Hothotレビュー
Steam VRに対応しコンテンツが大幅増加! セットアップが容易なVRデバイス「Dell Visor with Controllers」
2017年12月12日 06:00
デル株式会社は12月9日、Windows Mixed Realityに対応した「Dell Visor with Controllers」を発売した。
Windows Mixed Realityヘッドセットは、これまでにAcer、HP、富士通から発売されており、国内向けに販売される4番目の製品となる。直販価格は63,180円と高めだが、Amazonでは5万円を切る48,595円で販売されており(12月7日時点)、安価に入手できるPC向けVRヘッドセットとして注目を集めている。
今回デルより、Dell Visorと、Windows Mixed Reality対応ノートPCとしてセットで販売されている「New Inspiron 15 7000 ゲーミングノート」を借用した。そこで本製品の詳細スペック、使い勝手などについてレビューしよう。
なお、マイクロソフトは11月15日に「Windows Mixed Reality for SteamVR」をリリースし、Windows Mixed Realityヘッドセットで、Staemで配信されているVRコンテンツがプレイ可能になっているため、「Oculus Rift」や「HTC Vive」とのVR体験の違いについてもお伝えしたい。
Windows Mixed Realityとはなにか?
Windows Mixed Realityは、Microsoftが開発したMixed Reality(複合現実)のプラットフォーム。AR(拡張現実)とVR(仮想現実)をカバーするプラットフォームで、ARデバイスとしては「Microsoft HoloLens」が開発者向け・企業向けに販売されており、「Windows Mixed Reality ヘッドセット」とした場合には、VRデバイスを指している。
前述のとおり、現在Windows Mixed Realityヘッドセットは、日本エイサー、HP、デル、富士通が発売しており、またレノボが日本市場参入を表明しているが、機能的なスペックは変わらない。とくにコントローラは、ロゴが違うだけでまったく同じものだ。
ただし、ヘッドセットのデザイン、着け心地、ヘッドバンドの調整機構、オーディオケーブルの取り回しなど、細かな個所は異なっている。またSamsungは、有機ELディスプレイを採用し、ステレオヘッドフォンが一体化した「HMD Odyssey」を海外で販売しているが、現時点で日本に投入される予定はアナウンスされていない。
解像度 | 2,880×1,440ドット |
---|---|
ディスプレイ | 液晶 |
リフレッシュレート | 最大90Hz |
認識範囲 | 最大105度 |
オーディオ端子 | 3.5mmオーディオジャック |
コントローラ | モーションコントローラ |
マイクロソフトは、Windows Mixed Realityヘッドセットを動作させるPCとして、「Windows Mixed Reality」と「Windows Mixed Reality Ultra」の2つのガイドラインを規定している。
PCの性能に合わせて負荷が調整されており、Windows Mixed Realityでは、リフレッシュレート60Hz/視野角90度、Windows Mixed Reality Ultraでは、リフレッシュレート90Hz/視野角100度で動作する。
CPU内蔵GPUでも動作できるWindows Mixed Realityヘッドセットは、外部グラフィックスを必須とするOculus RiftやHTC Viveより、導入のハードルは低い。
規格 | Windows Mixed Reality | Windows Mixed Reality Ultra |
---|---|---|
OS | Windows 10 Fall Creators Update | |
プロセッサ | Core i5-7200U、Intelハイパースレッディングテクノロジ対応のデュアルコアプロセッサ以上 | Core i5-4590、クアッドコアプロセッサ以上、AMD Ryzen 5 1400 3.4GHz、クアッドコアプロセッサ以上 |
RAM | 8GB DDR3 デュアルチャネル以上 | 8GB DDR3以上 |
ストレージ領域 | 10GB | |
ビデオカード | 統合型Intel HD Graphics 620以上のDirectX 12に対応した統合型GPU、GeForce MX150、GeForce 965M ※以前のIntel iGPU(HD Graphics 4xx/5xx/2xxx/3xxx/4xxx/5xxx/6xxx)はサポートされていない | GeForce GTX 960/1050以上のDirectX 12に対応したGPU、Radeon RX 460/560以上のDirectX 12に対応したGPU |
グラフィックドライバ | Windows Display Driver Model (WDDM) 2.2 | |
グラフィックスディスプレイポート | HDMI 1.4またはDisplayPort 1.2 | HDMI 2.0またはDisplayPort 1.2 |
ディスプレイ | 外部または統合型VGA(800×600ドット)ディスプレイ | |
USBの種類 | USB 3.0 Type-AまたはType-C | |
Bluetoothの種類(コントローラ用) | Bluetooth 4.0 |
仮想世界と現実世界を素早く行き来できる跳ね上げ式バイザーが便利!
