Hothotレビュー
トップクラスの性能がリーズナブルに。16型ノートのマウス「DAIV 6P プレミアムモデル」
2022年8月25日 06:33
ゲーミングに並ぶ高い性能がウリのクリエイター向けノートPC。だが、多数のアプリケーションを同時並行で使うことを考えると、むしろゲーミングPCよりリッチなメモリ、ストレージが欲しくなる。たとえばメモリは32GB、ストレージは1TB以上に、とするのが望ましいが、その場合、大幅な価格アップを覚悟しなければならないのが悩ましいところ。
マウスコンピューターの「DAIV 6P プレミアムモデル」(以下DAIV 6P)は、そうしたユーザーにおすすめできそうなクリエイター向け16型ノートPCだ。ハードな用途にも対応するパワフルさを十二分に備えつつも、比較的リーズナブルな価格で手に入るコストパフォーマンスの高いモデルとなっている。直販価格は22万9,900円から。
メモリ32GB、ストレージ1TBのプレミアムなクリエイター向けモデル
クリエイター向けを謳う16型クラスのノートPCの多くは、最近だとスタンダードなモデルがメモリ16GB、内蔵ストレージ512GBで20万円前後から、といったあたりが相場。ただ、ストレージ容量は外部ストレージを活用することである程度カバーできるとしても、クリエイター向けとしてはメモリ容量はもう1段上が欲しい、というのが正直なところではないだろうか。
ところが、メモリを32GB、ストレージを1TB、みたいにアップグレードした上位モデル、もしくはカスタマイズモデルとなると、一気に30万円前後、あるいは40~50万円に値段が跳ね上がることもめずらしくない。そうした本格的なクリエイター向け(ゲーミングも含む)ノートPCは、GeForce RTXシリーズなどのディスクリートGPU(dGPU)が装備され、120Hz以上の高リフレッシュレートディスプレイがセットになっていたりするのも要因だ。
「dGPUなどはなくてもいいが、メモリやストレージはできるだけたくさん欲しい、でもコストは抑えたい」という人はいるはずで、そんなニーズに応えてくれるのがこのDAIV 6Pだ。標準モデルはメモリ16GB、ストレージ512GBで、今回のプレミアムモデルはメモリ32GB、ストレージ1TBにそれぞれ増強されており、にもかかわらず22万9,900円からというリーズナブルな価格設定が魅力の製品となっている。
OSはWindows 11 Homeで、CPUはノートPC向けプロセッサとして高いパフォーマンスを誇る第12世代Core i7-12700H(Alder Lake、14コア20スレッド、最大4.70GHz、Processor Base Power 45W)を搭載し、GPUはCPU内蔵のIris Xe Graphics。メモリはDDR4-3200の32GB、ストレージはNVMe SSD 1TBで、後述のベンチマークから推測するに、今回試用したモデルについてはPCI Express 3.0接続のSSDと思われる。
ディスプレイは非光沢の16型液晶で、解像度はWQXGA(2,560×1,600ドット)と大画面を活かした精細さ。アスペクト比は16:10となっており、一般的な16:9のディスプレイより縦方向に長いことで、動画や写真の編集などにおいても都合のよいサイズとなっている。sRGB比100%という色域の広さについても、画像を扱うクリエイター向けと言えそう。
また、Dolby Atmos対応のステレオスピーカーを内蔵しており、重低音は控えめながらも、動画配信サイトの映画などでは筐体の外側から音が聞こえてくるかのような広がりのあるクリアなサウンドが楽しめる。16型の筐体サイズに見合った音圧も心地良い。
インターフェイス類は左右側面それぞれにUSB Type-C形状のポートが1つずつあり、左側が最大10GbpsのUSB 3.1 Type-C、右側が最大40GbpsのThunderbolt 4ポート。両方ともUSB PDによる給電、およびDisplayPort Alternate Modeによる外部モニター出力に対応し、HDMI出力端子も併用することで、最大3つの外部モニターを使ったマルチモニター環境を構築できる。そのほか、USB 3.0×2、SDカードスロット、ヘッドセット端子も装備する。
無線LANは最大2.4GbpsのWi-Fi 6に対応。有線LANは備えていないが、ネットワーク性能としては十分に高いと言える。デュアルアレイマイクと200万画素のWebカメラを内蔵し、Web会議も問題なくこなせる。サンプル画像をご覧いただくと分かる通り、通常のWeb会議において画質面で不足を感じることはなさそうだ。なお、WebカメラはWindows Helloの顔認証対応で、セキュリティにも配慮されている。
16型でも軽快感。インターフェイスのバランスもよし
実際の使い心地、使い勝手はどうか。まず目を引くのは徹底してシンプルな外観。外側も内側もマットなシルバーで統一され、側面のポート周辺には文字もアイコンもない。ある意味玄人向けな雰囲気を醸し出しているところもクリエイター向けと言えるかもしれない。
マグネシウム合金による筐体は16型ながら約1.49kg(実測1,492g)と重すぎず、厚さも約18.5mmと比較的薄い。B4に近い縦横サイズを考えると、外出時に楽に持ち運べるとまでは言えないものの、薄型のおかげでバッグへの収まりはよく、重量面についても意外なほど軽快感がある。
約12.5時間という長いバッテリ駆動時間(スペックシート値)からも、必ずしも据え置きだけで使うことを前提にしたものではないことが分かる。出先でもその大画面とスタミナを活かしてクリエイティブな作業を効率よく進められるだろうし、オプションで追加できるACアダプタ用のショートケーブル(770円)を用意すれば、モバイル性能は一段と高まる。
