Hothotレビュー
トラックポイント付きのThinkPadな「Chromebook」を使ってみた。ペン内蔵で指紋認証対応
2021年4月27日 09:50
レノボ・ジャパンの「ThinkPad C13 Yoga Chromebook」は、名前の通りThinkPad Yogaブランドを冠した初のChromebook。13.3型でフルHD(1,920×1,080ドット)の10点マルチタッチ対応ディスプレイを搭載し、ディスプレイ部分が360度回転するコンバーチブルタイプだ。
最大の特徴は、ThinkPadの象徴でもあるトラックポイントをChromebookで初めて搭載した点。また、指紋認証や本体に収納可能なペンが付属するなど多彩な機能を備えた点も特徴だ。
プロセッサやメモリ、ストレージはモデルによって異なり、上位モデルはプロセッサがRyzen 5 3500C(2.1GHz)、メモリが8GB、ストレージがNVMeの128GB SSD。
下位モデルはプロセッサがAthlon Gold 3150C(2.4GHz)、メモリが4GB、ストレージが64GB eMMCで、下位モデルはペンが付属しないモデル、ペンおよび指紋認証に非対応のモデルも選択できる。
本体サイズは約307.56×212.1×15.5~17.9mm(幅×奥行×高)、重量は約1.497kg。サイズ感は一般的な13型のノートPC相当だが、20mm以下の薄さに対して重量は1.5kg近いため、手に持つとかなりずっしりとした重さを感じる。
本体左側面にはUSB Type-C 3.1、USB 3.1×2ポート、3.5mmオーディオジャック、microSDカードスロット、右側面はUSB Type-C 3.1、HDMIポート、音量ボタン、電源ボタンを備えるほか、スピーカーが左右側面に配されている。
ディスプレイ上部には92万画素のカメラ、キーボード上部には500万画素のカメラを搭載。キーボード側のカメラはディスプレイを回転してタブレット状態にすると背面カメラとして利用できる。また、前面カメラの上部にはスイッチをスライドすることで物理的にカメラを覆ってオフにできる「ThinkShutter」が用意されている。
通信面ではWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.0を搭載。センサーは加速度センサーを搭載し、GPSには非対応。
なお、レノボ・ジャパンによると、現在需要調整中のため、一般向けのWeb販売を中止しているとのことで、法人向けに代理店経由での販売のみになっているそうだ。一般への販売時期は未定という。
以下のスペック表は法人向けモデルのもので、今回はそのなかでも最上位の「20UX0006JP」をレビューしている。なお、表に掲載している製品の価格も法人向け価格なので、一般販売がはじまった場合の価格と異なる可能性があることに注意したい。
モデル名 | 20UX0006JP | 20UX0004JP | 20UX0005JP | 20UX000JJP | |
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CPU | Ryzen 3500C(4コア、2.1GHz) | Athlon Gold 3150C(2コア、2.4GHz) | |||
GPU | Radeon Graphics | ||||
メモリ | DDR4-3200 8GB | DDR4-3200 4GB | |||
ストレージ | NVMe SSD 128GB | eMMC 64GB | |||
ディスプレイ | 13.3型IPS液晶、タッチ操作対応 | ||||
解像度 | 1,920×1,080ドット | ||||
OS | Chrome OS | ||||
バッテリ駆動時間 | 約10.3時間 | 約12.5時間 | |||
汎用ポート | USB 3.1 Type-C×2(DisplayPort対応)、USB 3.0×2 | ||||
カードリーダ | microSDカードスロット | ||||
映像出力 | USB Type-C×2 | ||||
無線機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0 | ||||
Webカメラ | 前面92万画素、背面500万画素(ThinkShutter付き) | ||||
セキュリティ | 顔認証センサー | なし | |||
その他 | ステレオスピーカー、デジタルマイク、音声入出力端子 | ||||
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 約307.56×212.1×15.5~17.9mm | ||||
重量 | 約1.497kg | ||||
価格 | 13万4,000円(税別) | 10万3,000円(税別) | 9万9,000円(税別) | 9万8,000円(税別) |
トラックポイントでキーボード操作を効率化
本機の特徴であるトラックポイントは、マウスやトラックパッドのようにカーソルを操作できるThinkPadシリーズの代表的な機能。キーボードの中央に配されているため、カーソル操作のために手を移動する必要がなく、効率の良い作業が可能だ。
キーボードの下には左右ボタンのほかにセンターボタンを搭載。トラックポイントと同様、キーボードから手を動かすことなく右クリック、左クリック操作が可能になっている。
センターボタンはマウスホイールのスクロール機能を代替しており、センターボタンを押しながらトラックポイントを動かすことで画面を上下にスクロールできる。
ThinkPadシリーズ唯一無二の機能であり、熱烈なファンも多いトラックポイント。これが搭載されているというだけで本機購入の決め手になるというユーザーも多いだろう。作業の効率を高めたいという人には非常に魅力的な機能だ。
作業効率をさらに高める指紋認証センサーと内蔵ペン
キーボード右下に配された指紋認証センサーも作業効率の向上に重要な役割を果たしている。
