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AMDファン必見のRyzen Mobile搭載13.3型モバイルノート「ideapad 720S」

ideapad 720S(AMD CPU搭載モデル)

 レノボ・ジャパンの「ideapad 720S」には、IntelとAMDのいずれかのCPUを載せたモデルが用意されているが、ここで紹介するのはAMD仕様で、Ryzen 7 2700Uを搭載したノートPCだ。現在流通している多くのノートPCがIntel製CPUを搭載しており、AMDのモデルは希少。さらに最新のRyzen Mobileを搭載するものとなれば話題性が高い。

AMDを搭載する希少な“モバイル”ノート

 ideapad 720Sは13.3型で1.14kgと軽く、モバイルノートのカテゴリに入る。これまでのAMD製CPU搭載モバイルノートとなると、非力で廉価なノート/タブレット用といったところ。AMDの高性能CPUを搭載するノートPCの多くは、十分な厚みと重量感のあるデスクトップ代替モデルが中心だった。その点で、Ryzen Mobileによってモバイルノートが実現したインパクトは大きい。

 ただし、あらかじめ1つ指摘しておけば、本製品は決してRyzen Mobileの性能を引き出すモバイルノートではない。バッテリ駆動時間を重視したためか、統合GPU機能にとってかなり重要なメインメモリが、デュアルチャネルではなくシングルチャネル仕様となっている。このため、グラフィックス性能に期待をしている方は、後続の製品を待つのがよいだろう。ただ、Ryzen Mobileの可能性が見える製品であることは確かだ。

 ideapad 720Sの本体サイズは約305.9×213.82×13.6mm(幅×奥行き×高さ)。たとえば同じレノボのThinkpad X1 Carbonを重ねると、奥行きは同じ程度だが幅は短い。13.3型対14型なので、ThinkPad X1 Carbonのほうが凝縮されているとも言えるが、それよりもideapad 720Sがコンパクトなため、持ち運びには便利である。厚みについてはThinkpad X1 Carbonが15.95mmなので、2mm以上薄い。

 重量は実測で1.122kgだった。Thinkpad X1 Carbonも約1.13kgとされており、ほぼ同じと考えてよい。モバイルノートとして見て、サイズと重量は間違いなく合格点を与えられるだろう。ACアダプタはレノボのモバイル製品で共通のUSB Type-Cを用いたものを利用している。出力は45W。これでRyzen Mobileが動くことは重要だ。そして小型で実測291g程度と軽い。

 ideapad 720Sは13.3型、IPS駆動方式で1,920×1,080ドット表示が可能なLEDバックライト搭載液晶パネルを採用している。今回、液晶ベゼルをせばめたいわゆる挟額デザインとなっており、野暮ったさがない。液晶天板も左上にLenovoロゴがあるだけでシンプルだ。

インターフェイスは、昨今のモバイルノートのトレンドにしたがい少なめだ。左側面にはUSB 3.0 Type-Aをはさむかたちで2基のUSB 3.0 Type-Cがある。Type-Cポートは2つともUSB Power Deliveryに対応し、一方はDisplayPort出力を兼ねている。

 右側面にはUSB 3.0 Type-Aとマイク/ヘッドフォン端子がある。モバイルノートということでビジネスに活用したい方もいると思われるが、本製品の場合はUSB Type-C→HDMIやDisplayPortに変換するためのアダプタが必要になる点に注意したい。LANについてもIEEE 802.11ac/a/b/g/nの無線LANを利用するか、どうしても有線をという方は、USBからRJ45に変換するアダプタを用意したい。

正面から見た様子。狭額縁ベゼルを採用しており、さらにコンパクトに感じる
天板にはLenovoロゴがあるだけでシンプル
正面。液晶面はスリムで、本体側の底はややふくらんいるが左右を斜めにカットしたデザイン
左側面。高さは13.6mmでくさび型デザインもありスリムに感じられる
右側面
背面
重量は実測で1.122kg
ACアダプタは291g
液晶パネルは13.3型、IPS、1,920×1,080ドット表示に対応。光沢のない非光沢仕様

インターフェイスは最小限。いくつかは変換アダプタが必要かも

 キーボードは日本語84キー仕様。バックライトも搭載しており、明かりを落とした就寝前や、出張時の航空機のなかでもキートップを判別できる。キーレイアウトは、左側半分はなんら問題ないが、右側については多少アレンジされている。

 まず右Altが省かれ、Home/End、PageUp/PageDownの4つはFnキーと矢印キーの組み合わせで実現している。Deleteキーが1つ左にずれ、そこに電源ボタンがあるのも少し惑わされる。また、やや幅のせまいEnterキーの左に、「}」がほとんど接した状態で置かれている。

 キーピッチは主要なキーは19mmを確保しているものの、右側にあるキーのいくつかはそれよりもせまい。ただ、アルファベットキーのほとんどが19mmピッチなので、テキスト入力はそこまで苦にはならなかった。配列にクセは多少あるものの、適応はそこまで難しくはなさそうだ。

