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外付けGPUボックスが付属した13.3型ゲーミングノート「LEVEL∞ PCLEVEL-13FH052-i7」

~ビデオカードをThunderbolt 3で接続するのは実用的か?

PCLEVEL-13FH052-i7シリーズ

 株式会社ユニットコムがiiyama PCブランドのLEVEL∞で販売中の「PCLEVEL-13FH052-i7シリーズ」は、外付けGPUボックスを標準装備する13.3型ノートPCだ。

 CPUに第7世代Intel Core i7を搭載したノートPC本体と、Pascal世代のNVIDIA GeForce GTX 10シリーズを組み込んだ外付けGPUボックスの組み合わせが、どのような性能と使い勝手を提供するのかチェックする。

13.3型ノートPCと外付けGPUボックスを組みわせた「PCLEVEL-13FH052-i7」

 iiyama PCの「PCLEVEL-13FH052-i7シリーズ」は、13.3型ノートPCと外付けGPUボックスをセットにした製品で、外付けGPUボックス側に標準搭載するビデオカードの仕様によって3モデルがラインナップされている。

LEVEL-13FH052-i7シリーズの主なスペック
製品型番LEVEL-13FH052-i7-RNSVILEVEL-13FH052-i7-TNSVILEVEL-13FH052-i7-VNSVI
CPUCore i7-7500U
メモリ16GB DDR4-2133 (8GB×2)
内蔵GPUIntel HD Graphics 620 (CPU内蔵GPU)
システムストレージ250GB SSD (NVMe対応 M.2 SSD)
データストレージ1TB HDD (SATA)
光学ドライブ非搭載
ディスプレイ13.3型フルHD液晶 (非光沢/1,920×1,080ドット)
OSWindows 10 Home 64bit
外付けGPUGeForce GTX 1060 (3GB VRAM)GeForce GTX 1070GeForce GTX 1080
販売価格 (税別)199,980円225,980円249,980円

 ノートPC本体の仕様については3モデルとも共通で、CPUに2コア4スレッドCPUのCore i7-7500U(2.7GHz)、メモリはDDR4-2133動作の16GB(8GB×2枚)、ストレージはNVMe対応の250GB SSDと1TB HDDを備える。ディスプレイはフルHD(1,920×1,080ドット)表示対応の13.3型の非光沢液晶で、OSにはWindows 10 Homeを採用している。

 筐体はアルミ合金製で、サイズは約330×226×19mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約1.53kg。

本体正面。LEDインジケータを備えている
本体背面。インターフェイスは備えていない
左側面。電源スイッチ、USB 3.0、AC電源コネクタ、音声入出力を備えている。SIMスロットは利用できない
右側面。Gigabit Ethernet、SDカードスロット、HDMI、Mini DisplayPort、USB 3.0、Thunderbolt 3を備える
本体天面。LEVEL∞ロゴが控えめに刻印されている
本体底面。正面側の両サイドにはスピーカー、背面側には換気用のスリットを備える。換気用スリットは、CPUクーラーの吸気口として機能している
ディスプレイは13.3型の非光沢液晶ディスプレイ。画面解像度は1,920×1,080ドット
ディスプレイ上部にはWindows Hello対応の200万画素Webカメラを搭載
キーボードはアイソレーションタイプ。キー間隔は19mmのフルピッチ
タッチパッド。クリックボタンは独立している
ディスプレイと本体の接続部分に隠れる形でCPUクーラーの排気口が設けられている
ACアダプタ。出力40Wでコンパクトなものを採用している

 外付けGPUボックスは、PowerColor「DEVIL BOX」のOEM品であり、ノートPC本体とは40Gbpsの帯域を持つThunderbolt 3で接続する。PCLEVEL-13FH052-i7シリーズでは、GeForce GTX 1060 3GBからGeForce GTX 1080 TiまでのGPUを選択できる。筐体サイズは約172×400×242mm(同)。

 外付けGPUボックスをノートPCと接続した場合、ノートPC内蔵ディスプレイの描画は外付けGPUボックス内のビデオカードに切り替わる。もちろん、外付けGPUボックスに搭載したビデオカードの画面出力端子も利用可能であるため、外部ディスプレイやVRデバイスへの画面出力も可能だ。

 筐体には合計5基のUSB 3.0ポートとGigabit Ethernetが搭載されており、ゲームプレイ用のコントローラや、キーボード、マウスなどを接続しておくことができる。また、筐体内部にはSATA 6Gbpsポートと2.5インチシャドウベイが1基ずつ備えられており、オプションで120~480GBのSSDを搭載できる。

