イベントレポート
Lenovo、折れ曲げOLED活用のシン・変態ノートPCやトリプルディスプレイオプション
2025年3月3日 08:00
Lenovoは、3月3日(現地時間)からスペイン開催のMWC 25に出展し、PCやソフトウェア、コンセプトモデルなどの発表展示を行なう予定だ。それに先立って3月3日には報道発表が行なわれ、同社が開発中の技術を利用したPoC(Proof of Concept、開発中の技術で実際の製品が構築できるかを検証する試作機のこと)を公開した。
折り曲げ型OLEDを利用した新しい変態ノートPCとなるコードネームFlip
Lenovoが公開したThinkBook “codename Flip”AI PC Concept(以下Flip)は、13.3型ディスプレイを搭載したクラムシェル型ThinkBookをベースに作られた製品となる。
通常のノートPCのディスプレイは底面の面積(底面積)と同じ大きさになっており、基本的にはそれよりも大きなディスプレイを実装することはできない。しかし、モバイル時にもっと広いディスプレイを使いたいというユーザーの要望は強くて、過去からさまざまな方法でディスプレイの大きさを拡張する取り組みが行なわれてきた。
たとえば、日本では2009年に発表された工人舎のノートPCが、収納時には2つのディスプレイを重ねて収納する形のデュアルディスプレイノートPCを発売しているし、近年のトレンドになっている、HDMIやUSB Type-Cで運べる軽量なモバイルディスプレイもそのニーズを証明していると言える。
しかし、これまでもそうした製品で決定版というモノはまだなく、各メーカーがさまざまな取り組みを行なっている段階だ。
Lenovoはそうしたクラムシェル型ノートPCでありながら、より大きなディスプレイを実装している製品に熱心に取り組んでいるPCメーカーで、2年前のMWCでは、Lenovoは折り曲げ可能なOLEDを利用して画面を巻き取るディスプレイを搭載したノートPCのPoCをデモし、本年1月のCESではその製品化を発表している。
今回公開されたPoCであるFlipもそうしたLenovoの「変態ノートPC」の系譜を受け継ぐ製品になる。
1月に発表されたThinkBook Plus Gen 6 Rollableと同じ折り曲げ可能なOLEDを利用していることは同じだが、Flipは18.1型の大型ディスプレイを中央で折り曲げて、13.3型のノートPCの底面積に収納するという形が新しいコンセプトになる。
パネルとしては、ThinkPad X1 Foldableのような巨大なタブレットで半分に折り曲げて利用するフォルダブルPCで採用されていた折り曲げ型OLEDそのものだ。
大きな違いは、フォルダブルPCはディスプレイの裏側にSoCやメモリ、ストレージ、バッテリなどのコンポーネントが入っていたが、Flipは底部にノートPCで言うところのC面(キーボード面)とD面(底面)に相当するシステム部分があることだ。
利用する時には、ディスプレイを開いて18.1型の縦長ディスプレイとして利用し、持ち運び時には折り曲げて13.3型のノートPCと同じ底面積で持ち運ぶという形だ。
回転ヒンジ型の2in1と同じようにさまざまな変形が可能で、13.3型のクラムシェル型ノートPCとしても利用できるし、タブレットモード、ビューモードなどのように使える。ちょうど折り曲げ部分には、ソフトウェア的な拡張も入っており、折り曲げたディスプレイ両面で同じ画面を表示したりなども可能になっている。顧客に同じ画面を見せながら営業するなどの用途に便利そうだ。
現時点では試作段階ということでいくつかの課題もある。一番大きいものは18.1型にした時にはディスプレイの上部が重くなり、そもままだと後ろに倒れてしまうというものだ。このため、現状では後ろにストッパーを入れることを想定しているとのことだが、製品化するにはそのあたりが課題になるだろう。
発表されたThinkBook 16p Gen 6に取り付けられるMagicBayオプション用のマルチディスプレイソリューション
Lenovoはクリエイター向けのThinkBook 16p Gen 6を今回のMWCで発表している。ThinkBook 16p Gen 6はCPUにCore Ultra 200HX、dGPUとしてNVIDIA GeForce RTX 50シリーズ(最大5070)を採用しており、高性能が特徴になっている。
また、Lenovoが自社開発したdNPU(単体型NPU)を別途搭載しており、Lenovoが自社で提供しているAI NowというローカルAIアプリケーションを利用して、ローカルでLLMの機能を活用できる。
そのThinkBook 16p Gen 6には、Lenovoの独自周辺機器装着規格である「Magic Bay」が用意されており、ポゴピンと独自の装着機構を利用してより高画質なカメラなどを装着できるようになっている。
