山田祥平のRe:config.sys

iPhone、その温故知新

 iPhone Xが発売され、iPhone 8、8 Plus、Xの3機種が勢揃いした。これでようやく2017シーズンのiPhoneが出揃った。新機種の入手時に、必ずつきまとうのが旧iPhoneからの移行の作業だ。iPhoneの機種変更はAndroidと比べて実にラクチンだ。だが落とし穴もある。

予約から受け取りまで

 毎年恒例になったとはいえ予約の瞬間はやはり緊張する。数台のPCで複数のブラウザセッションを開いて臨んだが、あっさりと最初のブラウザトライで成功し、ちょっと拍子抜けだった。予約はドコモの量販店受け取りで、届いた予約完了確認メールの送信は16:03だった。つまり、16:01の開始から2分後に成功したことになる。そんなわけで、発売日の11月3日午前中には無事にiPhone Xを受け取れたが、受け取れることがわかったのは前日の昼間だ。やきもきしながらの1週間はつらい。ここはもう少しなんとかならないかと思う。

 iPhone Xにするか、iPhone 8/8 Plusにするかで悩んでいた方も少なくないだろう。両方を一度は手に取ってから決めるとか、はなからXには興味がないとか、新参者のXは賛否両論だ。個人的には、はなからXに決め打ちで、8/8 Plusの発売を横目に1カ月ガマンしてX入手に賭けた。

 無事に入手できたXは、量販店頭で動作チェックのためにその場でSIMを装着して通電、通話のテストなどが行なわれた。販売員は慣れた手つきで本体に電源を入れ、言語の選択から各種ログインをスキップさせて通話ができるところまでの過程をたどった。でも、聞いてみるとiPhone Xをさわるのは、発売当日であるその日が最初なのだそうだ。

旧iPhoneをPCに完全バックアップ

 レジで代金を支払って自宅に戻り、さっそく移行作業に入る。

 すでに通話テスト済みなので、とりあえず、iPhone Xは稼働状態にある。まず、自宅のWi-Fiに接続し、ソフトウェア・アップデートを試みると、iOS 11.1が見つかった。10月31日のリリースなので間に合うはずがないが、これでトラブルに陥ったユーザーもいたのではなかろうか。

 そこでiOSをアップデートして11.1にする。10月31日にはPCのiTunesも12.7.1へのアップデートが配信されているがそちらはすでに更新済みだ。とにかく移行作業では何が起こるかわからない。ハードウェアもソフトウェアも最新の状態にして作業に入るのが無難だ。

 iOSのアップデートをダウンロードしている間に、設定系のメニューをいろいろと確認しておく。まだこのiPhoneは未設定で自分の環境にはなっていないので、あれこれ、挙動を確認するにはちょうどいい。

 この段階で、iPhone Xでは8/8 Plusにはある「拡大表示」という機能がなくなっていることに気がついた。つまり、表示できるコンテンツの文字の最大サイズはiPhone 8/8 Plusよりも小さい。これはちょっとした誤算だった。もっともメールやカレンダーといった標準アプリは問題ない。これでもかというくらいに文字を大きくできる。できないのは、Twitterやfacebookなどのサードパーティ製アプリだ。いやがらせのように文字が小さい。ここはなんとかしてもらいたいものだ。大きいことはかっこ悪いと思うなら、大きくてもかっこよくするのがデザイナーの仕事ではなかろうか。

 iOSのアップデートが始まったところで、手元で使っていたiPhone 7をPCに接続し、最新の状態をバックアップする。このとき気をつけるのは、「このコンピューター」に「iPhoneのバックアップを暗号化」してパスワードつきでバックアップすることだ。こうしておくことで、多くのアプリの設定等がそのまま新しい環境に引き継がれる。iCloud等を使っての移行では、移行後の作業がずいぶん多くなってしまう。PCが手元にあるのなら、PCを使って移行をしない手はない。

古iPhoneをPC経由で新iPhoneに復元する

 iOSのアップデートとiPhone 7のバックアップが完了したら、PCからiPhone 7を取り外してiPhone XをPCに接続する。当然、このiPhoneをPCに接続するのは初めてなので「新しいiPhoneへようこそ」の画面が表示される。そこで「このバックアップから復元」で、たった今、作成したiPhone 7のバックアップを選択する。前回のバックアップはたった今終わったばかりなので、今日の日付になっているはずだ。

 しばらく待つと復元が完了する。iPhoneには初期設定の画面が表示され、ガイドにしたがって設定を始めることができるので、PCに接続したままで、Face IDの登録、パスコードの設定などを行なう。パスコードが4桁でいい場合はそれを指定することもできる。

 この過程で、2段階認証のためのパスコードがiPhone 7に届くので、それを入力する。古いiPhoneが手元でインターネットに接続された状態で稼働していれば何の問題もないが、売却したり、譲渡したりしている場合、同じiCloudアカウントで使っているアップル製のデバイスが他に手元にないと困ってしまう。

