーはharman/kardon監修で、Dolby Atmos対応
底面左右に設けられたスピーカー。サラウンドサウンドを聞くとかなりの広がりを感じる

実務アプリケーションの性能は優秀だが、ゲームは得意ではないか

 ベンチマークテストでパフォーマンスもチェックしてみよう。PC設定については、プリインストールされている独自ユーティリティ「MyASUS」で、「ファンモード」を「パフォーマンス」としている。ただし、「PCMark10 Modern Office Battery Test」のみ、バッテリ動作時にはファンモードの設定が制限されるため「スタンダード」(ディスプレイ輝度は50%)とした。

独自ユーティリティ「MyASUS」では冷却ファンの動作モードを3段階から選択可。ベンチマークでは一部を除き「パフォーマンス」モードとした
「PCMark 10 Extended」の結果
「PCMark 10 Applications」の結果
「3DMark」の結果
「Cinebench」の結果
「CrystalDiskMark」の結果

 「PCMark 10 Extended」における実務アプリケーション性能については、文句なし。第13世代Core i9搭載のノートPCと比較しても勝るとも劣らないスコアを叩き出している。バッテリによる動作時間もフルパワーではないとはいえ10時間近くもち、1日のビジネスアワーを無給電で乗り切れそうなポテンシャルがあるようだ。

 ただ、Word、Excel、PowerPointなどのオフィスアプリケーションを用いた「PCMark 10 Applications」については、数値的には快適なレベルではあるものの、第13世代Intel CPU機と比べてしまうとそこまで好成績というわけではない。「3DMark」の結果も振るわず、このあたりはCPU内蔵GPUでもあるため致し方なし、といったところだろうか。

「F1 22」ベンチマークモードの実行結果
「サイバーパンク2077」ベンチマークモードの実行結果
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果

 「F1 22」と「サイバーパンク2077」、そして「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」も実行したが、最大ディスプレイ解像度では動作が困難な場合もあったため、基本的にフルHD解像度で確認することにした。F1 22とサイバーパンク2077については、アップスケーリング技術のFSRをオンにした状態で、画質設定を変えながらテストしている。

 F1 22については「ミディアム」設定付近がゲームとしては実用的なフレームレートと画質だろう。これなら120Hzのハイリフレッシュレートなディスプレイ性能も活かすことができる。サイバーパンク2077は画質を「低」にしても快適に楽しめるとは言いがたく、より低い解像度でのプレイが強いられそうだ。ファイナルファンタジーXIVは最高解像度でも試してみたが、やはり実用的なのはフルHD、ノートPCの標準品質か高品質あたりがおすすめ。本格的な3Dゲームは少々荷が重いかもしれない。

 しかし、動作中の冷却ファンのノイズは比較的抑え気味ではある。2つのファンで底面から吸気し、主に左側面から排熱する構造となっていて、ゲームなど高負荷な処理が続くときはそれなりに大きなノイズにはなるが、それでも「サー」という低周波音で耳障りに感じにくい。実務アプリケーションであればかなりの静音動作になるため、仕事の集中力が途切れるようなことはないだろう。

底面のスリットの奥に2つの冷却ファンが見える。ここから吸気し、主に左側面(写真では右側)から排熱する構造

20万円を切る価格で、このデザインと装備とパフォーマンスはお買い得

 CPUは新しいRyzen 7000シリーズ、GPUはRadeonグラフィックスというパワフルなコンビネーションで、実務アプリケーションは軽々と、3DゲームもFSRの効果が高いものならある程度はこなしてくれる。高精細でスムーズ表示のディスプレイや、薄型・コンパクトで15.6型とは思えないモビリティ性能を発揮する点も含め、まさにハイブリッドワーク向けのノートPCと言えるだろう。

 欲を言えば、メモリやストレージのカスタマイズ(大容量化)が可能であってほしかったのと、コンパクトとはいえ15.6型クラスであれば、やはりUSB Type-Aポートをもう1つ、それとSDカードスロットあたりも装備していてほしかった、と思わないこともない。しかし、20万円を切る価格であることを考えれば、この程度の制約は許容範囲と言えそう。

 なお、120Hz対応の高解像度ディスプレイが光沢のみなのは、ビジネス用途を考えると若干ネックに感じられるところ。気になるなら市販のディスプレイフィルムを使うなどして反射を軽減するといいかもしれない。