Hothotレビュー

OLED搭載で約10万円。コスパ抜群の2in1 ASUS「Vivobook 13 Slate OLED」

Vivobook 13 Slate OLED

 「Vivobook 13 Slate OLED」は、ASUSが11月に発表したキーボード着脱式2in1タイプのPC。製品名の通り、約13.3型でフルHD(1,920×1,080ドット)の有機EL(OLED)ディスプレイを搭載したモデルだ。

 TVやスマートフォンでは搭載が進んでいるものの、PCでは比較的めずらしいOLEDをディスプレイに採用。さらにDolby Atmos対応のクアッドスピーカー(2W×4)を搭載しており、美しい映像と音質でエンタメコンテンツを楽しめる。キーボードを外せばタブレットにもなり、背面に装着できるスタンドを使って好きな角度で利用できるのも特徴だ。

スタンドとキーボードを装着したところ
折りたたみ時

 上位モデルと下位モデルの2ラインアップ構成で、プロセッサはどちらもPentium Silver N6000、メモリとストレージは上位モデルが8GBメモリと256GB SSD(PCIe 3.0接続)、下位モデルが4GBメモリと128GB eMMCとなる。また、OSはどちらもWindows 11 Homeだが、下位モデルは購入時にSモードが設定されている。

 価格はそれぞれ10万9,800円、9万4,800円と、どちらも10万円前後。Windows PCとしては比較的手頃な価格帯ながらOLEDディスプレイとクアッドスピーカーを搭載し、タブレットしても利用可能で、さらに別売の「ASUS Pen」によるペン入力にも対応するなどコストパフォーマンスの高い端末だ。

【表1】Vivobook 13 Slate OLEDのスペック
モデル名T3300KA-LQ046WT3300KA-LQ049W
CPUPentium Silver N6000(4コア/4スレッド、1.1~3.3GHz)
メモリ4GB8GB
ストレージeMMC 128GBSSD 256GB(PCI Express 3.0 x2)
グラフィックスUHD Graphics(CPU内蔵)
ディスプレイ13.3型OLED(1,920×1,080ドット)
主なインターフェイスUSB 3.1 Type-C×2、microSDXCカードスロット、ヘッドフォン/マイクコンボジャック
通信機能Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1
カメラ前面:491万画素、背面:1,258万画素(オートフォーカス対応)
スピーカークアッドスピーカー(2W×4)
バッテリ駆動時間約13.6時間(本体のみ)、約11.0時間(本体+キーボード)
OSWindows 11 Home(Sモード)Windows 11 Home
付属ソフトWPS Office 2 Standard Edition
本体サイズ
(幅×奥行き×高さ)
309.9×190×8.25mm(本体のみ)
310×190×12.05mm(本体+スタンドカバー)
310×198×17.55mm(本体+キーボード+スタンドカバー)
重量約785g(本体のみ)
約1,066g(本体+スタンドカバー)
約1,385g(本体+キーボード+スタンドカバー)
直販価格9万4,800円10万9,800円

背面スタンドは縦置きも対応。用途に応じて好きなスタイルで利用

 接続インターフェイスは左側面上部に集約されており、ヘッドフォン/マイクコンボジャック、USB 3.1 Type-C×2、microSDXCカードスロットを搭載。USB Type-Cは給電および映像出力に対応しており、付属するUSB Type-CのACアダプタで充電できるほか、65W出力であれば他社のACアダプタでも充電できる。

本体左側面上部にヘッドフォン/マイクコンボジャック、USB 3.1 Type-C×2ポート、microSDXCカードスロット
本体右側面上部には音量ボタン
本体上部右側には電源ボタン
本体背面
付属のUSB Type-C ACアダプタ
アダプタは65W出力

 キーボードとスタンドカバーはどちらもマグネットで本体に装着できる機構で、取り外しは手軽。スタンドカバーは片側が斜めになっており、横置きだけでなく縦置きもできる。

 なお、キーボードはBluetoothではなく本体装着時のみ利用できる。縦置き時に付属キーボードは使えないため、別途Bluetoothキーボードを用意する必要がある。

本体背面に装着するカバー。片側が斜めになっている
斜めの部分を利用して縦置きが可能

 カバーとキーボード装着時は約1.3kgと、13型クラスのノートPCとしては相応の重量だが、キーボードを外してスタンドカバーのみ装着した場合で約1.066kg、本体のみなら約785gまで軽量化が可能。

 重さ重視なら本体のみ、動画鑑賞ならスタンド装着、PCとして作業するならスタンドとキーボード装着など、利用目的にあわせてスタイルを使い分けられるのが着脱式2in1ならではのメリットだ。

OLEDディスプレイとクアッドスピーカーで没入感の高いコンテンツ体験

写真では表現できないが色鮮やかで臨場感の高いディスプレイ

 Vivobook 13 Slate OLED最大の特徴とも言えるOLEDディスプレイとクアッドスピーカーは、コンテンツを楽しむには非常に魅力的。画素密度は166ppiと、最近のPCと比べて決して高い画素密度ではないものの、OLEDディスプレイの鮮やかさはそれを補って余りある美しさだ。

 Netflixなどの動画配信サービスで映画をフルスクリーンで視聴していても、解像度に物足りなさを感じることはなく、映像に集中できた。

 クアッドスピーカーの音質も非常に高い。スマートフォンやタブレットで映像を見るときはどうしても音質に物足りなさを感じてしまうが、Vivobook 13 Slate OLEDのスピーカーはそんな不満を一切感じさせない。映画「TENET」冒頭のシーンも、観客のざわめきや足音、登場人物の声にそれぞれ奥行きが感じられ、2in1とは思えないほどの臨場感だった。

