大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」
富士通のPCはなぜ「オンライン生活最適PC」と言えるのか?
~テレワーク最適機能の搭載はAI「ふくまろ」効果?
2020年6月1日 06:55
新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業で在宅勤務が行なわれている。緊急事態宣言が解除されたものの、当面は在宅勤務を中心とする企業も多く、今後この状況が終息を迎えても、テレワークを継続的に活用する企業は少なくないだろう。
そうしたなか、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が、「オンライン生活最適PC」という新たなメッセージを打ち出す。
FCCLの齋藤邦彰社長兼CEOは、「FCCLの特徴は、独自の製品ポートフォリオを持ち、その広がりによって、人に寄り添うPCを実現してきた点にある。その取り組みを進めてきた結果が、『オンライン生活最適PC』の実現につながっている」とする。
FCCLが、「オンライン生活最適PC」というメッセージを発信できる理由はどこにあるのだろうか。
リモートワーク需要でPC市場が拡大
新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本の多くの企業がリモートワークを導入することになった。
もともとは東京オリンピックの開催時を視野に入れ、リモートワークの体制がじょじょに整いつつあった大手企業だけでなく、導入が遅れていた中堅中小企業においてもリモートワークを採用する動きが活発化。日本マイクロソフトの調べによると、2020年5月26日時点で、中堅中小企業の50%がリモートワークを実施。さらに導入を検討中とする企業は26%となり、全体の4分の3の企業がリモートワークを視野に入れている。
強制的とも言える環境のなかではじまったリモートワークの導入にあわせて、その実現に不可欠なPCの出荷台数が増加。一般社団法人電子情報技術産業協会が発表した2020年4月の国内PC出荷実績では、前年同月比5.3%増の69万9,000台となった。
PC業界では、2020年1月のWindows 7のサポート終了以降、需要が大きく落ち込むと予測していたが、2020年4月は、前年実績を上回る結果となっているのだ。
FCCLでも、リモートワークなどの広がりにあわせて、PCの需要が拡大している。
FCCLの齋藤邦彰社長兼CEOは、「4月、5月のPC出荷は好調であり、当初計画を上回っている。リモートワーク需要があるのは明らかだが、それとともに、年度末需要の持越しや、学校や塾といった教育関連の需要など、さまざまな要素が組み合わさっている。新型コロナウイルスの影響による部品調達の課題もあり、すべての需要に応えられないという状況も生まれているが、国内開発、国内生産の強みを活かして、調達体制や生産体制にも柔軟性やスピード感を持たせることができ、中国で生産しているPCメーカーとは異なる体制が確立できている」とする。
そして、「FCCLのPCは、リモートワークにとどまらず、在宅学習や、巣ごもり生活を楽しむといった用途を含めた『オンライン生活』において、最適な機能を搭載しており、その点が評価されている。幅広い商品をラインナップによって、利用シーンや生活スタイルにあわせたPCを選択でき、人に寄り添う環境を実現している点が受けている。ノートPCに加えて、デスクトップPCも好調である」とする。
FCCLは、4月および5月における新たな需要拡大の流れを捉え、2020年6月からは、「FMVで、新しい日常へ」とのメッセージとともに、「オンライン生活最適PC」という訴求を開始する。
「PCがどれだけ広い分野に対応できるか、どれだけ広く社会に実装できるか、といった考え方をもとにしたFCCL独自のユニークなポートフォリオが、『オンライン生活最適PC』を実現することにつながっている」(FCCLの齋藤社長兼CEO)とする。
「オンライン生活最適PC」を構成する要素とは?
