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ハイエンドスペックを18mm薄筐体に実装した異形のゲーミングノートPC「ASUS ROG ZEPHYRUS」

ROG ZEPHYRUS(GX501)

 ASUSの「ROG ZEPHYRUS」は、2017年夏のCOMPUTEXで公開された15.6型ゲーミングノートだ。追求しているのは性能と薄さ・軽さ。COMPUTEX期間中にNVIDIAが発表したスリムなゲーミングノートPCを実現する「Max-Q Design」を採用し、17.9mm厚でGeForce GTX 1070 with Max-Q Designを搭載した。

 ASUS自体、ゲーミングノートPCでも厚いラインナップを揃えている。ROG ZEPHYRUSはスペックで見れば、ラインナップ中もっとも高性能というわけではないが、今季の同社ゲーミングノートPCカタログではトップに掲載されている。用いられている技術、そしてデザイン面で、イチオシということだろう。

艶ありのヘアライン加工を2つの角度で組み合わせた独特の天板デザイン

 ROG ZEPHYRUSは細かく見ていけば特徴だらけの製品で、1つ1つピックアップしていくときりがない。そこで、とくに独特であるところを中心に見ていきたい。

 まずはその薄さだ。15.6型ディスプレイを搭載する本体サイズは379×262×16.9~17.9mm(幅×奥行き×高さ)。一般的なゲーミングノートPCが、厚さ30~40mmあることからすれば驚異的だ。

 筐体も美しく、金属製で側面は角を落とし、そのラインをブロンズに仕上げている。角を丸めることがトレンドの一般的なノートPCとは一線を画し、ゲーミングノートPCらしさを感じる。

モバイルノートほどではないもののスペックを考えればスリム
角を落としてブロンズのラインとしている

 底面は左右に小さなスリットがあるだけだ。通常、ゲーミングノートPCでは吸排気のための多数の通気口が設けられているが、本製品の底面版にはそれがない。その理由は独特の「Active Aerodynamic System」(AAS)と呼ぶ機構にある。

 AASは、液晶パネルを開いていくと、ヒンジの角度に応じて底面がせり上がる構造を指している。似たような仕組みとしては、「リフトアップ式」がある。たとえば液晶パネルを開いていくことで、パネルの側面がテーブル面に接し、そこが軸となって本体側が浮く。

 AASも内部を見れば似たような仕組みだが、底面板全体がしなることでせり上がり、そこに大きな開口部ができる。普段は閉じているので、ホコリ対策にもなるだろう。

底面のスリットは少ないが、これはAASという機構を採用しているため
液晶パネルを開くと底面板がしなるようにせり上がる

 液晶パネルは15.6型で、解像度は1,920×1,080ドット。IPS駆動方式で視野角が広く発光色もよい。加えて120Hzの高リフレッシュレート対応かつNVIDIA G-Syncにも対応するといった点がゲーミング用途ではポイントが高い。eSportsタイトルでは高性能GPUと合わせて高リフレッシュレートが有利となり、フレームレートが60fpsを割る場合でもG-Syncによって映像がなめらかに表示される。

15.6型で1,920×1,080ドットの、標準的な画面サイズ・解像度サイズ
IPSパネルを採用しており視野角が広く発色の変化も小さい
120Hzに対応している
GPUから出力されるフレームにディスプレイのリフレッシュが同期されるG-Syncに対応

 キーボードは、通常のノートPCとは異なり手前に配置されている。パームレストがないためタッチパネルはキーボードの右へ、キーボード奥のスペースは面積の広い給気口としている。キーボードは全体にLEDバックライトを搭載しており、Q/W/E/R/A/S/Dといったゲームにおける主要キーは側面も発光する。ゲーミングキーボードとして見れば大人しい発光だが、識別するには十分に機能する

 キーボード・タッチパッド操作のフィーリングだが、まず全体的な話として、手のひらはテーブルに直に置くため、いわゆるデスクトップ用キーボードと同じ操作感になる。本製品はスリムであるため、むしろ手首への負担は若干小さい。その上で段差を解消するパームレストも付属する。

キーボードはLEDバックライトを搭載
スリムな筐体であるため、入力しにくさはない
段差が気になる方のためにラバー質のパームレストも付属する

 ゲーミングキーボードと決定的に異なるのはストロークだ。1.4mmのストロークを実現しているものの、メカニカルキーが主流のゲーミングキーボードと比べればすぐに底につく。また、ゲーミングキーボードで主流の英語配列なので、ゲームプレイ時はよいとしても、普段使いでは日本語配列との違いがあるため慣れも必要となる。

