山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Googleの6型スマホ「Pixel 3a XL」で電子書籍を試す

~実売価格6万円のリーズナブルさが売りの「Pixel 3 XL」弟分

Pixel 3a XL

 米Googleの「Pixel 3a XL」は、Android 9 Pieを搭載した6型スマートフォンだ。従来の「Pixel 3 XL」の廉価モデルという位置づけながら、CPUを除いたスペックの多くは共通しているほか、評価の高いカメラ機能やFelica対応などの機能も受け継ぎつつ、従来のほぼ半額となる6万円というリーズナブルな価格が大きな特徴だ。

 従来の「Pixel 3 XL」の画面サイズは6.3型で、現行のスマートフォンとしてはiPhone XS Maxなどと並び最大級の製品だった。本製品は画面上部のノッチがなくなったことで計算上は6.0型と一回り小さくなっているが、コミックの表示サイズを決める画面の横幅にほぼ変化はなく、それゆえ外出先で気軽に電子書籍を閲覧するには適していると考えられる。

 とはいえ、CPUなど一部のスペックはダウンしており、実際に使ってみなければ評価しにくいのは事実。今回はメーカーからSIMフリーモデル(本製品はPurple-ish、Pixel 3 XLはClearly White)を借用できたので、電子書籍ユースを中心にレビューする。

 同製品の売りであるカメラ性能やFelica周りの評価は行なっていないので、予めご了承いただきたい(編集部注: カメラなどについてはPixel 3aレビュー記事を参照されたい)。

製品本体。Pixel 3 XLと同じく、Android 9 Pieを搭載する
電源ボタン、音量ボタンはともに右側面に配置される。色がついているのが電源ボタン
底面。コネクタはUSB Type-C。左右にスピーカーを備える
上面。Pixel 3 XLにはないイヤフォンジャックを備える
左側面。SIMカードスロットを備える。Nano SIMサイズで、メモリカードは非対応
背面は左上にカメラ、中央には指紋認証センサーを備える

「全部入り」ではないが高いコスパ

 まずはスペックの比較から。Pixel 3 XLに加えて、サイズがほぼ同等であるiPhone XS Maxも併せて比較する。

モデルPixel 3a XLPixel 3 XLiPhone Xs Max
メーカーGoogleApple
OSAndroid 9 PieiOS 12
発売年月2019年5月2018年11月2018年9月
サイズ(幅×奥行き×高さ)76.1×160.1×8.2mm76.7×158×7.9mm77.4×157.5×7.7mm
重量167g184g208g
CPUQualcomm Snapdragon 670 (8コア/2GHz+1.7GHz/64bit)Qualcomm Snapdragon 845(8コア/2.5GHz+1.6GHz/64bit)A12 Bionic 次世代Neural Engine
RAM4GB4GB
ストレージ64GB64/128GB64/256/512GB
画面サイズ6.0型6.3型6.5型
解像度2,160x1,080ドット(402ppi)2,960×1,440ドット(523ppi)2,688×1,242ドット(458ppi)
Wi-FiIEEE 802.11ac 2x2 MIMOIEEE 802.11acIEEE 802.11ac 2x2 MIMO
コネクタUSB Type-CLightning
SDカードスロット非搭載
防水防塵IP52IP68IP68
生体認証方式指紋認証顔認証
駆動時間/バッテリ容量3,700mAh3,430mAhインターネット利用: 最大13時間/ビデオ再生(ワイヤレス): 最大15時間/オーディオ再生(ワイヤレス): 最大65時間

 一般には「Pixel 3 XLの廉価版」とされる本製品だが、確かにスペックダウンしている部分はあるものの、こうして見ると押さえるべきポイントはしっかりと押さえていることが分かる。

 たとえばメモリは4GBと同等なほか、ストレージも同じく64GBモデルが基本だ。上位の128GBモデルこそ姿を消したものの、たとえば32GBと64GBの2モデル構成にするなどラインナップ自体を低容量にシフトし、価格が下がったように見せかけているわけではない。

 またUSB PDによる急速充電(18W)に対応するほか、Felica搭載でおサイフケータイが利用できるのも、ミドルクラスの製品としては魅力だ。

 解像度はやや下がったものの400ppiの大台はキープしており、エントリークラスのスマートフォンに多い250~300ppiクラスの解像度とは一線を画している。画質については後ほど実際にチェックする。

 重量は約17g軽くなっているほか、バッテリ容量も約1割アップするなど、むしろ進化している点もある。とくに後者は、廉価モデルということで露骨に容量が減っていてもおかしくないだけに好印象だ。またイヤホンジャックが追加されていることを評価する人もいるかもしれない。

