山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
3万4,800円でページめくりボタン搭載7型E Ink端末「BOOX Leaf2」。“Kindle Oasisキラー”の実力は?
2022年11月30日 06:37
ONYX Internationalの「BOOX Leaf2」は、E Ink電子ペーパーを採用した7型の電子書籍端末だ。Google Playストアに対応し、さまざまな電子書籍アプリを利用できる本製品は、本体にページめくりボタンを内蔵するなど、読書専用の設計が特徴だ。
従来モデルにあたる「BOOX Leaf」は、ページボタンが本体ではなく外付けのカバーに搭載されていたため、カバーの重量を我慢しなくてはいけなかった。本製品は読書用のページめくりボタンを本体側に搭載したことで、より手軽に利用できるようになった。
さらに本製品は、サイズや機能からして直接のライバルにあたる「Kindle Oasis」よりもわずかに安価なことも大きな特徴だ。今回は国内代理店であるSKTから借用したブラックモデルを用い、従来モデルおよびKindle Oasisとの比較を中心に、電子書籍ユースにおける使い勝手をチェックする。
ページめくりボタン内蔵、メモリカード対応など見どころ豊富
まずは従来モデルにあたる「BOOX Leaf」および競合となるKindle Oasisとの比較から。
BOOX Leaf 2 | BOOX Leaf | Kindle Oasis(第10世代) | |
---|---|---|---|
発売月 | 2022年11月 | 2021年11月 | 2019年7月 |
サイズ | 166×137×6mm | 165.6×130.8×5.95mm | 159×141×3.4~8.4mm |
重量 | 170g(ホワイト)185g(ブラック) | 170g | 188g |
画面サイズ/解像度 | 1,264×1,680ドット(300 dpi) | 1,264×1,680ドット(300 dpi) | 1,264×1,680ドット(300ppi) |
ディスプレイ | 7型E Ink Cartaスクリーン | 7型E Ink Cartaスクリーン | 7型反射抑制スクリーン |
CPU | クアルコム4コア | クアルコム8コア (Cortex-A72 + Cortex-A55) | 1GHz Dual-core Freescale i.MX7D |
メモリ | 2GB | 2GB | 512MB |
内蔵ストレージ | 32GB | 32GB | 8GB/32GB |
メモリカードスロット | ○(最大512GB) | - | - |
フロントライト | 内蔵(色調調節) | 内蔵(色調調節) | 内蔵(色調調節/自動調整) |
ページめくり | タップ、スワイプ、ボタン | タップ、スワイプ、ボタン(外付) | タップ、スワイプ、ボタン |
端子 | USB Type-C | USB Type-C | microB |
防水・防塵機能 | - | - | ○(IPX8規格準拠) |
バッテリ持続時間/容量 | 26日(スタンバイ状態)、容量2000mAh | 不明(容量2,000mAh) | 最大6週間 |
価格(税込) | 3万4,800円 | 3万2,800円 | 2万9,980円(8GB、広告つき) 3万1,980円(8GB、広告なし) 3万2,980円(32GB、広告つき) 3万4,980円(32GB、広告なし) |
7型、300ppiという画面まわりの仕様は従来モデルの「BOOX Leaf」と共通。また寒色と暖色に対応したフロントライト、USB Type-Cポート、2000mAhというバッテリー容量も同様だ。本体幅は約6.2mm広がっているが、これはページめくりボタンが追加されたことによるものだろう。
重量はホワイトモデルは170gと同一だが、ブラックモデルは185gと、本体カラーによって重量が異なっている。これはブラックのみカバーガラスを採用するという変則的な仕様によるもので、それゆえブラックは本体とベゼルの間に段差のないフラットな設計になっている。
ページめくりボタン以外のもう1つの注目点として、メモリカードスロットが追加され、microSDが利用可能になったことが挙げられる。最近のスマホやタブレットはメモリカードスロットは廃止される方向にあるので、こだわりのあるユーザーにとっては大きなプラスだろう。
また実売価格の安さも大きなポイントだ。34,800円という実売価格は、本製品の競合に当たるKindle Oasisの、同じ32GBモデル(広告なし、34,980円)よりもわずかに安い。本製品はKindleシリーズと違ってGoogle Playストアが利用できるのが強みだが、にもかかわらず本製品のほうが安価なのは大きなインパクトがある。
その一方、気になる箇所もちょくちょく見られる。ひとつはCPUが8コアから4コアへとダウングレードしていること。また2GBというBOOXシリーズの中ではかなり控えめなメモリ容量もそのままで、従来モデルの欠点だった動作速度については不安が残る。これについてはのちほど詳しくチェックする。
リフレッシュモードの初期設定値に注意
セットアップの手順は従来のBOOXシリーズとほぼ同様で、まず電源まわりの設定を終えてホーム画面を表示させたのち、Wi-Fiの設定、およびGoogle Playストアの利用設定を行なう流れだ。
ちなみにBOOXシリーズは今春のアップデートで、登録作業不要でGoogle Playストアが利用できる仕組みが採用されたが、これは「BOOX Note Air2 Plus」など大画面モデル限定とのことで、本製品は手動でGSF IDを発行してGoogle Playストアが利用可能になるまで約一晩待たなくてはいけない従来の仕様のままだ。個人的には前者で統一してほしいと感じる。
ホーム画面はBOOXの小型モデルに共通する、メニューアイコンが(画面左ではなく)画面下に並ぶレイアウトなのだが、細かい部分で変更が入っている。例えば画面上部をタッチすると表示されるコントロールセンターは、これまでの画面上部ではなく、画面右に表示されるよう変更されている。
