山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

電子書籍のページめくりに最適、ホイールも搭載した“全部入り”。サンワサプライの宙に浮かせて使うマウス

サンワサプライ「400-MAWBT204BK」。実売価格は7,480円

 サンワサプライから登場した「400-MAWBT204BK」は、片手で握り、宙に浮かせて操作するマウスだ。俗に「ごろ寝マウス」などと呼ばれるカテゴリの製品で、一般的なマウス操作に加えて、ホイールやマルチメディア関連のキーを備えているのが特徴だ。

 Bluetoothと2.4GHz帯の両方に対応し、PCやタブレットなどさまざまなデバイスで使用できる本製品は、電子書籍アプリと組み合わせることで、楽な姿勢でのページめくりを可能にしてくれる。今回はそれら電子書籍のページめくりの用途を中心に、レビューをお届けする。

マウスとしての機能が全部入り。操作は親指で行なう

 本製品のように、デスクの上に置かずに、宙に浮かせて使うマウスは、筆者の知る限り1990年代から存在するが、その機能は時代の変遷とともに進化している。

 初期の製品は接続方法は有線のみで、機能も「ポインタ移動」、「左右クリック」程度だったが、ホイールマウスが登場して以降は、上下スクロールのギミックが追加。さらに接続方法が無線に対応し、現在はUSBドングルを同梱した2.4GHz接続タイプと、PC以外にスマホやタブレットでも使えるBluetooth接続タイプ、およびそれらに両対応した3方式に分かれている。

 今回紹介する製品は、Bluetoothと2.4GHz帯の両方式に対応したハイブリッド型で、PC/スマホ/タブレットのいずれでも利用可能。さらにホイールも含めマウスとしての基本操作はもちろん、メディアの再生/一時停止、早送り/早戻し、さらに音量調整にも対応するなど、全部入りといっていい豊富な機能が特徴だ。

右手専用の設計。パッケージには本体のほか充電ケーブルが付属する
接続方式はBluetoothおよび2.4GHzの2通りで、先端のスイッチでどちらかを選択する。充電はUSB Type-Cで行なう
左側面。筐体下部には指をかける突起がある
右側面。左側面も含め、特にボタンやポート類はない
円形のコントローラ部を上下に2つ備える。上はマウス操作用、下はメディア操作用。左にはホイールも搭載する

 さてこうしたデバイスは、親指や人差し指、中指など、複数の指を用いて操作する製品が多くを占めるが、本製品は親指一本ですべての操作を行なうことが特徴だ。残りの4本の指は筐体を保持するのに使用し、操作には原則関わらない。

 個人的には、利用頻度の高い左クリックくらいは本体先端にボタンを配置し、人差し指で引き金を引くように操作できてもよいのではと感じるが、親指以外を使わないことはボディをしっかり握って操作できるということでもあり、これはこれでメリットもある。ただし一部に弊害があり、これについては後述する。

親指一本ですべての操作を行なうレイアウトを採用する
底面の突起に人差し指を掛けて握るのが基本スタイル

基本は「ポインタを合わせてクリック」だが別の方法も

 では実際に使ってみよう。今回はiOS/iPadOSのテストには「iPad mini(A17)」を、Androidのテストには先日紹介したレノボの「Lenovo Legion Tab Gen 3 (8.8, 3)」をそれぞれ使用している。利用にあたっては特に設定は不要で、Bluetoothのペアリングが終わればすぐに使えるようになる。

タブレットに触れずに操作できるため、タブレットの設置の自由度が高まる
iOS/iPadOSでは「SANWA MAWBT204」として認識される
Androidも同様に「SANWA MAWBT204」と認識される

 ページめくりについて、iOS/iPadOSとAndroidで共通の操作方法は、めくりたいページの左側にポインタを重ね、左クリックに相当する「L」ボタンを押すという、タッチ操作をエミュレートした方法だ。この場合、操作に使うのは本体上側のコントローラのみで、下側は使用しない。

 この操作方法はページめくりに限らず、画面上のあらゆる場所をクリックでき、なおかつアプリを問わずオールマイティーに使えるが、クリックできるのはポインタのある位置だけなので、ページを戻る場合はポインタを画面の反対側に持っていかなくてはならず、少々面倒だ。こまめにページを行き来する用途には向かないと言っていいだろう。

