山田祥平のRe:config.sys

宅内LANの不時着

 一般の家庭であれ、インターネットがインフラとして機能しているかぎり、小規模とは言え多くのデバイスが自前のWi-Fiネットワークにぶら下がっている。そして、それぞれがそれなりのコンテンツを再生すれば、それなりのネットワーク帯域を占有する。電波が有限の資源であるかぎり、家庭内でのネットワーク輻輳を抑制しなければならない。

安定したネットワークでドラマを楽しむ

 ドラマの「愛の不時着」が人気というので見てみた。韓国ケーブルTVのtvNが制作し、2019年暮れから2020年2月にかけて放送され、圧倒的な視聴率を稼いだドラマで、世界的にも注目を集めているという。

 ネタバレになるのでストーリーなどについては言及しないが、不覚にも全話16回を一気見し、そのあともう一度見直したくらいには楽しめた。1話は70分前後でCMもなくて16回分というと19時間近い。

 それを2セット……。英語ならともかく韓国語は理解できない。だから、字幕の表示される画面から目を離せないため、ながら見は難しく、視聴に専念することになるので正味その時間が必要だ。まさに読む動画だ。

 このドラマ、最終回放送の翌週から、日本はもちろん、各国で全話がNetflixが配信され、世界中の人々がはまっているという。

 契約しているNetflixの視聴プランはまんなかのスタンダードで、HDでコンテンツを2デバイスまでダウンロードしたり再生したりすることができるというものだ。

 Netflixでは、推奨インターネット接続速度として、HD画質の場合5Mbpsを推奨している。また、1つ上のプランで視聴できる4Kの場合には25Mbpsとなっている。たいした帯域幅ではないが、これをすべてWi-Fiでまかなうよりは、有線にできるものは有線LANでつないだほうがWi-Fiでしかつながらないデバイスは安定するのではないかと考えた。

 ただ、世のなかWi-Fiしかサポートしていないデバイスは多い。しかも、Wi-Fi 6どころか5GHz帯非対応のデバイスもたくさん残っている。各種のスマートスピーカーなどがそうだ。こうしたレガシーデバイスがいくつも宅内に残っているので、すべてをWi-Fi 6対応できれば状況は改善されるのはわかっているが、それがなかなかできない。

有線を優先

 そこで家のなかとは言え、固定位置に据置でそこから動かさないで使うデバイスについてはできるかぎり有線LANに収容することを考える。

 うちのTVは10年以上前に購入したプラズマディスプレイだが、今1つ買い換えのタイミングを逃していて、ついこのあいだも修理対応ギリギリのタイミングでチューナユニットの故障でマザーボードを交換した。

 ネット機能はないに等しいので、ネット配信コンテンツを視聴するときには、HDMI端子にFire TV Stickをつなぎ、それを使って楽しんでいた。

 AmazonのPrimeビデオはもちろん、Netflix、Hulu、YouTubeなどについてもアプリをインストールすることで視聴が可能だ。4K対応のFire TV Stick 4Kもある。民放各局のオンデマンドTVと、Amazon、Netflix、Huluなどいくつかの配信サービスを契約しているが、コストの問題を考えなければ、もうTVの録画っていらないんじゃないかなどと思いはじめてもいる。

 Fire TV Stickのインターネット接続はWi-Fiのみだが、5GHz対応でNetflixなどを視聴するには十分だ。処理能力的にも十分に追従できている。4K視聴にも十分耐える。それでも、まず、ここを有線化することを考えた。

 調べてみると、Fire TV Stickの兄貴分にあたるFire TV Cube にはAmazonイーサネットアダプタが同梱されていて、これを使えば有線LANに接続できるという。

 このデバイスは、言ってみればスマートスピーカーつきのFire TVとも言えるもので、日常的にAlexaとの対話ができ、Alexa経由でFire TVを楽しめて操作もAlexaに頼むことができる。

 ただし、TVの音声がCubeで再生されるわけではなく、CubeのスピーカーはあくまでもAlexaの音声が再生されるだけだ。もっとも、実際の操作はAlexaに頼むよりも同梱のリモコンを使ったほうが手っ取り早かったりする……。

 利点としてはこれで稼働していた単体のスマートスピーカーを引退させて、Wi-Fiでしかインターネットに接続できないデバイスをさらに1つ減らすことができる。

 Amazonイーサネットアダプタは、Micro USBのオスとメス、そして有線LAN端子RJ-45を持つ小さなデバイスで、Cubeとは直出しのMicro USBケーブルで接続するだけでいい。本体のメス端子は電源供給のためのものだが、Cubeに接続するときには使わない。Cubeは別途、電源アダプタで電力を供給し、その電力でまかなえるようだ。配線がシンプルで済むようにLANケーブルも短いものを調達した。

 あとで気がついたのだが、このAmazonイーサネットアダプタは、単体でも販売されている。じつは、うちのTVにはChromecast Ultraも接続されているのだが、これもWi-Fi接続だ。

 過去においては「Chromecast 用イーサネット アダプタ」という製品があったのだが、今は廃番になっているようで入手不可能だ。機能的には似たようなものなので、もしかしたらと思ってAmazonイーサネットアダプタをChromecast Ultraにつないでみたら、見事に有線LANに接続して正常に機能した。そこでさっそく追加でもう1つアダプタを発注しWi-Fiデバイスをまた1つ減らすことができた。

有線への回帰で不時着

 こうして家のなかのデバイスを1つ1つ無線LANから有線LAN収容に置き換えていく。有線がいいのはルーターの入れ替えなどでWi-FiのSSIDを変えたときなどにも、クライアント側の再セッティングが不要な点だ。何も考える必要がない。

 そして宅内のWi-Fiの使用率を少しでも抑制できる。Wi-Fiインフラは数十Mbpsのトラフィックが1つや2つあったとして何か明確な不都合が起こるわけではないのだが、少なくとも、配信コンテンツをTVで楽しむさいに有線LAN経由で見るようになってからは理不尽なWi-Fiの不調がなくなり、手動でのルーター再起動もしなくてすんでいる。

 コロナ禍のもと、自宅で過ごす時間が長くなって、家庭内でのインターネット利用率は高まる一方だという。トラフィックのほとんどはインターネットからの下り方向で、それなりの帯域幅を持つトラフィックが恒常的に複数走っている。まさに家族による電波の取り合いが起こっている。

 以前は誰もいなかった昼間の時間帯はもちろん、夜になってもこのトラフィックが絶えない。ルーターは非力でもがんばるしかない。一昔前のルーターを使い続けているとすれば、なんらかのアクシデントが起こっても不思議ではない。

 通信事業者からレンタルされたオールインワンのホームゲートウェイなどの場合、契約時からの歳月経過にもよるが、世代的にどうだろう。そういうヘビーもどきなトラフィックを想定していない可能性もある。

 あらゆるものが無線になっていくこれからの世のなかで、有線LANへの回帰は確かに後ろ向きだが、とりあえずは不時着だ。