山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

実売3万7,800円の薄型軽量10.3型タブレット「OPPO Pad Air」

「OPPO Pad Air」。実売価格は37,800円

 オウガ・ジャパンの「OPPO Pad Air」は、10.3型のタブレットだ。Android 12ベースのColorOS 12を搭載し、Google Playストアも利用できる汎用性の高さと、iPadシリーズに似た薄型軽量の筐体が特徴だ。

 現在、10型クラスのタブレットはiPadシリーズが高いシェアを誇るが、先日発売された第10世代iPadはエントリーモデルながら実売6万8,800円からと、かつてに比べると割高になりつつある。一方のAndroidタブレットは選択肢自体があまりない上、ハードウェアのスペックが低かったり、Androidのバージョンが古かったりと、選びにくいのが現状だ。

 今回紹介する「OPPO Pad Air」は、決してハイエンドの製品ではないが、実売3万7,800円という低価格が大きな特徴だ。iPad Airを大いに意識したとみられる名称とは裏腹に、実際にライバルになるのは本製品の発表直後に登場した第10世代iPadになると考えられるが、実売価格はおよそ半分ということで、かなりのインパクトがある。

 国内向けとしてはOPPO初のタブレットとなる本製品について、本稿では電子書籍ユースに絞って、第10世代iPadとiPad Airのほか、読書用タブレットでは競合になるFire HD 10 Plusと比較する。総合的なレビューはすでに甲斐氏による記事が公開済みなので、そちらをご覧いただきたい。

実売37,800円というコスパの高さが魅力

 まずはiPadおよびFire HD 10 Plusとの比較から。iPad Airについては外観がiPadと同じため割愛する。iPadとiPad Airの違いは、本連載の前回記事も参考にしてほしい。

OPPO Pad AiriPad(第10世代)Fire HD 10 Plus(第11世代)
発売2022年9月2022年10月2021年5月
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部)245.1×154.8×6.9mm248.6×179.5×7mm247×166×9.2mm
重量440g477g468g
CPUQualcomm Snapdragon 680 オクタコアプロセッサーA14 Bionicチップ
6コアCPU
4コアのグラフィックス
16コアNeural Engine
MediaTek MT8183(64ビットオクタコア)
メモリ4GB4GB4GB
画面サイズ/解像度10.3型/2,000×1,200ドット(225ppi)10.9型/2,360×1,640ドット(264ppi)10.1型/1,920×1,200ドット (224ppi)
通信方式Wi-Fi 5(802.11ac)Wi-Fi 6(802.11ax)Wi-Fi 5(802.11ac)
生体認証顔認証指紋認証-
バッテリー持続時間(メーカー公称値)最大12時間(ビデオ視聴時)最大10時間12時間
コネクタUSB Type-CUSB Type-CUSB Type-C
メモリカード対応(最大512GB)-対応(最大1TB)
その他最大7GBまでの仮想メモリ機能ペン対応ワイヤレス充電
価格(本稿執筆時点)3万7,800円(64GB)6万8,800円(64GB)
9万2,800円(256GB)
1万8,980円(32GB)
2万2,980円(64GB)

 CPUやメモリの違いからくるベンチマークの差は後述するとして、この比較を見る限り、本体サイズや重量についてiPadシリーズを意識していることは間違いない。上下左右の幅が均等なベゼルやスピーカーの配置といった外観もiPadおよびiPad Airと酷似しており、アスペクト比の違いを除けば、同じシリーズの製品に見えるほどだ。

 生体認証の方式やメモリカード対応の有無など細かい違いはさておき、本製品の最大の強みとなるのはやはり価格だ。実売価格は3万7,800円と、同じ64GBのiPad(6万8,800円)のほぼ半額で、実売ではさらにもう少し安く手に入る。現在は第10世代iPadの1つ前、第9世代iPadも併売されているが、そちらも実売は4万9,800円なので、本製品は1万円以上安いことになる。

 一方価格だけで見ると、同じ64GBで2万円台のAmazon「Fire HD 10 Plus」がライバルになるが、こちらはGoogle Playストアが使えず、電子書籍は実質Kindleもしくはdマガジンしか利用できない。その点、本製品はGoogle Playストア経由で好みの電子書籍アプリを利用でき、さらに筐体は薄く軽いため取り回しやすいのは大きな利点だ。

上下左右の幅が均等なベゼルはiPadやiPad Airに酷似している。筐体は横向きでの利用を前提としたデザイン
もちろん縦向きでも利用可能だが、その場合はインカメラが右側中央に配置される
背面はアルミ製で、独特の波打ったデザインを採用。こちらも横向き前提のデザインだ
背面カメラは若干の突起がある。隣の電源ボタン、上の音量ボタンの配置および形状はiPadとそっくりだ
左側面。電源ボタンとスピーカーを搭載する
右側面。USB Type-Cポートとスピーカーを搭載する
最大512GBまでのmicroSDを利用可能
前面カメラは長辺側に配置される。顔認証にも対応している
重量は実測435g

