1カ月集中講座

生まれ変わった「Office」はどう使う? 第4回

~マルチデバイスとクラウドで、いつでもどこでもOffice

 今月の1カ月講座では、新しいPIPC版のOffice Premium、個人向けサブスクリプション版となるOffice 365 Soloの登場によって、買い方が大きく変わりつつOfficeの現状を取り上げている。

 これまで、ライセンス別の買い方の整理編(第1回)、Office 365 Soloの導入編(第2回)、クラウドストレージと組み合わせた使い方編(第3回)と3回に渡って紹介してきた。最終回となる今回は、タブレットやスマートフォンを利用したマルチデバイス環境での使い方について紹介する。

 前回、Office 365 Soloと、1TBが付帯してくるOneDriveと組み合わせた際の利用方法に関して説明した。加えてiPadのようなタブレットやAndroidスマートフォンと一緒に使うことで、Officeをより便利に使うことができるのだ。

シーンによって使うデバイスを使い分ける“マルチデバイス”時代に突入

 現在我々は、コンピューティングの形が大きく変わる転換期を過ごしている。後の時代に、今を振り返って見ると、コンピューティングがクライアント・サーバーモデルからクラウドモデルへの移行期だったと位置付けられるのではないだろうか。

 前回の記事でも述べたが、クラウドへの転換という大きな流れはしばらくは変わらず、ストレージはローカルからクラウドストレージへ、そしてアプリケーションもローカルからクラウド型のアプリケーションへと進化していくと考えている。ただ、ITの歴史というのは振り子のようなもので、その先には再びクラウドからローカルへ……という時期が来るのではないかと予想しているが、それは遠い未来の話で、しばらくはローカルからクラウドへ……の時代が続くと見られる。

 現在のコンピューティングのモデルを、その使われ方などの違いから、筆者は3つに分類している。呼び方も勝手に名付けたものだが、ブラウザクラウド、モバイルクラウド、ハイブリッドクラウドという3つの分類だ。

【表1】クラウドコンピューティングの3つのモデル(筆者分類)
ブラウザクラウドモバイルクラウドハイブリッドクラウド
利用イメージ
主なターゲットデバイス全てのインターネットデバイススマートフォン、タブレットPC
アプリケーションWebブラウザスマートアプリケーションデスクトップアプリケーション
ストレージの利用方法クラウドストレージクラウドストレージクラウドストレージ+ローカルキャッシュ
OfficeのアプリケーションOffice OnlineOffice for iPadOfficeアプリケーション
長所デバイスを限られないいつでもどこでもアクセスできる
軽量で携帯しやすい
フル機能を利用できる
高い処理能力を使える
キーボード/マウスで快適操作
短所機能には制限がある処理能力
タッチによる限られた操作性
バッテリ駆動時間
重量

(1)ブラウザクラウド

 筆者がブラウザクラウドと呼んでいる使われ方は、簡単に言ってしまえばWebブラウザからクラウド上のデータやアプリを利用する使い方だ。現在のWebブラウザは、「Google Chrome」、「Mozilla Firefox」、「Internet Explorer」など、いずれもプラグインのような形でWebアプリケーションが使えるようになっており、将来的にHTML5アプリが増えれば、その傾向がさらに進むことになるだろう。

 「Office Online」は、その典型的な使い方と言える。クラウドストレージにあるデータを、WebアプリケーションであるOffice Onlineで読み込み、編集して、保存するという一連の作業を行なえる。

 こうしたブラウザクラウドの長所は、Webブラウザさえあれば使えるため、端末を選ばないことだ。極端な話、TVに付いているWebブラウザでも使えるかもしれない(筆者は実際にOffice OnlineがTVのブラウザで使えるかは確認しておらず、あくまで可能性の話だ)し、ChromebookのようなWebブラウザの機能だけに絞ったようなシンクライアントに近いデバイスでも利用できる。また、自分のデバイスではなく、旅先のホテルやインターネットカフェにあるPCのWebブラウザからアクセスしても(セキュリティの懸念はあるものの)使える可能性がある。

 逆に短所は、Webブラウザの中のWebアプリケーションになるので、キーショートカットが使えなかったり、処理能力の点で十分でなかったりと、常用の環境としてはあまり満足行くものではない点だ。

(2)モバイルクラウド

 モバイルクラウドと呼んでいる使い方は、iOSやAndroid、さらには今後登場するであろうWindows 10のモバイル版のような、スマートフォンやタブレット用のOSで利用されているモバイル向けアプリケーションとクラウドストレージを組み合わせて利用する使い方だ。

 これらは、アプリケーションとしてはローカルにインストールされ、ローカルのデータを扱うこともできるが、多くはクラウドストレージ上にある。実際、必要に応じてクラウドからローカルへダウンロードして処理しているのだが、ユーザーにはクラウド上にあるように見えることが多い。

 このモデルが、今回紹介するスマートフォン、タブレット向けOfficeだ。「Office for iPad」、「Office for iPhone」、「Office for Android Phone」といった製品が用意されている。