 SMSでもパスコードを受け取れるが、SIMが設定中のiPhoneに入っているとお手上げだ。そのような場合はいったんiCloudの設定をスキップして、通話、SMSの受け取りができるようになってから再設定する必要がある。

 ここではApple Payの設定はとりあえずスキップする。さっきまで使っていたiPhone 7での削除作業が必要だからだ。ひとまず、これで手作業分は終わりで、あとは放置すれば各種アプリがダウンロードされ、音楽等が同期される。この間も本体は操作可能な状態なので、いろいろな設定を進めることができる。

 iPhone 7からiDで使っていたクレジットカード情報とSuicaを削除し、iPhone X側で追加する。クレジットカードの情報はiCloud経由で元通りになるし、Suicaの削除もiCloudにSuica情報を預けるだけなので、残高はそのまま移行される。

 なお、SuicaについてはSuicaポイントクラブのSuicaID番号が古いままなので、サイトにログインしてモバイルSuica機種変更の手続きをして、SuicaIDを新しいものに更新しておかないとポイントがたまらないので注意が必要だ。

アプリを引き継ぐ

 ここまでで概ねさっきまで使っていたiPhone 7と同等の環境ができあがるが、一部の設定、アプリに関しては追加の作業が必要になる。

 とまどったのは着信音、通知音がデフォルトに戻っている点だ。じつはこれはiOS 11からの仕様のようで一覧にも見つからない。サポート情報を検索すると「iTunesからiPhone、iPad、iPod touchに着信音を移動する」という項目が見つかる。

 それによると、「iTunes Media」フォルダの「Tones」フォルダに自分オリジナルの着信音があるということなので、指示通りにiTunesのiPhone Xにコピーして同期させる。

 LINEについては、iPhone 7でLINEを起動し、アカウント引き継ぎ設定をオンにした上で、24時間以内にiPhone XにインストールしたLINEアプリでログインすると、すべてのデータが引き継がれる。同時にiPhone 7側のデータは無効になって消えてしまうが、トークの履歴を引き継ぐのがめんどうなAndroidに比べればはるかにましだ。引き継ぎの方法に関しては同社のブログが詳しい

 また、アプリによってはiTunesの「ファイル共有」でデータを移行しなければならないケースもある。インストールしてあるアプリを1つずつ開いて、以前と同じように使えるかをチェックし、うまくデータが引き継がれていないようなら、そのアプリベンダーのサイトなどで確認しよう。

PCがあればiPhone同士の機種変更は怖くない

 ここまでで作業は完了だ。うまくいっているようなら、古いiPhoneで「iPhoneを探す」をオフにし、iCloudからログアウト、必要に応じて初期化する。初期化しない場合は、面倒なことがおこらないように、新旧どちらかのiPhoneの名前を変更し、同じ名前のiPhoneがiTunesに接続されないようにしておこう。バックアップ名などで混乱してしまう可能性がある。

 念のため、ここまでの手順をリストアップしておこう。

1. 旧iPhoneがiOS11.1かどうか確認。古かったらアップグレードする。
2. PCのiTunesが最新かどうか確認。古かったらアップグレードする。
3. 旧iPhoneをPCにつないで完全なバックアップを暗号化して保存するように設定してあることを確認し同期する。これでバックアップもとれる。
4. 旧iPhoneをPCから取り外し、PCに新iPhoneを接続する。
5. 画面の案内にしたがってバックアップから復元。
6. 復元できたら初期セットアップ開始。Touch IDの登録。パスコード設定など。2段階認証のためのパスコードが古いiPhone 6sに届くのでそれを見て入力。ApplePayの設定は後回しにしてホーム画面に遷移。
7. LINEについてはまず旧iPhoneでLINEを起動してアカウント引き継ぎ設定をオンにする。そのあとすぐに新iPhoneでログインするとデータが引き継がれ、旧iPhoneのアカウント設定が無効になる。詳細はここに書いてある。
8. うまく移行ができているようなら、必要に応じて旧iPhoneの「iPhoneを探す」をオフにし、iCloudからログアウトして初期化する。

 iPhoneを使っていても、1年以上もPCに接続していないとか、PCに接続したことが一度もないようなユーザーも増えていると思う。移行の作業のときだけでも、PCを使えば本当にラクができる。手元にPCがあるなら使わない手はない。ちょっと前に移行ですべての過去を失った有名タレントの話がニュースになったりもしていたが、そういう悲劇を経験したくないようにしたいものだ。

 ちなみに、長い間iPhoneをPCに接続していないと、接続してもiTunesに認識されない場合があるようだ。これは正しいデバイスドライバが何らかの原因でアンインストールされてしまったのが理由だ。サポートページにはこれについても情報がある。症状に遭遇したらこの方法で復帰させよう。