共通スペックは前に記載したが、改めてDell Visorの詳細スペックをお伝えしよう。Dell Visorの本体サイズは170.5×270×130.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は0.59kg。
そのほかのメーカーのヘッドセットは暗い色を基調にしたカラーリングだが、Dell Visorのみホワイトカラーが採用されており、異彩を放っている。
ディスプレイは2.89インチのLCD(RGBサブピクセル)が採用されており、解像度は2,880×1,440ドット(1,440×1,440ドット×2、706ppi)。視野角は110度、リフレッシュレートは90Hzとされている。
レンズ調整機能はソフトウェアIPD(瞳孔間距離)方式を採用。「設定→Mixed Reality→ヘッドセット ディスプレイ→調整」と設定メニューの深い階層で変更しなければならず、つまみでいつでも調整可能なOculus RiftやHTC Viveに比べて不便だ。
PCとはHDMIケーブルとUSB 3.0ケーブルで接続する。本体前面には位置情報を取得するためのマッピング用デュアルB+W VGAカメラが搭載されており、またジャイロスコープ、加速度センサー、磁気計も内蔵されている。
外部にセンサーを設置するアウトサイドイン方式ではなく、2つのカメラで外界を捉えるインサイドアウト方式を採用しているため、セットアップは容易だ。
Dell Visorの装着感は良好。額、後頭部に当たるクッションは適度な硬さで、頭周りが62cmと大きな筆者でもぎりぎり被れる。ヘッドバンドは後頭部側のサムホイールで調整可能なので、脱着も容易だ。
便利な装備が「跳ね上げ式バイザー」で、VRコンテンツ体験中にスマートフォンにメールが届いても、ゴーグル部分を90度跳ね上げて、素早く確認できる。ゴーグルをズラさなければならないOculus RiftやHTC Viveより、断然スムーズだ。
個人差を感じたのがノーズパッド。Dell Visorは、鼻が当たる部分に、切れ込みの入ったゴム製フラップが装備されている。筆者にはピッタリとフィットしたが、顔が2回り小さい家人が試した際には、光が入って気が散ると不満を漏らしていた。鼻の高さだけでなく、顔の大きさなど、さまざまな条件によりフィット感が変化するようだ。
もし、筆者の家人と同様に外光が気になった際は、ティッシュペーパーなどを挟むか、スポンジなどを両面テープで貼り付けるなどの対策が必要だ。
モーションコントローラはBluetooth 4.0対応。サイズは152.7×119×119mm(同)、重量は0.34kg。電源は単3電池を左右合わせて4本使用する。
後発だけに、洗練されたボタン構成になっており、サムスティック、タッチパッド、トリガーボタン、グラブボタン、Windowsボタン、メニューボタンと多くのボタンがあるが、どれも操作しやすい位置に配置されている。数時間使えば位置関係、操作方法をマスターできるはずだ。
Windows Mixed Reality対応ノートPC「New Inspiron 15 7000 ゲーミングノート」
セットアップ方法を解説する前に、今回デルから借用したWindows Mixed Reality対応ノートPC「New Inspiron 15 7000 ゲーミングノート」(以下Inspiron)についても触れておこう。
Inspiron 15 7000は、第7世代のCoreプロセッサと外部グラフィックスを搭載したゲーミングノートPC。
Core i7-7700HQ/8GBメモリ/128GB SSD+1TB HDD/GTX 1050 Ti搭載モデル(144,980円)、Core i5-7300HQ/8GBメモリ/256GB SSD/GTX1060搭載モデル(164,980円)、Core i7-7700HQ/16GBメモリ/256GB SSD+1TB HDD/GTX1060搭載モデル(209,980円)の3モデルがラインアップされており、それぞれにDell Visorを同梱したセットが用意されている。
