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ファン内蔵で確かな高性能。実用性重視のハイエンドスマホ「REDMAGIC 8 Pro」

REDMAGIC 8 Pro

比較的安価なハイエンドAndroidスマートフォン

 Nubiaのハイエンドスマートフォン「REDMAGIC 8 Pro」の国内版が2月22日に発売された。12GBメモリ/256GBストレージのMatteカラー(ブラック)と、16GBメモリ/512GBストレージのVoidカラー(透明)の2製品がラインナップされており、価格はそれぞれ10万3,800円、12万8,800円。

 今回は大容量モデルとなるVoidカラーモデルをお借りしたので、使用感を含めてレビューをお届けする。

妥協のないハイエンド構成

 まずはスペックを確認しておこう。

【表1】REDMAGIC 8 Proのスペック
OSAndroid 13(REDMAGIC OS 6.0)
プロセッサSnapdragon 8 Gen 2(3.2GHz)
メモリ16GB(LPDDR5X)
ストレージ512GB(UFS 4.0)
ディスプレイサイズ6.8型AMOLED(有機EL)
ディスプレイ解像度2,480×1,116ドット(120Hz)
ディスプレイ輝度1,300cd/平方m
アウトカメラ5,000万画素(メイン、Samsung GN 5、1/1.5型センサー)、800万画素(広角)、200万画素(マクロ)
インカメラ1,600万画素(第2世代アンダーディスプレイカメラ)
NFC対応
GPSGPS、GLONASS
センサー指紋センサー(画面内認証)、加速度センサー、電子コンパス、ジャイロスコープ、近接センサー、環境光センサー
無線LANWi-Fi 7
Bluetooth5.3
5GNR SA : n77/n78
4GTTD-LTE : 34/41、FDD-LTE : 1/3/8/18/19/26/28
3GWCDMA : B1/3/6/8/19
2GGSM : 2/3/5/8
USBUSB 3.1 Type-C
SIMNano SIM×2
3.5mmオーディオジャックイヤフォンジャック
防水・防塵-
バッテリ容量6,000mAh
ACアダプタ65W
本体サイズ163.98×76.35×9.47mm
本体重量228g
価格12万8,800円

 プロセッサはSnapdragon 8 Gen 2で、メモリは16GB、ストレージはUFS 4.0の512GBと、確かにハイエンドのスペックとなっている。

 ディスプレイは6.8型で、解像度は2,480×1,116ドット、アスペクト比は20:9となる。インカメラがディスプレイの裏に内蔵された第2世代アンダーディスプレイカメラとなっており、画面占有率は93.7%。切り欠き部分もなく、ほぼ全面が表示領域と言っていい。

 輝度は最大1,300cd/平方mと明るく、屋外でのゲームも快適とする。最大120Hzのハイリフレッシュレートや、960Hzのタッチサンプリングレートにも対応。表面はCorning Gorilla Glass 5を採用する。

 カメラは背面に5,000万画素のメインカメラを含めて3種類。前面には第2世代アンダーディスプレイカメラと呼ぶ、画面内蔵型のカメラを搭載する。通常の画面表示時には、筆者の目にはどこにカメラがあるのか全くわからない。

 ネットワーク周りでは、Wi-Fi 7に対応するとされている。現状ではWi-Fi 7の親機が市販されていないため検証できないが、Wi-Fi 6以前の規格にも対応しており問題なく使える。将来的にはWi-Fi 7も使えると考えておけばいいだろう。

 バッテリは6,000mAhとかなりの大容量。その影響もあってか、重量は228gと重めだ。出力65WのACアダプタが付属し、高速充電も売りにしている。

小型のファンを内蔵。内蔵カメラで全面表示可能なディスプレイも魅力

内蔵型の前面カメラは上部中央付近にあるはずだが、場所は見てもわからない

 次に本体を見ていく。何より印象的なのは、切り欠きなしで画面占有率93.7%のディスプレイ。外周部に非表示部はあるとはいえ、やはり表示領域の広さは素晴らしい。また表示領域に曲面はなく、側面に近い部分には約2mmの非表示領域があるので、手に持った時の誤操作を起こしそうな手触りはない。

