山田祥平のRe:config.sys
iPhone 15が発売されて盛り上がるスマホの中古市場
2023年9月16日 06:22
メルカリが、スマホ出品サポート開始に関する記者発表会を開催、秋に流通が増えるスマホの中古市場について説明した。少しでも出品のハードルを下げるために、そのサポート体制を強化する。
スマホ売買時の高いハードル
Z世代の2人に1人が家にある自分の持ちものを売ることを想定した買い物の経験があるという。消費行動が変化し、手元のものを売って、新しいものを入手するライフスタイルは、モノを入れ替えることで身の回りのモノをこれ以上増やさないことを目指しているといってもいい。さらに、モノをゴミとして処分するのではなく、売ることで、売り先の手元で、モノに新たなライフサイクルを与えることになり、SDGsの点でも望ましい。自己満足にすぎないという論調もあるが、ある程度の説得力がある説明だ。
そんな中で、もはや生活必需品ともいえる存在となったスマホだが、それを売るハードルは高かった。専門業者に持ち込むならともかく、フリマプラットフォームで売るのは、洋服や小物を売るのとはわけがちがうくらいに抵抗を感じるかもしれない。
だが、売ることのハードルは少しずつ下がっている。1つの要因は、スマホの購入にあたって残価設定型のローンが一般的になってきたことだ。スマホの価格が高騰し、さらにそれを円安が押し上げる中で、「いつでもカエドキプログラム」や「かえトクプログラム」といった、キャリアが提供する残価設定型ローンを利用することで、スマホの価格を圧縮でき、それによって古い端末を引き取ってもらい、早い時期の買い替えを促進できるというメリットは売る側にも買う側にも悪くない施策のように見える。
手元の端末の下取り施策については、たとえば24回払いを設定した残価設定型ローンで、23回目の月に端末を返却、つまり、下取りに出すと、残りの支払いが免除される。それをしない場合は、残価に対して、新たな24回払いが再設定されるという仕組みだ。
こうした施策が一般的になるにつれ、スマホを一括払いで買いにくくなってしまった。そして、手元のスマホは新しいスマホと入れ替えるのことが当たり前になった。キャリア等の施策の中で下取りしてもらう場合は、何から何までおまかせで、エンドユーザーがその扱いを気にする必要がないというのもハードルが下がった1つの要因だ。
メルカリのようなCtoCフリマ、つまり、素人と素人の売買取引では、このハードルの高さを何らかの方法で下げなければならない。
スマホを売るハードルはなぜ高い
メルカリは、MM総研の調査資料を挙げ、中古スマホ市場は拡大を続けていると説明する。2022年度における新品出荷台数が2,985.1万台で前年度比11.8%減だったのに対して、同年度の中古スマホの販売台数は234万台と10.4%増となっている。また、メルカリによれば、毎年、新機種が発売される秋に流通総額が増加するのだという。
今週は、毎年恒例のアップルイベントが開催され、新型のiPhone 15シリーズが発表された。かつてのようにあらゆるiPhoneユーザーが、発売当日に行列して新型に買い替えるような時代ではないのが寂しいが、それでもモノは動く。
そして、新しい端末を入手すれば、古い端末はいらなくなり、できれば、売って新しい端末を購入する代金の足しにしたいと思う。もっとも残価設定型ローンでは、そのスパイラルから逃れるのは難しいかもしれず、そのまま新機種をキャリアのローンで継続するという流れにもなりそうだ。そして中古の端末が市場に流れていく。
メルカリでは、一般的な下取り価格の2倍で売れることもあるくらいに、スマホが高く売れるのだそうだ。しかも、売れた端末のうち64%が3日以内という早いタイミングで売れ、38%の端末が状態が悪くても売れ、そのうち11%はジャンク品と記載されているくらいになんでも売れるとメルカリは説明する。
売れるのは最新機種ばかりではなく、数年前の端末にも人気があり、iPhone 7 32GBやGoogle Pixel 4aなど多様な商品が売れているらしい。
こうした状況の中で、
- スマホは出品が難しそう
- 個人情報の削除が不安
- スマホを売るきっかけがない
といった売る側の不安論理を新たな取り組みによって解決し、スマホの中古市場拡大を推進しようというのが今回のメルカリの狙いだ。
スマホ売買のハードルを下げるメルカリの施策
上に上げた1~3のポイントを、
- UI/UX改善で商品データ強化で入力をスムーズにするなどオンライン面でのサポート、東京・新宿マルイ店で出品口座や相談窓口の開設、出品キットの配布などオフライン面でのサポートなど両時期での支援
- 専門業者介入によるあんしんデータ消去サービス(1,400円)の提供
- 期間限定キャンペーンの実施
で背中を押す。
特に、2については、スマホを送付すると業者側で簡単なクリーニングを行ない、FeliCaに残るデータを含めて完全初期化、指定の宛先に送付するので匿名性も保てるメリットがある。また、このサービスを引き受けるBelong社に、買い取ってもらう即時買取の仕組みも用意されている。
ここで心配なのは、C2C売買であるからこそ維持されてきた高い買値等が、専門業者の介入によって抑制されないかどうかだ。メルカリでは、競合はせずに、強調で全体のパイが増えていくと想定しているそうだ。
問題点として出品が難しいという点、そして、個人情報の消去が大変という心配がある。新しいスマホを買うから売る。売っても新しいスマホはいらないというふうにはならない。しかも、短期間は機種間データ移行などのために、新旧の端末を手元におき、古いものと新しいものが併走する必要性と可能性がある。それをやっているうちに面倒くさくなるからタンスに死蔵することになる。そこがクルマの売買などとの大きな違いだとメルカリはいう。
今、潜在的に市場に存在する中古端末は6兆円分あるという。約3億台だ。それが各家庭のタンスなどに死蔵されている。もしメルカリがその1%を動かせば、動く金額は600億円となる。今、年間53万台がメルカリで取引成立している状況を考えれば、かなり現実的な金額だ。
ちなみに、今年のiPhone 15の最低価格は128GBストレージの売れ筋製品が12万5,000円あたりだ。3年前の2020年、初の5G対応端末としてのiPhone 12は11万円くらいだったし、コロナ前の2019年、iPhone 11は8万6,000円程度だった。物価は上がる、円は安くなるなかで、今年のiPhoneと、それを取り巻く中古市場はどのように動き、どう相関関係をもつのか興味はつきない。