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JeSU公認ゲーミングPC「G-Tune HN-ZJ」。大容量メモリやメンテナンス性に優れる1台

JeSU公認のeスポーツ向けマシン

G-Tune HN-ZJ

 マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」より、ミドルタワー型ゲーミングPC「G-Tune HN-ZJ」が発売された。

 本機は一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)の公認PCとして展開されている。JeSUは日本のeスポーツ選手に公認プロライセンスを発給することで、eスポーツ大会の賞金にかかる種々の法的問題をクリアにしようと取り組んでいることで知られ、「ストリートファイターV チャンピオンエディション」や「eFootball ウイニングイレブン」、「ぷよぷよ」など15のタイトルでライセンスを認定している(2021年3月1日時点)。

 JeSUは本機について、「JeSUが今後主催するeスポーツ大会では公認PCを使用していく」と発表している。本機がJeSUの認定タイトルの動作を保証する、とまでは明言されていないものの、少なくとも認定タイトルをプレイするのに支障のないスペックであることは確かだ。

大容量メモリとSSD搭載、HDDは非搭載の割り切った構成

 「G-Tune HN-ZJ」のスペックは下記のとおり。

【表1】G-Tune HN-ZJ
CPUCore i7-11700K(8コア/16スレッド、3.6~5GHz)
チップセットIntel Z590(ATX)
GPUGeForce RTX 3070(8GB)
メモリ32GB DDR4-3200(16GB×2)
SSD1TB(M.2 NVMe)
HDDなし
光学ドライブなし
電源700W(80PLUS BRONZE)
OSWindows 10 Home 64bit
汎用ポートUSB 3.2 Type-C、USB 3.0×9、USB 2.0×2
カードスロットSD
映像出力HDMI、DisplayPort×3
有線LAN2.5GBASE-T
無線機能Wi-Fi 6、Bluetooth 5
その他音声入出力、S/PDIF端子など
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)約210×521×426mm
重量約12.2kg
価格24万1,780円

 本機は「G-Tune HNシリーズ」としてラインナップされるモデルの1つだが、同シリーズのなかでもほかとは少し違ったスペックを有している。

 まずCPUは第11世代Coreプロセッサ(Rocket Lake-S)のCore i7-11700Kを採用する。GPUはGeForce RTX 3070で、いずれも最新のものとなる。

 メインメモリは32GB、SSDはM.2 NVMe接続の1TBといずれも大容量。eスポーツ用途だけあって、いかなるタイトルも安定かつ快適に動作させようという意図が感じられる。HDDや光学ドライブを搭載しないのも、eスポーツ用途に割り切った仕様だ。ちなみにHDDや光学ドライブはカスタマイズで追加できる。

 ネットワーク関係では、有線LANが2.5GBASE-T、無線LANもWi-Fi 6を標準搭載している。1作品で100GBを超えるゲームも現れている昨今、ネットワークの高速化はゲーマーの注目ポイントの1つだ。また最大2.4GbpsのWi-Fi 6は、eスポーツの競技時にはおそらく使われないが(電波の混雑のみならず、悪意ある電波妨害が発生しかねない)、普段使いでは重宝するだろう。

 このほかCPUクーラーには水冷を採用。ラジエータは120mmの簡易的なものだが、それでも空冷よりは安定した冷却性能を期待できる。

最新世代のCPUが高性能を発揮

 次は実機を使ってベンチマークテストを行なう。利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2508」、「3DMark v2.17.7137」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Cinebench R23」、「CrystalDiskMark 8.0.1」。