 外面を見ると、ディスプレイは平面、側面はディスプレイに対して直角に平らで、少しだけ角は取りましたという程度。ほぼ直方体の形状で面白味はないが、Voidカラーの本機は背面にシースルー部分があり、冷却ファンとその付近の中身が見えるのがユニークだ。

本体形状はシンプル。側面は直角で平ら
背面のシースルー部分を含むデザインはユニーク

 ボタン類は、右側面の中央付近に電源ボタン、左側面の中央付近に音量ボタン。Nano SIMカードスロットは下部左側にある。下部中央にはUSB Type-C端子、上部右側にイヤフォンジャック。上部左側と下部右側にはスピーカーが内蔵されており、横持ち時にステレオで聞ける形だ。

 右側面の下部には、赤いスイッチがある。これは「ゲームスペーススイッチ」と呼ばれており、スイッチを入れると画面がゲーミング用メニューに切り替わる。簡単に言えば、普段使いにはオフ、ゲームプレイ時はオンにするという使い方を想定している(オフでもゲームはプレイできる)。また右側面の上下には横持ち時のボタンとして機能する接触センサーが内蔵されている。これらゲーム向け機能の詳細は後述する。

右側面に電源ボタンと「ゲームスペーススイッチ」。上部にあるのはファンの排気口。上下にはタッチセンサーを内蔵する
左側面には音量ボタン。上部にあるのはファンの吸気口
上部にイヤフォンジャックを搭載。スピーカーとマイクらしき穴も
下部にUSB Type-C。こちらもスピーカーとマイクらしき穴がある

 左側面の上部には、直径1cmほどの小型の冷却ファンが内蔵されている。右側から吸気、左側から排気という空気の流れになっている。ファンの回転は設定で切り替えられるほか、充電中やゲームプレイ中など状況に合わせて回転する設定も選べる。ファンの奥には4色のLEDが内蔵されており、回転時に光るようになっている。回転音は耳を近づけると高めの風切り音が聞こえるが、音量は小さく振動もないため、ほとんど気にならない。

ゲームプレイ時などにはファンが回転する。LEDライティングも仕込まれている

 付属の充電器は65W出力のGaN急速充電器としている。出力の割にはコンパクトで、光沢のある質感も悪くない。USB Type-Cで最大20V/3.25Aとされており、PPS情報も書かれている。

 ケーブルは太めで安心感があり、曲げるのに困るほど固くもない。バッテリはデュアルセルとしており、充電速度も十分に高速だ。

付属の充電器とケーブル。出力は最大65Wで、本体のバッテリはデュアルセルで受電する
付属の充電器で充電すると、バッテリ残量が0.01%単位で表示される。充電のスピードがわかりやすく、高速充電をアピールしているらしい

 ケースは適度な柔軟性のある透明のものが付属している。側面はほとんど覆われておらず、上下と裏面を保護する形。冷却ファンやタッチボタンを邪魔しないための構造と思われる。これでも背面の傷と落下の衝撃を和らげる効果はあるので、カバーとしては機能している。

付属のケース。側面が大きく開いており、透明でデザインを邪魔しない
ケース装着時の背面。本体デザインを邪魔せず見た目もいい

ゲーム向け機能も充実

 本機はゲーム向けの独自機能を搭載している。右側面の下部にあるゲームスペーススイッチをオンにすると、ゲーム用の専用メニュー(以下、ゲームモード)に切り替わる。本機にゲームをインストールすると、自動的にゲームモードに登録される。ベンチマーク系のソフトなどは登録されないが、手動で好みのアプリを追加できる。

ゲームスペーススイッチを動かすと、画面がゲームモードに切り替わる

 ゲームは必ずしもここから起動する必要はなく、通常モード(ゲームスペーススイッチがオフの状態)から一般的なAndroid端末のようにアイコンをタップしても構わない。またゲームモードは横向き表示となるため、縦向き表示で遊ぶゲームでは持ち替えが二度手間になる。

 ゲームモードでは登録したゲームの動作設定ができる。設定項目は、2段階のタッチサンプリングレートやタッチ感度、3段階のCPU性能、GPUの描画品質、ゲームジャンルに合わせた画面の色味など。登録したゲームごとに個別に設定できる。