ざっと使った限りでは、このレイアウト変更自体はあまり必然性は感じないが、「E Inkメニュー」など日本語の翻訳が修正されていたりと、合わせて見直しがかけられている。このほかキーボードについても、デフォルトで日本語が扱えるようになっていたりと、細かいところで手が加えられているのが分かる。
本製品を使う上で気をつけたいのは、E Inkのリフレッシュモードで「スピード」が初期設定になっていることだ。これまでは「ノーマル」がデフォルトで、速度優先の場合に「スピード」に切り替える仕様だったのが、そちらがデフォルトなのはやや違和感がある。動作をなるべく高速に見せたい意図だと考えられるが、BOOXシリーズの利用経験があるユーザーほど戸惑うだろう。
なお本製品は従来モデルと同様、BOOX製品ではおなじみのスタイラスによる手書き機能は用意されていない。手書きが必須であれば、「BOOX Nova Air」をはじめとした、同じBOOXのほかの手書き対応モデルを検討するとよいだろう。
ページめくりボタンのカスタマイズで操作を極める
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。
本製品の最大のメリットは、やはりさまざまな電子書籍アプリが使えることだ、今回筆者がざっと試した中でも、Kindle、BookLive!、BOOK☆WALKER、DMMブックスの各アプリが利用できた。ページめくり時のエフェクトをオフにできないebookjapanは、ページの切り替えが必ずスライドになってしまうものの、こちらも動作自体は問題ない。
画質はというと、従来モデルと同じく300ppiで、このクラスとしては十分だ。7型ということでテキストはもちろん、コミックの表示にも余裕がある。また見開き表示も、かなり小さくなりはするが、十分に実用レベルだ。
ちなみにこの7型/300ppiという仕様は、Kindle Oasisとも横並びだ。画面を並べて見ると、Kindle Oasisよりも本製品のほうがコントラストははっきりしているが、これはKindle Oasisがかなり白っぽい色合いが標準であるためで、どちらかというと本製品のほうが紙の印刷物に近い印象を受ける。
なお本製品はE Inkの最適化機能を備えているため、こうした色合いを調整してKindle Oasisに近づけることも可能だ。これら最適化機能は、アプリ画面を開き、対象となるアプリのアイコンを長押しすることで設定画面を表示できる。これらの自由度の高さはBOOXシリーズならではだ。
本製品の読書まわりの機能で押さえておきたいのが、ページめくりボタンの設定だ。本製品のページめくりボタンの割り当ては、向かって下のボタン、親指が届きやすいほうが「次ページ」、遠いほうが「前ページ」という割り当てになっている。楽天Koboのページめくりボタン搭載モデルと同じ割当で、Kindle Oasisとは上下が逆となる。
この割当は、両ボタンの利用頻度を考慮すると妥当なのだが、本体を横にして見開きで読む場合に、ボタンの配置とページの進行方向が逆になるデメリットがある。もしこれが気になるようであれば、ボタンの割り当て設定で上下を入れ替えておくとよい。
ただしこの場合、本体を縦向きで使う時、親指から遠い側のボタンでページをめくることになってしまう。つまり一長一短あるのだが、これはユーザーの好みにもよるだろう。
なお本製品は、このページめくりボタンの挙動をアプリごとに設定できるほか、長押しにショートカットを割り当てられる。例えば90度回転を割り当てておけば、手動で画面の向きを回転させられるほか、ホームを割り当てておけば、ナビボールのダブルタップを使わなくともホーム画面に戻れるようになる。
本製品はジャイロセンサーを搭載しており、画面の向きの変更は自動で行なうことも可能なのだが、寝転がった状態で読むとなると、いまいち使い勝手がよくないこともある。画面の向きはコントロールセンター経由で手動変更することも可能なのだが、毎回開くのは億劫だ。そうした場合にボタンの長押しで画面を回転させられるのはなかなか便利だ。
本製品はこのページめくりボタンを音量調整ボタンとしても利用できるのだが、少々分かりにくいのは、本稿執筆時点ではそちらがデフォルトでオンになっていることだ。もしページをめくるつもりが音量調整になってしまう場合は、設定画面の「side key settings」の中にある「Custom Short-press Function」の設定内容をチェックすることをおすすめする。
緩慢なレスポンスを許容できるか
以上のように、電子書籍向きの仕様がほぼ全部入りで、なおかつさまざまな電子書籍アプリに対応する汎用性の高さが売りの本製品は、実売価格もKindle Oasisと横並びという、価格破壊力も要注目だ。「Kindleストア以外も使えるKindle Oasis」を求めるユーザーにとっては、魅力あふれる製品だろう。
ただしそんな本製品にもデメリットはある。それは動作速度だ。メモリ容量が2GBと、BOOXシリーズの中でも控えめなせいか、あるいはCPUが8コアから4コアへとダウンしているためか、レスポンスはかなり緩慢だ。
ページめくりボタンを使った操作はそこまで遅くはないのだが、タップおよびスワイプについては、反応がないのでもう1回操作を繰り返したところ、2回分まとめて反応するなど、処理が追いつかない故の症状が頻発する。特にアプリの起動や切り替えはボタンではなくタッチパネルでの操作となるため、この傾向がより顕著になる。複数の電子書籍ストアを併用できるのが売りの製品としてはかなりの痛手だ。
こうした緩慢なレスポンスは、Kindle Oasisの高速なレスポンスに慣れているユーザーはストレスになるのは間違いなく、これを許容できるかどうかが、本製品の購入にあたって最大のポイントになるだろう。
これは従来モデルもそうだったのだが、こうしたパフォーマンスにもう少し注力してくれれば、ヘビーユーザーにとってプラス1万円くらいの投資は苦にならないと思うのだが、マーケティング的にはそれができない事情があるのだろう。個人的には前回の「BOOX Note Air2 Plus」のように、性能を重視した上位バージョンの登場も期待したいところだ。