Hothotレビュー

台湾でXiaomiのフラグシップスマホ「Mi MIX 2S」を試してきた

Mi MIX 2S

 Xiaomiは3月にフラグシップスマートフォン「Mi MIX 2S」を発表。同月より出荷開始した。同機は中国国内向けモデルのみならず、グローバル版も展開しており、海外の通販などを通して購入することができる。

 今回、Gearbestの提供により1台入手できたので、台湾/台北で開かれたCOMPUTEX期間中に試してきた。なお、本製品はほかのXiaomi製品と同様、日本国内でWi-FiやBluetoothを含む無線機能を合法的に使用するための技適を取得していないので、無線通信に関わる部分は台湾で、それ以外は電波が出ないフライトモードに設定した上で試している。

早い段階でSnapdragon 845を搭載して出荷

 Xiaomiは日本国内でスマートフォン製品を展開していないので、日本国内のユーザーにとってXiaomiは「中国スマートフォンメーカーの1つ」だとして認識されているが、グローバルで見れば、HuaweiとOPPOに次ぐシェア5位(2017年通期)となっており、そのため強い部材調達力を誇る。

 スマートフォン市場シェアの1位はSamsung、2位はApple、3位はHuaweiなのだが、この3社ともに自社でスマートフォン向けプロセッサを開発する能力を有している。その一方で、4位OPPOと5位Xiaomiのプロセッサは、基本的にQualcommもしくはMediaTekからの調達に頼っている。

 Xiaomiは傘下にプロセッサ開発を行なう企業「松果」を有しているが、いまのところ2017年2月に発表した「澎湃S1」以外、大きな成果を挙げておらず、2018年現在、プロセッサはおもにQualcommとMediaTekから調達している。ただ、Xiaomiは市場規模が大きいだけに、QualcommとMediaTekは“かなり優先的に”Xiaomiへプロセッサの出荷を行なっているとみられる。

 その現れの1つが、Xiaomiが比較的早くSnapdragon 845搭載機を出荷できている点。スマートフォン向けハイエンドSoCの場合、出荷できる量がある程度限られており、メーカーとして数の確保がなかなか難しい。Snapdragon 845を搭載したスマートフォンとしてもっとも早く発表されたのがSamsungの「Galaxy S9+」とソニーモバイルの「Xperia XZ2」であったが、Mi MIX 2Sはそこからわずか1カ月遅れで発表。そして中国国内では、4月3日にも販売開始にこぎつけている。

 2つめは、QualcommもMediaTekも、Xiaomi向けにプロセッサをあつらえている点だ。たとえば、Snapdragon 710とHelio A22は、Xiaomiの要望により共同で開発して生まれたプロセッサであるという(それぞれMi 8 SEとRedmi 6Aに搭載)。これらのモデルは、もちろんほかのメーカーにも採用する権利があるのだが、Xiaomiが優先的に出荷を割り当てられている。

 そんなわけで、Mi MIX 2Sが比較的早くSnapdragon 845を採用しているのは、XiaomiとQualcommが密な関係にあるからこそだと言えるだろう。

 さてそんなSnapdragon 845だが、2016年末に発表したSnapdragon 835からCPU/GPUともに強化されているのがトピック。CPUにはKryo 385を8コア搭載し、big側はCortex-A75がベースで最大2.8GHz、LITTLE側はCortex-A55ベースで最大1.8GHzで動作。性能はbig側が従来比25~30%、LITTLE側が従来比15%の性能向上を実現できているという。

 GPUにはAdreno 630を搭載。もともとSnapdragonシリーズは他社のSoCと比較してGPU性能が高いことで有名だが、845は従来の835と比較してさらに性能を30%向上させる一方で、消費電力を30%削減しているという。このため、ハイエンドゲームなどで威力を発揮することになりそうだ。このあたりは後半に検証していきたい。