 その一方で、ワイヤレス充電機能が省略されたほか、防水防塵機能がIP52へダウングレードされたのは、注意しておきたいポイントだ。CPUもエントリークラスでこそないものの、ハイエンドクラスの製品とは明確な差があり、ベンチマークの数値にもはっきりと現れている。少なくともPixel 3 XLのような「全部入り」のハイエンドモデルではない。

 しかしその結果、従来のほぼ半額となる6万円というリーズナブルな価格を実現しているのは驚きだ。

 おそらく先に売価を決めて、そこから逆算してスペックを削ったと推測されるが(ちなみに海外ではPixel 3 XLの899ドルに対して本製品が479ドル)、もう1~2万円程度は高くてもおかしくない印象だ。既存のPixel 3 XLのユーザの中には「こちらにしておけばよかった」という人もいることだろう。

左が本製品、右がPixel 3 XL。上部のノッチの有無に目がいくが、筐体サイズもわずかに大柄なのが分かる
背面。本製品はややプラスチック感が強い。なおワイヤレス充電機能は省かれている
上が本製品、下がPixel 3 XL。本製品はSIMカードスロットが左側面にある
右側面。電源ボタンおよび音量ボタンの配置はほぼ同様
上面。本製品はイヤフォンジャックが追加されている
底面。USB Type-Cコネクタ両側のスピーカーが目立つ。Pixel 3 XLではこの面にSIMカードスロットがある
左が本製品、右がiPhone XS Max。筐体サイズは本製品のほうがわずかに大きい
背面。素材感が大きく異なっている
厚みの比較。いずれも左が本製品、右上がPixel 3 XL、右下がiPhone XS Max。厚みの差はわずかに見えるが、実際に持ち比べるとかなり違いを感じる
Sling Shot Extremeによるベンチマーク。本製品のスコアは1,629で、Pixel 3 XLの4,504から大差をつけられている。Physicsはそれほどでもないが、Graphicにかなりの差があるのは、前回レビューした「ZenFone Max Pro(M2)」(スコア1,226)に似た傾向だ

ノッチの廃止など外観面に相違はあるが実用面での影響は皆無

 本製品は、見た目のデザインもPixel 3 XLと瓜二つで、手元に両方があると取り違えることもしばしばだが、両者を並べると細かい違いの存在に気付かされる。

 まずはなんといっても画面上部、ノッチがなくなっているのが最大の違いだ。高さおよそ8mmほどあるノッチの左右部分が塗りつぶされた形になっているため、そのぶん画面サイズは小さくなっている。ただし横幅に変化はほぼないため、コミックを中心とした電子書籍の表示サイズへの影響は実質皆無だ。後ほど詳しく見ていく。

 筐体はポリカーボネート製で、従来に比べると背面を中心にプラスチック感が強く、好みが分かれそうだ。一方で背面パネルと側面が1つのパーツとなったことで、両者の継ぎ目がなくなった。無接点充電に対応しなくなったことで、別パーツに分ける必要がなくなったのだと考えられるが、見た目にもスマートになった。

 筐体サイズの違いについては、実際に使っていても体感できるレベルではないが、実機を横に並べると、意外に差があって驚く。本稿執筆時点ではまだケースやアクセサリ系は出揃っていないが、Pixel 3 XLに作られた保護ケースを流用するのは不可能だろう。

上部のノッチがなくなったのは大きな相違点。ただし電子書籍ユースではこの部分は従来から塗りつぶされていることが多いため、実質的な影響はない。詳しくは後ほどチェックする
下部は違いがないように見えるが、本製品のほうがややベゼル部が広い。筐体サイズがやや縦に長い理由はここにあるようだ
ポリカーボネート製の本製品(手前)のほうがプラスチック感が強い。若干チープな印象はあるが、両者を並べず単体で見るとそう気になるわけではない
本製品(上)は背面から側面までが一体成型となったため、従来のPixel 3 XL(下)にあった側面の段差がなくなっている
電源ボタンの色がアクセントになっているのは従来と同様だ

 せっかくなのでセットアップ手順を比較してみた。オプション項目を除いた主要画面に限った比較だが、フローの数はまったく同じ、文言もざっと見た限りでは違いはなく、SIMカードの挿入位置を示したイラストの違いを除けば相違点はない。

