山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
実売3万7,800円の薄型軽量10.3型タブレット「OPPO Pad Air」
2022年11月11日 06:21
オウガ・ジャパンの「OPPO Pad Air」は、10.3型のタブレットだ。Android 12ベースのColorOS 12を搭載し、Google Playストアも利用できる汎用性の高さと、iPadシリーズに似た薄型軽量の筐体が特徴だ。
現在、10型クラスのタブレットはiPadシリーズが高いシェアを誇るが、先日発売された第10世代iPadはエントリーモデルながら実売6万8,800円からと、かつてに比べると割高になりつつある。一方のAndroidタブレットは選択肢自体があまりない上、ハードウェアのスペックが低かったり、Androidのバージョンが古かったりと、選びにくいのが現状だ。
今回紹介する「OPPO Pad Air」は、決してハイエンドの製品ではないが、実売3万7,800円という低価格が大きな特徴だ。iPad Airを大いに意識したとみられる名称とは裏腹に、実際にライバルになるのは本製品の発表直後に登場した第10世代iPadになると考えられるが、実売価格はおよそ半分ということで、かなりのインパクトがある。
国内向けとしてはOPPO初のタブレットとなる本製品について、本稿では電子書籍ユースに絞って、第10世代iPadとiPad Airのほか、読書用タブレットでは競合になるFire HD 10 Plusと比較する。総合的なレビューはすでに甲斐氏による記事が公開済みなので、そちらをご覧いただきたい。
実売37,800円というコスパの高さが魅力
まずはiPadおよびFire HD 10 Plusとの比較から。iPad Airについては外観がiPadと同じため割愛する。iPadとiPad Airの違いは、本連載の前回記事も参考にしてほしい。
OPPO Pad Air | iPad(第10世代) | Fire HD 10 Plus(第11世代) | |
---|---|---|---|
発売 | 2022年9月 | 2022年10月 | 2021年5月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部) | 245.1×154.8×6.9mm | 248.6×179.5×7mm | 247×166×9.2mm |
重量 | 440g | 477g | 468g |
CPU | Qualcomm Snapdragon 680 オクタコアプロセッサー | A14 Bionicチップ 6コアCPU 4コアのグラフィックス 16コアNeural Engine | MediaTek MT8183(64ビットオクタコア) |
メモリ | 4GB | 4GB | 4GB |
画面サイズ/解像度 | 10.3型/2,000×1,200ドット(225ppi) | 10.9型/2,360×1,640ドット(264ppi) | 10.1型/1,920×1,200ドット (224ppi) |
通信方式 | Wi-Fi 5(802.11ac) | Wi-Fi 6(802.11ax) | Wi-Fi 5(802.11ac) |
生体認証 | 顔認証 | 指紋認証 | - |
バッテリー持続時間(メーカー公称値) | 最大12時間(ビデオ視聴時) | 最大10時間 | 12時間 |
コネクタ | USB Type-C | USB Type-C | USB Type-C |
メモリカード | 対応(最大512GB) | - | 対応(最大1TB) |
その他 | 最大7GBまでの仮想メモリ機能 | ペン対応 | ワイヤレス充電 |
価格(本稿執筆時点) | 3万7,800円(64GB) | 6万8,800円(64GB) 9万2,800円(256GB) | 1万8,980円(32GB) 2万2,980円(64GB) |
CPUやメモリの違いからくるベンチマークの差は後述するとして、この比較を見る限り、本体サイズや重量についてiPadシリーズを意識していることは間違いない。上下左右の幅が均等なベゼルやスピーカーの配置といった外観もiPadおよびiPad Airと酷似しており、アスペクト比の違いを除けば、同じシリーズの製品に見えるほどだ。
生体認証の方式やメモリカード対応の有無など細かい違いはさておき、本製品の最大の強みとなるのはやはり価格だ。実売価格は3万7,800円と、同じ64GBのiPad(6万8,800円)のほぼ半額で、実売ではさらにもう少し安く手に入る。現在は第10世代iPadの1つ前、第9世代iPadも併売されているが、そちらも実売は4万9,800円なので、本製品は1万円以上安いことになる。
一方価格だけで見ると、同じ64GBで2万円台のAmazon「Fire HD 10 Plus」がライバルになるが、こちらはGoogle Playストアが使えず、電子書籍は実質Kindleもしくはdマガジンしか利用できない。その点、本製品はGoogle Playストア経由で好みの電子書籍アプリを利用でき、さらに筐体は薄く軽いため取り回しやすいのは大きな利点だ。
外観はiPadと激似。高級感があり剛性も高い
本製品はAndroid 12ベースのColorOS 12を採用しており、セットアップの手順はAndroidのそれと大きく変わらない。生体認証で顔認証が利用できるよう登録しておくと、その後の手順がスムーズになる。なお天地のサイズが潤沢にあるわけではないので、ナビゲーション方式で「ジェスチャー」を選んでおいたほうが、狭い天地になるべく多くの情報量を表示できるようになる。