製品パッケージ
XiaomiのCEO、雷軍氏のメッセージが入っていた
メッセージめくると本体や付属品が出てくる
あらかじめ保護フィルムがはられていた
背面にも保護フィルム
パッケージの内容物。Xiaomiのスマートフォンにはヘッドフォンは付属しないようだ

芸術を融合させた筐体

 Mi MIX 2Sは同社のラインナップのなかで、“前面の画面占有率を高め”、かつ“デザイン重視”をコンセプトとした「MIX」シリーズに属する。ことデザインに関しては、背面に4辺がカーブしたセラミック素材を採用することで、ツルッとした独特な感触の、深みのある反射かつ光沢のある仕上がりとなっている。

 なお、従来モデルの「MIX 2」では、セラミックユニボディを採用した限定版も用意されていたが、Mi MIX 2Sではそのような限定モデルがなく、背面カバー+金属フレーム+前面パネルの3層構造となっている。このため、どうしても筐体に隙間が発生してしまうが、スムーズな曲面加工により、手に持っていていて不快になるようなことはなかった。

 背面は指紋センサーとデュアルカメラ+フラッシュのみ。MIX 2はカメラモジュールが中央に来ており、対称性があったのだが、Mi MIX 2Sではカメラを大幅に強化したため、そのような配置の実現は難しく、左側上に寄ってしまっている。一方で、カメラ周囲には18Kの金メッキが入っており、高級な印象を受けるのは旧機種と共通だ。

 これだけデザインにこだわりぬいた筐体なのだが、個人的に残念なのが背面カバーのプリントだ。まず、「MI MIX DESIGNED BY XIAOMI」というメッセージが、右90度回転した状態でプリントされている点。本体を横に構えて撮影する場合、通常カメラモジュールが上になるよう持つと思うが、この状態だとこのメッセージが逆さまになってしまう。おそらく縦表記を優先した結果だと思われるが、縦に持つ場合、このメッセージが隠れてしまうので、横前提で表記したほうが良かったのではないだろうか。同様に、その下にあるXiaomiのクレジット表記や、CE、WEEE指令マークの印字も、外観を損ねてしまっている。

 また、セラミックの採用でデザインに優れている一方で、弊害もある。まず1つに挙げられるのが、とにかく滑りやすいことだろう。本機の場合、重量が189gあるので、簡単に手から滑り落ちるようなことはさすがにないのだが、机の上ではよく滑る。

 じつは、これは以前レビューした「Mi 6」にも言えたことだ。Mi 6の場合、カメラ部が出っ張っていないので、とにかくよく滑り、試用中机から落としてしまうことが何度もあった。幸い、Mi MIX 2Sはカメラ部が出っ張っており、それによってなにかに引っかかるため、落とす機会が減っているのだが、それでも滑ることに変わりはない。本機を机などに置く場合、バイブレーションによって滑って移動してしまうことが考えられるので、ラバーや布のような滑らないような素材の上に置くか、端付近に置かないように注意したほうが良い。

 Mi MIX 2Sが本来持つ外観にこだわらないのであれば、付属のカバーをつけておくと良い。このカバーは、一部ThinkPadの天板の“ピーチスキン”のような手触りとなっており、なおかつ滑りにくい。もともと重量級の製品であるため、さらに重くなってしまうのが難だが、筆者としては常時つけておくことをおすすめしたい。

本体背面。セラミック製で独特の光沢感がある
誇らしげなメッセージが入っている
レンズユニットは18K金で囲まれている
一体感の高い前面
側面は金属のフレーム。本体サイズは74.9×150.86×8.1mm(幅×奥行き×高さ)で、厚みはそこそこある印象
ピーチスキンのような加工のカバー
ただカメラを横に構えた場合、メッセージが逆になってしまい、若干マヌケな印象を受ける
CEやWEEE指令マークの印字も、プリントではなくシールでよかった気がする

