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3万円台でもチープさが見えない金属筐体の11.6型マウス製薄型ノート「MB11ESV」

マウスコンピューター「MB11ESV」

 マウスコンピューターは、11.6型液晶搭載のエントリーモバイルノート「MB11ESV」を家電量販店などにて発売した。12.9mmの薄型メタル筐体を採用することで、エントリー向けの低価格モデルとは思えないスタイリッシュな外観が大きな魅力となっている。価格はオープンプライスで、実売価格は38,000円前後。

アルミニウム素材の薄型軽量筐体

 通常、低価格なエントリーノートの場合、コストダウンのために樹脂製の筐体を採用することが中心だ。そのため、どちらかというと安っぽい印象の製品が多い。

 しかしMB11ESVでは、低価格な製品ながらアルミニウム素材の筐体を採用。実際に製品を見ると、マット処理が施された筐体からは、安っぽいという印象は一切伝わってこない。

 底面付近以外には筐体の継ぎ目も感じられず、側面角にダイヤモンドカット加工を施すなど、仕上げも申し分ない。筐体デザインは、全体的にフラットで、側面付近にわずかなカーブを取り入れるなど、どちらかというとMacBookシリーズをかなり意識したデザインとなっているが、少なくともこれが3万円台という低価格で購入できる製品とはまったく感じられないはずだ。

 サイズは275.2×191×12.9mm(幅×奥行き×高さ)と、十分にコンパクト。とくに高さが高さが12.9mm(突起部含まず)と、非常に薄く仕上げられているため、鞄などへの収納性も申し分ないはずだ。また、重量は約1.07kgとなる。いまどきこのサイズとしてはやや重いという印象だが、金属筐体を採用することを考えると納得の範囲内だろう。なお、実測での重量は1,097gだった。

本体を正面から見た様子。低価格なモバイルノートながら、アルミ筐体採用で品質はかなり優れている
天板部分。フラットで側面がわずかにカーブしている。全体的にシンプルで高品質な印象だが、全体的なデザインはMacBookにかなり近い
本体正面。筐体は薄く、細かな部分までの仕上げも申し分ない
左側面。高さは12.9mmと薄く、鞄への収納性も優れる
背面
右側面
底面。底面も含めて高品質な仕上げとなっており、安っぽさは皆無だ
重量は実測で1,097gと、サイズを考えるとやや重い印象だ

フルHD表示対応の11.6型液晶を搭載

 ディスプレイは、1,920×1,080ドット表示対応の11.6型液晶を搭載している。一般的に、低価格なエントリーノートではHD(1,366×768ドット)表示対応の液晶搭載が一般的だが、そういったなか、フルHD表示対応の液晶を標準採用している点は大きな特徴だ。多くの情報を一度に表示できるため、さまざまな作業を快適にこなせるだろう。

 パネル表面は非光沢処理となっており、外光の映り込みが少なく、文字入力などの作業を快適に行なえる。ただ、発色の鮮やかさに関しては光沢パネルの液晶にやや劣るという印象だ。全体的に発色の鮮やかさに欠けるという印象で、ややおとなしめの色合いといった感じだ。

 また、やや青みが強いという印象もある。ただ、この価格帯としては標準的なもので、大きな不満はない。

 パネルの種類は非公開だ。視点を大きく動かしてみると、明るさの変化は多少感じられるが、色合いの変化は少なく、比較的視野角は広いという印象。IPSパネルなどと比べると視野角はせまい感じだが、TNパネルほどのせまさはなく、こちらも好印象だ。

1,920×1,080ドット表示対応の11.6型液晶を搭載。この価格帯でフルHD液晶搭載はうれしい
表面は非光沢処理のため外光の映り込みは少ないが、発色の鮮やかさはやや弱い。また、全体的に青みが強く、おとなしめの発色だが、この価格帯としては標準的だ
ディスプレイは130度程までしか開かない

キーボードは一部配列に難あり

 キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプを採用している。主要キーのキーピッチは約17mmとやや窮屈だが、この点は筐体サイズを考えるとしかたのない部分だ。それに対しストロークは約1.8mmと、薄形筐体のわりにはかなり余裕がある。クリック感はやや弱い印象だが、標準的な堅さのタッチで、ストロークの深さもあり、打鍵感はまずまず良好だ。

