山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
5万円以下で買えるNECの11型Androidタブレット「T1175/BAS」で電子書籍を試す
2021年4月7日 09:50
NECパーソナルコンピュータ(NEC PC)の「T1175/BAS」は、11型のAndroid 10タブレットだ。薄型軽量のボディにミドルクラスの性能を備えつつ、5万円以下で購入できることが特徴だ。
最近は10型前後のAndroidタブレットは選択肢が少なくなりつつあるが、そのなかで本製品はミドルクラスとして貴重な製品だ。Snapdragon 730G/メモリ6GBの上位モデル「T1195/BAS」は6万円台半ばとかなりのお値段だが、Snapdragon 662/メモリ4GBの本製品は価格も手頃で、かつマグネットで吸着できる専用キーボードなど汎用性も高い。
今回はメーカーから実機を借用したので、前回紹介したFFF SMART LIFE CONNECTEDの「FFF-TAB10H」やAmazonの「Fire HD 10」と比較しつつ、電子書籍ユースでの使い勝手を紹介する。一般的な用途については、すでに西川氏による以下のレビューが掲載されているので、そちらを参照していただきたい。
ルックスは「iPad Air 4」似。やや横長の画面が特徴
まずは競合製品と比べてみよう。ほぼ同時期に発表されたFFF-TAB10Hのほか、Fire HD 10とスペックを比較する。
T1175/BAS | FFF-TAB10H | Fire HD 10(第9世代) | |
---|---|---|---|
発売元 | NECパーソナルコンピュータ | FFF SMART LIFE CONNECTED | Amazon |
発売 | 2021年3月 | 2021年2月 | 2019年10月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 258.4×163×7.5mm | 253×163×8.2mm | 262×159×9.8mm |
重量 | 490g | 555g | 504g |
OS | Android 10 | Android 10 | Fire OS 7(Android 9ベース) |
SoC | Qualcomm Snapdragon 662(オクタコア) | MediaTek MT8788(オクタコア) | MediaTek MT8183(オクタコア) |
CPU | Cortex A73(2GHz)×4+A53(1,8GHz)×4 | Cortex A73(2GHz)×4+A53(1.8GHz)×4 | Cortex A73(2GHz)×4+A53(2GHz)×4 |
GPU | Adreno 610 | Arm Mali-G72 MP3 | Arm Mali-G72 MP3 |
メモリ | 4GB | 6GB | 2GB |
ストレージ | 128GB | 128GB | 32GB/64GB |
画面サイズ/解像度 | 11型/2,000×1,200ドット (212ppi) | 10.1型/1,920×1,200ドット (224ppi) | 10.1型/1,920×1,200ドット (224ppi) |
通信方式 | Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac) | Wi-Fi 5 | Wi-Fi 5 |
Bluetooth | Bluetooth 5.1 | Bluetooth 4.1 | Bluetooth 4.2 LE |
バッテリ持続時間(メーカー公称値) | 13.6時間 | 11時間 | 12時間 |
スピーカー | 4基 | 1基 | 2基 |
インターフェイス | USB Type-C | USB Type-C | USB Type-C |
microSDカードスロット | ○(最大256GB) | ○(最大128GB) | ○(最大512GB) |
価格(発売時) | 4万7,080円 | 4万7,800円(初回のみ3万9,800円) | 1万5,980円(32GB)/1万9,980円(64GB) |
前回のFFF-TAB10HとFire HD 10は、CPU周りのスペックは近いものの、メモリ容量は前者が6GB、後者が2GBと大きな差があった。本製品はその中間、4GBのメモリを搭載しつつ、USB Type-C対応、さらにはBluetooth 5.1対応と、やや新しめの規格を採用している。CPU周りについてはのちほどベンチマークでチェックする。
画面は11型2,000×1,200ドットというめずらしい解像度で、アスペクト比だと前回の2製品(1,920×1,200ドット)よりもわずかに横長だ。電子書籍ユースでは横方向に画面が伸びたところでとくにプラスにならないが、動画視聴などでは有利だろう。
490gという重量は、ほかの2製品に比べると軽量だが、これはほかの2製品が重過ぎるだけで、画面がやや大きめの11型であることを考えると「わずかに軽い」という程度。一方で7.5mmという薄さは、上位モデル「T1195/BAS」の5.8mmにはおよばないが、Androidタブレットとしては十分にスリムな部類だ。
ほかの2製品との大きな違いとして、顔認証に対応していることが挙げられる。できれば指紋認証にも対応していてほしかったが、そもそも生体認証が用意されていないほかの2製品に比べるとプラスだろう。このほか防塵防水に対応(IP5X/IPX2)しているのも利点だ。
ちなみに本稿では同等サイズのAndroidタブレットと比較しているが、実際には本製品がライバルと想定しているのは、画面サイズが同じ11型の「iPad Pro」、および10.9型の「iPad Air 4」だろう。事実、マグネットで吸着するオプションのキーボードなどもあわせて、近い使い方が可能だ。
スタイリッシュなボディ。スクロールも快適