 こうしたモバイルクラウドの長所は、常に持ち歩いている自分のデバイスで使えるので、セキュリティの観点からも望ましく、いつでもどこでも作業ができるという点だ。逆に短所は、キーボードやマウスなどがなくタッチで操作しなければならないため、どうしても生産性が落ちることが挙げられるだろう。もちろん、Bluetoothキーボードなどを接続すればカバーできる。

(3)ハイブリッドクラウド

 ハイブリッドクラウドは、WindowsやMac OSといったPC用OSを搭載したデバイス(Windowsタブレットも含めていいと思う)での使い方だ。こうしたPC環境の特徴は、同期ツールなどを利用して、クラウドストレージのデータが全てないし一部がローカルのストレージにキャッシュされている点だ。データがクラウドにも、ローカルにもあるという意味で“ハイブリッド”なクラウドの使い方に分類できると思う。

 つまり、こうしたPC環境で使われるのは従来から使われてきたデスクトップアプリケーションがそれにあたる。OfficeでもWindows版、Mac版のWindowsアプリケーションが用意されており、そこにOneDriveと組み合わせて利用できる仕組みが用意されているというのは以前の記事で説明したとおりだ。

 こうしたハイブリッドクラウドの長所は、キーボード/マウスなど文章の編集に適した入力装置が使えること、CPUやGPUの性能が高いので快適に作業が行なえることだ。また、クラウドストレージ上のデータのキャッシュがローカルにコピーされるので、インターネットに繋がらないオフライン環境(例えば航空機内など)でも利用できることも挙げられる。短所はPCがスマートデバイスに比べると重量がかさみ、消費電力も大きいため、使える場所が机や電源のある所だったりすることだろう。

 このように、どのタイプにも長所があり、短所がある。つまり、どの使い方も、完璧ではないということだ。逆に言えば、シーンによって適した使い方というのがあり、ユーザーがそのシーンに応じて使いこなしていく必要がある、そういう段階にあると言えるのではないだろうか。

 例えば、モバイルPCを持っている人が出先のカフェに座って作業ができるならOfficeアプリケーションを起動して作業するハイブリッドクラウドの使い方がいいし、電車の中で急に連絡をもらってちょこちょこっとExcelの表を直したいというのならモバイルクラウドの使い方がいい。PCもタブレットも持っていないのに旅先で急に編集して欲しいという依頼が来たのならインターネットカフェに行ってブラウザクラウドをすればいい。

 シーン、シーン(TPO)に応じて使うデバイスを使い分けていく、こうした“マルチデバイス”の使い方が、今後のコンピューティングシーンの常識になっていくと筆者は強く信じている。実は、これこそが、Microsoftが日本でもOffice 365の個人版の導入を急がなければならなかった本当の理由だと筆者は考えているし、Office 365 Soloは正にそうした使い方に最適の選択肢だと思っている。

スマートデバイス版の商用利用はOffice 365のサブスクリプション契約が必須

 さて、ここまで読んできた人は、前節で紹介した“ブラウザクラウド”、“モバイルクラウド”、“ハイブリッドクラウド”のうち、ブラウザクラウドとハイブリッドクラウドに関しては既に前回の記事で紹介済みであることに気がつくだろう。従って、残っているのはモバイルクラウドの使い方になる。

 現在Microsoftは、モバイルOS向けのソリューションを急速に拡充している。Office 365 Solo以前にも、iPhone版のアプリと、Android Phone版のスマートフォン向けアプリが用意されており、すでに日本市場向けに展開されていた。さらに、11月に入って、新しくOffice for iPadが追加されており、AppleのタブレットであるiPadでもOfficeアプリが提供開始されている。さらに、2015年の前半にはAndroidタブレット版の提供も予定されており、既にパブリックベータテストも始まっている。

 こうしたスマートフォン、タブレット向けのOfficeは、基本的にはそれぞれのアプリストアで無償配布されており、ダウンロードしてインストールすれば、ファイルの閲覧に関しては無償で利用できるほか、基本的な編集に関してもMicrosoftアカウントでログインすれば利用できる。ただし、利用できるのは個人利用のみで、商用利用に関してはできない。

 商用利用の場合は、有効なOffice 365サブスクリプション契約を持っていればいい。個人ユーザーであればOffice PremiumないしはOffice 365 Soloのサブスクリプション契約を、企業ユーザーであればOffice 365 Businessなどの企業向けOffice 365のサブスクリプション契約を持っていることが条件となる。Office 365のサブスクリプション契約があると、Office for iPad、Office for iPhoneにおける以下に挙げたプレミアム機能も利用することができる。