 唯一の違いといえば、セットアップ完了後の壁紙のデザインが異なることぐらいである。

以下、いずれも左が本製品、右がPixel 3 XL。電源を入れると「ようこそ」画面が表示される
SIMカードの挿入を促す画面。両製品のSIMカードスロットの配置の違いが反映されている。芸が細かい
まずはWi-Fiに接続。続いてアップデートの有無が確認され、必要に応じインストールが実行される
アプリとデータをコピーするか否かを尋ねられる。今回はスキップして次へ
Googleアカウントへログインする。以下数画面にわたっておなじみのフローが続く
Googleサービスの有効化について選択する。Googleドライブへのバックアップ、位置情報の使用、スキャンの許可、使用状況データや診断データの送信、アップデートやアプリのインストールと、項目はまったく同じだ
Googleまわりの設定が終わったら指紋認証の登録を行なう
続いてGoogleアシスタントなどのカスタマイズのほか、追加アプリのインストール画面が表示される。ここのアプリの顔ぶれもまったく同じだ
インストールが完了しホーム画面が表示される。最大の違いはこの壁紙のデザインだ
アプリ一覧。こちらもまったく同じ。なお電子書籍系のアプリはインストールされていない

表示まわりやレスポンスも差はなく、電子書籍ユースに適する

 続いて電子書籍ユースについて見ていこう。とくに断りがないかぎり、ストアはKindleストアを利用している。テキストコンテンツのサンプルには太宰治著「グッド・バイ」を、コミックのサンプルにはうめ著「大東京トイボックス 1巻」を用いている。

 本製品に限らず、現行のスマートフォンの画面は本の判型よりも縦長であるため、上下に余白ができるのが常だ。

 本製品はPixel 3 XLと違って画面上にノッチがなく塗りつぶされた状態にあるが、余白が減っただけで、コミックの表示サイズには影響しない。またテキストコンテンツも、このエリアにまで表示が及ぶわけではないので、表示できる情報量への影響は実質皆無だ。

 ちなみに同じコマを表示した場合の横幅の差については、Pixel 3 XLはもちろん、前回までのレビューで取り上げたZenFone Max Pro(M2)やAQUOS zero、さらにはiPhone XS Maxともほぼ同等で、誤差は2mm以下に収まっている。

 コミックをなるべく大きく表示できるスマートフォンという意味では、格好の製品と言って良いだろう。

左が本製品、右がPixel 3 XL。Kindleストアではコミックの表示時は上部が塗りつぶされるため、見た目はほぼ同じだ
テキストでも同様に上部が塗りつぶされるので見た目は変わらない
読書オプションを表示する時、Pixel 3 XLはノッチ左右まで使って情報を表示しようとするが、実際には画面の表示領域はほとんど変わらない
コマの横幅は約55.8mm。Pixel 3 XLでは同じコマが56.9mmなので約1mm小さいことになるが、誤差の範囲だろう。ちなみにiPhone XS Maxは55.6mmなので本製品とほぼ同等だ

 解像度はどうだろうか。本製品は402ppi、Pixel 3 XLは523ppiと差はあるものの、ここまで画素密度が高くなると、見た目の違いはほとんど感じない。もちろんじっくり見れば斜め方向の線の粗さなどで判別は可能なのだが、実際の読書において気になるレベルではない。

コミックの画質比較。左が本製品、右がPixel 3 XL。どちらも十分なクオリティで、斜め方向の線もしっかり描写されている
テキストの画質比較。左が本製品、右がPixel 3 XL。撮影時のモアレのせいでややシャープさに欠けているが、ルビや複雑な漢字を見ても描写力の大きな違いは感じられない

 また前回のZenFone Max Pro(M2)などで懸案となっていた、ページめくりで利用する音量ボタンの配置も、電源ボタンが上、音量ボタンが下という配置であるため、通常の持ち方では指が届かないこともなく、ページをめくりやすい。少なくとも、音量ボタンでページめくりをするために特殊な持ち方をする必要はない。

コミックを読んでいる様子。背後から握るように持ち、親指で左右スワイプしてページをめくるようにすれば、片手でも操作は容易だ
音量ボタンを使ってページをめくる場合も、通常の握り方のまま対処できる。これは左手で握った場合
右手で握る場合は、親指で音量ボタンを押すことでページめくりが行なえる

 レスポンスもとくに問題はなく、コミックを数冊単位でダウンロードした場合の所要時間もほぼ同等だ。

 前回紹介したZenFone Max Pro(M2)は、本製品とCPUが同等ながらダウンロード速度が非常に遅かったが、これは5GHz帯非対応のWi-Fiが足を引っ張っていたことが理由で、本製品ではそのような現象は見られなかった。電子書籍ユースでCPUの性能差を感じることはまずないだろう。