外観はiPadと激似。高級感があり剛性も高い

 本製品はAndroid 12ベースのColorOS 12を採用しており、セットアップの手順はAndroidのそれと大きく変わらない。生体認証で顔認証が利用できるよう登録しておくと、その後の手順がスムーズになる。なお天地のサイズが潤沢にあるわけではないので、ナビゲーション方式で「ジェスチャー」を選んでおいたほうが、狭い天地になるべく多くの情報量を表示できるようになる。

顔認証に対応する。後述するFire HD 10 Plusと比べた場合の利点の一つだ
天地の幅は必ずしも広くないので、ジェスチャーナビゲーションを選んでおいたほうが画面が広く使える
セットアップ完了直後のホーム画面は2画面。といっても2画面目は4つのアイコンが並ぶだけで、全体的にはシンプル
1画面目のフォルダにはツール類およびGoogleのアプリがまとめられている。電子書籍系のアプリはない

 さて本製品を手にしてまず驚かされるのは、やはり第10世代iPadやiPad Airとの「激似」っぷりだ。上下左右の幅が均等なベゼルに始まり、薄型の筐体、さらには垂直にカットされた左側面に電源ボタン、上面に音量ボタンというボタン配置に至るまで、iPadとはそっくりだ。余談だがパッケージもiPad似である。

 ただしアスペクト比は大きく異なる。本製品はワイド比率よりもわずかに横長であるため、ほぼ4:3比率に近いiPadと比べると、天地はかなり低く圧迫感がある。両製品を並べた時に一目で見分けるための最良の方法は、この筐体の横長さだろう。

 本製品の売りである公称440gという重量は、確かに10型クラスのタブレットとしては軽量だが、iPadやiPad Airよりも表面積が狭く、なおかつ薄いことを考えると、おおむね体積なりの重量であって、そこまで驚きはない。むしろ手に持つとかなりズシリとしていて驚かされるほどだ。

 ちなみにこうした安価なタブレットでは、筐体の剛性が著しく低い場合もあるが、本製品は筐体をひねってもあからさまに歪むこともない上、背面を軽くノックしても、空洞がある場合の響き方はせず、内部の密度も高いようだ。こうした質感の高さはプラス要因だ。

左が本製品、右が第10世代iPad。外観はそっくりだがアスペクト比が異なる
上下に並べたところ。横幅はほぼ同じだが天地サイズが異なる
天地サイズはこれだけの差がある。ちなみにベゼルの幅はほぼ同じだ
背面カメラ部を中心とした比較。上が本製品、下が第10世代iPad。ボタンの配置は酷似している
右側面の比較。USB Type-Cポートを挟んでスピーカーが配置されるのは同じだが、ボディ幅は大きく異なる
左が本製品、右がFire HD 10 Plus。アスペクト比はほぼ同じだが本製品のほうがベゼル幅が狭く、画面も大きい
上下に並べたところ。本製品(上)のほうがベゼルがスリムなせいでスタイリッシュに見える
画面の天地サイズはほぼ同じだが、ベゼルの厚みが違うせいでボディサイズにはかなりの差異がある
厚みの比較。いずれも左が本製品、右上がiPad、右下がFire HD 10 Plus。本製品の薄さがよく分かる

 ベンチマークのスコアはFire HD 10 Plusとほぼ同等。Fire HD 10 Plusはミドルクラスというよりもエントリーモデルに近いスペックであることを考えると、もう少しパワーは欲しかったところだが、メモリ容量が4GBとあっては致し方ない。

 もっともFire HD 10 Plusを操作していて稀に感じるプチフリーズのような現象は、本製品では感じないので、ベンチマークの数字だけで判断するのは禁物だ。ちなみにiPadのスコアには遠く及ばないが、これはOSの違いもあるだろう。

「Google Octane」でのベンチマーク結果。本製品(左)が「7437」、Fire HD 10 Plus(中央)が「8904」と、Fire HD 10 Plusがやや有利。第10世代iPad(右)はOSも異なるため参考程度に考えたほうがよさそうだ
「GeekBench 5」でのベンチマーク結果。本製品(左)が「シングルコア377/マルチコア1572」、Fire HD 10 Plus(中央)が「301/1344」と、こちらは逆に本製品のほうが優勢。右は第10世代iPad

コミックの見開き向け。雑誌の細かい文字はやや厳しい

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。

 解像度は225ppiと、iPadに比べるとやや低め。表示性能は単ページ表示ならば合格点、見開き表示はコミックであれば問題ないが、雑誌などは細かい注釈がつぶれてしまう場合がある。コミックの見開き表示までにとどめておくのが無難だろう。

