本城網彦のネットブック生活研究所

キュートなネットブック「HP Mini 110」



 4月に発売された同社のネットブック「Mini 1000/夏モデル」が早くも「Mini 110」へモデルチェンジする。改善点はCPUやストレージの強化など。そしてカラーバリエーションとなる。試作機であるものの、一気に全カラーが届いたので、強化ポイントも含めご紹介したい。

HP Mini 110

●Mini 1000と110との違い

 実は前モデルにあたる「Mini 1000」は、1回仕様が変わっている。Atom N270プロセッサやIntel 945GSE Expressなど、ネットブックを構成する主要コンポーネントは同じなのだが、2008年の年末モデルの「10.2型1,024×600ドット」に対して、現在販売しているのは「10.1型1,024×576ドット」へ。この1点に限ってはスペックダウンだ。縦に24ドットの差は結構あるため、筆者としてはあまり好きではないのだが、他のネットブックも後者の解像度が増えてきた。もしかするとパネルの単価がより安いのかも知れない。

 今回発表された「Mini 110」は嬉しい改善点でいっぱいだ。まずCPUがAtom N270プロセッサ(1.6GHz/FSB 533MHz)からN280プロセッサ(1.66GHz/FSB 667MHz)へ変更。チップセットはIntel 945GSE ExpressでグラフィックスはGMA 950と同じなのだが、このわずかな差は体感で解るほどの違いがある。メインメモリとグラフィックメモリをシェアするGMA 950の特性からだろうか、クロック以上にFSBの速度アップが効いているようだ。

 次にストレージの変更。HDDが1.8型/4,200rpm/PATAから2.5型/5,400rpm/SATAへ、32GBのSSDも高速タイプとなった。言うまでもなく、1.8型のHDDは一般的に2.5型と比較して低速だ。インタフェースがPATAかSATAかの差も大きい。他社のネットブックの多くは2.5型HDDを搭載しているので、そう考えると、他と同じになっただけとも言える。SSDは旧モデルを触ったことがないので、詳細は不明であるが、同社の資料によると200%以上の向上となっている。

 PCを構成するコンポーネントでCPU、グラフィックス、ストレージ、この3点が全体のパフォーマンスに大きく影響するため、今回の仕様変更である程度高速になるのは容易に想像がつく。その他の部分も含めMini 1000とMini 110との違いを表にまとめたので参考にして欲しい。

【表】両製品の違い

Mini 1000Mini 110
デザインuzu(うず)uzu(うず)、canna(かんな)
サイズ/重量261.7×166.7×25.9mm/1.1kg261.5×172×26.3~32.7mm/1.15kg(HDD)、1.06kg(SSD)
CPUAtom N270(1.6GHz/FSB 533MHz)Atom N280(1.66GHz/FSB 667MHz)
ストレージ1.8インチPATA/4,200rpm/80GB2.5インチSATA/5,200rpm/160GB
VGA出力無しあり
Webカメラあり(30万画素)
I/OUSB 2.0×2、Ethernet、SDカードスロットUSB 2.0×3、Ethernet、5in1メディアスロット

 細かい改善点としては、USB 2.0のポートが2つから3つへ、SD専用カードスロットが5in1メディアスロットへ、そしてミニD-Sub15ピンが追加された。いずれもより便利になるものであり、好ましい改善点だ。ただし、ミニD-Sub15ピンを搭載したためだろうか、高さがMini 1000より高くなっている。とは言え、その差は最大で約7mmで、微妙に傾斜していることもあり、あまり気にならないだろう。重量も若干増えている。価格は構成にもよるが「47,880円」から。ネットブックとしては標準的な価格帯だ。

「uzu(渦)漆黒」ネジ2本外すとメモリにアクセスできる。HDDは簡単に交換できない本体左側面。音声入出力、USB 2.0×2、電源入力、ロックポート
右側面Ethernet、ミニD-Sub15ピン、5in1メディアリーダ、USB 2.0×2前。左側が電源スイッチ、右側が無線LANのON/OFFキーボード(JP)。特に変な並びになっている部分はない。US版と比較して部分的にキートップが小さくなるのはキー数が多いので仕方がない
キーボード(US)。日本語キーボードを見た後だと妙にキーの数が少なく見える。[BS]キーや[Enter]キーが横長だキーピッチは少なくとも17mmは確保されている。数あるネットブックの中でもキータッチは優秀な方だ

 バッテリは標準で3セル。約3.7時間の駆動可能だ。オプションの6セルだと6.3時間。ただし、ご覧のように6セルを付けると、ボディがかなり傾く。個人的にはこの程度傾いた方がキー入力し易いので好みであるものの、駄目な人もいるだろうし、何よりカバンへ入れた時、変なかさばり方をする。考えようによっては3セルをもう1本余分に持った方が無難かも知れない。

3セル/6セルバッテリとACアダプタ。6セルバッテリは結構大きいことがわかる。ACアダプタのコネクタ部分はミッキータイプだ3セルバッテリ装着時。本体がほぼ水平に机に設置する6セルバッテリ装着時。本体がかなり傾いているのがわかる
重量(3セルバッテリ装着時)。実測で1,198g重量(6セルバッテリ装着時)。実測で1,345g