Chromebookのログインはパスワードや6桁のPINを入力するか、連携設定したAndroidのロックを解除することでChromebookにログインできる「SmartLock」といった機能が用意されている。しかし、スマートフォンの指紋認証や顔認証に慣れていると、これらのログイン方法はどうしても手間に感じてしまう。
その点指紋認証センサーはスリープ状態でセンサーをタッチするだけでスリープを解除してログインできるため、ログイン操作のストレスを感じることなく作業を開始できるのが魅力だ。
ディスプレイを回転したタブレット状態でも指紋認証は利用可能だが、ディスプレイを見たままセンサーを触るのは多少慣れが必要だ。また、電源オフから起動した場合には指紋認証は利用できず、初回のみパスワードの入力が必要になる。
本体右下に収納できる「Lenovo USI Pen」は4,096段階の筆圧検知に対応。ペンを取り出すと自動で「タッチペン ツール」が立ち上がり、画面キャプチャやメモ作成、レーザーポインタ、拡大機能などペンで利用できる機能をすぐに呼び出せる。
Chromebookのペン対応モデルによってはディスプレイ側にペンを収納するモデルもあるが、キーボード側にペンがあると作業したいときにさっと取り出しやすい。細かいながらこの配置も作業効率を高められる一因だ。
PC相当のプロセッサや4K出力対応で快適な操作。キーボードも操作感は良好
Google Octane 2.0で測定したベンチマークテストの結果は23,116、アプリ「GeekBench 5」のスコアはシングルコアが606、マルチコアが2,631。同じレノボのキーボード着脱型Chromebook「Lenovo IdeaPad Duet」と比較して倍以上のスコアだ。
実際の操作も非常に快適。Lenovo IdeaPad Duetではタブを多数開いたときに感じられた多少のもたつきもほとんどなく、Chromeブラウザを使用しているかぎりはハイエンドのPCと比べてもほぼ遜色ないレスポンスで操作できる。
キーボードの打鍵感は好みの分かれるところではあるものの、キーピッチも広く非常に打ちやすい。バックライトも搭載しているので暗い場所で操作するときにも便利だ。筆者は普段PC用にロジクールのMX Keysを利用しているのだが、本機のキーボードはMX Keysと同等に近い快適さで文字入力が可能だった。
外部ディスプレイ出力はHDMIとUSB Type-Cどちらも可能で、最大3,840×2,160ドットの4K出力に対応。自宅の4Kディスプレイに接続して作業したところ、ほとんどPCと遜色ない感覚で作業できた。「Alt+[」、「Alt+@」操作でウィンドウを左右に固定できるキーボードショットカットを組み合わせると、よりウィンドウを効率的に操作できる。
Google Play Storeを搭載しているためAndroidアプリも利用可能。DropboxやOneDriveアプリをインストールすれば、クラウドストレージに保存したファイルをChromebookで開くことも可能だ。
なお、Androidアプリは完全な互換性があるわけではなく、正常に動作しないアプリもある。また、ATOKなどのIMEアプリについては、物理キーボード利用時には選択できないといった制限もあるため、Androidはあくまで補助的な役割と捉えておいたほうがいい。
とは言えSlackやTypetalk、ChatWorkといったコミュニケーションアプリや、電子書籍、動画アプリも人気のアプリはほぼ動作する。以前に別の端末で試用したときは動画が再生できなかったHuluも、今回試したところ問題なく再生できており、Chromebookへの対応も徐々に進んでいるようだ。
どうしても使いたいAndroidアプリがある場合は事前に調査する必要はあるものの、ブラウザだけでなくAndroidアプリも併用できるのは非常に便利だ。
前面カメラを物理的に隠せる「ThinkShutter」搭載。バッテリは10時間駆動
カメラは前述の通りディスプレイ上部とキーボード上部に配されており、ディスプレイ上部のカメラはWeb会議などの自撮り用に、キーボード上部のカメラはディスプレイ部を折り返してタブレット形状で利用するときに背面カメラとして利用できる。
背面カメラの性能はそれほど高くなく、オート設定では写真がやや青めに写ったり、夜間ではライトが飛んでしまったりと、スマートフォンのカメラ感覚で使うには厳しい。また、本体が約1.5kgあるため、写真を撮るために本体を固定するのも一苦労だ。基本的には書類などのメモ用途がいいだろう。
前面カメラも画質は90万画素程度だが、ZoomなどのWeb会議などで使う分には十分だ。また、物理的にカメラをオフにできる「ThinkShutter」も、Web会議の機能でオフにしていたつもりが実は自分が映っていた、というトラブルを避けるためにもうれしい機能だ。
ただ、スライドは隙間に爪を差し込んで動かすような機構になっていて、突起もないためやや動かしにくく、とっさに動かすにはやや慣れが必要かもしれない。
バッテリはディスプレイの輝度を半分にした状態でYouTubeを連続再生したところ、10時間で空になった。約10.3時間という公称スペックとほぼ同じ数値だ。
トラックポイントや指紋認証、ペンなど多彩な魅力。本体重量は取り回しに注意
ThinkPadシリーズで人気のトラックポイントや指紋認証、取り出しやすいペンなど、作業効率を高めるための機能が充実した本機。PC相当のプロセッサを搭載しているため動作も快適で、USBポートやHDMIなどインターフェイスも充実しているため拡張性も高い。Chromebookに効率や性能を求める人には最適の1台だろう。
一方で重量が約1.5kg近く、片手はもちろん両手で持つにもずっしりと重さを感じるため、タブレットとして使うのは厳しいと感じた。基本的にはPCのクラムシェルスタイルで使いつつ、タッチ操作を使う時もテーブルの上に置いた状態での操作がメインになるだろう。