 また「Pixel 3 XL」はベゼル周りの反応がかなり敏感で、握り方によっては意図しないままページをめくられることがあったが、本製品は数日試用した限り、そうした症状はほぼ皆無だった。左右ベゼルの幅は変わっていないように見えるが、構造が異なるためか、敏感な反応がみられない。筆者のように片手持ちにこだわるユーザにとってはプラスと言える。

iPhone XS Max(右)との比較。コミックはページの横幅に合わせて縮小されるので、iPhone XS Maxのようにノッチ周辺の領域まで使っても余白が増えるだけであまり意味はない
一方のテキストは、あまり天地に長くても読みにくいだけとはいえ、iPhone XS Maxは下のベゼルが狭いことから画面の広さをより有効活用できており、これは本製品にはない利点だ
従来のPixel 3 XL(右)で、開発者向けオプションの「カットアウトがあるディスプレイのシミュレート」を非表示にするとノッチ表示がオフになり、本製品とほぼ同じ表示となる。以前のPixel 3 XLのレビューで手順を紹介しているので参考にしてほしい

守備範囲が広くおすすめできる製品

 以上のように、Pixel 3 XLと比べて削られている部分はあるが、電子書籍ユースにおいては影響は実質皆無だ。

 本稿では評価していないカメラ機能はPixel 3 XLと同等と言われており、それだけの機能と性能を備えたモデルがPixel 3 XLの約半額というのは、かなり思い切った価格戦略であることは間違いない。

 本製品が一定の成果を上げれば、iPhoneの次期モデルの価格設定に影響を与える可能性もあるかもしれない。

 ところで、実際に製品の購入を考えるに当たってライバルになるのは、ハイエンドモデルに分類されるPixel 3 XLではなく、むしろ前回紹介したZenFone Max Pro(M2)などのミドルレンジモデルになるだろう。CPUやメモリ、ストレージなどのスペックは酷似しており、画面サイズもほぼ同等で、解像度も近い。それでいて本製品より4割ほど安価な、実売3万円台と来れば見逃せない。

製品Pixel 3a XLZenFone Max Pro(M2)
メーカーGoogleASUS
OSAndroid 9 PieAndroid 8.1
発売年月2019年5月2019年4月
サイズ(同)76.1×160.1×8.2mm75.5×157.9×8.5mm
重量167g175g
CPUQualcomm Snapdragon 670Qualcomm Snapdragon 660 (8コア)
RAM4GB
ストレージ64GB
画面サイズ6.0型6.3型
解像度2,160x1,080ドット(402ppi)2,280×1,080ドット(400ppi)
Wi-FiIEEE 802.11ac 2x2 MIMOIEEE 802.11b/g/n
コネクタUSB Type-CmicroUSB
SDカードスロット-搭載(最大2TB)
防水防塵IP52非対応
認証方式指紋認証顔認証、指紋認証
駆動時間/バッテリ容量3,700mAh5,000mAh

 もっともZenFone Max Pro(M2)は、Wi-Fiが5GHz帯非対応ゆえダウンロード速度が著しく遅かったり、コネクタがMicro USBであるため同製品の売りである大容量バッテリをUSB PDで充電できないなど、フォームファクタの古さが足を引っ張っている箇所が多々ある。電子書籍ユースに限れば、音量ボタンによるページめくりが行ないにくいのも痛い。

 またPixel 3a XLが最新のAndroid 9で、OSアップデートおよびセキュリティアップデートが最低3年間保証されているのに対して、ZenFone Max Pro(M2)はAndroid 8であり、またFeliCaは非搭載であるなど、ソフト面でも機能面でも大きな開きがある。

 逆にZenFone Max Pro(M2)が勝っているのは、SDカードスロットを搭載していること、バッテリ容量が多いこと、および顔認証にも対応することくらいで、トータルで見るとやはり価格相応の違いがある印象だ。

 ただ、電子書籍ユースでポイントとなる画面まわりのスペックだけを見れば遜色はなく、CPUがほぼ同等、ベンチマークの結果も酷似しているので、付加機能を必要とせず電子書籍ユースに絞るならば、そちらを選ぶという考え方もなくはない。

 いずれにせよ、実際に製品を選ぶ場合は「Pixel 3 XLか、もしくはPixel 3a XLか」という選び方をすることは考えにくく、本製品に近いミドルエンド機との比較になるはず。その場合、電子書籍ユースに限らず、さまざまな使い方を想定して自分に合ったモデルを選択することになるが、ミドルエンド機で本製品ほど守備範囲の広い製品はあまり見当たらず、そうした意味でもおすすめできる製品と言えそうだ。