 タッチパッドについても、キーボード入力からカーソル操作に移行したさい、手のひらを大きく移動する必要がある。ただしこれもマウスを用いるのと変わらない。なお、タッチパッドの下にもLEDが仕込まれており、操作1つでタッチ式のテンキーボードへと変わる。

英語配列でPrintScreenやEnd/Homeといったキーの刻印が省かれている
タッチパッドからボタン1つでテンキーボードに変身

デスクトップPCに太刀打ちできる強力スペック

ROG ZEPHYRUS(GX501)
CPUCore i7-7700HQ(2.8GHz)
メモリ16GB DDR4-2400(8GB×2)
GPUGeForce GTX 1070 with Max-Q Design 8GB
SSD512GB(M.2 PCI Express x4)
光学ドライブなし
OSWindows 10 Home 64bit版
販売価格30万円前後

 内部ハードウェアは、先のとおりGPUがGeForce GTX 1070 with Max-Q Designで、CPUがCore i7-7700HQとなる。GeForce GTX 1070は言うまでもなくハイエンドGPUだ。発表時にはGeForce GTX 1080搭載モデルが展示されていたが、国内販売モデルではGeForce GTX 1070となる。GeForce GTX 1070搭載モデルでもゲーミングノートPCとして見て高額な製品であるため、もしGeForce GTX 1080を搭載していたらさらに高嶺の花となったことだろう。

GPU-Z上の表記もMax-Q Design。無印のモバイル用GeForce GTX 1070と比べると、CUDAコア数やROPs等は同じだが、GPUクロックとブーストクロックは(本製品はOC状態であるようだが)抑えた設定だった

 ハイエンドゲーミングノートPCでも、ハイエンドGPUを搭載するものはある。ただしその冷却のために本体の厚みが増す。Max-Qは、スリムでかつハイエンドGPUを搭載するために、ハードウェア面では高品質な電力回路によってムダな電力と発熱を抑え、ソフトウェアからはより細かなクロック制御を行なうことで、電力(=発熱)を抑えつつ性能を引き出すといった内容になる。

 ソフトウェア側の対応は、NVIDIAコントロールパネルの電力管理モードでデフォルトが「最適電力」となっていることで確認できた。

NVIDIAコントロールパネルの3D設定→電力管理モードで、デフォルトが「最適電力」となっていた

 CPUのCore i7-7700HQは、第7世代ではあるが4コア8スレッドに対応しており動作クロックもベースが2.8GHz、ターボ時で3.8GHzとなるハイエンド製品だ。ゲームタイトルによってはクアッドコアが推奨されるものもあるが、本製品ではCPUがボトルネックとなる可能性は小さい。

ハイエンドゲーミングノートPCでは定番のクアッドコアCPUを採用

 ストレージはM.2 PCI Express 3.0 x4接続でNVMe対応のSamsung SM961「MZVKW512HMJP-00000」が採用されている。シーケンシャルリードが3GB/sを超えるモデルで最速クラスだ。容量も512GBあるので当面は大丈夫だろう。

 大型のゲーミングノートPCがSSD+HDDのハイブリッド構成である点を考えると、スリムさとのトレードオフと言えるが、USB 3.1 Type-CおよびThunderbolt 3端子を備えているので、外付けのストレージを接続すればよいだろう。

評価機に搭載されていたSamsung SM961「MZVKW512HMJP-00000」
3GB/s超のシーケンシャルリード
右側面にはThunderbolt 3(Type-C、DisplayPort出力対応)×1、USB 3.0×2。左側面にはDCジャック、HDMI×1、USB 3.0×2、マイク/ヘッドフォンコンボ端子。スペックにはGbEは変換アダプタ(付属)を利用して実現している

GeForce GTX 1070よりも若干劣るが、フルHDゲーミングなら快適

 各種ベンチマークのスコアを見ていこう。

 クアッドコアCPUにハイエンドのGeForce GTX 1070 with Max-Q Designを採用しているため、全体的に高めのスコアだ。ただし3DMarkのスコアを見ていくと、GeForce GTX 1070 with Max-Q Designは、無印のモバイル版GeForce GTX 1070のスコアと比べると多少低いスコアになる。

