山田祥平のRe:config.sys
その後のDの呪縛
2025年1月18日 06:18
新しい道具には新しい使い方が似合う。慣れ親しんだ古い使い方にこだわり続けることがいいとは限らない。頭ではそのことを分かっているのだが、カラダが言うことをきかなかったりもする。個人的に半世紀程度の付き合いという点では、道具としてのPCもカメラも似たようなものだが、使い方が変わるスピードは大きく違う。
重さに負けてカメラを買い替え
暮れに新しいカメラを買った。ニコンのミラーレスカメラZ6IIIだ。まだ本格的にはデビューさせていない。まず、道具として手になじませる必要がある。発売は2024年7月だったので、発売後半年してからの購入だ。発売日に購入しなかったニコンのデジタルカメラは初めてだ。
Z6IIIはFX(フルサイズ)フォーマットの2,450万画素カメラでバッテリとメモリーカードを含む撮影時重量は760gだ。
これまで使っていたメインカメラは同じニコンのデジタル一眼レフカメラでD850だった。購入は2017年だったのでちょうど7年使ったことになる。まだ現行製品でもあるし、大きな不満もなかった。画素数だって新規購入したZ6IIIより多い4,575万画素ある。
このカメラを年末に出かけた旅行に久しぶりに持ち出して使ったのだが、撮影時重量1,005gというのはつらい。これに愛用ズームレンズのAF-S VR Zoom-Nikkor 24-120mm f/3.5-5.6G IF-EDを装着して10日ほど携行した。レンズ重量は575gあるので合計約1.6kgだ。つらかった。新製品のカメラを半年経ってから購入する気になったもっとも大きな理由だ。
新しく入手したZ6IIIでは、2021年に入手したZ fcで常用していたレンズを同じように常用する。Z fc はグリップの形状が手になじまずに手放してしまったが、念のためにとレンズは残しておいた。
NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRはDXレンズなので、Z6IIIのフルサイズセンサーからAPS-Cサイズを切り出して使うことになる。焦点距離も1.5倍になるので、27-210mm相当のズームレンズとして使える。重量も315gだ。Z6IIIに装着すると合計1,075gとなり、D850携行時より3割以上もダイエットできた。それでも445gのZ fcに装着して合計760gで使っていたことを思えば重い。
持ち歩いてナンボだから
Z fcでの不満はセンサークリーニングとボディ内手ブレ補正の機能がなかったことだった。3年間使ったが、その間に撮った写真には悲しいゴミの影が見つかるものがそれなりにある。アプリを使って除去するのはやっぱり面倒だ。
Z6IIIには、この両方がある。
ただ、失われたものもある。たとえばこのZ6IIIにDXレンズを装着した場合、撮像範囲を16:9に設定することができない。必ず3:2になってしまうのだ。Z fcではそんなことはなく、16:9を設定できたので、スマホでもレンズ交換式カメラでも16:9画角で撮るようにしてきた。D850には16:9という撮像範囲設定はなかったので撮影気分も新鮮だった。
だが、Z6IIIで16:9を設定できるのはフルサイズセンサー対応のFXレンズを装着したときだけだ。FXレンズはDXレンズに比べて大きく重いので、軽量化のためにカメラを新調した立場としては微妙に残念だ。ここはひとつ、ファームウェア等の更新でできるようにしてほしいものだが、フルサイズセンサーをDXレンズで使うというのはやっぱり後ろ向きなんだろうか。
カメラとレンズの重量を気にするようになってからは、もうレンズの明るさはあまり気にならなくなった。ISO感度はD850が64~25600、Z fcは100~51200、ISO 100~64000と順調に感度が上がってきているので、一絞りや二絞りくらい明るいかどうかなんて、撮影とはあまり関係なくなっているからだ。
バッテリにはEN-EL15c、EN-EL15b、EN-EL15aを使う。基本的にD850と共通だが、無印以降、a、b、cと世代を重ねてきた。D850に同梱されていた無印のEN-EL15は使えない。世代が変わり、EN-EL15cは容量も増えているし、何よりもUSB Power Deliveryに対応するようになった。同梱のEN-EL15cをZ6IIIに装着した状態で27W以上推奨でACアダプタやモバイルバッテリ等での充電がUSB Type-Cポートからできる。
ニコンのカメラはUSB給電とUSB充電を明確に区別していて、カメラの電源がオンの場合に内蔵バッテリへの充電が行なわれないようにできる。つまり、内蔵バッテリが空になっても、外部に接続したモバイルバッテリなどでの駆動ができる。内蔵バッテリに充電してから、その電力を駆動に使うといった無駄がなく、一般的な30W USB PD対応モバイルバッテリがあれば電力の心配をせずにカメラを使い続けられる。
このあたりのプロ好みの仕様決めはさすがだと思う。
ちなみにバッテリは専用充電機MH-25aでも充電できる。愛用で予備も所有しているD850用のAC対応専用充電機だ。充電器そのものは最新型がUSB PDに対応しているが、さほど急速に充電できるわけではない。また、カメラ本体にUSB Type-Cケーブルを接続してのUSB充電ができるのは、カメラに同梱されている最新のEN-EL15cを装着している場合だけだ。
スマホのカメラ、カメラのカメラ
スマホだけで取材等の撮影をまかなおうとしてみた時期もあったが、どうしてもシャッターチャンスを逃してしまうことが多かった。特に人間を被写体とする場合はカメラ専用機が便利だ。
だが、その代償が重量となる。カメラとPCの両方を荷物として携行するわけだが、今はPCよりもカメラのほうが重い道具になってしまった。だが、カメラとPCの双方でいろんなペリフェラルを流用できるのはうれしい。充電機やモバイルバッテリなどはもちろん、Z6IIIではHDMIポートもフルサイズだ。なんでも共用できる。
慣らしが済んだらかつて愛用した大量の重量級Fマウントレンズをどうするかを考えなくてはならない。ずっとすべてを置いておくというわけにもいかない。正直、フルサイズ対応のZマウントレンズも欲しい。
D850では何の問題もなくオートフォーカスが使えていたFマウントのマクロレンズAI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8DをマウントアダプターFTZ IIを使って装着すると、AFが使えず、フォーカスエイドしかできないことに気がついた。古いレンズを使い続けるのはそろそろ潮時か。そもそもD850も処分してしまったのでもう後戻りはできない。20年以上前のレンズでも、その画質に不満があるわけではないだけに、愛用レンズとの別れはつらい……。