●使用感とカラーバリエーション

 ファーストインプレッションは、ボディのサイズの割りにキーボードがゆったりしていると感じた。また、たわむこともなくしっかりした作りだ。タッチパッドは滑りも良く使い易い。ボタンは左右にあるタイプであるが、軽過ぎず重過ぎず、丁度いい感触。振動は若干あるものの、気にならないレベルだ。ノイズもボディに耳をつけない限り聞こえない。熱は、左下がほのかに暖かくなる程度。全体的に好印象だ。

 スピーカーはネットブックにありがちな裏や正面側面ではなく、面白い位置に付いている。写真からは解り難いかも知れないが、場所は液晶パネルの下、フチのスリット部分だ。最大音量自体はあまり大きくないものの、位置が位置なだけに非常に聞き易い。また、振動が天板にも伝わっているため、若干ではあるが低域のボリューム感が増している可能性がある。液晶パネルの周りのフチが太いのはあまりかっこよくないが、こんな用途であればありだと思う。

 特筆すべきは、液晶パネルが「ノングレア」になり映り込みが低減したことだ。久々にネットブックでノングレアパネルを見たが、個人的には明らかにこちらの方が好みだ。発色もあまり青に偏らず結構sRGBに近く明るい。縦が576ドットなのが残念であるが、これまで触ったネットブックの液晶パネルとしては1位2位を争うクオリティだろう。

映り込みが無いノングレアパネル(正面から)映り込みが無いノングレアパネル(斜めから)。ご覧のようにまったく映り込みが無い。液晶パネルの淵の方が映り込んでいる

 そしてMini 110の特徴であるカラーバリエーションはこんな感じだ。「uzu(渦)」のバリエーションとして「漆黒」(先の写真参照)と「白磁」、「canna」として「薄紅藤」の3タイプ。天板だけではなく、キートップにも同じカラーリングを施しているので、パッと見、受ける印象はかなり異なる。特にピンク色が基調になっている「薄紅藤」は、何ともキュート。男性はともかくとして、女性には好まれるだろう。

「漆黒」/天板「漆黒」/キーボードなど「白磁」/天板
「白磁」/キーボードなど「薄紅藤」/天板「薄紅藤」/キーボードなど

 届いた3つの内、「漆黒」だけが日本語キーボード、他2つはUSキーボードだったが、キー配置やキートップの形やサイズ以外に、キートップの表面仕上げに違いがあった。日本語キートップは少しザラザラしたマットな感じ、USキートップはツルツルしているのだ。筆者としては前者が好みなのだが、こう言った違いは、たまたまなのか、コストの問題なのか、同社として何か意図があるのかないのか気になる部分でもある。

キートップ(日本語)。ザラザラしたマットな感じになっているキートップ(US)。ツルツルしており、明らかに日本語キーボードとは違う

 さて売りの1つである「ZEN-design」であるが、正直個人的には好きではない。Minii 1000の「Vivienne Tam Edition」や「canna/薄紅藤」は、ある意味お洒落なので許容範囲内であるが、「uzu(渦)」の2つに関しては中途半端感がある。シンプルに「黒」と「白」にした方が日本国内に関しては受ける気がする。

 OSは「Windows XP Home Edition SP3」、オフィスモデルには加えて「Microsoft Office Personal 2007 2年間ライセンス版」が入っている。セキュリティに関しては「ノートン・インターネットセキュリティ2009(60日間試用版)」がプリインストール。どれもネットブックとしては一般的なので解説の必要は無いだろう。

起動時のデスクトップ。Skypeもインストール済み。タッチパッドのドライバは「Synaptics TouchPad」デバイスマネージャ/主要デバイス。テスト機のHDDはFUJITSU MJA2160BHが使われていたCドライブに全部割り当てられ1パーテーション。リカバリー用のエリアは無い
HDBench。Atom N270プロセッサ+GMA950と比較してCPUとメモリ、ビデオ関連が速いことがわかるCrystalDiskMark。FUJITSU MJA2160BHは、割とシーケンシャルライトが速いようだ

 タッチパッドのドライバは「Synaptics TouchPad」が使われている。スクロールはパッドの右側を操作するタイプだ。デスクトップにアイコンが見える「Syncables」は、デスクトップPCなどとデータの同期ができるソフトウェア。ただ、実際は外部のサイト経由(アカウントの作成が必要)となるので、さほど実用的ではない。同じくアイコンがある「VZAccess Manager」は米国でプリペイド型通信サービスをアクセスするのに必要なもので国内では無意味(詳細はこの記事を参考にして欲しい)。この辺りは製品版では無くなっている可能性がある。

 速度的にはベンチマークテストからもわかるように、Atom N280とHDDの違いが効いて、Windows XPがサクサク動く。今回3台共HDDだったので、高速化した32GB SSDの速度も気になるところだ。Mini 1000はレビューしていないが、パワーアップしたMini 110はネットブックとして使う範囲であればパフォーマンス的に問題になることはない。

 以上のように、Mini 1000と比較してMini 110は若干サイズは大きくなったものの、パフォーマンスも含めかなりの部分が改良され、より快適に使えるネットブックとなった。特に10.1型の液晶パネルでノングレアを搭載しているネットブックは現時点において希少価値であり、この部分だけでも惚れ込むポイントとなり得る。もちろんZEN-designにビビッと来る人もいるだろう。是非、量販店などで触って体感して欲しい。