タッチパッドは約154×100mm(幅×奥行き)と、パームレストのかなりの部分を占める大サイズで、これは確実に操作性の高さに貢献している。複数本の指で同時に操作するマルチタッチやジェスチャーがしやすい、というのはメーカー側のウリ文句だが、それだけでなく、小さなタッチパッドに比べて相対的に指を動かす距離が大きめになり、その分狙った箇所に正確にポイントしやすいのもいいところだ。
面積が広いことで、たとえばキーボードのタイプ時に誤って手がタッチパッドに当たり、不意にマウスカーソルが動く(フォーカスがほかに移る)可能性が高くなってしまうのでは、と心配するかもしれない。が、そうした問題に関しては、タッチパッドの右半分、または全体を無効にする独自機能で解決している。
タッチパッド左上隅をダブルタップすれば全体の、右上隅をダブルタップすれば右半分の有効/無効が切り替わる。キータイプが作業の中心になるときはぜひとも活用したい。
キーボードはアイソレーションタイプのテンキー付きで、キーピッチ約19mmのフルサイズ。ファンクションキーや一部の特殊キー、修飾キー以外はすべて等ピッチで整然と並んでいるのが好印象。キーは押し込むというより、ゼロかイチかのスイッチ的なフィーリングで、反発力はやや強め。タイプ音は大きくはないものの「コツコツ」という多少のノイズが発生する。なお、キートップには最近のマウスのノートPCで採用されている、視認性を高めたユニバーサルデザインフォントがあしらわれている。
インターフェイス類が左右にバランスよく振り分けられている点も利便性の高さにつながる部分だ。特にDisplayPort Alternate ModeとUSB PDに対応するType-Cポートが左右に1つずつあることで、外部モニター出力や充電をする際、ケーブルの取り回しに悩まなくて済むのは大きい(もちろんUSB PDだけでなくACアダプタでも充電できるのだが)。各所に操作性、利便性への配慮が伺えるのはさすがクリエイター向け、といったところだろうか。
フルサイズのSDカードスロットがあるのもクリエイター的には歓迎したいポイントではないかと思う。が、UHS-I対応ということで、性能は下記にある通りリード/ライト速度ともに100MB/s以下に止まるため、大量の高精細写真を扱うフォトグラファーには物足りないかもしれない。USB 3.1対応の外部カードリーダーを組み合わせたくなる。
少し気になったのは負荷が高まったときの振動だ。負荷がピークに近づくと排熱ファンによるおおよそ0.5秒周期の共振のような微細な振動が筐体全体に発生するため、集中して作業に取り組むときに少し煩わしさを感じてしまう。
とはいえ、ファンノイズや発熱については許容範囲内だろう。底面に設けられた大きな吸気口から背面側に排気する構造のため、熱を持つのはキーボード奥側のみで、使用中に熱さを手に感じることはまずない。ファンの稼働音はやや高周波なノイズが混じり、高負荷時はそれなりに大きくなるものの、安定稼働のためには仕方のないレベルと思える。
Core i9-12900HK搭載モデルを上回る高性能
それではベンチマーク結果を見てみよう。参考までに、以前筆者がレビューした中でサイズ/スペック的に近い「VAIO S15 ALL BLACK EDITION」の値も並べてみることにした。
VAIO S15はCore i9-12900HKかつPCIe 4.0接続のNVMe SSD搭載のため有利なはずだが、実用アプリケーションを模した「PCMark 10」および「PCMark 10 Applications」では、各項目でDAIV 6Pが軒並み上回るスコアを記録している。CPU性能を測る「Cinebench R23」もマルチ/シングルともに凌駕しており、おそらくはマシンの冷却性能の高さが影響していそうな雰囲気だ。
ただ、「3DMark」に関してはDAIV 6Pがさすがに後れを取る形に。同様に「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」も1~2段落ちるスコアとなった。これはメモリのDDR5(VAIO S15)とDDR4(DAIV 6P)の違い、あるいはGPUの最大動作周波数(Core i9は1.45GHz、Core i7は1.40GHz)の違いなどが要因と思われるが、それにしても既存の他社Core i7-12700H搭載モデルと比べてもDAIV 6Pはかなり良好な性能を叩き出していると言っていい。
動画エンコードはDAIV 6Pの方が時間がかかっているとはいえ、RAW画像の現像速度では勝っており、Core i7-12700H(と内蔵GPU)の実力通り、あるいはそれ以上の性能が出ている印象。内蔵SSDのデータ転送速度は「CrystalDiskMark」によるとPCIe 3.0クラスだが、ほかのベンチマークテストの結果を見る限りストレージの速度はあまり気にする部分ではなさそうだ。
低コストで高性能が欲しいクリエイターの、今最も手堅い選択
DAIV 6Pは、dGPUや高リフレッシュレートなディスプレイなど、ややオーバースペックな装備をあえて省き、メモリやストレージの容量を充実させる方向に振った、クリエイター向けとしてはある意味ニッチなノートPCではある。しかし、インターフェイス類をバランスよく配置し、スタミナも含めたモバイル性能もしっかり突き詰めた薄型/軽量な筐体になっているなど、利便性の高さが光る。
それに加えて、Core i7-12700Hを搭載するモデルとしては現状トップクラスの性能を誇る高性能な1台でもあるようだ。おそらくは強力な冷却性能がCPUのポテンシャルを最大限に発揮できるようにしているのだろう。これが23万円を切る価格で手に入るのはありがたい限り。屋内外でクリエイティブな業務をこなす人たちにとっては、DAIV 6Pは低コストで可能な限りのハイパフォーマンスが得られる、今最も手堅い選択かもしれない。