さて本製品を手にしてまず驚かされるのは、やはり第10世代iPadやiPad Airとの「激似」っぷりだ。上下左右の幅が均等なベゼルに始まり、薄型の筐体、さらには垂直にカットされた左側面に電源ボタン、上面に音量ボタンというボタン配置に至るまで、iPadとはそっくりだ。余談だがパッケージもiPad似である。
ただしアスペクト比は大きく異なる。本製品はワイド比率よりもわずかに横長であるため、ほぼ4:3比率に近いiPadと比べると、天地はかなり低く圧迫感がある。両製品を並べた時に一目で見分けるための最良の方法は、この筐体の横長さだろう。
本製品の売りである公称440gという重量は、確かに10型クラスのタブレットとしては軽量だが、iPadやiPad Airよりも表面積が狭く、なおかつ薄いことを考えると、おおむね体積なりの重量であって、そこまで驚きはない。むしろ手に持つとかなりズシリとしていて驚かされるほどだ。
ちなみにこうした安価なタブレットでは、筐体の剛性が著しく低い場合もあるが、本製品は筐体をひねってもあからさまに歪むこともない上、背面を軽くノックしても、空洞がある場合の響き方はせず、内部の密度も高いようだ。こうした質感の高さはプラス要因だ。
ベンチマークのスコアはFire HD 10 Plusとほぼ同等。Fire HD 10 Plusはミドルクラスというよりもエントリーモデルに近いスペックであることを考えると、もう少しパワーは欲しかったところだが、メモリ容量が4GBとあっては致し方ない。
もっともFire HD 10 Plusを操作していて稀に感じるプチフリーズのような現象は、本製品では感じないので、ベンチマークの数字だけで判断するのは禁物だ。ちなみにiPadのスコアには遠く及ばないが、これはOSの違いもあるだろう。
コミックの見開き向け。雑誌の細かい文字はやや厳しい
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。
解像度は225ppiと、iPadに比べるとやや低め。表示性能は単ページ表示ならば合格点、見開き表示はコミックであれば問題ないが、雑誌などは細かい注釈がつぶれてしまう場合がある。コミックの見開き表示までにとどめておくのが無難だろう。
気になるのは、ワイド比率のタブレットにつきものの、コミックを表示した時にできる余白だ。本製品はフルHDよりもさらに細長いため(2,000×1,200ドット)、ページ横にできる空白はかなり巨大で、またページそのもののサイズも、10.3型である割にかなり小さく感じてしまう。事実、10.9型のiPadと比べるとページサイズは二回りほど小さい。
とはいえ、いくら小さいと言っても、8.3型のiPad miniと比べるとページサイズは圧倒的に本製品のほうが大きく、コミックの見開き表示をするために本製品を選ぶ価値はある。ただしベゼル幅が実測8.5mmとスリムなぶん、指先が画面に触れて不意にページがめくられる誤操作は、iPadよりも本製品のほうが起こりやすい。
読書用では競合になるFire HD 10 Plusとの比較だとどうだろうか。こちらは表示サイズ自体はほぼ同等で、余白部分が広いことを除けば、見え方はほぼ同じと言っていい。またFireは、本を開いたりライブラリなどに切り替える時にもっさり感を感じることがあるが、本製品はそうした症状は見受けられない。
ちなみに本製品は画面の分割表示に対応しており、余白を使って別のアプリ、例えばブラウザやSNSを表示することもできる。電子書籍を読みながらほかの画面を参照することにあまり必然性は感じないが、コミックを読みながらWiKipediaを参照したり、SNSをチラチラ横目に見ながら本を読み進めたい場合には、活用できるかもしれない。
ただし画面を縦向きにした場合はこの機能は使えず、上下の余白は空いたになってしまうなど、あまり融通は効かない。画面が横長の本製品で生じがちな余白を活用するための機能としては、もうひと工夫欲しいように感じる。
Fire HD 10 Plusでは物足りないユーザに
製品名や外観からしてiPadと比較しがちな本製品だが、実際に購入にあたってライバルになるのは、むしろAmazonの「Fire HD 10 Plus」だろう。本製品は実売価格こそFireのおよそ倍だが、Google Playストアに対応しており、幅広いアプリが使えるのが強みだ。パフォーマンスもiPadには及ばなくとも、Fire HD 10 Plusとの比較であれば同等だ。
従ってKindleに限らずさまざまな電子書籍アプリを使いたい場合や、より幅広い用途に使うのであれば、本製品のほうがお勧めできる。筐体が薄く軽いことや、生体認証に非対応のFireと違って顔認証が利用できるのもメリットだ。CPUパワーを要する用途はおすすめしないが、試した限り動画再生についても支障はないので、Fireの用途は問題なくカバーできるはずだ。
なおSnapdragon 680/メモリ4GBを搭載した10型クラスのタブレットとしては、本製品以外にレノボの「Lenovo Tab M10 Plus」もある。こちらも実売価格はほぼ同じ3万7千円前後で、LTE対応モデルも用意されているほか、イヤフォンジャックを搭載するなどの強みもある。サイズは本製品より若干大きく厚みもあるが、本製品の購入を検討するのであれば、こちらも比較対象に加えるとよいかもしれない。