山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

1万円台で入手できる、6.5型大画面のAndroidスマホ「Moto e7」

「Moto e7」。今回購入したミネラルグレイのほかサテンコーラルをラインナップする。型番は「PALX0010JP/A」

 モトローラ・モビリティ・ジャパンの「Moto e7」は、6.5型ディスプレイを搭載するAndroid 10スマートフォンだ。メモリ4GB、DSDV対応ながら、実売2万円以下で購入できるコストパフォーマンスの高さが大きな特徴だ。

 電子書籍を読むにあたり、現時点でもっとも手軽で入手性が高いデバイスは、スマホと言っていいだろう。なかでもAndroidスマホは、iPhoneと違ってストア内で直接コンテンツを購入できることから、サンプルを読み終えたあとブラウザに切り替えず、すぐにアプリ内で購入できる利点がある。

 そうした意味で、Android×大画面のスマホは、電子書籍を楽しむのに最適なデバイスだが、メインのスマホとは別にサブ機として購入する場合、あまりコストをかけすぎるのも考えものだ。電子書籍を読む操作におおむね支障がなければ、その他の機能が充実しているよりも、むしろ安価なほうがよい。

 今回の「Moto e7」は、そうした条件にぴったりの製品だ。実機を購入したので、レビューをお届けする。

6.5型の大画面ながら軽量なボディ

 本製品は6.5型の大画面を持つスマホだ、iPhoneの大画面版であるiPhone 12 Pro Max(6.7型)と比較すると、画面はわずかに小さく、逆に筐体は若干大きい(本製品は164.93×75.73×8.89mm、iPhone 12 Pro Maxは160.8×78.1×7.4mm)。実際に横に並べるとあまり差は感じず、ほぼ同じサイズに見える。

 重量は180gということで、iPhone 12 Pro Maxよりも46gも軽く、むしろ画面サイズが一回り小さいiPhone 12 Pro(187g)に近い。つまり「画面サイズはiPhone 12 Pro Maxで、重量はiPhone 12 Pro」であり、サイズに比してかなり軽量であることがわかる。実際に手に持ったときの印象も、ずっしり感はあまりない。

下部のベゼルはやや厚みがあるものの、全体的には狭額縁デザインだ
背面。今回は未検証だが、マクロビジョン専用カメラを含むデュアルカメラは本製品の売りの1つ
iPhone 12 Pro Max(右)との比較。ほぼ同等のサイズだ
背面の比較。本製品のカメラは3眼に見えるが実際には2眼+フラッシュ

 本製品は実売価格が2万円を切る驚異のコストパフォーマンスを実現しているが、もちろんこの価格で、フラッグシップモデル並みの機能を網羅していることは考えにくい。製品の特徴を知るには、どのような機能が省かれているかを把握するのが手っ取り早い。

 まず画面周りでは、解像度が1,600×720ドットとやや低い。iPhone 12 Pro Max(2,778×1,284ドット)よりも、むしろ第2世代iPhone SE(1,334×750ドット)に近い解像度だ。画素密度は269ppiとそこそこあるため、電子書籍ユースにはそれほど支障はないが、各社フラッグシップモデルとの違いが見え隠れする部分だ。

 CPUはMediaTek Helio G25。エントリー向けながらオクタコアに対応しており、著名なベンチマークサイトではSnapdragon 429とほぼ同等の性能とされている。ベンチマークでどの程度のスコアが得られるのかは後述する。

 メモリは4GBと、ギリギリ及第点と言えるレベルだ。本製品の兄弟機である「moto e7 power」は、バッテリ容量が強化されている一方で、メモリは2GBと控えめなので、モデルごとに強弱をつけていることがわかる。ストレージは64GBと多くはないが、最大512GBまでメモリカードを追加できるので、そちらでカバーすることもできる。

 前面カメラはティアドロップ型を採用。本体背面には指紋認証を搭載しており、マスクをしたままでのロック解除も問題なく行なえる。Bluetooth 5.0に対応するほか、USB PDにこそ対応しないもののUSB Type-C端子を搭載するなど、フォームファクタ自体が古いわけではない。

上部カメラはティアドロップ型を採用。顔認証には対応しない
カメラの直下に指紋認証センサーを備える
USB Type-Cポートを搭載する。USB PDには非対応
イヤフォンジャックを備えており、ここにイヤフォンを挿すことでFMラジオを聴くことも可能