本製品を手に取ったときにまず感じるのが、ボディのスタイリッシュさだ。iPad Air 4に似た薄さと軽さで、電源ボタンが左側面上、音量ボタンが上面左という配置や、背面カメラの突出具合もiPad Air 4にひじょうに近い。
この薄さのせいか、実測489gのわりに軽く感じるのがおもしろい。体感的には400g台前半と言われても信じかねないほどだ。
ベゼルの幅はiPad Air 4ほどスリムではないが、上下左右ともに均等で、縦向きでの利用も違和感はない。スピーカーは本体を横向きにしたときに、左右それぞれの側面に上下2カ所ずつ並ぶ配置で、縦横どちらの向きでもステレオ再生になるのは大きなメリットだ。
セットアップ手順は、ユーザーの年齢(18歳以上または13歳以上/13歳未満)を尋ねてくることを除けば、Android標準のそれで、余分なフローもない。一方でホーム画面は、中央にウィジェットが配置されていたりと、やや独自要素が多い。
プリインストールアプリは、Google標準アプリ以外にも、多数のアプリが用意されている。1画面に収まりきらないほどで、シンプルさを理想とするユーザーにとっては、やや目障りに感じるかもしれない。Netflixなどアンインストールに対応しないアプリもあるので要注意だ。
実際に使ってみてまず感じるのは、動きのスムーズさだ。とくにスクロールは、前回紹介したFFF-TAB10Hと比べても、本製品のほうがいわゆるヌルヌル感が強く、快適に利用できる。
ただしベンチマークの数値については、前回のFFF-TAB10Hが「1,255」、Fire HD 10が「1,152」だったのに対し、本製品は「1,188」と芳しくない。スペック的には妥当ではあるのだが、実際に触れたあとにこの値を見ると、もっと高くてもおかしくないのではと首をひねってしまう。
読書まわりの操作はスムーズ。無理な持ち方には注意
では電子書籍ユースについて見ていこう。電子書籍の表示サンプルは、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。電子書籍ストアは原則としてKindleを使った。
解像度は2,000×1,200ドット(212ppi)ということで、このクラスのタブレットとしては標準的。突出して高解像度ではないが、前回のFFF-TAB10Hと同じく200ppiの大台はクリアしているので、8型で1,280×800ドットのタブレットのようなあからさまな粗さはなく、雑誌などの細かい注釈も問題なく読み取れる。
アスペクト比は5:3。前回のFFF-TAB10HやFire HD 10よりも横に広いため、左右にできる余白も広くなるが、コミックはページの背景色が白ということもあり、余白と一体化するのであまり気にならない。ちなみにプリインストールされているGoogle Playブックスは背景色が黒なので、ベゼルと一体化してより目立たなくなる。
ちなみに本製品は上下左右のベゼル幅が均等なので、縦向きでの雑誌やムックの表示にも適しているが、これらの多くはページの背景色が白ではないため、コミックなどと比べると上下の余白がかなり目立ってしまう。解像度的には何ら問題はないのだが、見た目はいまいちだ。
ページめくりなどのレスポンスは極めて良好。コンテンツのダウンロードもコミック1冊に数秒程度と高速で、エントリークラスのタブレットによく見られる、サムネイルが多数並んだページで読み込みを待たされることもない。前述のベンチマークの結果からはいい意味で想像できない使い勝手だ。
またAndroidタブレットゆえ、コミックの読了後にすぐにアプリ上で続刊を購入できたり、サンプルを読み終えるとそのまま購入できるシームレスなフローも健在だ。
音量ボタンを使ってのページめくりも行なえるが、画面を横向きにすると音量ボタンが左上にくるため、通常の持ち方では操作しづらい。一方で縦置きのときは、右手の人差し指で操作できるが、距離があるため持ち方自体を変えなくてはいけない。前回紹介したFFF-TAB10Hと同じ傾向だ。
実際に使っていてやや気になったのが、タッチパネルがかなり敏感なことだ。普通に両手持ちで使っている場合は問題ないのだが、いわゆるパームリジェクションの効きが弱めなのか、片手持ちで深く握っていると、親指の付け根がタッチスクリーンに反応して、不意にページがめくられてしまう場合がある。
この症状は、ベゼルが細い最近のスマホやタブレットではたまに見かけるが、iPad Air 4などは同様の持ち方でもまったく反応しないので、実際に使っていて多少気になる。寝転がっての読書など若干無理がある姿勢では、ついつい深く握ることがあるので、そのあたりは注意したい。
電子書籍用途への適性は高いが、価格的にはもう一押しほしい
以上のように、ベンチマークの値こそいまいちだが、挙動はひじょうにスムーズで、Fire HD 10はもちろんのこと、メモリ容量では本製品より多いFFF-TAB10Hと比べても動きはきびきびしている。細かい点で気になる箇所がないわけではないが、その薄さ軽さもあって、電子書籍用途への適性は高い。
ただし、一部のCATV系の動画アプリではストリーミング再生中にコマ落ちする症状が見られるなど、やや重いアプリを使うには「いっぱいいっぱい」な印象はある。一般的な動画配信サービスではとくに問題は見られなかったが、汎用性を重視してポテンシャルに余裕を持たせたければ、メモリ容量や解像度を強化した上位モデルを選ぶ手もあるだろう。
そんな本製品でポイントになるのはやはり価格だろう。4万7,080円と、5万円の範囲には収まるものの、このクラスではiPadのエントリーモデル(4万9,280円/128GB)という選択肢もある。
Androidならではのメリットを見出せるなら問題ないが、前回紹介したFFF-TAB10Hも同じ価格帯にひかえており、顔認証対応、防水防塵という強みがあるにせよ、もう一押しほしいのは事実。NEC Directでは、本製品のストレージを128GBから64GBに減らした限定モデル「TAB11/201」が4万3,780円で販売されているので、こちらを狙うのも1つの手と言えそうだ。