画面比率を高めた大画面ディスプレイとそれに特化したUI

 MIXシリーズのもう1つの特徴は、2,160×1,080ドット表示対応の5.99型という大画面と、前面における画面比率を極限にまで広げている点。この液晶ディスプレイは403ppiという高解像度と1,500:1という高いコントラスト比を実現しているほか、DCI-P3色域およびHDRをサポートしており、大変美しい。

 目を凝らしてみると、若干網目模様が確認できるが、一般的な距離から見る場合まったく気にならない。最大輝度も十分あり、直射日光下でも見やすい。特徴的なのは暗くした場合で、暗闇でも目に優しい輝度になるだけでなく、自動でブルーライトを低減するようで、画面に黄色味を帯びるようになる。このあたりの作り込みには感心した。

 本体の四隅は緩やかなカーブになっているが、それにあわせて液晶自体もカーブしているのが特徴。カーブした分、標準システムUIにおいて、時計やバッテリ残量といった表示がはみ出てしまうようなことがないのもポイントだ。

液晶は2,160×1,080ドット表示対応の5.99型で、DCI-P3色域やHDRをサポートするため、大変美しい
最大輝度にすれば、直射日光下でも視認可能だ
最低輝度にすると自動でブルーライト軽減モードになるようだ。これはまた一歩進んだ実装である

 また、本製品は大画面をすべてを活用できるよう、設定でホーム、戻る、タスク切り替えといったナビゲーションボタンを非表示にできる機能も搭載している。

 非表示にしたさいは、ジェスチャーでこれらの動作を行なうようになり、ホームボタンは画面の下から中央にドラッグ、戻るボタンは左または右の下半分のエッジから中央にドラッグ、タスクの切り替えは画面下から中央にドラッグしたままホールドすることで行なえる。

 筆者は基本的にジェスチャー操作が嫌いなので、当初は半信半疑だったが、実際使い出しはじめてみたところ、わずか数分間ですっかりこの操作に慣れてしまった。そしてこのあと、ほかのナビゲーションボタンつき端末を使い出してみると、むしろ違和感を覚えるようになってしまった。このようなジェスチャー操作ができるのは本端末がはじめてというわけではないと思うが、仮に手持ちのスマートフォンで同じ操作が可能なのであれば、ぜひ体感してみてほしい。

ナビゲーションバーを隠す全画面モード。ジェスチャーでさまざまな操作を行なうが、慣れてしまうと病みつきになる

 ただ、高い画面占有率とノッチなしディスプレイの犠牲となってしまったのが前面カメラで、そのままだと、どうしても下からあおった、顎を強調した写真になってしまう。セルフィーまず撮ることがない筆者でも、家族とのビデオ通話で前面カメラを使うので、このアングルは気になってしまう。前面カメラを使う場合、本体を逆さまにしておくことをおすすめしたい。

前面カメラは本体右下に配置される

DxOMark MobileのPhotoでスコア101を記録したカメラの実力は?

 Mi MIX 2Sの発表会では、多くの時間を写真機能の説明に割り当てていた。じつは、2017年後半に入って以来、中国のスマートフォンメーカーはこぞってカメラ機能の強化に力を入れている。この背景には、ファーウェイの“Leicaカメラ搭載”SIMロックスマートフォン「P9」の大ヒットもあるだろうが、中国国内には多くの撮影愛好者がおり、スマートフォンにおいてカメラ機能をもっとも重視しているのも理由の1つだ。

 そこでMi MIX 2Sでもカメラ機能に注力して開発された。まず最大のトピックが、MIX 2でシングルレンズだったカメラをデュアルレンズにした点。メインセンサーにはソニーのIMX363を採用し、画素数は1,200万、1画素あたりの受光面積は1.4μmなどとなっている。ちなみに、Xiaomi自身はこのセンサーにかなりの執着があるようで、チューニングを極めることで画質向上を目指している。そのため、5月末に発表された最新のフラグシップ「Mi 8」でも踏襲されている。