タッチ関連の設定変更が可能
CPU性能を3段階に調整
GPUの描画品質を調整
ゲームジャンルに合わせた色味の調整

 ゲームプレイ中には、画面上部の左端または右端から画面中央に向けて2度スワイプすると、オーバーレイ表示でメニューが表示される。ゲームモードで設定した各項目の変更のほか、右側面のタッチセンサーを使ったL/Rボタンの設定や、MOBA向けのヘルプライン表示、画面中央のレティクル表示、特定操作をワンタッチで実行するマクロ機能などが任意で呼び出せる。

 L/Rボタンを使えば、左右の親指の操作と合わせて、FPSで移動と照準、ジャンプと射撃の4動作を同時に行なえるなど、操作の自由度がぐっと高まる。またマクロ機能も強力で、1タップで繰り返し回数や実行間隔の設定も可能だ。

ゲームプレイ中にオーバーレイ表示のメニューを呼び出せる
タッチセンサーに対応するバーチャルボタン。位置を自由に変更できる
FPSに使えるレティクル表示
操作を記憶してワンタッチで繰り返せるマクロ機能

高性能なだけでなく、タッチ操作や熱処理も良好

 実際のパフォーマンスを見るため、各種ベンチマークテストを実施した。使用したのは、「Geekbench 6.0.0」、「AnTuTu Benchmark v9.5.7」、「3DMark」、「PCMark for Android」。

 本機はCPUのパフォーマンスを、「バランス」、「ライズ」、「ビヨンド」の3段階に設定できる。ゲーム時の通常設定は中間の「ライズ」となっていたので、ベンチマークは「ライズ」と最高性能の「ビヨンド」でテストした。GPUの設定に関しては、「標準」と「高品質」で有意なパフォーマンスの差が出なかったため割愛する。

【表2】ベンチマークスコア
CPU設定ライズビヨンド
「Geekbench 6.0.0」
Single-Core Score1,1101,680
Multi-Core Score4,9505,407
OpenCL Score6,5116,526
「AnTuTu Benchmark v9.5.7」
Score1,312,4111,313,454
CPU277,741281,987
GPU575,311575,669
MEM267,975262,846
UX191,377192,952
「3DMark」
Wild Life Extreme3,7373,744
「PCMark for Android」
Work 3.0 performance12,45812,716
Work 3.0 battery life17時間57分-
Storage 2.050,004-

 想定通りの高性能を発揮している。ファンのおかげか性能が落ちるような部分も見られず、「AnTuTu Benchmark v9.5.7」の実行前の温度が27.9℃、実行後は33.6℃と、5.7℃の上昇にとどまっている。実行時はあえてケースをつけたままにしてみたが、冷却面での不安はないと言っていい。

 最高性能の「ビヨンド」に設定した場合、Geekbench 6.0.0ではシングルコアで50%超のスコア向上が確認できた。マルチコアでも10%近く上がっている。ただ、ほかのテストではそこまで大きな差はなく、2~3%程度の向上にとどまっている。とはいえ発熱が大きくなったり、ファンがうるさくなったりという印象もなく、使用感に変化はなかったのは好印象だ。

 バッテリ持続時間に関しては、PCMark for Androidの「Work 3.0 battery life」で17時間57分という長寿命を記録した。実行中はあえて冷却ファンを回転させた状態にしておいたため、物理的に動くものがある分だけバッテリ持続時間が短くなるのではないかと思ったが、全く問題にならなかった。実際に使用していても特にバッテリの減りが早いと感じることもなく、充電も高速で実に快適だ。

メインカメラは高性能かつ多機能

 本機はゲーミング端末のように見られているが、カメラの性能も手抜かりはない。Samsung製の5,000万画素、1/1.5型センサーを搭載しており、スペック的にはかなり優秀だ。解像度は本機推奨の縦横比4:3で通常撮影すると4,080×3,060ピクセル。特殊撮影モードにある「フルサイズ」を選ぶと、縦横2倍の8,160×6,120ピクセルでの撮影もできる。