【表2】ベンチマークスコア
PCMark 10 v2.1.2508
PCMark 107,792
Essentials10,791
Apps Start-up score16,175
Video Conferencing Score7,644
Web Browsing Score10,163
Productivity9,730
Spreadsheets Score11,716
Writing Score8,081
Digital Content Creation12,227
Photo Editing Score16,254
Rendering and Visualization Score17,004
Video Editing Score6,614
3DMark v2.17.7137 - Time Spy
Score13,188
Graphics score13,463
CPU score11,825
3DMark v2.17.7137 - Port Royal
Score8,134
3DMark v2.17.7137 - Fire Strike
Score25,051
Graphics score32,690
Physics score26,995
Combined score8,764
3DMark v2.17.7137 - Wild Life
Score69,919
3DMark v2.17.7137 - Night Raid
Score67,596
Graphics score133,339
CPU score17,817
VRMark v1.3.2020 - Orange Room
Score14,713
Average frame rate320.75FPS
VRMark v1.3.2020 - Cyan Room
Score12,668
Average frame rate276.17FPS
VRMark v1.3.2020 - Blue Room
Score4,035
Average frame rate87.97FPS
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(高品質)
3,840×2,160ドット5,572
1,920×1,080ドット12,241
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(最高品質)
3,840×2,160ドット10,739
1,920×1,080ドット21,411
Cinebench R23
CPU(Multi Core)14,129pts
CPU(Single Core)1,596pts

 ベンチマークテストの結果で目を引くのは「Cinebench R23」。シングルコア・マルチコアとも、第10世代Coreプロセッサと比べて大幅に性能が向上している。最近はAMDのRyzenシリーズに押されっぱなしという印象だったが、今はかなり拮抗した状態になっている。

 高速なCPUの下支えもあり、グラフィックス関連のテスト結果も良好。「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」では、4Kの高品質でも「やや快適」の評価で実用レベル。「VRMark」ではもっとも処理が重い「Blue Room」で90fps近い平均フレームレートが出ており、VR用途としてはほぼ満点の性能と言える。

 ストレージは、SSDはMicron製「2210」が使われていた。QLC NANDを採用した低コストモデルで、eスポーツやゲーミング用途としてはどうなのかという声も出そうだが、実際にはシーケンシャルリード・ライトとも約2GB/sで、ランダムアクセスも十分に速い。実用上は何ら問題を感じることはないだろう。

Micron製SSD「2210」

ほぼ空洞の底面で潤沢なエアフローを作り出す

 続いては実機を見ていきたい。ケースは「G-Tune」ではおなじみのミドルタワーケースで、背面までオールブラックで統一されている。正面パネルが下に向かってへこむように傾斜するのが特徴で、他には電源投入時に赤く光るロゴがある程度。全体としてはひかえめな装飾で、eスポーツ用と言っても何か特別な仕掛けがあるわけではない。

正面は下向きにくぼむような傾斜がある
左側面は穴はなく一枚板の状態
右側面にはハニカム形状の穴がある
背面もほぼ全面ブラックで統一されている

 USBやヘッドフォン等の端子は天面右側に配置されている。ヘッドフォンとマイクの端子が少し奥側に配置されているので、机の下などにPCを設置する人はケーブルの抜き差しを考慮して配置場所を決めるほうがいい。

 ほかにはHDMI端子も用意されているが、背面に収納されているHDMIケーブルをビデオカードのHDMI端子に挿入することで、天面のHDMI端子が使える(HDMIを延長している)仕組みになっている。

 PC内部の空気の出入りは、左側面に広く取られたハニカム形状の穴と、底面のメッシュ部分、および背面となる。正面や右側面、天面は閉じているので、エアフローはかなり明確な設計だ。

天面はほぼフラット。右側の奥に向かって端子類が並ぶ

 騒音については、アイドル時は低い風切り音が少し聞こえる程度で、静かなオフィスで使用しても何ら問題ない程度。高負荷になると、音質は変わらないまま音量がじょじょに上がっていく。

 水冷なので音の変化はゆっくりとしており、不快感が小さい。負荷をかけはじめて数分経つと高めの音もわずかに混じるものの、ゲームの音を出してしまえばまぎれる程度だ。

 またビデオカードのファンノイズはCPUに比べるとひかえ目で、PC全体としては高負荷でもかなり静かな部類だ。CPUに水冷ファンを採用していること、ミドルタワーケースで内部に余裕があること、ビデオカード自体の騒音レベルが抑えらえていることなど、ポジティブな要因が重なっていると感じる。