 その一方で、Wi-Fiが5GHz帯に非対応で、802.11b/g/n止まりなのもネックだ。先にダウンロードしてから読むタイプの電子書籍ビューアであれば、通信速度はそれほどネックにならないだろうが、ブラウザを使ってストリーミングで読むタイプでの実用性や、ダウンロードの速度は気になるところ。のちほど詳しく見ていく。

 またワイヤレス充電に対応しないほか、防水も非対応、またNFCも非搭載でおサイフケータイとして使えないなど、外出先での利用も含めて日常でメインスマホとして使うには、やはり機能的に物足りない。これら機能の利用経験がある人が、何らかの事情で本製品に乗り換えた場合、かなりの不自由さを感じるだろう。

素のAndroidに近い構成。ベンチマークのスコアは価格相応

 パッケージは本体のほか、充電器、ケーブルなどシンプルな内容。最近の海外製スマホは保護ケースが同梱されていることもよくあるが、本製品は付属せず、また現時点では発売直後ということでサードパーティ製も含めて対応製品はごくわずかだ。従来のmotoシリーズともサイズ的に互換性がなく、アクセサリ選びはややネックとなる。

 プリインストールアプリは控えめで、ほぼ素のAndroidといっていい構成。ヘルプアプリを除けばモトローラ製のアプリも皆無で、Pixelシリーズのようなシンプルさを求めているユーザーにとっては好印象だろう。

ホーム画面。かなりすっきりとしている(左)。プリインストールアプリは少なく、素のAndroidに近い(右)

 音量ボタンと電源ボタンは本体右側面に備わっている。両者の間隔がやや狭いのは気になるが、電源ボタンは表面にスリットが入っており、慣れればこの感触で音量ボタンとの区別がつけられるようになる。ボタンごと覆ってしまう保護ケースを装着した場合、途端にわかりにくくなるので要注意だ。

 このほか他製品にないギミックとして、音量ボタンや電源ボタンとは別に、本体の左側面に独立したファンクションボタンを備えていることが挙げられる。このボタンにはGoogleアシスタントの起動が割り当てられており、ロックを解除しなくとも、Googleアシスタントを起動して音声で調べ物などが行なえる。

 もっとも(本製品側の問題ではないが)家電などを操作するためには最終的にロック画面を解除しなくてはならないなど、できることは制限される。またGoogleアシスタント以外の機能を割り当てることもできないので(ヘルプでも「Googleアシスタントボタン」と明記されている)、活用の幅が狭いのはもったいないかぎりだ。

右側面。電源ボタンが下、音量調整ボタンが上に配置される。電源ボタンは表面にスリットが入っている
左側面。SIMスロットの直下に、独立したGoogleアシスタントボタンが用意されている
Googleアシスタントボタンを使えば、ロック状態でGoogleアシスタントを起動できる(左)。ただしロック状態のまま使えるのは天気予報の検索など、その画面内で完結できる機能のみ

 背面は、デュアルカメラを収めたブロックが突出しているが、厚みはそれほどなく、また指紋センサーの位置を指先で探し当てるのにちょうどよい目印になっており、あまり邪魔に感じない。中央寄せで配置されているため、カメラが左寄せで突出しているiPhoneのように、デスク上に置いた時に傾くこともない。

 懸案のベンチマークだが、Sling Shot Extremeによる測定値は「417」。以前レビューした実売3万円台(当時)のOPPO「Reno A」で「1,845」、Pixel 3a XLで「1,629」あったのと比較すると、文字通り「価格相応」という印象だ。今回のような電子書籍用途や入門機としては使えても、バリバリと使いこなす用途には少々きつそうだ。

Sling Shot Extremeによるベンチマーク結果は「417」。以前レビューしたOPPO Reno Aの「1,845」を大きく下回っている。とくにグラフィックまわりがかなりつらそうだ(左)GeekBench 5でもやはりスコアは伸びない(右)

表示品質はギリギリ及第点。ネックはダウンロードの遅さ

 さて、電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルに、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは太宰治著「グッド・バイ」を用いている。電子書籍ストアは主にKindleを使用している。

 本製品はAndroidゆえ、電子書籍アプリ内でシームレスに続刊が購入できる。表示サイズ自体はiPhone 12 Pro Maxよりわずかに小さいが、それでも6型以下のスマホとの差は歴然だ。コミックをなるべく大きな画面で読むという目的には十分なサイズだ。

