山田祥平のRe:config.sys

ゆくポートくるポート

 モバイルノートパソコンはもっと身軽になっていいんじゃないか。そのために、持ち出すときに機能の大半を常置場所に置き去りにできればいい。いつ何があっても大丈夫を保険としてキープすることよりも、機能の切り離しを考える。

ノートパソコンをTBドックで拡張

 ベルキンからThunderbolt 3 Dock Coreが発売された。Thunderbolt 4時代の到来が目前に迫っているいま、Thunderbolt 3対応の製品としては、ほぼ完成形と言ってもよさそうだ。筐体はコンパクトだが、カタログスペックで約213gと、見かけよりもズッシリと感じる。でも、常時持ち歩くものでもない。今回のテーマは機能を置き去りにすることだ。

 ドック本体に用意されているのは次の7つのポートだ。

  • DisplayPort 1.4
  • HDMI 2.0
  • Gigabit Ethernet
  • USB PD対応Type-Cポート(入力)
  • オーディオジャック(入出力)
  • USB 3.1 Type-A×2

 約20cmのUSB Type-Cケーブルを直付けし、パソコンに接続することで、パソコンから供給されるPD電源で駆動できる。

 注意したいのは、1つだけ用意されているType-C PDポートがPD電源の入力専用だという点だ。このポートに供給された電力をパススルーし、パソコンに電源を供給することができるが、電源入力専用でデータ通信はサポートされない。

 パソコンに複数のThunderboltポートがあればいいのだが、なかなかそうはいかない。Type-Cポートが複数あっても、Thunderboltポートは1つだけという場合も少なくない。つまり、このドックを介してType-C対応ディスプレイやType-C接続の各種デバイスを使えないのだ。それではドックを使う意味が半減する。理想的には2つ以上のThunderboltポートを用意してほしかったところだ。

 また、2つあるUSB Type-Aポートだが、これもややこしい。双方とも 10GbpsのUSB 3.1対応なのだが、同時に使った場合は、片方が5GbpsのUSB 3.0相当となる。

 いずれにしても、これだけの種類のポートがドックに装備されていれば、パソコン本体にはもう何もいらない。外付けディスプレイを接続するにも、マウスやキーボードを接続するにも、そして、有線LANを接続するにも、このドックをパソコンに接続するだけで完結する。しつこいようだが、だからこそType-C接続の高速ストレージなどを接続できるようになっていてほしかった。

 このドックに各周辺機器を接続したままモバイルノートパソコンの常置場所に置いておき、出かけるときにはケーブルを抜いてパソコンだけ持ち出す。そして戻ってきたらケーブルを1本接続するだけ。じつにスマートだ。2つのディスプレイ出力も、4K60Hzをサポートするので不満はない。

 もちろん、メモリーカードリーダがあればよかったといったニーズもあるだろう。あれば便利なのだが、カメラなどはケーブル接続でもかまわないわけで、そのことを考えても、汎用のThunderboltポートがもう1つでいいから装備されていればよかったと思う。しつこい……。

装備過多なモバイルノートパソコン

 一方、モバイルノートパソコンのポート事情はどうなっているのか。たとえば、手元にあるレッツノートを見ると、


    【左側面】
  • 専用電源ポート
  • HDMI
  • Thunderbolt 3(PD対応)
  • USB 3.0
  • Gigabit Ethernet
  • ミニD-Sub15ピン
  • オーディオジャック(入出力)

    【右側面】
  • USB 3.0×2
  • SDカードスロット

といったポートが装備されている。

 これまた、これだけあればほとんど不自由しないだろう。逆に言うと、ドックを接続すればこれらのポートがいらなくなるなら、本体のダイエットにも貢献できるようにも思う。

 この筐体を使っていて不満に感じるのは、電源供給(PDを使ってType-Cで供給するにしても、専用電源アダプタを使うにしても)や外部ディスプレイ出力のためのポートが左側に偏っていることだ。これでは、設置のさいのレイアウトに制約が生じてしまう。やはり、理想的には両側にType-AとType-Cが同じ仕様で分かれて装備されているのがいい。

 そういう意味では、両側面にThunderbolt 3のType-Cを2つずつ、全ポート同じ仕様で合計4つ、しかも両側面というMacBook Proの装備はとてもうらやましい。どうやら両側面にThunderboltポートというのは、ノイズ問題や引き回しによる特性劣化などで、筐体内での配線がきわめて難しいそうだ。

進めノートパソコンのダイエット

 実際の日常生活のなかで、いまでこそ、ステイホームで外出の機会は激減しているが、仮に外出しても出先でパソコンの各ポートをフルに使う機会はそれほど多くはない。どちらかと言えば保険のような存在だが、なかったらなかったでなんとかなるようにも思う。もうType-Aはいらないんじゃないかという意見も多い。

 宿泊を伴う出張でも、スーツケースのなかにドックを1つ忍ばせておけばすむのだから、パソコン本体に豊富なポートが装備されていなくても、そんなに困らないだろう。

 ただ、HDMIポートだけはあったほうがいい。パソコン用の外部ディスプレイはどんどんType-Cで使えるようになるだろうけれど、会議室やミーティングルーム、そしてホテルの部屋の大画面TVやプロジェクタのType-C対応が一気に進むとは思えない。

 レッツノートがいまなおミニD-Sub15ピンを残しているようなものとも言えるが、当面はHDMIは残っていたほうが安心かもしれない。

 いずれにしてもモバイルノートパソコンの装備は、もっとシンプルなものに推移して行ってもいいのではないか。

 単純に考えれば、在宅勤務などで、据置で使われることが多くなるノートパソコンで、その拡張性の確保のためにも、ポートを充実させるという方向性は正しい。

 ただ、1本のケーブルの接続だけで、あらゆるデバイスが使える状態になるのであれば、ノートパソコンのポータビリティを、よりフレキシブルなものとして確保でき、家のなかでの移動、自由な姿勢での利用など、かえってノートパソコンの使い方のバリエーションは拡大する。だから、その本体の軽量化ダイエットはこれからも重要で、今後も継続的な進化を期待したい。

 そのためにも使いやすいドックについて各社からの提案は充実してほしいし、この先はUSB PDパススルー対応Thunderbolt 3 Hubの製品化も待たれる。