 13.3型の大画面は動画だけでなく電子書籍を楽しむのにも便利。コミックは見開きで単行本のような感覚で楽しめるし、雑誌などといった字が小さい書籍も縦持ちで1ページを1画面に表示すれば読みやすい。動画や音楽、電子書籍といったエンタメコンテンツを楽しむのにとても向いている端末だ。

本体左右に2つずつ、合計4つのスピーカーを搭載
コミックは見開きでも楽しめる(たきりょうこ著「本日のエンジニアさん 家電のスタートアップ企業・カデーニャカンパニー」表紙)

ベンチマークは低めながら実用には十分。キーボードも入力は快適

 ベンチマークはPCMark 10とCinebenchで測定。プロセッサがPentium Silver N6000ということもあってスコアはそこまで高くはないものの、Webブラウザベースの作業であれば性能は十分だ。

【表2】ベンチマーク結果
ベンチマーク項目スコア
PCMark 10 v2.1.2532
PCMark 10 Score2,616
Essentials5,767
App Start-up Score5,541
Video Conferencing Score5,897
Web Browsing Score5,872
Productivity3,870
Spreadsheets Score3,447
Writing Score4,345
Digital Content Creation2,178
Photo Editing Score2,897
Rendering and Visualization Score1,550
Video Editing Score2,302
Cinebench R23.200
CPU(Multi Core)1,712
CPU(Single Core)520

 実際にVivobook 13 Slate OLEDで1日作業をしてみたが、Webブラウザでタブを10個以上開きながらSlackでやりとりするといった使い方であれば、性能に不満を感じることはなかった。

 一方で、Web会議など処理の重いアプリケーションについてはさすがに負荷が高い。3人が参加したZoom会議では、CPU使用率が80%近くに達し、会議しながらWebブラウザで作業しようとすると画面が止まってしまうこともあった。

 また、Zoomで使われるバーチャル背景機能は、必要なスペックを満たしていないためVivobook 13 Slate OLEDでは利用できない。

Zoomのバーチャル背景機能は利用できない

 付属のキーボードはキーピッチが約19mm、キーストロークが約1.4mm。テンキーがなく、キーの大きさは押しやすい。キーストロークも浅めながらしっかりした押しごたえがあり、文字入力は良好だ。タッチパッドも面積が広く、レスポンスもよいため、全体的に使いやすい。

 文字入力はキーボードだけでなくタッチ入力やフリック入力にも対応。キーボードを外してタブレットとして利用する時もスマートフォン感覚で文字入力が可能なため、外出中はキーボードを外してタブレットとして持ち歩き、いざというときはフリックで長文を入力するのも便利だ。

キーボード。横幅が広くキーは押しやすい
10キーのフリック入力も可能

カメラはメモ利用には十分。ペン入力はなめらかで快適

 カメラは前面が491万画素で、背面がオートフォーカス対応の1,258万画素。今時のスマートフォンに比べると画素数は低めで、画質も一昔前のスマートフォン程度といったところ。アプリ自体もタッチからワンテンポ遅れてシャッターが切れたりと、スマートフォンと同じ感覚で使うのは難しい。

 とはいえ、13.3型クラスのWindowsタブレットをスマートフォンのカメラと同じように使う人もそこまでいないだろう。ビジネス文書を写真で撮影しておくメモ的な役割であれば十分な画質だ。

前面カメラは491万画素
背面カメラはオートフォーカス対応の1,258万画素
背面カメラの作例

 前面カメラは約500万画素と、低価格モデルの割には画素数が高めなので、用途として最も多いと思われるWeb会議では重宝するだろう。ただし前述の通り、スペック的にWeb会議とほかの作業を並行しようとすると動作が重くなることは理解しておこう。

前面カメラの画質

 別売のペン操作にも対応。今回は日本未発売の「ASUS Pen 2」を試用した。ASUS Pen 2はUSB Type-C充電が可能で、本体上部に1ボタン、本体側面に2ボタンを搭載。本体上部のボタンで指定したアプリを呼び出せるほか、側面の下ボタンで消しゴム、上ボタンで範囲指定できる。

 4,096筆圧検知に対応しており、書き心地は快適。紙と同じとまではいわないものの、ディスプレイへの手書きとしては十分に応答速度も速く書きやすい。ペン操作が目的のユーザーでも満足できるだろう。

日本未発売の「ASUS Pen 2」。充電用のUSB Type-C変換アダプタが付属
ペンのグリップ部分に上下ボタン
本体上部にもボタン
手書きイメージ

美しいディスプレイとスピーカーが魅力。エンタメ用途に最適の1台

 美しいディスプレイとスピーカー、スタンドとキーボードを好きに組み合わせて利用できる2in1スタイル、4,096筆圧検知と、機能充実のVivobook 13 Slate OLED。特にディスプレイとスピーカーによる没入感はとても高く、レビュー用に映画を視聴していたはずが、気が付いたら夢中になって見てしまっていたほどだ。

 CPU性能はさほど高くはないものの、メールの送受信やオンラインでの文書作成程度であれば問題なく行なえる。Web会議については満足なスペックとは言いがたいが、外出先からスマートフォンで参加するよりはよほど快適だ。

 本格的な業務マシンとしては物足りないかもしれないが、ディスプレイとスピーカーを活用したエンタメ体験がメインで、文書作成などのビジネス用途がサブの役割であれば十分にこなせる。これだけのスペックで10万円程度という価格は、値段以上の価値があるだろう。