 なお、NVIDIA Control Centerから電力設定で「パフォーマンス最大化」を選んだとしても、必ずしも高スコアになるとは限らなかった。

ベンチマーク結果1
標準電力設定-パフォーマンス最大化
PCMark 10 v1.0.1403
Extended Score60346145
Essentials78707576
App Start-up Score88779025
Video Conferencing Score68745985
Web Browsing Score79918052
Productivity70037566
Spreadsheets Score80079398
Writing Score61266092
Digital Content Creation62326229
Photo Editing Score73237538
Rendering and Visualization Score72797132
Video Editing Score45424496
Gaming1042910797
Fire Strike Graphics Score1508415925
Fire Strike Physics Score1085710907
Fire Strike Combined Score60886103
3DMark v2.4.3819 - Time Spy
Score48184823
Graphics score50035009
CPU score39843985
3DMark - Fire Strike
Score1128812767
Graphics score1307215746
Physics score1058610687
Combined score58676004
3DMark - Sky Diver
Score2899228718
Graphics score5109650876
Physics score96919687
Combined score2306921765
3DMark - Cloud Gate
Score2720427230
Graphics score101126101084
Physics score76457655
3DMark - Ice Storm Extreme
Score137979132272
Graphics score262650242273
Physics score5184651088

 3DMark - Fire Strike実行中のログから、Max-Q設定(電力設定=最適電力)と、電力設定を「パフォーマンスを最大化」とした場合で比較をしてみた。まずGPUクロックについては、グラフを見る限り最大クロックは1,594.5MHzで両者同じであり、「パフォーマンスを最大化」としても無印のGeForce GTX 1070と同等になるわけではなかった。

 Max-Q設定ではより細かくクロックを落としている印象だが、その逆にMax-Q設定では高いクロックを維持しているのに「パフォーマンスを最大化」の場合はクロックを落としている箇所も見られた。

 GPU温度を見ると、最大温度では誤差の範囲で変わらなかった。ただしグラフを見ればパフォーマンスを最大化のほうが高い温度で推移していることが分かる。これはCPU温度も同様だ。その上で、パフォーマンスの最大化を選んだ場合がMax-Qよりも低くなる逆転現象が生じるのは、温度と冷却のバランスが崩れるためだろう。CPUクロックを引き上げたい時にGPUが十分に冷えていない、そしてその逆もあり、時として必要な時に必要なクロックが得られずスコアを下げているように見える。

GPUクロック
GPU温度
CPU温度

 ゲーム性能では、フルHD解像度であれば最新ゲームタイトルを高画質以上で60fps前後のフレームレートで楽しめるだけの性能を見せている。

 ファイナルファンタジーXIVやファンタシースターオンライン2は最高画質設定で問題ない。Assassin's Creed Originsは各画質設定で概ね50~60fpsなのでこちらも問題なし。Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsはウルトラ画質時のみ50fpsを割り込んだが、G-Sync対応液晶パネルであるためスムーズさでは問題なかった。なお、実ゲームでも「パフォーマンスを最大化」はほとんど効果がないようだった。

ベンチマーク結果2
標準電力設定-パフォーマンス最大化
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(DirectX 11/最高品質)85018552
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6)2889828479
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands - ウルトラ48.1946.11
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands - 非常に高い73.1569.53
Assassin's Creed Origins -Ultra High5555
Assassin's Creed Origins -Very High6160

 VRMarkについても、スコアはまずまず高めのものが得られた。SteamVR パフォーマンステストについても「レデイ」評価で、忠実度も9.5ポイントと高い。

ベンチマーク結果3
標準
VRMark v1.1.1272
Orange Room7885
Cyan Room4546
Blue Room1534
Steam VR Performance Test

 動作音については、アイドル時は35dB前後なので静かであるが、高負荷時は40dB台半ばとなり、もっとも高負荷がかかるシーンでは50dB付近まで上昇した。静かとは言えないが、GeForce GTX 1070とクアッドコアCPUを搭載する一般的なゲーミングノートPCと同じくらいか、一部のOC製品よりは音量が小さい。その点ではGeForce GTX 1070 with Max-Q Designを選んだことが功を奏していると言える。

あくまで軽量スリムが主体のゲーミングノートPC

 「ただ性能を」、「ただコスパを」求めるならば、ROG ZEPHYRUSよりは、ROGシリーズでもほかのモデルが適しているだろう。性能で言えば同社のゲーミングノートPC中で最速というわけではないし、無印のモバイル向けGeForce GTX 1070搭載モデルと比べて若干低い。電力設定で「パフォーマンスを最大化」を選んだとしても、Max-Qに合わせてデザインされた本製品はバランスを崩すだけのようで、メリットは感じられなかった。

 しかし、ベンチマーク結果が示すとおり、フルHD解像度では最新ゲームタイトルを高画質設定で楽しめるだけのスペックで、かつG-Sync対応である点から多少60fpsを下回ったとしてもスムーズな描画が得られて快適だ。スリムで実用レベルの快適さを欲すれば、本製品は高価であるがほかに代わる製品がない有力な選択肢である。