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ハイスペックなRyzen AI 9搭載ポータブルゲーミングPC「OneXFly F1 Pro」
2025年1月14日 06:12
One-Netbook製ポータブルゲーミングPCの新製品「OneXFly F1 Pro」が発売された。さまざまなタイプのポータブル機を開発する同社だが、今回は横持ちでオーソドックスなスタイルのポータブルゲーミングPCとなっている。
CPUに最新のRyzen AI 9シリーズを搭載(Ryzen 7 8840U搭載モデルも展開)し、最新かつ高性能を売りにしている。しかも高性能は処理能力だけに留まらない。発売に先駆けて実機をお借りできたので、使い勝手を含めて見ていく。
最新のRyzen AI 9を採用
今回お借りしたのは、Ryzen AI 9 365を搭載したモデル。より高性能なRyzen AI 9 HX 370を搭載したモデルもあるので、本製品の中ではミドルクラスのスペックとなる。試用機の主なスペックは下記の通り。
【表1】スペック | |
---|---|
CPU | Ryzen AI 9 365(10コア/20スレッド、最大5GHz) |
GPU | Radeon 880M(CPU内蔵) |
メモリ | 32GB LPDDR5-7500 |
SSD | 1TB(M.2 2280 NVMe PCIe 4.0) |
ディスプレイ | 7型光沢有機EL(1,920×1,080ドット/144Hz/10点マルチタッチ) |
OS | Windows 11 Home |
汎用ポート | USB4×2、USB 3.2 Gen 1×1 |
カードスロット | microSD |
映像出力 | USB4×2 |
無線機能 | Wi-Fi 6E、Blunetooth 5.2 |
有線LAN | なし |
電源 | 65W USB PD |
バッテリ容量 | 48.5Wh |
その他 | ヘッドセット端子、3軸ジャイロスコープセンサー、3軸加速度センサーなど |
本体サイズ | 263.6×98.2×22.6mm |
重量 | 599g |
価格 | 18万8,000円 |
CPUのRyzen AI 9 365は、12CUを搭載したRadeon 880Mを内蔵。メインメモリは32GB、SSDは1TBとなっている。SSDのサイズはスペック上でM.2 2280と書かれており、先々交換する際の安心感がある。なお最上位モデルは、Ryzen AI 9 HX 370(16CU搭載のRadeon 890Mを内蔵)/64GBメモリ/4TB SSDという構成で26万8,000円。
ディスプレイは7型でフルHDの有機ELパネルを搭載。リフレッシュレートも144Hzに対応する。通信はWi-Fi 6Eに対応。USBは2基のUSB4に加え、USB 3.2 Gen 1のType-A端子も搭載している。65WのUSB PD充電器が付属する。
カメラとマイクは搭載していない。Type-AのUSB端子を備えている点からも、ゲームプレイに特化した設計であることが伺える。
堅実なデザインに各所の作りの良さが光る
次は外見。7型ポータブルゲーミングPCとしては無駄なくスリムなデザインで、スペック上のサイズ通りにコンパクトな印象だ。筐体デザインもブラックで統一されていてシンプルにまとまっているが、電源を入れると左右のアナログスティックのベース部分とグリップ部分に仕込まれたLEDが虹色に輝いて自己主張する。
持った感じは、グリップ部分の裏側の出っ張りが控え目ながら、手に沿う滑らかな曲面でホールド感は良好。男性にしては手が小さめの筆者だと、L/Rボタンを含めていい感じに収まる。どちらかと言うと、手が大きい男性よりも、手が小さい女性の方がフィットしそうな形状だ。
スタンド類はないので、手持ち前提のデザインとなる。底面が平らなので垂直に置けはするが、不安定なのでおすすめしない。
ボタンは基本的にXinput準拠で、単純な形状の十字ボタンや、アナログ入力のLT/RTボタンなどが素直に配置されている。ボタンやスティックの感触も奇をてらうことなく素直な作りで、どの操作も違和感がない。音は比較的静かで、全体的に柔らかめのタッチだ。