 キーボードの右下にはWindows Hello対応指紋認証センサーがあり、ログイン時などに活用できる。中央にはタッチパッドを備えており、広さも十分で、クリック時の感触もカチッとした反応がよかった。

 インターフェイスは右側面にUSB 3.0 Type-Aとオーディオジャック、左側面にはUSB 3.0 Type-Aをはさむ形でUSB 3.0 Type-Cが2ポートある。USB Type-CはともにUSB Power Deliveryに対応しており、ここにACアダプタをつないで充電する。

 また、手前のUSB 3.0 Type-CポートはDisplayPort出力にも対応している。HDMI端子がないため、映像出力はこのUSB 3.0 Type-Cから接続ディスプレイに応じて適宜、変換する必要がある。

日本語キーボードでバックライトを搭載している。タッチパッドも操作しやすい大きさ
右半分のレイアウトは少しだけ独特なレイアウト
キーピッチは19mm
ストロークはやや浅めだ
Windows Hello対応の指紋認証センサーも搭載している
左側面にはUSB 3.0 Type-A×1、USB 3.0 Type-C×2
右側面にはUSB 3.0 Type-A×1、マイク/ヘッドフォン端子×1
底面には吸気口と3つのゴム足がある。ネジは10個
底面前方寄り左右にJBL仕様のステレオスピーカーを搭載

CPUはRyzen Mobile最上位のRyzen 7 2700Uを搭載! しかし……

 今回評価するideapad 720SのCPUはRyzen 7 2700U。Ryzen Mobileの最上位である。下位ラインナップとしてRyzen 5 2500Uを搭載するモデルも用意されている。

 Ryzen 7 2700Uについては、TDPが15Wの4コア8スレッドといった仕様だ。GPUはRyzen 7 2700Uに統合されたRadeon Vega 10となる。Ryzen 7 2700Uの、とくにRadeon Vega 10による統合GPUとしては高性能なグラフィックス機能に期待する方も多いと思われるが、まずは逸る気持ちを抑えて、次のメモリ仕様を確認していただきたい。

 本製品のメインメモリは、DDR4-2133駆動で容量は8GB搭載している。オンボートということでDIMMによる交換・増設には対応しない。この種のモバイルノートでは、DIMM対応モデルがほとんどなくなったのでこれは仕方がないだろう。また、Ryzen 7 2700UはDDR4-2400まで対応しているのにDDR4-2133にとどまるのは、モバイルノートという本製品の方向性からすれば、バッテリ駆動時間延長の面でこれも一般的な選択と言える。

 ここまではよいとして、本製品はCPU-Zの情報からもわかるようにシングルチャネルモードで動作している。モバイルノートでは同様のスペックが多いとしても、Ryzen 7 2700UのGPU性能に期待していた方は要注意だ。統合GPUではメインメモリを共有するため、ここの転送速度が性能を大きく左右する。これがボトルネックとなり、GPUの性能を引き出すことができない。

本製品のメモリはDDR4-2133のシングルチャネル8GB。できれば4GB×2枚のデュアルチャネルであってほしかったところ

不利な点はあれどライバルの統合GPUと同等レベルの性能を発揮

 それではベンチマークテストの結果を見ていきたいが、あらかじめ1つ指摘しておくと、本製品はベンチマークを通じてスコアのブレがとても大きかったため、もっとも高いスコアを結果として採用している。このブレを生む原因についての考察は後ほど言及しよう。

 今回利用したベンチマークは「PCMark 10 v1.0.1493」、「3DMark v2.4.4264」、「CINEBENCH R15」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver 1.51」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の5種類。