 サンプル撮影は通常の写真モードを使用。色味はどの色もしっかりと出ているが、嘘くさい強調感はなく、自然な印象になっている。細かい部分もシャープに描写されており、普段使いのカメラとしては満足できる高画質だ。

 今回は逆光になるシーンも多かったが、太陽が映り込むような画角でも、それなりにうまく撮影してくれていた。もちろん逆光にならない方がいいのは確かだが、HDRでそれなりにうまく処理してくれているように思う。

メインカメラの撮影例

 ズーム倍率は10倍まで微調整が可能。2倍、5倍、10倍のプリセットがあるので試してみると、2倍の時点で既に解像感を大きく損なっている印象がある。等倍の映像が美しい分だけ落差が大きいとも言えるが、デジタルズーム時の画像補正をもう少しがんばって欲しい気もする。

等倍
2倍
5倍
10倍

 広角カメラは色味が変わり、赤っぽさが強い印象。また細部の描画はメインカメラに比べて格段に落ちる。メインカメラの画質がいいだけに、なるべくなら広角は使わない方がいいかなと感じる。

広角カメラ

 マクロカメラに関しては、確かに相当近くまで寄って撮影できるのが面白い。ただし画質に関しては描写力と色味の正確さでメインカメラとは圧倒的な差がある。どうしても接写したいという理由がないなら、メインカメラで撮影後にトリミングする方が印象はいいだろう。

マクロカメラ

 そのほかの撮影機能も豊富で、様々な効果をつけた写真や動画を撮影できる。タイムラプスやスローモーション、VLOGといった動画機能も充実しているので、用途を問わず便利に活用できるだろう。また本機のアシスタントキャラクター「モラ」と写真を撮影する機能など、遊び心もある。

撮影に関しては多くの機能を搭載している
「モラ」と写真撮影する機能も搭載

ひたすらに質実剛健なゲーミング端末

 本機はゲーミング向け端末としての性能とコストの配分をよく考えられていると感じた。ハードウェアとしては冷却ファンを搭載するなどして強力な冷却性能を持たせ、パフォーマンスの向上とともに、端末への熱伝導を減らして使用感もよくなっている。ファンのノイズはデメリットだが、ゲームの音が出てしまえば全く気になることはない。

 またディスプレイ内蔵型のインカメラにより、ほぼ全面が使えるのも素晴らしい。ゲーム画面がインカメラの切り欠きで塞がれることがなく、あらゆるゲームを快適に表示できるだろう。

 ただそれ以外の部分ではとても保守的で、カクカクしたデザインは実用性一辺倒とも言える。ボディの品質や質感が悪いわけではないので好みの範疇ではあるのだが、Voidカラーの背面のデザインもオモチャっぽさが出てしまい、値段なりの高級感にはつながらないように感じた。

 ソフトウェアの方は、ゲームモードにおける設定の多さや、タッチセンサーによるボタン拡張、マクロ機能など、かなり充実している。またメニューとしても洗練されており、多機能な割に使いやすい。ただメニューや機能解説の日本語が各所で怪しく、機能を理解できないものもある。今後のアップデートで対応が進めばいいのだが、1回試して自分なりに理解する方が早いようにも思う。その手間を惜しまない人にはおすすめできる。

 実際のゲームプレイにおいても、3Dシューティングの「フォートナイト」で十分な処理能力を発揮するとともに発熱はほとんど気にならない。またリアルタイム対戦型カードゲームの「クラッシュ・ロワイヤル」では、タップ抜けもなく位置も正確で、画面端まで精密に操作できる。どのゲームをプレイしても高いレベルで満足できるだろう。

 本機はデザインよりも性能を引き出すための部分に注力しつつ、価格を抑えようとしているのではないか、という印象だ。機能的には何の問題もないので、ひたすらに質実剛健でコストパフォーマンスに優れたハイエンドスマートフォンを求める人には最適と言える。

 高価な製品なりの所有欲を満たすデザインではないが、使用感、特にゲームプレイ感は素晴らしいという、人によって大きく評価が分かれそうな製品である。

性能に全力を注いだような端末。特に小型ファンの効果は絶大だと感じる