【動画】画面上のポインタを動かして左ページの上に置き、左クリックに相当する「L」ボタンを押してページをめくっている様子。iOS/iPadOSとAndroidで共通の操作方法だが、ページを戻るにはポインタを右ページに移動させなくてはならなかったりとやや面倒

 一方、iOS/iPadOSの電子書籍アプリの一部では、上側コントローラの上下キーでもページを進む/戻るの操作が行なえる。これならばページの前後を頻繁に行き来する場合でも、わざわざポインタの位置を動かす必要がなく便利だ。試した限りではKindleのほか、Apple Booksもこの操作方法に対応している。使えるならば優先的にこちらの方法でページめくりを行なったほうがよいだろう。

iOS/iPadOSでは、上側コントローラの上下キーでのページめくりに対応する電子書籍アプリもある
【動画】iOS/iPadOSの一部の電子書籍アプリでは、上側コントローラの上下キーでページをめくることもできる。ポインタを動かさずに直接ページをめくれるので手軽だ

 またAndroidについては、多くの電子書籍アプリが共通して備えている、音量ボタンによるページの進む/戻るが利用できる。ページめくりではこちらを用いたほうが明らかに直感的なので、Androidでは原則、ページめくりは音量ボタンで行ない、それ以外のオプションメニューを操作する場合のみポインタを使うのが望ましい。

Androidアプリの多くでは、音量キー(下側コントローラの上下ボタン)でページめくりが行なえる
【動画】Androidで、音量キー(下側コントローラの上下ボタン)でページめくりを行なっているところ。なお言うまでもないがアプリ側で設定を有効にする必要がある

 このように本製品によるページめくりの操作方法は、OSによっても、またアプリによっても微妙に異なる。キー割り当てをどうしても覚えられなければ、タップしたい位置にポインタを移動させてのクリックで一本化すれば構わないが、自分が使っている環境でより直感的なページめくり方法がないかは、ひと通り確認することをおすすめする。

 なお本製品はホイール機能も搭載している。電子書籍ユースではあまり出番はなく、せいぜいライブラリの上下スクロール程度だが、ウェブブラウジングなどでは出番は多そうだ。また電子書籍でも、スクロール型のコンテンツでは効果を発揮するはずだ。

ホイールもやはり親指で操作する。試した限り、スクロールの滑らかさはアプリによってかなりの違いがある

汎用的なコントローラを探している人向け

 以上、今回はiOSとAndroidでの使い方を紹介したが、できなさそうに見える操作でも何かしら操作する方法が用意されていたりと、一定の信頼性がある。ボディサイズはやや大柄だが、重量は実測58gと軽量なので、長時間持っていてもそれほど負担にならないのもよい。

 一方でボタン数が非常に多いことから、どこを押すべきなのか、手元を見て確認しなくてはいけないケースが少なからずある。このあたり、ボタン数が少なく、確認のために手元を見る必要はまったくなかったキヤノンのコントローラとはコンセプトの違いを感じる。

コントローラ部がひとつだけの旧来のタイプ(左)と異なり多彩な操作に対応できるが、どこを押してよいか迷うこともしばしば
以前紹介したキヤノンのコントローラ(左)。ボタンはわずか3つと、汎用性重視の本製品とは対照的だ

 また操作はすべて親指で行なうと書いたが、中には2つのボタンを併用せざるを得ない場合があり、その時は操作がやや複雑になる。

 たとえばiPadでホーム画面を左右にスワイプするには「Lボタンをホールドしたまま中央のジョイスティックを左右に倒す」のだが、Lボタンを押すのに親指を使うと、人差し指でジョイスティックを動かすというアクロバティックな操作にならざるを得ない。

 このように、原則として親指しか使わない操作体系であるがゆえに、いざという時に迷うケースは少なからずある。

2つのボタンを併用する場合は押し方がアクロバティックになることも

 このように突き詰めると無理のある操作も若干あるのだが、過去に紹介している同等のデバイスではそもそも操作方法自体が存在しないケースも多く、それよりはるかにマシと考える人も多いはずだ。

 実売価格は7,480円と決して安価とは言えないが、今回紹介した電子書籍ユースに限らず、あらゆる用途に対応しうる汎用的なコントローラを探している人であれば、それだけの価値がある製品と言えるだろう。

尾部には2.4GHzでの接続に使うUSBドングルを収納できる。タブレットではなくPCで使う場合はこちらの出番も多くなるだろう