 比較用として、デスクトップCPUとなるがCore i7-8400をベースとした自作PCのスコアも添えている。

【表1】検証環境
CPURyzen 7 2700U(2.2~3.8GHz)Core i5-8400(2.8~4GHz)
メモリDDR4-2133 SDRAM 8GBDDR4-2666 SDRAM 8GB
ビデオ機能Radeon Vega 10Intel UDH Graphics 630
ストレージ512GB SSD(NVMe)750GB SSD(SATA)
OSWindows 10 Home 64bitWindows 10 Pro 64bit
【表2】ベンチマーク結果
Ideapad 720S AMD搭載Core i5-8400搭載デスクトップ(DDR4-2666 Dual)Core i5-8400搭載デスクトップ(DDR4-2666 Single)Core i5-8400搭載デスクトップ(GeForce GT 1030)
PCMark 10
Extended Score2,1702,7042,5713,892
Essentials6,0127,7577,4688,080
App Start-up Score6,67310,42810,12610,377
Video Conferencing Score6,0816,9976,7305,866
Web Browsing Score5,3576,3976,1128,667
Productivity3,9786,6486,5426,913
Spreadsheets Score5,6147,9987,9488,020
Writing Score2,8195,5265,3855,960
Digital Content Creation2,4503,0562,9704,121
Photo Editing Score3,8863,5033,4714,071
Rendering and Visualization Score1,7322,5122,4114,438
Video Editing Score2,1863,2463,1333,875
Gaming1,0259178152,696
Fire Strike Graphics Score1,3401,1911,0433,553
Fire Strike Physics Score6,81011,78710,67112,275
Fire Strike Combined Score4333763461,164
3DMark
IceStorm Performance 3DMarkScore54,25366,62655,42293,812
IceStorm Performance GraphicsScore82,18266,08152,874103,763
IceStorm Performance PhysicsScore24,78068,60966,67170,237
CloudGate Performance 3DMarkScore6,6658,7427,73715,114
CloudGate Performance GraphicsScore8,1139,0047,81320,120
CloudGate Performance PhysicsScore4,1047,9367,4858,080
SkyDiver Performance 3DMarkScore4,2314,5104,11511,642
SkyDiver Performance GraphicsScore4,2124,0343,70911,440
SkyDiver Performance PhysicsScore4,89811,5919,83112,331
SkyDiver Performance CombinedScore3,6174,3823,92012,242
FireStrike Performance 3DMarkScore1,0611,1009403,269
FireStrike Performance GraphicsScore1,1771,1921,0083,597
FireStrike Performance PhysicsScore6,01011,70610,74412,382
FireStrike Performance CombinedScore3573753281,173
CINEBENCH R15
CPU560937926927
CPU(Single Core)138172170152
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト
1,920×1,080ドット、高品質3,5845,2383,75513,537
1,920×1,080ドット、標準品質4,6716,3114,75816,213
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
1,280×720ドット、標準品質(ノートPC)3,3744,9103,77814,734

 結果を見ると、デスクトップ版Core i5-8400は相手としてやや強力すぎたかもしれないが、おおむねよく食らいついている印象だ。PCMark 10のGamingスコアは若干上回っている。ただし期待したほどのリードが得られていないのは、先に述べたメモリがシングルチャネルである点が影響している。

 3DMarkについては、GPUのストレートな性能を見られるGraphicsスコアをベースに見ていくと、たとえばIce Stormでは大きくリードしているが、それ以上のテストではIntel UHD Graphics 630とさほど変わらない値になっている。

 これに加えてCPU性能が左右するPhysicsではデスクトップで6コアのCore i5-8400に対抗できるすべはなく、こうした点でOverallも同等かやや低い程度に落ち着いてしまっている。

 CINEBENCH R15では、対デスクトップCPUでの比較のためあまり参考にならないが、とはいえスペックからするとやや低いスコアである印象を受けた。先に指摘したブレもあり、HWiNFO64で取得したログも合わせて説明したい。

 ベンチマークスコアにブレは付きものだが、10%を超えるブレがつねに起きることはノートPCの検証でもまれだ。そこでログを確認してみると、CPUは3GHz前後で動作しているのは4コアのうち1~2コア程度で、そのほかのコアは1.5GHz前後に落ちているシーンが多かった。

 CPU温度は最大81℃に達しており、グラフ化してみると、高温になってクロックを抑えて冷やす、という動作を繰り返すようにギザギザの波形が見られた。この点で、Ryzen 7 2700Uは、ここまでの薄さのモバイルノートでは多少冷却不足であるような気がしてならない。

 ドラゴンクエストX ベンチマークソフトとファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークの結果を見ると、ゲーム性能はデュアルチャネルのIntel UHD Graphics 630よりは下、シングルチャネルのものとほぼ同じといったところになりそうだ。

 ただし、Radeon Vega 10のスペックを考えるとここまで低いはずはなく、DDR4-2133というクロックを抑えたメモリ、シングルチャネル動作という要素に加え、熱の部分にも要因がありそうだ。実際のゲームではCPU性能も重要な要素であり、加えて熱の問題がGPU側にも出ている可能性がある。

 ただ、ここまで不利な要因がありつつもライバルの統合GPUとわたり合えるスコアが出ているので、同じ土俵上では互角、その点で言えばモバイルノートPCとして同列に比較できるものであるとは言えそうだ。

モバイルとしてはアリ。Ryzen Mobile本来の性能を求めるならモバイルはムリか!?

 まずモビリティは良好である。小さく軽い筐体にAMDの最新パフォーマンスCPUを搭載できたことは十分に評価に値する。

 ただし、冷却性能が間に合っていないようで、Ryzen 7 2700Uの本来の性能は引き出せていない。メモリについてもシングルチャネル動作なので、統合GPUのRadeon Vega 10の性能を引き出せていない。

 つまり、CPU本来の性能よりもかなり抑えられたところで動作しているのだが、モバイルノートとして見ればまずまず、ベンチマークではCore i5に十分に対抗できる性能が見られたのが成果と言えるだろう。

 本製品は十分にモバイルノートとして検討できるだけのスペックと性能だ。ゲーミングノートとしてではなく、モバイルノートとしてPCを検討している方であれば、本製品も比較対象候補に入れてよいのではないだろうか。

 もしもRyzen 7 2700UのGPU性能に期待しつつ、モバイルノートとしての使い勝手を求めるならば、冷却性能に優れたモデルが登場するのを待つべきだろう。