 Xiaomiは、Mi MIX 2Sのカメラがまだチューニング途中(3月発表時点)であるとしながらも、第三者評価のDxOMark MobileのPhotoでスコア101を獲得したことをアピールしていた。それでは実際にどうなのか、筆者の目で確かめてみた。

 まず、よく晴れた日光下だが、ほぼ問題ない画質である。遠景の細部は若干ベタ塗りが気になるが、それは等倍の写真を大画面ディスプレイでじっくり見た場合の話で、流しながら見る分には問題ない。

 とくに機械学習によってシーンを判別し、それに適した画質設定を行なう「AI」モードで出てくる絵は、スッキリしていて気持ちいい。AIモードにすると、明るめで派手な色となり、“絵作りしすぎている”印象があるため、好みは分かれるかもしれない。とくに草木の緑に関しては顕著だ。

 日陰や曇の日、屋内だと、明るめな写真になる。これはこれで、対象物のディテールが良く見えるし、人を撮影する分にはこっちのほうが望ましい場合もあるのだが、もう少しトーンを抑えたほうが“写真っぽい”だろう。もっとも、これも気に入らなければアンダーに振ると良い(フォーカス後、スライダーを下にスライドするだけでできる)。

 HDRモードをオンにすると、全体的なメリハリが弱くなる分、明暗差の激しいシーンで明るい部分も暗い部分もディテールがよくわかるようになる。基本的にオフにしておき、シーンにあわせてオンを選択したほうが良さそうだ。

 ノイズに関しては比較的抑えられている方だ。等倍にしてじっくり眺めるにはもう一声ほしい印象だが、以前レビューしたMi 6からは大きな進歩が見られる。

台北の西門駅付近。ぱっと見る限り解像感が高い絵になっているが、よく見るとバスの椅子や対面の信号など、ベタ塗りっぽく見える
台北101の作例
TICC付近で、AIモードをオンにしたところ、建築物として認識され、スッキリとした空の絵になった
食べ物もきちんと認識され、「飯マズ」な絵にならない
左がAIオフ、右がAIオン。植物として認識されると、雲天下でもより鮮やかに緑を表現する
複雑な構図の対象物でもシャープに描かれる
ほぼ最短撮影距離からの撮影。背景のボケはそこそこだ

 Mi MIX 2Sのポートレートモードは、デュアルレンズを活かしたソフトウェアによる背景のボケ処理が可能になった。Mi 6ではレビュー当初、単純にもう片方のカメラに切り替える方式しかなかったため、背景のボケが若干うるさかったが、Mi MIX 2Sはもう片方のカメラに切り替えを行なうとともに、ソフトウェアによるボケ処理を行なうので、大幅に改善した。髪の毛や体の立体的な部分のエッジの検出に関しては、若干改善の余地が残るが、SNS上にアップロードしたりする分にはまったく問題ないだろう。

 Mi MIX 2Sの写真の画質については、確かに従来から大きな進歩が見られる。とくにAIモードに関しては“作品作り”の域まで手を出してしまったと言える。「撮影してそのままSNSでシェアする」行為がスマートフォンでは当たり前となっている以上、“1発で作品が出てくる”のは好意的に捉えていいだろう。

ポートレートモードをオンにするとカメラが望遠端に切り替えられ、背景のぼかしが有効になる。作例はほぼパーフェクトと言って良いが、ハンドガンと女性の顔のあいだの背景の「H」の文字だけがうまくボケていない
望遠端レンズはF2.4と暗めで、少しでも暗くなると極端に描写が弱くなる。このシーンではISOが5930までに引き上げられており、等倍では絵がかなり破綻している

そのほかの特徴を見る

 今回は前回入手したMi 6とは異なり、グローバル版ROMとなっている。OSこそAndroid 8.0をベースとしたMIUI 9.5だが、日本語の表示/ローカライズともにまったく問題ないレベルに達していた。また、Playストアも利用でき、中国でしか使えないXiaomiサービスのアイコンや、おすすめアプリの広告もない。日本向けの端末とまったく同じ感覚で使える。

