Windows 10ユーザーズ・ワークベンチ
Windows 10 のディスプレイ環境のカスタマイズ
~ノートPCを外部ディスプレイに繋ぐ
(2016/1/27 06:00)
常用PCはモバイルノートPC 1台という使い方が増えている。企業などでも会社から貸与されるPCはノートPCのみというケースが増えているようだ。マルチデバイスの時代なのになぜ、という疑問も残らないではないが、デスクから会議室、客先訪問から海外出張先まで、全てを1台のPCで済ませるわけだ。だが、ノートPCのディスプレイサイズでは効率の点で不利だ。そこで今回は、Windows 10 PCにもう1台のディスプレイを繋いでみることにしよう。
機種ごとに異なる画面サイズと解像度
Windows 10では、ようやく外部ディスプレイ接続時の使い勝手に落ち着きが見え始めてきた。実際にはWindows 8.1からなのだが、OSの対応によってようやくPer monitor DPI Awareなアプリケーションも揃い始めてきた。
OSの対応としては、まだまだお粗末の域を出てはいないが、古いアプリケーションを切り捨てられない点を考慮すれば、この辺りがギリギリのところなのかもしれない。今後、アプリケーションがUniversal Windowsアプリに移行していけば、さまざまな問題が解決するのだろう。
また、ノートPCのように比較的小型のディスプレイであっても、高い解像度を持つ高DPI環境も目立つようになってきている。この辺りの事情は連載の4K修行僧に詳しい。いずれにしても、Windowsの想定解像度は今も昔も96dpiだが、それでは使いものにならない環境が増えてきているわけだ。
手元で日常的に使っているPCは、タブレットからモバイルノート、デスクトップまで十数台程度だが、現時点で私物、借り物を含めて手元にある典型的な装置についてディスプレイサイズと解像度を見てみよう。
メーカー | 機種 | 画面サイズ | 解像度 |
---|---|---|---|
富士通 | Arrows Tab QH55M | 10.1型 | 2,560×1,600ドット |
Microsoft | Surface Pro 3 | 12型 | 2,160x1,440ドット |
Microsoft | Surface 3 | 10.8型 | 1,920×1,280ドット |
パナソニック | レッツノートSZ5 | 12.1型 | 1,920×1,200ドット |
パナソニック | レッツノートRZ5 | 10.1型 | 1,920×1,200ドット |
NECパーソナルコンピュータ | LAVIE Z | 13.3型 | 1,920×1,080ドット |
VAIO | VAIO S11 | 11.6型 | 1,920×1,080ドット |
デスクトップ機 | 24型 | 1,920×1,200ドット |
よくもまあ、ここまでバラバラというのに妙な感心をしてしまうが、これがWindowsエコシステムのいいところだ。解像度とディスプレイサイズの組み合わせのバリエーションが広く、消費者は自分がもっとも使いやすいものを選ぶことができる。ただしデメリットもあり、アプリケーション側からは、どのような表示環境で使われるか分からないので、いろいろな不具合が出てくる。そこをうまく仲裁するのがOSとしてのWindowsの役割だ。
拡大率には上限がある
上記に挙げた8台を素直に96dpiで使おうとすると、よほど視力のいい方でない限り破綻を感じるだろう。Windowsが想定する96dpiを計算すると、約23型(計算では22.94型)が必要なので、それより小さなディスプレイでは解像度とディスプレイサイズに応じて表示を拡大する必要がある。従って、各社ともに、製品のディスプレイサイズと解像度から、適切だと判断した拡大率を設定して出荷しているのが現状だ。
基本的にWindowsの表示拡大率は「テキスト、アプリ、その他の項目のサイズを変更する」という設定を変更することで決められる。その値は100%から始まって25%刻みと、かなりアバウトだ。また、短辺のピクセル数ごとに拡大率の上限も決まっている。
上記の中では富士通のタブレットが250%で手元の製品の中ではもっとも値が大きい。また、VAIOは175%が上限だ。4Kディスプレイなどでは、もっと高い拡大率を指定することができる。短辺解像度ごとに上限が異なるのは、この値を無制限にしてしまうと、デスクトップからはみ出して、押せないOKボタンを持つダイアログボックスなどが出てきてしまうからだ。