外付けGPUボックス。PowerColorのDEVIL BOXのOEM品であり、本体正面にはDEVILロゴがペイントされている
外付けGPUボックス本体正面。USB 3.0×1基を備える
外付けGPUボックス本体背面。Gigabit Ethernet、USB 3.0×4(A端子×3+Type-C×1)、Thunderbolt 3、AC電源コネクタを備える他、搭載したビデオカードの画面出力端子が利用可能
本体内部。正面側に吸気用の120mmファン、天面に排気用の90mmファンを搭載している
標準装備のインターフェイスボード。外付けGPUボックスのUSB 3.0ポートやGigabit Ethernet、SATA 6Gbpsなどを提供する
2.5インチシャドウベイ。SATA接続のSSDを搭載できる
電源ユニットにはSeasonic SS-500L1U Active PFCを搭載。総出力500Wの80PLUS GOLD認証電源
ノートPCとの接続に用いるThunderbolt 3ケーブル。ケーブル長は約50cm
Thunderbolt 3ケーブルでの接続が確立すると外付けGPUボックスの電源がオンになる。稼働中は白色LEDが点灯する

ノートPC単体の性能をチェック

 まずはノートPC単体での性能をベンチマークテストでチェックしていく。PCLEVEL-13FH052-i7では、専用アプリケーションの「CONTROL CENTER」でPCの動作モードを選択できるが、今回はデフォルト設定の「エンターテイメント」でテストを実行した。

「CONTROL CENTER」。動作モードの切り替えのほか、ファン速度や電力設定の変更、デバイスのオン/オフなどが行なえる

 実行したベンチマークテストは、PCMark 8、3DMark、ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク、CINEBENCH R15、CrystalDiskInfo、CrystalDiskMarkだ。

ノートPC単体でのベンチマークスコア
項目ACアダプタ接続時バッテリ駆動時
PCMark 8 v2.7.613
Home accelerated 3.0 Score3,9611,999
Creative accelerated 3.0 Score4,8772,036
Work accelerated 2.0 Score4,9333,117
3DMark v2.3.3693 - Time Spy v1.0
Score38679
Graphics Score34168
CPU Score1,6191,012
3DMark v2.3.3693 - Fire Strike v1.1
Score979190
Graphics score1,076201
Physics score4,3922,366
Combined score34569
3DMark v2.3.3693 - Sky Diver v1.0
Score4,031837
Graphics score3,997741
Physics score4,3122,913
Combined score3,901766
3DMark v2.3.3693 - Cloud Gate v1.1
Score6,2231,891
Graphics score8,8521,949
Physics score3,0521,714
3DMark v2.3.3693 - Ice Storm Extreme v1.2
Score45,28612,403
Graphics score48,39111,261
Physics score36,98319,232
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
1,920×1,080ドット/標準品質(ノートPC)2,207698
1,920×1,080ドット/最高品質1,028270
CINEBENCH R15
OpenGL45.62 fps11.10 fps
CPU266 cb156 cb
CPU(Single Core)135 cb62 cb
システム用ストレージのCrystalDiskInfo実行結果。Samsungの「SSD 960 EVO 250GB」と認識された
データ用ストレージのCrystalDiskInfo実行結果。「ST1000LM048」はSagateの1TB HDDだ
システム用ストレージのCrystalDiskMark実行結果
データ用ストレージのCrystalDiskMark実行結果

 GPUにCPU内蔵GPUであるIntel HD Graphics 620を用いることからも想像できる結果だが、ノートPC単体での性能は、ゲーム向きと言えるものではない。16GBのメインメモリや、システムストレージとして搭載されているNVMe対応SSDの「Samsung SSD 960 EVO(MZ-V6E250B)」の優れた性能もあって、基本的な操作に対するレスポンスは軽快だが、ゲーミングPCとしてはGPU性能が不足している。

 また、バッテリ駆動時は大きく性能が低下する。バッテリ駆動中は、CPUクロックが最大1.5GHz前後に抑えられ、CINEBENCH R15のようなCPUの全スレッドを使用する処理でも、CPU使用率が最大50%程度に抑制される。

 この動作はCONTROL CENTERで動作モードを「パフォーマンス」に変更しても変わらないため、仕様から期待される性能を発揮するためには、ACアダプタを接続が必須だ。

 バッテリ駆動時間については、ディスプレイ輝度40%、無線LAN使用という条件でバッテリが満充電から5%になるまでの時間を測定した結果、BBench(キーストローク+Web巡回)実行時で約6時間37分、ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークのループ実行時でも約3時間44分を記録した。

 iiyama PCのゲーム用ノートPC「LEVEL∞ N-Class」製品であるPCLEVEL-13FH052-i7シリーズだが、ノートPC単体の性能特性は、ゲーミングPCというよりモバイルノートPCに近い。

 外出先でもゲームを存分に楽しめるように、強力なGPUを内蔵する多くのゲーミングノートPCとは、異なるタイプの製品だ。

外付けGPUボックス利用時のゲーミング性能をチェック

 続いて、外付けGPUボックスを利用した際の性能をチェックする。

 今回、外付けGPUボックスに組む込むパーツとして、GeForce GTX 1060からGeForce GTX 1080 Tiまでの4種類のGPUを搭載したビデオカードと、SATA 6Gbps接続のSSDである「Crucial MX300」の525GBモデルを用意した。テストに用いるゲームについては、外付けGPUボックス内のSSDにインストールしている。

