Hothotレビュー
液晶裏に組み込めば一体型PCに変身。超小型でCore i搭載の「MousePro M」を試す
2020年2月18日 11:00
ビジネス向けの「デスクトップPC」というと、机の下に置く大きめな「タワー型」や、作業机の上に置いて使う縦長で細い「スリム型」を思い浮かべるユーザーは多いだろう。しかし最近は、非常にコンパクトな筐体を採用するモデルも増えてきた。株式会社マウスコンピューターが2月6日に発表した「MousePro M600」もその1つである。
手のひらに載る程度のサイズながら、4コア8スレッド対応の高性能CPUや大容量ストレージを搭載でき、Windows 10を快適に利用できる。また付属のVESAマウンタを利用して液晶ディスプレイの裏に固定し、液晶一体型PCのようなすっきりとしたスタイルで利用することも可能だ。今回はこの超小型PCの実力に迫ってみる。
Blu-rayビデオのパッケージに近いサイズ感
MousePro M600は、マウスコンピューターの企業向けデスクトップPCで、“MousePro Mシリーズ”に属する製品だ。企業向けではあるが、個人ユーザーでも購入は可能。搭載CPUが異なる3つのベースモデルを用意するほか、メモリやストレージの容量などを変更できるBTOメニューを利用して、自分の好みの構成で購入できる。
今回はCore i5を搭載する「MousePro-M600H」をベースに、メモリを16GB、ストレージを512GBに増設したカスタマイズモデルを試用した。
型番 | MousePro M600H | MousePro M600H-1911 | MousePro M600H-MSD | MousePro M600H-A |
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OS | Windows 10 Pro 64bit | |||
Microsoft Office | - | Microsoft Office Personal 2019 | ||
CPU | Core i5-8265U(4コア/8スレッド、1.6~3.9GHz、UHD Graphics 620) | |||
メモリ | DDR4-2400 SDRAM 8GB | DDR4-2400 SDRAM 16GB | DDR4-2400 SDRAM 8GB | |
ストレージ | SATA SSD 256GB | SATA SSD 512GB | SATA SSD 256GB SATA SSD 480GB | SATA SSD 256GB |
通信 | IEEE 802.11ax、Bluetooth v5.0 | |||
主なインターフェイス | USB 3.1(Type-C)、USB 3.0×4、USB 2.0×2、SDカードスロット、HDMI、ヘッドフォン/マイク端子 | |||
入力機器 | 日本語キーボード、USB光学マウス | |||
カメラ | なし | |||
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 28×150×194mm | |||
重量 | 約590g | 約600g | 約650g | 約590g |
税別/送料別直販価格 | 89,800円 | 94,800円(直販限定) | 96,800円 | 109,800円 |
【13時26分訂正】記事初出時、古いモデルの価格を掲載しておりました。お詫びして訂正します。
メーカーから届いた箱からPCを取り出すと、そのサイズ感に驚く。横から見ると幅28mm、奥行き150mm、高さ194mmであり、男性なら手のひらを大きく広げたところに載せるとピッタリといったところだ。
タワー型はもちろん、スリム型と比べても圧倒的に小さく、机の上に置いてもジャマにならない。サイズ的な目安としては、Blu-rayビデオのパッケージをひとまわり大きくした程度と考えるとわかりやすいだろう。
筐体はプラスチック製だが、ステンレスのヘアライン加工に似たマットな仕上げが施されており、いわゆるプラスチッキーなテカテカ感はない。ただ、前面に合計4基のUSBポートやSDカードスロット、Type-Cコネクタなどを備えており、ゴチャゴチャした印象はある。
筐体が小型で机の上に置いて使うPCなので、背面のポートを使う場合でもそれほど苦労はしないはずだ。コンパクトなので背面にそれほど多くのポートを搭載できないという事情はあるにせよ、デザインを考えるなら前面はもうちょっとすっきりした構成でもよかった気はした。