 ただし、このキーボードにはいくつか問題もある。まず、Enterキー付近の一部キーのピッチが大幅にせまくなっている点。こちらは、まだ慣れればなんとかなると思うが、もう1つ大きな問題がある。それは、[]キーや[\]キーの位置だ。キーは左ShiftとZキーの間、\キーは右Ctrlキーの右側と、いずれも本来とはまったく異なる場所に置かれていることだ。

 いずれもアルファベットキーに比べると使用頻度は高くないものの、さすがにこれだけ独特な配列となるとかなり戸惑う。本体サイズを考えるとしかたのない部分もあるが、それでもこの配列に関してはかなり残念だ。

 ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを搭載している。こちらは面積も十分に広く、ジェスチャー操作にも対応しており、操作性は申し分ない印象だ。

 ところで、このポインティングデバイスには左上隅に指紋認証センサーを搭載している。Windows Hello対応で、Windowsへのログオンも指でタッチするだけで行なえるため、セキュリティ性と利便性を両立可能だ。

 なお、この指紋認証センサー部分はタッチパッドとして機能しない。実際に使っているときに、この部分を操作してカーソルが動かなくなることがまれにあったが、その頻度は少なく、それほど大きな問題とはならないはずだ。

アイソレーションタイプのキーボードを搭載。キーボード面も金属を採用しているため剛性が高い
主要キーのキーピッチは約17mmとややせまい
ストロークは約1.8mmとまずまずの深さ。標準的な堅さとストロークの深さで打鍵感はまずまずといったところだ
Enterキー横の一部キーのピッチがかなりせまくなり、\キーが右Ctrlの右側に配置されている点は残念
キーが左ShiftとZの間に配置されている点も非常に残念だ
クリックボタン一体型のタッチパッドは面積が十分に広く、こちらは扱いやすい
タッチパッド左上隅に指紋認証センサーを搭載。この部分はタッチパッドとして機能しないが、セキュリティ性と利便性を高めるうれしい仕様だ

低価格なエントリー向けPCらしいスペック

 MB11ESVは、低価格なエントリー向けノートということで、スペック面も価格相応のものとなっている。

 搭載CPUは2コア2スレッド処理に対応するCeleron N3350を採用。メモリはLPDDR3-1600を4GB搭載する。このあたりは、価格相応といったところだろう。

 内蔵ストレージは容量64GBのeMMCを採用している。容量的にはもう少しほしいところではあるが、こちらも価格を考えるとまずまずといったところだ。少なくとも、容量が32GBの製品に比べると、余裕を持ってアプリが利用できるはずだ。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LAN(1×1)とBluetooth 4.2を標準搭載する。11ac準拠の無線LANを搭載している点はうれしい部分だ。

 側面のポート類は、左側面にUSB 3.0準拠のUSB Type-C×1と、右側面のオーディオジャックのみとなる。USB Type-Cが1基だけなので、拡張性に関してはかなり厳しい印象だ。ただ、標準でUSB Type-C×1、HDMI、USB 3.0の各ポートを備えるポートリプリケータが付属しているため、外部ディスプレイへの映像出力やUSB機器の利用に関して大きな問題はないだろう。

 給電はUSB Type-Cポートを利用する。付属ACアダプタは12V/2A出力をサポートしており、比較的コンパクトなものとなっている。重量も87.8gと軽いので、携帯性にも優れる。なお、検証したところ汎用のUSB PD対応ACアダプタを利用しても給電が可能だった。

左側面にはUSB 3.0準拠のUSB Type-C×1のみを用意。給電もこのUSB Type-Cを利用する
右側面にはオーディオジャックを用意
標準でUSB Type-C、HDMI、USB Type-Aを備えるポートリプリケータが付属
ディスプレイ上部には約200万画素のWebカメラを搭載
付属ACアダプタは小型で軽量のため、持ち運びも軽快だ
ACアダプタ単体の重量は実測で87.8gと軽い

