山田祥平のRe:config.sys
先従隗始、まずは宅内ネットワーク
2020年5月23日 11:00
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、これまでこれではまずいとわかっているのに、見て見ぬふりして先送りにしていた数々の社会的な課題をあぶり出した。だが、新型コロナがなくてもいつかは問題になっていたことも少なくない。だから、課題がはっきり見える化されただけラッキーだと思いたい。あとは1つ1つを解決すればいい。まずは、身近なインフラとして宅内ネットワークを見直してみた。
Wi-Fi 6ルーター導入で宅内LANを見直す
それほど広くない宅内で、もっとも離れた部屋間でも肉声で会話ができる程度の広さしかない。それでも3台ほどのWi-fiルーターを設置し、光回線を介してインターネットを使っている。インターネットへの接続は、NTT東日本のフレッツ 光ネクストのギガラインタイプだ。
同社は先日、10Gbpsの光クロスをサービスインしたので、本当ならそちらに乗り換えたかったのだが、残念ながら、自宅周辺は最初のサービスエリアに入らなかったので、そこに手をつけることはできない。
気を取り直して、まずはWi-Fiを再考することにした。元の環境は、光回線の終端装置であるONU(光モデム)に市販のルーターを接続して使っていた。その前に使っていたルーターの調子が悪くなったので、とくにこだわることもなく買い替えたもので、交換してから3年ちょっとが過ぎている。ルーターもコンピュータなので、処理性能のことを考えると、そろそろ新しいものにしてリフレッシュしておくことにした。
昨年(2019年)の暮れから正月にかけての休みの間に、そのあたりに手をつけようと新しいルーターは購入済みだったのだが、とくに不自由を感じることなく普通に動いているものを止めて新しい環境にすげ替えるというのは勇気がいるものだ。そんなこんなでAmazon.co.jpで買って届いたバッファローのルーター「WXR-5950AX12」は箱も開けずに放置してあった。だが、今こそということで、意を決して開封し、現行ルーターと入れ替えた。
光回線はNTT東日本で、回線のみの提供、プロバイダは別だ。つまり、インターネット接続のためには、別途ISPとの契約が必要になる。使いはじめた当時にはそうするしかなかったが、今なら光コラボなどでプロバイダ料金とセットで割安になる方法もとれる。だが、いつでもほかのプロバイダに乗り換えることができるようにと考えて、契約を変更することなく現在にいたっている。
接続先はIIJmioで、契約はFiberAccess/NFだ。これによって、対応ルーターがあれば、ルーターに何も設定しなくてもONUとルーター間をケーブルで接続するだけで、IPv6での接続ができる。
ネットワークとしては、フレッツ網からNTTの地域IP網に入り、インターネットマルチフィードに直結される。地域IP網からプロバイダ各社につながるPOI(相互接続点)を経由しないため、そこがボトルネックになることを回避できているはずだ。また、IPv4についてはDS-Lite(Dual-Stack Lite)でIPv4 over IPv6通信が可能なので、エンドユーザー側でとくに難しいことを考える必要もない。
壊れていることに気がつかないかもしれない
ルーターを最新機種に入れ替え、Wi-Fi 6の無線ネットワークが動き出した。とは言え、まだ常用のデバイスにWi-Fi 6対応機がないので宝の持ち腐れだ。そのうちと思ってせっかく購入した新しいルーターを放置してきたのはそのためでもある。
以前からも宅内のネットワークには大きな不満はなかったのだが、試しにと、メインPCを有線と無線の両方でインターネット接続の実力を測定してみたら、どうも有線が遅いことに気がついた。と言っても400Mbpsは出ているので大きな不満にはつながらないのだが、スイッチ経由での接続を、ルーターとPCの直結に変えて試したところ速度が倍になった。どうやらスイッチがよくないようだ。
このスイッチも年代もので10年以上は経過している。すぐに新しいスイッチを発注して交換してみたところ、多くの時間帯で800Mbps前後と、直結同等の速度が得られるようになった。古いケーブルを新品に交換するだけでも改善される場合もありそうだ。撤去したスイッチを手に持って振ってみるとカサコソと音がする。こりゃだめだと思った。縁の下の力持ちは重要だが、縁の下はなかなか覗かない。やはり定期的な見直しも必要だ。
この先、できることと言えば、光回線と宅内LANの10Gbps化だ。前者はサービスインを待つしかないが、後者については対応スイッチの導入やクライアントPCのNIC増設などが必要になる。宅内は壁内配線のLANケーブル入れ替えという難関があるのでやっかいだが、これはまた、時間に余裕ができたときに取り組むことにしたいと思っている。
Wi-Fiについては、Wi-Fi 6の速度的なメリットが得られるようになるのは、これから対応端末が追加されてからになるだろうが、とりあえず、いつでも来いの状態にできたのでよしとする。わかったのは、とりあえず使えているけれども、経年変化などで壊れている可能性もあることを受け入れなければならないということだ。
もうちょっと時間に余裕があれば、メイン環境のWindows再クリーンインストールをしたかったのだが、ここは今のところ手をつけることができないでいる。これもなんとかしなければなるまい。
無線に頼ることの怖さも考える
基本的に有線でつながるものは有線のほうが安定する。無線でしかつながらないものは仕方がないが、デスクトップPCやビデオデッキといった据置の機器は無線である必要もないので、ケーブルの取り回しに問題がないかぎりは有線で接続する。
今回のコロナショックで、在宅勤務を強いられた家庭では、たとえば夫婦が両方とも在宅勤務でオンラインミーティングなどをこなし、その間も、子どもがリモート授業に参加したり、YouTube、Netflixといったサービスを使ってオンラインコンテンツを見続けようとした結果、固定インターネットそのものや、Wi-Fiの帯域不足等に陥り、大事なミーティングのビデオや音声が途切れ途切れになったり、最悪の場合、切れてしまうといったアクシデントに見舞われたりもしているようだ。また、家庭で常用しているPCが1台しかなく、子どもと親がそれを取り合うというようなことも起こっているらしい。
デバイスについては追加購入すれば済むが、インフラの再整備はたいへんだ。とくに、工事を伴うようなことがあると、明日すぐにというわけにはいかない。マンションなどの共有インターネットでは、住民の多くが在宅勤務になって、共有帯域がパンクというようなこともあるそうだ。
これからもウィズコロナの状況がしばらく続くが、これまでの非常事態宣言下よりは多少の余裕はある。ずっと先かもしれないが、向こうのほうにうっすらと出口の明かりが見えてきたようにも感じている。冒頭に挙げたように、少なくとも、この数カ月で、何がこのままではいけないのかという課題はあぶり出された。今度は、それらの課題を次の非常事態に備えて解決しておくことが重要だ。
工事が必要でも、自宅におけるインターネットは、あらゆるものがオンラインに頼らざるを得なくなることを考えれば、きちんと整備しておいたほうがいい。集合住宅などでは構造的に無理な場合もあるので、すべての家庭に光回線をというのは理想であるのはわかっていても難しいが、少しでも環境をよくする方法がないかどうかを模索してほしい。
そのうち5Gネットワークがすべてを解決してくれる日もくるとは思うが、少なくとも現時点の4Gネットワークでは、電波が有限の資源であるかぎり、全面的に頼るというのは無理だ。
PCはいらない、インターネットもスマートフォンで十分、自宅に固定インターネットはもういらないという声が大勢を占めていたが、新型コロナはそうでもなさそうだという危機感をもたらした。行動変容を強いられる時代がこれからもしばらく続く。オンライン依存度が高まることを新しい当たり前として受け入れ、何があっても困らないようにしておこう。まずは隗よりはじめよう。