逆に24型より大きなディスプレイについてはどうかというと、100%が下限なので、50型の超えるサイズのTVに繋いでも、100%の表示が大きく見えるようになるだけで、情報の量を増やす方向での調整はできない。Surface Hubのように84型で3,840×2,160ドットといった製品ではどうなのかが気になるところだが、寡聞にしてその仕様は調べ切れていない。もっとも、大きなディスプレイほど距離を置いて使われるので、100%下限という仕様はある程度妥当なものと考えることもできる。
自分が使いやすい拡大率を設定する
さて、ノートPCを単体で使う時には、メーカー指定の拡大率をそのまま使ってもいいし、表示が小さい、あるいは大きいと思ったら、「設定」-「システム」-「ディスプレイ」で、スライダを使って拡大率を変更しよう。
変更はその場でダイナミックに反映されるが、一部のアプリ、つまり、レガシーなアプリについては、いったんサインアウトしなければ表示に対応できない。これで自分の視力と使い方に応じた拡大率に設定すれば、ノートPCの使い勝手はより高まるだろう。
さて、ノートPCを単体で使っている場合はそれでいいが、装備されたHDMIやDisplayPortに外部ディスプレイをつないだ場合はどうなるのか。
外部ディスプレイは、「複製」、「拡張」、「セカンドスクリーンのみ」という用途で使うことができ、ディスプレイの設定以外では、ショートカットWindows+P で切り替えることができる。
接続した外部ディスプレイの画面サイズがノートPCと同じであることはめったにない。だが、Windows 10ではディスプレイごとに拡大率を変更できる。例えば、レッツノートSZ5の12.1型1,920×1,200ドットに、200%で表示している環境に、24型1,920×1,200ドットという、解像度は同じでも画面サイズの異なるディスプレイを接続した場合、ノートの画面は200%表示のままで、新たに接続した24型外部ディスプレイは100%という設定がデフォルトで適用された。この値は、接続されたディスプレイの解像度と画面サイズを取得して決まる。
SZ5を195%、外部ディスプレイを100%に設定できれば、双方の画面に表示されるオブジェクトの見た目の大きさを同じにできるのだが、拡大率の設定は25%刻みと、かなりアバウトなので、それはできない。だが、近い値を設定すれば、本体ディスプレイと外部ディスプレイの表示の差異を最低限にすることができる。
Windows 10でのマルチディスプレイ環境で「拡張」を選んだ場合、タイトルバーをつかんでウィンドウをディスプレイ間を移動させることができるのはもちろん、アクティブなウィンドウをShift+Windows+左右方向キーで隣のディスプレイにウィンドウを移動することができる。
また、タスクバーについては、全てのディスプレイに表示するかどうか、1つのディスプレイのみにするかをそのプロパティで設定できる。これは好みに合わせて決めておけばいい。
カスタム拡大率も設定できる
もし、外部ディスプレイを繋がない、あるいは全てのディスプレイで同じ拡大率を使うというのなら、拡大率はもっと細かい値を設定することができる。こちらはコントロールパネルのディスプレイアプレットを使う。
コマンドリンク「カスタムの拡大率を設定」で、100%以上の任意の値を設定すればいい。ここでVAIO S11は198%、レッツノートRZ5は234%、Surface Pro 3は225%といった値に設定すれば、オブジェクトの表示サイズは見かけの上で同じになる。3台を並べて使っても違和感がなくなるわけだ。当たり前だが小さなディスプレイでは情報量は少なくなり、大きなディスプレイでは情報量が多くなる。ただし、小さなディスプレイでは押せないボタン付きのダイアログボックスを覚悟しなければならない。ここはディスプレイを縦に設定して対処といったことで回避する。あるいは、キャンセルはEsc、適用がAlt+Aであることを覚えておくといいかもしれない。
ちなみに、これらの値は画面サイズと縦横のピクセル数から三平方の定理で対角線上のピクセル数を算出し、それを96dpiで除したDPI値から算出したものだ。もっと低い値で大丈夫なら一定の割合で縮小率を決めて、全装置に適用すればいい。複数のPCを行ったり来たりする際に、画面サイズに関わらず、同じイメージでPCを使うことができるようになる。
情報の生産、情報の消費といったことがよく言われるが、情報の生産には情報の消費が不可欠で密接な関係がある。極端な話、情報の消費が必要なければ、さほど広い作業領域は求められない。だからこそ、ノートPCに接続した大きな画面で情報を消費しつつ、本体の小さな画面で生産に集中するという使い方は作業効率を大きく高めるだろう。
大きなディスプレイより、解像度が高いディスプレイより、とにかく複数のディスプレイ。それがWindowsでの作業の効率を高める早道だ。場合によってはTVに繋いだっていい。とにかく設置スペースさえ確保できるのなら、外部ディスプレイの追加という数万円の投資で驚くほどの効果が得られるはずだ。