性能はスペック相応

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。

 利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 v1.0.1493」、「3DMark Professional Edition v2.4.4264」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」の3種類。比較として、デルの「New Inspiron 11 3000 (3180)エントリーモデル」と、レノボの「ideapad miix 320 80XF0007JP」の結果も加えてある。

【表1】測定環境
MB11ESVNew Inspiron 11 3000 (3180)エントリーモデルideapad miix 320 80XF0007JP
CPUCeleron N3350(1.10/2.40GHz)AMD A6-9220e(1.60/2.40GHz)Atom x5-Z8350(1.44/1.92GHz)
ビデオチップIntel HD Graphics 500Radeon R4 GraphicsIntel HD Graphics 400
メモリLPDDR3-1600 SDRAM 4GBDDR4-2400 SDRAM 4GBDDR3L-1600 SDRAM 4GB
ストレージ64GB eMMC32GB eMMC64GB eMMC
OSWindows 10 Home 64bit
【表2】ベンチマーク結果
MB11ESVNew Inspiron 11 3000 (3180)エントリーモデルideapad miix 320 80XF0007JP
PCMark 10v1.0.1493v1.0.1271
PCMark 10 Score1,201952861
Essentials3,5042,0932,521
App Start-up Score3,5202,4512,327
Video Conferencing Score3,6821,8423,070
Web Browsing Score3,3202,0322,245
Productivity1,8662,0321,209
Spreadsheets Score2,0372,5231,000
Writing Score1,7101,6371,464
Digital Content Creation721552570
Photo Editing Score695651702
Rendering and Visualization Score440372317
Video Editting Score1,226698834
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)10.7815.278.97
CPU846797
CPU (Single Core)473829
3DMark Professional Editionv2.4.4264v2.3.3732
Cloud Gate2,0581,3121,466
Graphics Score2,8991,9651,681
Physics Score1,0226071,013
Sky Diver1,060981843
Graphics Score1,025999793
Physics Score1,6461,0161,414
Combined score830829749

 結果を見ると、Atom x5-Z8350搭載のideapad miix 320と比べると優れたスコアが得られている。また、AMD A6-9220e搭載のNew Inspiron 11 3000との比較でも、多くの項目で上回っており、性能的にはこのクラスの製品としてはまずまず優れると言っていいだろう。

 とは言っても、CPUにCore iを搭載するノートPCと比べると、体感でかなり動作が重いという印象だ。アプリの起動だけでも待たされる場面が多い。それでも、WebブラウザやOfficeなどのアプリは一度起動してしまえばそれほど重いという印象なく利用できた。性能に関して過度の期待は禁物だが、価格やターゲットを考えると納得の範囲内と言える。

 ちなみに、ファンレス仕様ということもあって動作音は皆無だ。また、キーボードの打鍵音もかなり静かなため、図書館など静かな場所での利用もまったく問題ないと言える。高負荷時には底面がやや温かくなるが、熱いというほどではなかった。

 続いてバッテリ駆動時間だ。MB11ESVの公称のバッテリ駆動時間は約9時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver2.0での数字)とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「(バッテリー)より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約8時間11分だった。計測条件を考えると申し分ない駆動時間で、外出時でも安心して利用できると言っていいだろう。

スタイリッシュなエントリーモバイルノートとして魅力

 MB11ESVは、実売3万円台という低価格なエントリーモバイルではあるが、スタイリッシュなアルミ筐体を採用することで、エントリー製品にありがちな安っぽさが一切なく、価格以上の魅力のある製品に仕上がっている。ひと目で安いノートとはわからないため、外で使う場合でも人目を気にせず利用できるだろう。

 搭載CPUや内蔵ストレージ容量などの仕様を見ると価格相応ではあるが、フルHD表示対応の液晶を標準搭載するなど、競合製品に対して優位な部分もあり、全体的には価格以上の魅力がある製品に仕上がっていると感じる。

 スペックを考えるとメインノートとして利用するのは厳しいものの、入門用やサブマシンとしてならこの程度の処理能力でも大きな問題はないだろう。テキスト入力が中心のビジネス用途から、学生が授業のメモを取ったり、Web閲覧や動画視聴といった用途に利用する低価格ノートとして、魅力的な存在だ。