独自要素としては、L/Rボタンの中央寄りに拡張ボタンという小さめのボタンが用意されている。このボタンを押しながらほかのボタンを押すことで、別の機能を持たせられるという、シフトキー的な存在だ。ただボタンの位置がちょっと遠くて押しにくい。使用は必須ではないので、こういう機能もあると覚えておく程度でいい。
ゲームをプレイしてみても、操作はとてもスムーズ。600g弱と軽めなこともあり、持っている時の負担やボタンの押しづらさも感じない。「ストリートファイター6」のような格闘ゲームも、手持ちの状態で快適にプレイできる。
有機ELディスプレイは、色味はそれほど派手ではないが、各色はっきりした表現で美しい。明るさ調整の幅も広く、最低ではかなり薄暗く、最高だとまぶしく感じられるほど。視野角も問題なく、残像感も全くない。文字のスクロール表示も滑らかでくっきりと表示できる。ゲームをプレイしていても画面の美しさはとても満足できる。
さらに素晴らしいのがサウンド。本機のスピーカーは左右のグリップ部分の下部にあり、かなり広くスリットが開けられている。HARMAN AudioEFXのエキスパートによるチューニングを施したというスピーカーは、何かの音をぱっと聞いただけで音の良さが感じられる。
ゲームの音をうまく再現できるのはもちろん、音楽を流すと特に良い。小型筐体では高音が目立ったバランスになるのが常だが、想像よりも低音ががんばっており、全体としての調和が取れている。「ドラゴンクエストIII」のBGMで流れるオーケストラがとても気持ちよく聞ける。もちろん音楽鑑賞用スピーカーとして使えるとまでは言わないが、手軽に使えるものとしては十分過ぎるほど高音質だ。
ハードウェア周りでは、本体上部にある電源ボタンが惜しい。ボタンに押し込み幅やスイッチの感覚がなく、電源が入ったかどうかを手の感触で判断しにくい。横にあるLEDが点灯するのを見ればいいが、わずかでもクリック感があればと思ってしまう。うっかり押してしまいそうな感じがない、と言えば利点ではあるのだが。
エアフローは背面吸気、上面排気。排気口は右上の方に広く取ってあり、高負荷時にはファンが高速に回転する。音はホワイトノイズのような感じで、聞こえはするが耳障りな感じは少ない。ゲームプレイ中でも音は聞こえるが、邪魔になるとは感じなかった。
ソフトウェア周りでは、カスタマイズ用の「OneXConsole」がプリインストールされている。CPUの消費電力を4~30Wに調整できるほか、ファンの回転数やバイブレーション設定も可能。LED装飾の光り方のカスタマイズもこれで行なう。
またゲームランチャーの機能も呼び出せる。ここではゲームパッド部分の機能変更やマクロ設定ができる。GPUメモリの固定割り当て量の設定も可能で、試用機では1~24GBに設定できた(初期状態は2GB)。
Radeon RX 7800M搭載GPUボックスも用意
今回は、本機と同時発売となるRadeon RX 7800Mを搭載した外付けGPUボックス「ONEXGPU2」も合わせてお借りした。USB4で接続してみるとすぐに認識し、追加のドライバインストールもなく、再起動するだけで使用できる。この状態でHDMIなどで外部ディスプレイ出力すると、外部ディスプレイでのグラフィックス処理能力が格段に上がる。
「ONEXGPU2」には外部電源が必要となるが、USB4接続で給電もされるため、別途充電ケーブルを接続する必要はない。「ONEXGPU2」には有線LAN端子やUSB Type-A端子などもあるので、これをUSB Type-Cドックとしてキーボードとマウスを接続しておけば、「OneXFly F1 Pro」をすぐさま据え置き機代わりに活用できる。
縦置きでの使用が想定されており、上部と下部には「OneXFly F1 Pro」と同じくリング状のLED装飾が施されている。価格は14万9,800円と値が張るが、後述する性能と見比べて検討していただきたい。
ゲーム系ベンチは最高画質でも「普通」で動く