今回デルから届いた貸し出し機は、Core i7-7700HQ/8GBメモリ/256GB SSD/GTX 1050 Tiというラインナップに存在しない構成だったが、性能的にはローエンドの「New Inspiron 15 7000 ゲーミングプラチナ・GTX 1050 Ti搭載」に相当するはずだ。定番ベンチマーク「3DMark v2.4.3819」、「CINEBENCH R15」のスコアを計測したので、性能の参考にしていただきたい。
製品名 | New Inspiron 15 7000 ゲーミングプラチナ・GTX 1050 Ti搭載 | New Inspiron 15 7000 ゲーミングプレミアム・GTX 1060搭載 VR | New Inspiron 15 7000 ゲーミングプラチナ・GTX 1060搭載 VR | New Inspiron 15 7000 ゲーミングプラチナ・GTX 1050 Ti搭載・Dell Visor付き | New Inspiron 15 7000 ゲーミングプレミアム・GTX 1060 搭載 VR・Dell Visor付き | New Inspiron 15 7000 ゲーミングプラチナ・GTX 1060搭載 VR・Dell Visor付き |
---|---|---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-7700HQ | Core i5-7300HQ | Core i7-7700HQ | Core i5-7300HQ | Core i7-7700HQ | |
メモリ | 8GB | 16GB | 8GB | 16GB | ||
ストレージ | 128GB SSD+1TB HDD | 256GB SSD | 256GB SSD+1TB HDD | 128GB SSD+1TB HDD | 256GB SSD | 256GB SSD+1TB HDD |
GPU | GTX 1050 Ti | GTX 1060 | GTX 1050 Ti | GTX 1060 | ||
Dell Visor | なし | あり | ||||
標準価格 | 144,980円 | 164,980円 | 209,980円 | 203,480円 | 223,480円 | 268,480円 |
割引価格 | 5,000円 | 15,000円 | 10,000円 | 15,500円 | 25,500円 | 20,500円 |
販売価格(税抜、配送料込み) | 139,980円 | 149,980円 | 199,980円 | 187,980円 | 197,980円 | 247,980円 |
キャンペーン価格 | 118,983円 | 127,483円 | 169,983円 | 168,558円 | 177,058円 | 219,558円 |
※キャンペーン価格は記事執筆時(2017年12月8日)
ベンチマーク結果 | |
---|---|
3DMark v2.4.3819 | |
Time Spy | 2,491 |
Fire Strike | 6,850 |
CINEBENCH R15 | |
OpenGL | 97.00 fps |
CPU | 707 cb |
CPU(Single Core) | 158 cb |
インサイドアウト方式のDell Visorはセットアップが簡単
Dell Visorのセットアップはじつにカンタンだ。
ヘッドセットから伸びるHDMIケーブルとUSBケーブルをPCに接続すれば、自動的にセットアップがスタート。あとは画面の指示に従い、モーションコントローラをペアリングし、ルームスケールの境界を設定すれば、セットアップは完了だ。
インサイドアウト方式のDell Visorは、外部センサーを必要としないので、ケーブルを這わせたり、外部センサー用の電源を確保する手間はかからない。Oculus Rift、HTC Viveのセットアップを経験している人ほど、あっけなく感じる。
前後、上下、左右の6自由度(6DoF)で動き回れるDell Visorは、1.5×2mのスペースを確保する必要があるが、多少はズルしても構わない。
たとえば、筆者の部屋は壁沿いに低い本棚やテーブルが置かれているが、境界はその上の壁の位置で設定して、なんら問題なかった。壁に近づいても、先にコントローラが当たるので、足元は十分に余裕がある。もしスペースを確保できない場合は、壊れやすいものを片付けたうえで、自己責任で試していただきたい。
Steam VR対応によりVRコンテンツが大幅に増加!