 気になるのは、ワイド比率のタブレットにつきものの、コミックを表示した時にできる余白だ。本製品はフルHDよりもさらに細長いため(2,000×1,200ドット)、ページ横にできる空白はかなり巨大で、またページそのもののサイズも、10.3型である割にかなり小さく感じてしまう。事実、10.9型のiPadと比べるとページサイズは二回りほど小さい。

 とはいえ、いくら小さいと言っても、8.3型のiPad miniと比べるとページサイズは圧倒的に本製品のほうが大きく、コミックの見開き表示をするために本製品を選ぶ価値はある。ただしベゼル幅が実測8.5mmとスリムなぶん、指先が画面に触れて不意にページがめくられる誤操作は、iPadよりも本製品のほうが起こりやすい。

コミックの単ページ表示。画面はフルHDよりもやや細長いため(2000×1200)、上下の余白が目立つ
第10世代iPad(右)との比較。同じ10型クラスの製品ながらページサイズは二回りほど小さくなる
見開きでの表示。こちらも左右の余白がかなり目立つ
第10世代iPad(下)との比較。単ページ表示と同様、ページサイズは本製品のほうが二回りほど小さい
とはいえ8.3型のiPad mini(下)と比べるとそれなりに大きいことが分かる
ベゼル幅が実測8.5mmとスリムなのはよいが、指先がページに触れてめくられてしまう誤操作は、iPadよりも本製品のほうが起こりやすい
雑誌コンテンツは、今回のようにA4変型版だと、コミック以上に余白が目立つ
第10世代iPad(右)との比較。本製品はアスペクト比の関係で画面サイズを有効に使えていないことが分かる
ページを拡大したところ。単ページ表示であれば細かい注釈も問題なく読める
見開き状態でページを拡大したところ。単ページ表示の時と違って文字がつぶれがちだ

 読書用では競合になるFire HD 10 Plusとの比較だとどうだろうか。こちらは表示サイズ自体はほぼ同等で、余白部分が広いことを除けば、見え方はほぼ同じと言っていい。またFireは、本を開いたりライブラリなどに切り替える時にもっさり感を感じることがあるが、本製品はそうした症状は見受けられない。

コミック単ページの比較。左が本製品、右がFire HD 10 Plus。ほぼ同等サイズだ
コミック見開きの比較。上が本製品、下がFire HD 10 Plus。こちらもサイズは変わらない
雑誌単ページの比較。左が本製品、右がFire HD 10 Plus。余白の広さは目立つものの、表示サイズそのものの差はない

 ちなみに本製品は画面の分割表示に対応しており、余白を使って別のアプリ、例えばブラウザやSNSを表示することもできる。電子書籍を読みながらほかの画面を参照することにあまり必然性は感じないが、コミックを読みながらWiKipediaを参照したり、SNSをチラチラ横目に見ながら本を読み進めたい場合には、活用できるかもしれない。

 ただし画面を縦向きにした場合はこの機能は使えず、上下の余白は空いたになってしまうなど、あまり融通は効かない。画面が横長の本製品で生じがちな余白を活用するための機能としては、もうひと工夫欲しいように感じる。

画面分割機能を使えば、左右に別のコンテンツを表示できる。これはブラウザを表示した状態
さらに幅を狭くすれば単ページ表示に切り替わる。境目は自由にドラッグできる

Fire HD 10 Plusでは物足りないユーザに

 製品名や外観からしてiPadと比較しがちな本製品だが、実際に購入にあたってライバルになるのは、むしろAmazonの「Fire HD 10 Plus」だろう。本製品は実売価格こそFireのおよそ倍だが、Google Playストアに対応しており、幅広いアプリが使えるのが強みだ。パフォーマンスもiPadには及ばなくとも、Fire HD 10 Plusとの比較であれば同等だ。

 従ってKindleに限らずさまざまな電子書籍アプリを使いたい場合や、より幅広い用途に使うのであれば、本製品のほうがお勧めできる。筐体が薄く軽いことや、生体認証に非対応のFireと違って顔認証が利用できるのもメリットだ。CPUパワーを要する用途はおすすめしないが、試した限り動画再生についても支障はないので、Fireの用途は問題なくカバーできるはずだ。

スリムなため片手で握るのも不可能ではない

 なおSnapdragon 680/メモリ4GBを搭載した10型クラスのタブレットとしては、本製品以外にレノボの「Lenovo Tab M10 Plus」もある。こちらも実売価格はほぼ同じ3万7千円前後で、LTE対応モデルも用意されているほか、イヤフォンジャックを搭載するなどの強みもある。サイズは本製品より若干大きく厚みもあるが、本製品の購入を検討するのであれば、こちらも比較対象に加えるとよいかもしれない。