底面は広くメッシュになっている

 続いて内部を見ていく。左側面パネルを外して内部を見ると、なかなかおもしろいエアフローになっていた。

 まずCPUの水冷ラジエータは背面のケースファン位置に取りつけられており、背面に排気している。ビデオカードのファンは下向きのデュアルファンが吸気し、背面とケース内の前面方向の2方向に排気する。このケース内に出た排気は、右側面パネルに取りつけられた2つの12cmファンでケース外へと排気される。また背面上部に設置された電源も背面から排気している。

左側面パネルを外したところ。なかはかなりすっきりしている
CPUは水冷で、すぐ近くの背面にラジエータが固定されている

 積極的に吸気するケースファンは見当たらない。つまりCPUのラジエータのファンと右側面のケースファン、電源のファンが、いずれも排気で、吸気は底面のみに頼っている。底面はほぼ全面にわたりハニカム形状の穴が空けられており、ほぼ空洞の状態。

 これなら強いて吸気用のファンを用意せずとも十分に外気を取り入れられる。空気は暖かいほど軽くなるので、底面から冷気を取り入れるのも理にかなっている。

試用機のビデオカードはデュアルファン仕様のMSI製だったが、販売時期によって異なる可能性がある
右側面に取りつけられた2基のケースファンは排気用
底面のメッシュフィルタはマグネット式で簡単に取り外せ、水洗いもできる

 底面には水洗いも可能なマグネット式のダストフィルタが取りつけられており、掃除も簡単。PC内部の底面にはホコリがたまりがちだが、ほぼ全面が穴状態なので、フィルタを洗えば底面の内外にたまるホコリの大部分が掃除できるわけだ。エアフローだけでなくメンテナンス的にも優れていると感じる。

 配線も無駄なく、内部はとてもすっきりとしている。空間がありすぎて無駄に感じるほどだが、eスポーツ向けにあらゆる環境で安定動作を目指すなら、このくらいの余裕はあってもいいだろう。

ストレージはM.2のみだが、3.5/2.5インチ兼用のスライド式ドライブベイも2基備える
右側面パネルを外すと、丁寧な裏面配線が見える。マザーボード裏には2.5インチベイが3つ用意されている

eスポーツの現場で安定動作

ゲーミングPCとして安定性も期待できるシンプル&ハイパワーマシン

 最近はGPUがあまりの品薄で価格が暴騰し、定価があってないような状態だけに、ゲーミングPCの価格付けも非常に難しいと思われる。そんななか、最新のCPUを採用し、大容量のメモリとNVMe SSDを搭載しているわりには、価格はかなりがんばっているほうだ。簡易水冷も採用したゲーミングPCとして、コストパフォーマンスで競える製品だと思う。

 製品自体の品質も申し分ない。eスポーツを意識したと思われる丁寧なエアフローや良好なメンテナンス性は、個人のPCゲームユーザーにとっても十分に魅力的だ。ストレージに物足りなさがあるならカスタマイズも可能なので、好みのゲーミングPCを作るベースモデルとしても優れている。

 JeSU公認PCであることに個人のゲームユーザーが魅力を見出すのは少々難しいが、先々いろいろなゲームタイトルを遊びたいと思っていて、どのPCがいいのかと悩んだときに、間違いのない無難な選択肢にはなるだろう。ことに公認大会で使用するというのだから、安定動作にはとくに気を使っているはず。それは実際の製品を見ても間違いないと感じる。

 ミドルタワーでサイズや重量はそれなりにあるので、設置場所はあらかじめ想定しておくほうがいい。そこさえクリアできれば、とくにeスポーツ向けと気張る必要もなく、むしろPCゲーム初心者にも安心してすすめられる1台と言える。