今回LenovoはMagic BayのPoCとして、「Magic Bay Dual Display Concept」、「Magic Bay 2nd Display Concept」、「Magic Bay “codename Tiko” Concept」、「Magic Bay “codename Tiko Pro” Concept」という4つの試作機の展示を行なった。
Magic Bay Dual Display Conceptは、言ってみればThinkBook専用のモバイルディスプレイで、ThinkBookにセカンダリディスプレイとサードディスプレイの2つを追加し、装着するだけで3つのマルチディスプレイ環境をワンタッチで実現できる。
追加ディスプレイへの電源供給やデータ線はすべて前述のMagicBayのポゴピンで実現されるので、文字通りワンタッチで装着することでマルチディスプレイ環境が実現できることになる。
Magic Bay 2nd Display Conceptはセカンドディスプレイだけを装着する1つのディスプレイ版で、SNSのアップデートなどを見たいとか、そうしたニーズに向けた試作機になる。
「Magic Bay “codename Tiko” Concept」(以下Tiko)および「Magic Bay “codename Tiko Pro” Concept」(以下Tiko Pro)は、キャラクター化されたAIエージェントを表示させるための製品で、Tikoにはネコのような意匠を採用するなど、ユーザーがAIに親しみながら利用できるように配慮された製品となる。
Tiko Proはより多くの文字が表示できるようにするなど、ファンシーなキャラクターよりも実用重視のユーザー向け製品となる。
また、「ThinkBook 3D Laptop」および「Lenovo AI Ring concepts」は、裸眼立体視を実現したノートPCのコンセプトモデルと、それを指輪型のデバイスで操作するPoCで、指輪型のデバイスでジェスチャーを利用した操作などが行なえる。
ソーラーパネルをノートPCの天板に統合したYoga Solar PC Concept、20分の充電で1時間の動画再生
Lenovoはソーラーパネルをディスプレイ天板部に統合したPoCとなる「Yoga Solar PC Concept」を公開した。Lenovoに限らず、ノートPCベンダーは「持続可能な社会」の実現を目指して、ノートPCの素材にリサイクル可能な素材を採用する取り組みなどを強化している。そうした持続可能な社会実現に向けた新しい取り組みとして、今回開発されたのがYoga Solar PC Conceptになる。
Yoga Solar PC Conceptでは、ディスプレイ天板部に「バックコンタクト型」と呼ばれるソーラーセルが実装されている。バックコンタクト型のソーラーセルは通常は受光部側にある電極を、底面に移動した形のソーラーセルで、配線のたやすさやすっきりした外観のソーラーセルを構築できる。
このソーラーセルは、太陽光を受信しているときはもちろんこと、蛍光灯下など光が少ない環境でも電気を作り出し、バッテリに蓄電することを可能にする。Lenovoによれば、20分間の太陽光充電で、約1時間のビデオ再生が可能になるほどの蓄電ができる。
現状のノートPCの用途を考えると、太陽光の下で使うことはあまり想定されていないが、電力がきていない環境でもソーラーセルで充電できるという意味では災害時などには活用できそうだ。
Lenovoの独自ローカルAIアプリケーションAI Now用のdNPUソリューション
Lenovoは、AI PC向けの独自アプリケーションとして「Lenovo AI Now」の提供を米国などですでにスタートしており、それに対応した独自のdNPU(単体型NPU、SoCなどに統合されていないNPUのこと)を開発し、一部の製品に実装している。
今回LenovoはそのdNPUをThinkBook 16p Gen 6に実装し提供開始することを明らかにしたほか、USB Type-CでPCと接続できるスティック型のUSBデバイスにそれを搭載したPoCを発表している。
すでに、Ryzen AI 300シリーズ、Core Ultra 200V、Snapdragon XシリーズなどにCopilot+ PCの要件(性能が40TOPS)を満たしたNPUが搭載されているが、それは最新の製品のみで、旧来型の製品には搭載されていないのが現状だ。
そこで、そうしたノートPCなどでも、AI Nowを利用できるようにするためにこうした製品が用意され、実用どうかが検討されているということだった(なお、現状ではこのdNPUは32TOPSの性能を備えている)。
また、「AI Display with NPU inside」というPoCでは、そのdNPUがディスプレイ内部に実装され、Thunderbolt 4/USB4経由でノートPCと接続することで、同じようにAI Nowが使えるというデモも行なわれた。