テキストコンテンツを表示した状態。むしろ天地に余裕がありすぎるほど
コミックを表示した状態。アスペクト比20:9ゆえ上下に余白ができる問題はあるが、表示サイズはかなり大きい
画面の横幅は実測で68mmほど。これはiPhone 11 Pro Maxとほぼ同じだ
iPhone 12 Pro Maxは横幅が実測71mmあるため、本製品よりもわずかに大きく表示できる

 解像度は269ppiということで、400ppiを超えるiPhone 12 Pro Maxなどとは差があるが、それでもiPad(264ppi)とほぼ同等ということで、及第点はクリアしている。細部のディティールや細かい書き文字などにおいて高望みは禁物だが、200ppi前半のデバイスのような、実用レベルでの厳しさを感じることはない。

左が本製品(269ppi)、右がiPhone 12 Pro Max(458ppi)。斜め方向の線や細かいルビなどにおいて、解像度の差を感じられる。印象としては第2世代iPhone SE(326ppi)に近い

 パフォーマンス面はどうだろうか。試したかぎり、ダウンロードを完了してから表示する電子書籍ストアアプリはもちろん、ストリーミング型のマンガアプリでも、とくに挙動面での支障はみられなかった。今回は「マガポケ」をアプリで、「となりのヤングジャンプ」をブラウザで試してみたが、問題なく読むことができた。

 一方で差を感じるのは、ダウンロード型の電子書籍ストアアプリにおける、コンテンツのダウンロード速度だ。11ac対応のWi-Fiルータに接続した状態で、iPhone 12 Pro Maxであれば3秒台でダウンロードを完了するコミックが、本製品だと20秒前後かかる。筆者の基準では、5秒以下は優秀、10秒までは許容範囲なので、本製品は完全にアウトだ。

 このほかYouTubeでも、1.5倍速での再生は問題ないが、2倍速にすると強制終了が頻繁に発生したりと、Wi-Fiまわりが原因とみられる問題がちらほら見受けられる。電子書籍以外の用途に使う場合も、こうした通信まわりの利用頻度には留意したほうがよさそうだ。

 なお本製品は、音量ボタンが電源ボタンよりも上に配置されているため、音量ボタンを使ってのページめくりを行なうには、本体のかなり上を握らなくてはいけない。音量ボタンでページがめくれることは、電子書籍用途でAndroidを選ぶ理由の1つだが、本製品に関してはあまり期待しないほうがよさそうだ。

音量ボタンでページめくりを行なうには、本体のかなり上を持つ必要がある。とくに左手で持つ場合は要注意だ

2万円弱という価格からすれば上出来。同価格帯のライバルは?

 以上のように、サブ機ではなく外出先でもバリバリ使うメイン機としての利用を考えていたり、ゲームなどでの利用を視野に入れるならば、やはりパフォーマンス面がネックになる。実際に使うかぎり、ベンチマークの数値ほどの遅さは感じないものの、前述のようにWi-Fiの遅さが何かにつけて足を引っ張っている印象が強い。

 一方で、メインで利用するスマホはすでに所有しており、電子書籍で使える大画面のスマホを、限られた予算で探している場合には、選択肢として悪くない。筆者はSIMカードを入れずに自宅内で電子書籍専用機として活用しているが、ダウンロード速度の遅ささえ我慢すれば、それほどストレスはない。2万円弱という出費からすれば上出来だ。

 なお同じ価格帯における競合としては「Xiaomi Redmi 9T」「OPPO A73」があり、メモリおよびストレージの容量は同じだが、こちらはいずれもSnapdragon 662を採用しており、解像度もやや上、さらに5GHz帯にも対応と来ている。素に近いAndroidであることを条件にするならば本製品一択だが、そうでなければこちらも選択肢に入ってくるだろう。

 また本製品のあとに発表された同じモトローラの「moto g10」は、実売2万1,800円ながら本製品と同じ6.5型で、5GHz対応、また発売時点でAndroid 11に対応している。Snapdragon 460であることをどう判断するかだが、2万円前後という価格帯では、こちらも強力なライバルとなりそうだ。

ブラウザに切り替えることなくアプリ内で直接コンテンツを購入できるのはAndroidの大きなメリットだ