ビデオカード 仕様一覧
GPUGeForce GTX 1060 6GBGeForce GTX 1070GeForce GTX 1080GeForce GTX 1080 Ti
ビデオカードベンダーMSI
製品型番GeForce GTX 1060 6G OCGeForce GTX 1070 AERO 8G OCGeForce GTX 1080 AERO 8G OCGeForce GTX 1080 Ti Founders Edition
CUDAコア1,280基1,920基2,560基3,584基
ベースクロック1,544MHz1,531MHz1,632MHz1,480MHz
ブーストクロック1,759MHz1,721MHz1,771MHz1,582MHz
ビデオメモリ6GB GDDR58GB GDDR58GB GDDR5X11GB GDDR5X
メモリスピード8Gtps10Gtps11Gtps
メモリインターフェイス192bit256bit352bit
比較に用いたビデオカード。左からGTX 1060 6GB、GTX 1070、GTX 1080、GTX 1080 Ti。
GeForce GTX 1080 TiのGPU-Z実行画面。接続インターフェイスがPCI Express 3.0 x4になっていることが確認できる。
テストに用いたSSDのCrucial MX300 525GB。仕様上では、リード530MB/s、ライト510MB/sの速度を持つSSDだが、外付けGPUボックスを介した接続では何らかのボトルネックが生じているようで、スペック通りの性能は発揮されていない

 実行したベンチマークテストは、3DMark、ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク、ダークソウル3、Fallout 4、オーバーウォッチ、The Witcher 3: Wild Hunt、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands、Watch Dogs 2。いくつかのテストでは、ビデオカードから外部ディスプレイに画面出力した際の性能も測定した。

3DMark v2.3.3693 - Time Spy v1.0 (内蔵ディスプレイ)
3DMark v2.3.3693 - Fire Strike Ultra v1.1 (内蔵ディスプレイ)
3DMark v2.3.3693 - Fire Strike Extreme v1.1 (内蔵ディスプレイ)
3DMark v2.3.3693 - Fire Strike v1.1 (内蔵ディスプレイ)
3DMark v2.3.3693 - Sky Diver v1.0 (内蔵ディスプレイ)
3DMark v2.3.3693 - Cloud Gate v1.1 (内蔵ディスプレイ)
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
ダークソウル3 (ver. 1.14)
Fallout 4 (ver. 1.9.4.0/高解像度テクスチャパック適用)
オーバーウォッチ (ver. 1.11.1.2.37270)
The Witcher 3: Wild Hunt (ver. 1.31)
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands (ver.2270626)
Watch Dogs 2 (ver.1.015.183.1064214)

 多くのテストでは、搭載したGPUのグレードに応じてスコアやフレームレートの差がついている。一般的なビデオカードに用いられるPCI Express 3.0 x16に対し、約4分の1の帯域となるThunderbolt 3(40Gbps)を介した接続でも、それだけがボトルネックとなって性能を発揮できないということはないようだ。

 内蔵ディスプレイと外部ディスプレイを使った場合の比較では、いずれも外部ディスプレイに接続した方がより良い結果が得られた。スコアやフレームレートの差はテストによるが、同じ条件で1割以上の差がついているものも少なくないため、性能を優先するのであれば外部ディスプレイを用意するという選択はアリだろう。

 実際にゲームをプレイしてみた結果としては、Fallout 4やオーバーウォッチがかなり快適にプレイできる一方で、CPUへの要求が厳しいWatch Dogs 2は、フレームレートの低さが目立つ結果となった。

 シングルスレッド性能への要求が厳しいダークソウル3では、GPU負荷だけが高い場面は最大フレームレートである60fpsで動作するものの、CPU負荷の高い場面ではGeForce GTX 1080 Tiであっても40fps台までフレームレートが落ち込む場面がみられた。

 外付けGPUボックスを利用するとなると、ノートPCとの接続に用いるThunderbolt 3の転送帯域が十分なのかという疑問が浮かぶところだが、実際に動作させてみた印象としては、「CPUがゲームの要求スペックを満たしているか」の方が重要であるように感じた。

 性能以外の部分で気になったのが動作音の大きさだ。外付けGPUボックスには吸気用の120mmファンと排気用の90mmファンが各1基ずつ搭載されているが、このファンの動作音がかなり大きい。外付けGPUボックスを使用してゲームをプレイする際は、遮音性の高いヘッドフォンを用いることをおすすめする。

モバイル用途とゲームを1台でこなせるPC

 PCLEVEL-13FH052-i7シリーズは、外出時に携帯するモバイルノートPCとしての用途と、自宅などに据え置くゲーミングPCとしての用途を1台でまかなえるPCだ。

 Thunderbolt 3ケーブル1本で外付けGPUボックスと接続し、PCの特性をがらりと切り替えられる簡便性も魅力だが、性能の良いモバイルノートPCと、ゲーミングPCの両方を購入するより安価である点も見逃せない。

 両立の難しいモバイル用途とゲーム用途の両方を必要としているのなら、PCLEVEL-13FH052-i7シリーズはその期待に応えられる可能性がある製品だ。