 その一方で残念なのが、Xiaomi独自の中国語音声アシスタント「小愛同学」が利用できないこと。台湾でもサービスが提供できるかどうかわからないかったので、試せるかどうか心配だったが、そもそもグローバル版のROMにはないようで、若干残念ではある。

 UIの使い勝手で気になったのは、ナビゲーションボタンを表示するモードでも全画面でジェスチャーを使うモードでも、言語(キーボード)の切り替えは通知から行なうしかないこと。ファーウェイの端末では、ナビゲーションボタンの横にキーボードのアイコンが現れ、いつでもすぐに切り替えられるので、日本語も中国語も入力する筆者は重宝しているのだが、本製品はいちいち上からプルダウンして選択しなければならないのが煩わしい。

 グローバルで使えることを前提としたモデルのため、対応バンド帯も非常に多い。FDD-LTEバンドは1/2/3/4/5/7/8/12/13/17/18/19/20/25/26/27/28/29/30、TD-LTEは34/38/39/40/41、CDMAはBC0/BC1/BC6/BC10、WCDMA/HSPA+/DC-HSDPAは1/2/4/5/6/8/9/19、2Gは850/900/1,800/1,900MHzなどとなっている。これだけ多ければ、逆に通信できない国を探すほうが難しいぐらいだ。

 SIMはデュアルNano SIMで、デュアルスタンバイをサポート。なお、設定ではデュアル4Gを有効にすることができるので、両方のSIMともVoLTE通話を利用することが可能だ。ただ本製品はmicroSDカードスロットがなく、撮影した写真をすぐに退避できないのが残念である。

 MIXは画面占有率を高めたモデルである関係上、シリーズで一貫して背面に指紋センサーを搭載している。精度はまずまずな印象だが、認識したあとスリープからの復帰は速い。位置も良く考えられており、使っていてストレスは感じない。ちなみに製品情報では、AI技術を応用した前面カメラによる顔認証も搭載されているとのことだが、少なくとも筆者が入手したモデルでは利用できなかった。

指紋センサーは筐体中央にきており、アクセスしやすい。AIによる顔認証は、グローバル版のROMでは実装されていないようである

 本体のサイズは74.9×158.6×8.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量は189gとされており、スマートフォンのなかでは大型/重量級クラスに属する。片手で操作できないこともないが、親指を伸ばそうとすると手のひらが画面に当たってしまい、誤操作が発生しやすくなる。基本的には両手で操作する製品だと捉えたほうが良いだろう。

 充電はMi 6と同じく、Quick Charge 3.0に対応。付属のACアダプタもQuick Charge 3.0に対応したもので、5V/3Aのみならず、9V/2Aと12V/1.5Aの出力も可能だ。ただし今回入手したACアダプタのプラグはCタイプだった(台湾では問題ない)。このため、そのままでは日本国内のコンセントに挿すことはできない。

 加えて、Mi MIX 2SはQiによる充電もサポートしており、最大7.5Wで充電できる。COMPUTEX TAIPEIの会場ではQi対応充電器が用意されていたほか、展示も多数あったのだが、いずれも問題なく充電できることが確認できた。

 搭載されるバッテリは3,400mAh。Facebookやブラウザ、3Dゲームをプレイするといった用途で、1日使ってまだ32%ほど電池が残っていた。決して大容量とは言えないが、ハイエンドSoCと大画面ディスプレイを搭載したスマートフォンとしては次点だろう。

トップクラスのCPU/GPU性能を実現

 それでは最後にベンチマークでSnapdragon 845の性能を見ていきたい。実施したベンチマークはAntutu Benchmark V7と3DMarkだ。Antutu BenchmarkはV7からテストを一新しており、V6とのスコア互換性がなくなっている点に注意されたい。