FCCLの竹田弘康執行役員副社長兼COOは、「FCCLの製品ポートフォリオや、そこに搭載されている1つ1つの機能を見ると、オンライン生活に最適なものが搭載されていることがわかる。たとえば、コンシューマ向けPC。もともと、リモートワークへの最適化を目指して開発したわけではないが、結果として、最適な機能がビルトインされている」とする。
それをいくつかの例を挙げて示す。
たとえば、LIFEBOOK NHシリーズやAHシリーズ、MHシリーズにおいては、ディスプレイ上部の左右に4個のマイクを搭載している。これにより、多くのPCに採用されている2個のマイクに比べて、ビデオ会議での音声認識率を高めている。
「中心から45度の範囲では、2個のマイクでは89.0%の音声認識率であったものが、4個のマイクでは92.4%となる。また、90度の広範囲で計測すると、2個のマイクでは79.9%の音声認識率であるが、4個のマイクでは87.5%の音声認識率となる。広角に音を拾うことができるため、ビデオ会議のさいに、少し姿勢を崩したり、資料を見るために顔の位置が変わっても、相手とのコミュニケーションは円滑にできる」とする。
さらに、LIFEBOOK NHシリーズやAHシリーズ、UHシリーズでは、フルHDカメラを搭載。相手に見せたい商品や素材なども、くっきりと表示でき、ビデオ会議による商談時でも効果を発揮できるとする。
スピーカーに関しても、NHシリーズには、オンキヨーとの協業によって開発したスピーカーボックスを搭載。音響補正アプリケーション「Dirac Audio」との組み合わせにより、迫力のある低音を実現。映画館やコンサート会場にいるような臨場感がある音を楽しめるようになっている。
また、UHシリーズでも、オンキヨーの協業による高音質スピーカーを採用。これも、ビデオ会議のさいに、相手の声を聞き取りやすいというメリットにつながっている。
そのほかにも、17.3型液晶ディスプレイを搭載したノートPCのLIFEBOOK NHシリーズや27型液晶ディスプレイを搭載した一体型(オールインワン)のESPRIMO FHシリーズでは、大画面でExcelなどの作業がしやすいこと、HDMI入力端子を搭載していることから、会社支給のPCを接続すればセカンドディスプレイとして利用するといった使い方もできる。
また、ESPRIMO FH70およびFH52では、Wi-Fi 6に対応。Wi-Fi 6ルーターとの組み合わせによって、従来の約1.4倍の高速通信を実現。資料の迅速なダウンロードや快適なビデオ会議を実現できる。
一方で、作業面での快適性も実現している。
FCCLがラインナップしているほぼすべてのPCで、PCIe接続のSSDを搭載。約8秒と起動が速いため、とっさの会議や、急ぎの作業を行なう場合にも効果を発揮したり、多段階押下圧や球面シリンドリカル形状のキーボードの採用により、長時間のレポート作成でも打ちやすく、疲れないといったメリットを生んでいる。
また、LIFEBOOK MHシリーズおよびQHシリーズを除く全機種に有線LANポートを搭載。無線LANによるインターネット回線が不安定な場合でも、有線接続で安心してビデオ会議や作業が行なえる。
竹田副社長兼COOは、「FHシリーズでは3mmのストローク、AHシリーズでは2.5mmのストロークを実現しており、メールやチャットでの文字入力が増えたテレワークの作業に最適である。また、仕事をする部屋が家の構造上、無線LANが届きにくい場所にある場合も、有線LANポートを使うことで、安定した通信環境を実現できる。そして、ノートPCであっても、豊富なインターフェイスを装備しているため、変換ケーブルやUSBハブなどがなくてもさまざまな周辺機器との接続が可能になっている」とする。
竹田副社長兼COO自身も、無線LANが届きにくい部屋で在宅勤務をしていると言い、有線LANポート搭載が有効性を実感しているという。
さらに、LIFEBOOK UH95やMH75では、クラムシェルスタイルに加えて、テントモードやタブレットモードによる3つのスタイルで作業ができたり、LIFEBOOK AH-XおよびESPRIMO FH-Xでは、4K液晶ディスプレイの搭載により、高解像度を活かした作業領域の拡大を図ることができる。
また、「UHシリーズは、クラシェルでは約698g、2in1では約868gの世界最軽量を実現しているが、これは家庭内においても効果を発揮する。家のなかで、資料や飲み物を持っての移動する場合でも、PC本体は片手で持ち運ぶことができる」とする。
セキュリティにおいては、全機種において、マカフィーリブセーフを3年間無償で利用できること、Windows Hello対応モデルでは、顔認証で利用できることなどを示した。
「オフィスの環境では守られていたPCが、家庭環境では、セキュリティが弱くなるのは明らかである。外からの攻撃にも対策ができるように、すべてのPCでマカフィーリブセーフを利用できるほか、2019年度下期からは、ウイルス駆除機能をオプションで提供している」する。
このように、FCCLの製品ラインナップを見ると、オンライン生活に最適な機能が数多く備わっている。2020年5月22日から順次販売を開始している夏モデルも、「充実した家時間を送るためのPC」と位置づけている。
「ふくまろ」抜きには成しえなかった最適化
先に触れたように、FCCLの竹田副社長は、「FCCLのPCには、結果として、オンライン生活やリモートワークに最適な機能がビルトインされている」と指摘するが、それを実現できた理由が1つある。
それは、「ふくまろ」の存在だ。
FCCLの齋藤社長兼CEOは、冗談交じりに、「ふくまろのコロナ退治」と表現し、新型コロナウイルスの感染拡大によって広がった在宅でのリモートワークや、新たな生活様式に対応したPCの活用提案に、ふくまろ向けに搭載した機能が貢献したことを示す。