背面にはミニD-Sub15ピンやHDMIといったディスプレイ出力端子、そしてUSB 3.0ポートやLANポートなどを搭載する。
【15時37分訂正】記事初出時、HDMI出力は4K時60Hzに対応するとしておりましたが、マウスより30Hzに訂正されたため、記述を削除しました。
天板には、CPUクーラーの排気を誘導するためのスリットが設けられている。後述する内部構造から考えると、底面のメッシュ部分から給気して天板方向に排気するというエアフローになっていることが予想されるため、設置時は底面と天板はふさがないように注意したい。
底面には吸気口のほか、スタンドの取り付けやVESAマウンタへの固定で使うネジ穴がある。接地面が広いスタンドを取りつけることで縦置きしたときの安定感が格段に高まるほか、吸気口をふさがずに利用できるようになるため、常用する場合はスタンドをつけたほうがよいだろう。
液晶ディスプレイ裏に取りつけて利用可能
MousePro Mには、標準でVESAマウンタが付属している。ここでは、VESAマウントを装備するマウスコンピューターの液晶ディスプレイ「ProLite E2483HSU-5」を利用し、MousePro M600を液晶ディスプレイの裏に取りつけて利用できるようにするまでの手順を紹介しよう。
ProLite E2483HSU-5の背面を見ると、間隔が100mmのVESAマウント固定穴がある。ここにMousePro M600のVESAマウンタをネジ止めする。VESAマウンタ側には、穴と穴の間隔が75mmとよりせまいネジ穴もある。もっと小さなサイズの液晶ディスプレイの場合は、こちらを使う場合もある。
VESAマウンタを液晶ディスプレイに取りつけたら、側面からMousePro M600を差し込み、底面のスタンド固定穴を使ってVESAマウンタに固定する。これで固定作業は終了だ。
可能ならばディスプレイケーブルは20cmくらいの短いものにすると、ジャマになりにくい。またこのスタイルで利用するなら、マウスやキーボードもワイヤレスタイプに切り換えるほうが使いやすいだろう。
VESAマウンタにはにはポートを接続したり、上下の通風口への空気の流れを阻害しないためのスペースが設けられている。またPC本体も単に挿し込むだけではなく、ネジ穴でVESAマウンタに固定するため、揺れたときにすっぽ抜けて落ちることはない。
安定性という意味では、液晶パネル部分がぐらつくかどうかも気になるユーザーは多いだろう。ProLite E2483HSU-5の重さは3.4kgで、今回試用したMousePro M600は約590g(本体のみ)。実際に取りつけてみた感触としては、上下にチルトしたさいに大きく揺らぐことはないし、MousePro Mの重さでパネルが背面側に倒れてしまうこともなかった。
メモリや2.5インチストレージの換装はしやすい
側板のカバーを固定している細い4本のネジを外すと、内部にアクセスできる。コンパクトな基板上には、各種インターフェイスポートのほか、CPUやCPUクーラー、SO-DIMM用のメモリスロット、ストレージなどが見える。メモリを換装したり、2.5インチタイプのSSDやHDDを増設するのは難しい作業ではない。
基板の裏側を覗いてみると、M.2スロットとそこに組み込まれているM.2対応SSDが見えた。ただ、こちらの基板が固定されているカバーは、ネジ以外にも何か強いフックで固定されているらしく、今回は外せなかった。M.2対応SSDの換装は難しそうだ。
ノートPC向けの省エネCPU搭載、軽作業ならほぼ無音
今回試用したモデルでは、CPUとして「Core i5-8265U」を搭載する。コードネーム「Whiskey Lake」と呼ばれていた、第8世代のノートPC向けCore i5だ。ミドルレンジの薄型モバイルノートPCで採用例が多い。
Core i5-8265Uは4コア8スレッド対応で、動作周波数は1.6GHz(Turbo Boost時は最大3.9GHz)。現行のデスクトップPC向けCore i5シリーズと比べると、コア数が少なく動作クロックが低いこともあり、性能は少し低くなる。おもなベンチマークテストでの検証結果は下記のとおりだ。
【表2】ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 Extended v2.0.2144 | |
PCMark 10 Extended score | 2,707 |
Essentials | 8,117 |
App Start-up score | 10,141 |