ベンチマークテストで性能もチェックする。利用したのは、「PCMark 10 v2.2.2704」、「3DMark v2.30.8348」、「VRMark v1.3.2020」、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」、「Cinebench 2024」、「CrystalDiskMark 8.0.6」。
テストでは、最大のパフォーマンスを発揮できるよう、CPUの消費電力を最大の30Wに設定した(初期設定は15W)。合わせて「ONEXGPU2」を接続した場合のスコアも掲載する。
過去の製品のデータと比較すると、前世代のCPUであり、本製品でもエントリークラスで採用されているRyzen 7 8840Uに比べて、CPU/GPUともに2~4割程度のスコアの向上が見られる。内蔵GPUのCU数は同じ12なのだが、世代が進み、メモリ速度が向上したことが影響していると思われる。
結果を細かく見ていくと、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」ではフルHD設定のLOWで余裕の満点。製品版でもとても快適にプレイできた。そろそろ1つ上のNORMAL設定を内蔵GPUで動かせる時代が見えてきた。また評価が辛い「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」でも高画質設定で「普通」だ。
「ONEXGPU2」を接続すると、グラフィックス性能は圧倒的に向上する。今回採用したゲーム系のベンチマークテストはすべて満点評価で、最新の3Dゲームをプレイできる性能を確認できた。
ストレージはAcer製SSD「N700」が使われていた。最初からパーティションが半分で区切られているところに、各種ベンチマークソフトをインストールした後で計測したのだが、それでもシーケンシャルリードは7GB/s超と高速。ポータブル機でも妥協のない高性能だ。
また実際のゲームプレイのテストとして、「Fortnite」のバトルロイヤル1戦と、「Apex Legends」のチュートリアル1周のフレームレートを、NVIDIA FrameViewで計測した。解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)で実施。GPU割り当てメモリは16GBに設定した。
「Fortnite」では、DirectX 12でクオリティプリセットを中とした。フレームレートは平均80fps近くあり、下位1%でも50fps程度と十分な値。バトル時も含めて違和感なく快適にプレイできた。
「Apex Legends」では、すべての画質設定を最高に設定(ビデオメモリを16GB割り当ててあれば設定可能)。フレームレートは平均で60fps程度、下位1%で約40fpsで、普通にプレイできる程度にはなっている。画質はまだ下げられるので、144Hzのディスプレイに合わせてフレームレート優先にするのもありだ。
なお、駆動時間はPCMark 10による計測で、アイドル時連続で8時間12分、ゲーミング時で1時間6分という結果だった。
無難なデザインでも性能は妥協しない
本機は誤解を恐れず言えば、「ベタなポータブルゲーミングPCの最新型」だ。インターフェイスや形状はとてもシンプルで、特殊な仕様も少なく、ぱっと渡されてすぐ使える。ボタンやスティックの感触もよくある手ごたえで、尖った部分はないが不満を感じることもない。
それでいて、作りが平凡なわけではない。CPUは最新世代で性能は高く、冷却周りもしっかりしている。CPUの消費電力やビデオメモリの設定といったカスタマイズも自在にできる。ディスプレイは144Hzに対応した有機ELで、スペック通りの高性能を発揮する。
インターフェイス周りも、ボタンの位置や感触は良好だし、スティックはドリフトしづらい設計になっている。600gを切る軽さもあり、持ちやすさに不満はない。サウンドは良好でヘッドフォンなしでもいい音で遊べる。
ペタなデザインだからこそ無難に使えるし、無難さを邪魔しない高性能と品質を担保している、ということだ。どれを買うか迷った時に、安心して選べる1台に仕上がっている。