 基本的にGPUが強いQualcomm系のSoCでは、V6からスコアが向上する傾向にある。たとえば、筆者が以前に計測したSnapdragon 835を搭載したMi 6のV6のスコアは174,092であったが、V7では21万超になる。

Antutu Benchmark V7の結果
3DMark Sling Shot Extremeの結果

 それらを踏まえた上でMi MIX 2Sのスコアだが、267,820だった。発表会では277,178というスコアが示されたが、これはさまざまな最適化を行なった上で、メモリ8GBとストレージ256GBを搭載した上位モデルの結果かもしれない。とは言え、ハイエンドスマートフォンとしては十分な結果であり、実際も操作で引っかかりを感じたり、ストレスに感じることはまったくと言っていいほどなかった。

 3DMarkに関しては、Ice Storm ExtremeではMAXのスコアが出てしまい、正しく計測できなかったので、Sling Shot Extremeの結果となるが、OpenGL ES 3.1では3812、Vulkanでは2849となった。これは競合製品より性能が低いのだが、原因は不明である。ドライバが最適化されていない、もしくは排熱がうまくいっていないのかもしれない。

 Snapdragonの強みであるGPUについて、もう少し深掘りしていこうと思い、つい先日日本でサービスインしたスマートフォン向けの「PUBG MOBILE」を試そうと思ったのだが、残念ながら台湾ではサービスインしておらず使えなかった。とは言え、そのほかの3Dゲームは問題なくスムーズに動作した。もっとも、本製品は現時点考えうる最上位のSoCを搭載しているので、基本、快適に動作しないアプリは皆無と言っていいだろう。

 気になる熱だが、確かに発表会で述べられているとおり、よく抑えられている印象だった。3DMark実行中は若干熱い印象だが、一般的な3Dゲームプレイ中では、ほんのわずかに指紋センサー付近が暖かくなる程度で、不快に感じるようなことはなかった。

安価だが妥協しなくなったXiaomiのスマートフォン

 2018年はじめ頃から、中国ではユニークなスマートフォンの発表が活発的になった。代表的な例を挙げると、世界初の容量1TBのスマートフォン「堅果 R1」、中国初のゲーミングスマートフォン「Black Shark」、前面カメラが利用時にのみ飛び出す「NEX」あたりだ。

 Mi MIX 2Sはスペック面よりもデザインを重視した製品のため、上に挙げた3製品よりも発表としては地味な印象を受けるが、実際手にしてみるとなかなか良い。カバーをつけてしまうとスポイルしてしまし、そのまま使うと指紋が気になるが、背面の仕上げは随一であり、前モデルの完全セラミックモデルほどのインパクトはないにせよ、デザイン面はよく練られている印象を受ける。

 と、あえてここまで触れていない価格だが、本製品はGearbestで59,000円台(メモリ6GB+ストレージ64GB版、クーポン利用で54,000円台)から購入可能だ。残念ながら、日本ではSIMロックフリーのSnapdragon 845搭載端末が現時点ではASUSの「ZenFone 5Z」ぐらいしかないので、単純な比較はできないが、ZenFone 5Zと同じ6GB+128GB版は、同サイトで6万円台で購入できるので、価格面では大きなアドバンテージがある。

 しかし、Xiaomiが日本でビジネスを展開していない以上、無線回りの技適の問題がつきまとう。「Mi MIX 2Sを外国人らが旅行時に海外から持ち込んで使う」のは合法なので、羨ましい限りなのだが、残念ながら日本国内にいるユーザーが海外から購入して日本国内で使うことはできない。いまのところ、“海外出張時の端末としては、たいへんコストパフォーマンスに優れている”という評価に留めざるえない。

 Xiaomiは先日、Snapdragon 845搭載のフラグシップとして「Mi 8」の限定シースルー版を投入するなど、スマートフォンマニア垂涎の製品を展開しているだけに、日本で展開していないのがなんとも惜しいのだが、5月にはフランスへ進出を果たしたようだし、今後の動きに注目したい。