Video Conferencing score | 6,861 |
Web Browsing score | 7,687 |
Productivity | 6,121 |
Spreadsheets score | 7,130 |
Writing score | 5,255 |
Digital Content Creation | 2,914 |
Photo Editing score | 3,460 |
Rendering and Visualization score | 1,862 |
Video Editting score | 3,842 |
Gaming | 1,003 |
Graphics score | 1,318 |
Physics score | 9,043 |
Combined score | 408 |
3DMark v2.11.6846 | |
Time Spy | 462 |
Fire Strike | 1,188 |
Sky Diver | 4,734 |
CINEBENCH R20.0 | |
CPU | 1153cb |
CPU(Single Core) | 388cb |
CINEBENCH R15.0 | |
CPU | 533cb |
CPU(Single Core) | 165cb |
CrystalDiskMark 7.0.0g | |
Q8T1 シーケンシャルリード | 559.98 MB/s |
Q8T1 シーケンシャルライト | 520.11 MB/s |
Q1T1 シーケンシャルリード | 478.44 MB/s |
Q1T1 シーケンシャルライト | 414.14 MB/s |
Q32T16 4Kランダムリード | 403.65 MB/s |
Q32T16 4K ランダムライト | 358.38 MB/s |
Q1T1 4Kランダムリード | 22.54 MB/s |
Q1T1 4K ランダムライト | 81.62 MB/s |
TMPGEnc Video Mastering Works 7 ※解像度1,920×1,080ドットでビットレート15~16Mbps、約3分の動画を、H264/AVCとH.265/HEVC形式で圧縮、パラメータは標準のまま変更なし | |
H.264/AVC | 7分32秒 |
H.264/AVC(Quick Sync Video有効) | 1分 |
H.265/HEVC | 12分49秒 |
H265/HEVC(Quick Sync Video有効) | 1分35秒 |
ただノートPC用のCPUを利用しているため、システム全体の消費電力は低くなる。実際に計測してみると、アイドル時は何と7~8Wだった。今回の原稿を書いたり、調べ物をするためにEdgeを使ってWebブラウズなどの軽作業を行なってみたが、このときの消費電力はおおむね13~16W。
さらにCPU性能をフルに利用したテストを行なう「CINEBENCH R20」を実行しても、平均的な消費電力は26W前後だった。一般的なデスクトップPCでは、CPU内蔵GPUを利用するタイプでもアイドル時は25~30Wが普通であることを考えると、かなりの省エネPCと言える。
CPUファンの動作音は、アイドル時や軽作業中はほぼ無音と言ってよい状態だ。ただ、各種ベンチマークテストなどに代表されるCPUに重い負荷がかかる作業がはじまると、「フォーン」という風切り音が天板の排気口から聞こえてくる。
アイドル時のCPU温度はおおむね30℃前後だが、CINEBENCH R20を実行中は60~65℃の範囲で推移した。70℃を超えるとCPUファンの音はそれなりに大きくなってくるが、頻度はさほどでもないので気にするようなレベルではない。ベンチマークテストが終了すれば、ファンの回転音はすぐに小さくなる。
基本パーツの構成がモバイルノートPCとほぼ同じということもあり、使用感も似ている。Windows 10の応答やウィンドウの表示、アプリの操作感はキビキビとしており、もたつく場面はなかった。動画のエンコードなどのように高いCPU性能を必要とする作業には向かないが、一般的な軽作業が主体なら、十分以上の使い勝手と言ってよいだろう。
シンプルな軽作業が主体の企業ユーザーはもちろん、ホームユースにも向いた汎用性の高いPCだ。たとえば、ノートPCが搭載する小さなディスプレイや打ちにくいキーボードにはがまんできないのでデスクトップPCを使いたいが、どでかいタワー型を置くのはちょっと、というユーザーにはピッタリの選択肢と言える。“小さいPCは非力”というのは、もはや過去の話なのだ。