Windows Mixed Realityヘッドセットでは、VRコンテンツを入手するのに2つの方法がある。1つはMicrosoft Store、もう1つはSteamを利用する方法だ。
手間がかからないのは、間違いなくMicrosoft Store。Microsoft StoreはWindowsにプリインストールされているので、ほかの一般的なアプリケーションと同様に、アプリをインストールすれば、VR空間内のスタートメニューに登録され、そこからすぐにVRコンテンツを楽しめる。
ただし、数は充実しているとは言えない。12月8日時点で「Windows Mixed Reality」で検索した際に表示される「対応アプリとゲームはこちら」に登録されているのは、61本のみ。ほかのVRプラットフォームと比べると、かなり寂しいと言わざるを得ない状況だ。
しかし、前述の通り、マイクロソフトは11月15日に「Windows Mixed Reality for SteamVR」を早期アクセス版としてリリースした。これにより、Windows Mixed Realityヘッドセットで、Staemから配信されているVRコンテンツがプレイ可能になった。
SteamでWindows Mixed Reality対応が謳われているVRコンテンツは、12月8日時点で115本に留まっているが、Oculus Rift、HTC Viveに対応したほかのコンテンツの多くが、Windows Mixed Realityヘッドセットで動作する。
マイクロソフトは、Steam VRライブラリの2,000タイトル以上が動作すると掲載している。
ただし、いくつか注意事項がある。まず「Windows Mixed Reality for SteamVR」のシステム要件が高いこと。Windows Mixed Realityヘッドセットは、外部グラフィックスがなくても動作するが、「Windows Mixed Reality for SteamVR」は、下記のとおりGeForce GTX 970以上の外部グラフィックスが必須だ。
要件 | 最低 | 推奨 |
---|---|---|
OS | Windows 10 Fall Creators Update | |
プロセッサ | Core i5-4590、クアッドコアプロセッサ(またはそれ以上)、AMD Ryzen 5 1400 3.4GHz、クアッドコアプロセッサ(またはそれ以上) | Core i7 |
RAM | 8GB | |
ストレージ領域 | 10GB | |
ビデオカード | GeForce GTX 970(またはそれ以上) | GeForce GTX 1070(またはそれ以上) |
DirectX | Version 11 |
また、SteamのすべてのVRコンテンツが動作するわけではない。今回、Windows Mixed Reality対応が謳われていないVRコンテンツをいくつか体験してみたが、「Tilt Brush」と「TITAN SLAYER」は正常に動作したが、「Raw Data」は起動すらしなかった。
さらに、Windows Mixed Reality対応が謳われている「The Lab」や「Audioshield」は、プレイは可能だが、コントローラのバイブ機能が作動しなかった。VRコンテンツで振動フィードバックがないと、没入感が激減してしまう。早期対応に期待したい。
Windows Mixed RealityヘッドセットのVR体験は?
最後に、Dell VisorのVR体験の質について言及しておこう。
筆者は、アウトサイドイン方式を採用するOculus RiftとHTC Viveを所有しているが、外部センサーのないインサイドアウト方式のDell Visorでも、体験にほとんど差はないと思う。動きはスムーズで、遅延やトラッキングの狂いに起因するVR酔いも、まったく感じなかった。
唯一気になったのが、たまにモーションコントローラの位置情報が失われること。
具体的には、モーションコントローラを下に向けてだらりと下げると、ヘッドセットのカメラの死角に入るためか、いきなり変な位置にワープしてしまう。少し持ち上げれば正しい位置に復帰するが、何らかの改善を期待したい。
Oculus Riftが5万円で購入できる現在、価格的なアドバンテージはないが、セットアップが容易で、Steam VR対応により多くのコンテンツをプレイ可能になったDell Visorは、PC接続型VRデバイスとして魅力的な選択肢となった。
だからこそ、一刻も早くSteam VRのコンテンツでモーションコントローラの振動機能を利用できるようにしてほしい。また、Microsoft StoreのVRコンテンツ拡充にも期待したいところだ。