ふくまろは、FCCLの個人向けPCに標準搭載されているAIアシスタントだ。ふくまろに話しかけると、PCで音楽や写真を再生したり、家電を操作したり、外出中に部屋の写真を送信してくれたりといった使い方ができる。ふくまろの最新版では、顔認識技術を搭載し、家族の顔と名前を覚えて、家族それぞれにあわせた会話をするなど、ふくまろを「もう1人の家族」として位置づけることができる。
斎藤社長兼CEOは、「ふくまろは、AIスピーカーと同じこと、あるいはそれ以上のことを、PCでもできるようにしている。そのためには、ふくまろが、利用者の声をしっかりと聞き取ることができるマイクを搭載し、ふくまろがしっかりと発話をするスピーカーを搭載する必要があった」と語る。
実際、搭載しているマイクの数を一般的な2個から、4個に増やしたのは、「ふくまろの音声認識率を高めるためだった」と、竹田副社長兼COOは明かす。
そして、多くのPCに、フルHDカメラを搭載しているのも、ふくまろで提供する留守番機能のために家のなかを鮮明に撮影したり、家族の顔認証を行なうために必要だったからだ。
こうした「ふくまろ」のために強化された機能が、リモートワークに最適なスペックとなっている。FCCLが「オンライン生活最適PC」と宣言する上で、「ふくまろ」の存在抜きには成しえなかったというわけだ。
フルート教室のオンラインレッスンにも効果
一方、FCCLは、2020年6月1日付けで、新たに音楽教室のオンラインレッスンを支援する取り組みも発表する。これも、「ふくまろ」によって、PCに搭載された機能をベースにして、実現できた支援策だと言える。
具体的には、東京都練馬区の「Liebeフルート音楽教室」と、京都市の「徳本早織フルート教室」の協力を得て、LIFEBOOK NHシリーズを活用したオンラインレッスンの効果を検証。この成果をもとに、ゴールデンウイーク以降、オンラインレッスンを開始しているというものだ。現在、Liebeフルート音楽教室では、FCCLが貸与した講師用1台、生徒用5台のPCを使用しているほか、自宅にあるPCを使用してオンラインレッスンを受講したいという生徒を含めて、15人が受講しているという。
Liebeフルート音楽教室を主宰する上塚恵理氏は、「これまで使用していたスマートフォンやPCよりも、はるかに高音質、高画質でレッスンを行なえるようになった。スマートフォンでは、画像が小さいため、細かい運指の指導などが伝えにくい部分があったり、所有していたPCでは、フルートの音が割れてしまい、音の出し方に関する指導が難しかったりした。だが、LIFEBOOKでは、フルートでも生の音色に近い音質で聞こえるため、楽器演奏の一番の要である音そのものについての指導が的確に行なえるようになった。また、フルートの演奏で大切な唇のかたちや、楽器をかまえるさいのフォームについても、対面レッスンと同じように伝えることができている」とする。
これも、高い性能を持ったマイク、スピーカー、カメラを搭載しているからこそ実現できたと言える。
東京都が示したロードマップでは、2020年6月1日からステップ2に入り、音楽教室も営業再開が可能になるが、Liebeフルート音楽教室では、今後は、対面レッスンとともにオンラインレッスンも選択できるようにするという。
「オンラインレッスンを使用すれば、移動時間や移動コストがなく、レッスンに参加できるようになるほか、夏場の炎天下や冬場の寒い日、あるいはゲリラ豪雨などで、教室に通うのが難しかったりする場合にもオンラインに切り替えてレッスンを受けることができる。新たな生活様式におけるレッスンの仕方として提案したい」(Liebeフルート音楽教室の上塚氏)と述べる。
FCCLでも、今回のフルート教室に続き、オンラインレッスンの普及に向けた活動を進めていく考えを見せている。
個人向けプロモーションを4つの観点から展開
FCCLでは、5月からコンシューマ向けプロモーション「FMVで、新しい日常へ。Go, The New Normal. BY FMV」をスタートしている。
このプロジェクトでは、「STUDY」、「WORK」、「LIFE」、「PLAY」といった4つの観点から、新たな日常における、PCの活用提案を行なっていくことになる。
すでに第1弾として、「新しい学び方へ」と題して、5月25日~6月21日までの期間、キャンペーンを実施。FMVの公式Twitterアカウント「fmworld_biz」をフォローして、キャンペーン投稿をリツイートすると、抽選で10人に、「D-SCHOOL」オンラインプログラミング個別指導の1年間無料利用権をプレゼントする。
第2弾は、自分らしく快適なテレワークを軸とした「WORK」とし、6月1日正午からキャンペーンをスタート。さらに、時間や距離を超えた共有体験などにフォーカスした「LIFE」は、6月15日から、オンライン飲み会やオンラインイベントなどにも広げた「PLAY」は6月29日からそれぞれキャンペーンを開始。10万円分の商品券や快適テレワークギアセットなどをプレゼントする予定だ。
「仕事仲間との働き方や、友人とのつながり、家族との過ごし方など、生活には大きな変化が起こっており、人に会うという、当たり前のことができなくなっている。かつての常識に捉われない新しい発想や知恵、生き方が求められているなかで、欠かすことができない大切なコトを、FMVの力でアップデートしていくプロジェクトになる」と位置づける。
斎藤社長兼CEOは、「FCCLは、新たな生活様式へと変化するなかで、生活者の悩みや課題に寄り添い、人に寄り添うPCを開発、生産、販売し続ける。そうした姿勢をより明確にしていきたい」と語る。
FCCLは、新たな日常に向けた「オンライン生活最適PC」を軸にして、2020年度のPCビジネスの成長戦略を描くことになる。