 以下は、MicrosoftのBlogおよび、Webサイトから引用し、まとめたものだ。

【表2】Office for iPad/iPhone利用時に必要となるライセンス
無償ユーザー無償ユーザーで
Microsoftアカウント保有者
Office 365個人向け
ライセンス契約者
Office 365法人向け
ライセンス契約者
Office文章の閲覧
(個人・商用)
基本的なOffice文章の
作成・編集(個人)
-
基本的なOffice文章の
作成・編集(商用)
--
完全なOffice文章の
作成・編集(個人/商用)
--
法人向け機能---
【表3】Office for iPad/iPhoneでOffice 365契約ユーザーが利用できるプレミアム機能
Wordセクション区切りを挿入する
ページ レイアウトで列を使用する
ページごとにヘッダーとフッターをカスタマイズする
ページの向きを変更する
変更を記録して確認する
図形にユーザー設定の色を追加する
ワードアートを挿入および編集する
画像に影と反射のスタイルを追加する
グラフ要素を追加して修正する
表のセルをユーザー設定の色の影で強調表示する
Excelピボットテーブルのスタイルとレイアウトをカスタマイズする
図形にユーザー設定の色を追加する
ワードアートを挿入および編集する
画像に影と反射のスタイルを追加する
グラフ要素を追加して修正する
PowerPointプレゼンテーション中に発表者ツールで発表者のノートを確認する
図形にユーザー設定の色を追加する
ワードアートを挿入および編集する
画像に影と反射のスタイルを追加する
グラフ要素を追加して修正する
表のセルをユーザー設定の色の影で強調表示する

 なお、個人向けOffice 365(Office Premium/Office 365 Solo)では2台のタブレット+2台のスマートフォンが利用可能であり、企業向けOffice 365では5台のPC(Mac)+5台のタブレット+5台のスマートフォンで利用可能になっている。

出先でちょっと文章を直すという用途には十分なOffice for iPad

 現在Microsoftがスマートデバイス向けに提供しているのが、Office for iPad、Office for iPhone、Office for Android Phoneの3つになる。いずれの製品も、iOSデバイスならiTunes App Storeから、Android PhoneならGoogle Playマーケットからダウンロードできる。

 このうち注意が必要なのが、Android向けに公開されているOffice for Android Phoneで、名前の通りタブレットでは利用できない。デバイスがスマートフォンなのか、タブレットなのかは、Google Playマーケット側で認識されており、スマートフォンに分類されるデバイスでも、Google Playマーケット側でタブレット認定されてしまう場合には現状では表示されない(手持ちのデバイスではGalaxy Note Edgeがこれに該当し、タブレットと認識されているようで、導入できなかった)。なお、現在MicrosoftはAndroidタブレット用の“Office for Androidタブレット”を開発中で、Androidタブレットで使いたいユーザーはそれを待つ必要がある。

 現状ではスマートフォン向けのOfficeと、タブレット(iPad)向けのOfficeは大分趣が異なっている。前者は1つのアプリになっており、OneDriveにおいてあるWord、Excel、PowerPointのファイルを開き、簡単な編集機能が用意されている。これに対して、Office for iPadはより本格的で、Word、Excel、PowerPointがそれぞれ別のアプリとして存在している。今回は主にOffice for iPadを中心に紹介していきたい。

 Office for iPadを導入するには、iPadのApp Storeからそれぞれのアプリケーションを検索して導入する。導入後、初回にMicrosoftアカウントを入力することで、前述の編集機能が有効になる。また、Office365のサブスクリプション契約(Office 365 SoloないしはOffice Premium)をMicrosoftアカウントに紐付けていれば、プレミアム機能が有効になり、法人向けのデバイス管理機能を除いて全ての機能を利用できるようになる。なお、クラウドストレージにDropboxを利用している場合には、OneDriveの代わりにDropboxを利用することもできる。

 起動すると、見た目はPC向けのOfficeに近い画面で表示される。大きな違いは、Office 2010以降の特徴となっているリボンUIがないことぐらいで、ぱっと見はWord、Excel、PowerPointそのものだ。実際に使って見ると、想像以上にちゃんと使えることに驚くだろう。

 例えば、Excelでは普通に表やグラフなどを作成できる。あるいは、Excelで作成した表をPowerPointにコピー&ペーストすることも可能だ。PowerPointにはスライドショーの機能をも用意されており、外部出力を活用すればiPadだけでプレゼンテーションすることも可能だろう。

 なお、Office for iPadではファイルの保存という概念はなく、新しい文章が作られると自動的にOneDriveに保存される。もちろん保存するフォルダやファイル名は指定できる。Dropboxに保存することも可能だ。

 とは言え、細かく見ていくと、PC版と比べて、できることに差がある。以下は、MicrosoftのWebサイト(WordExcelPowerPoint)で公開されている、iPad版、Mac版、Windows版のOfficeにおける機能差を表にしたものだ。

【表4】WordにおけるiPad版、Mac版、Windows版の違い
機能機能の操作Word for iPadWord for MacWord for Windows
印刷文書の印刷
スタイル表示
追加およびカスタマイズ-
既存のスタイルの適用
(書式の貼り付けを使う)
埋め込みオブジェクト、グラフ データ、SmartArt表示
書式設定 (制限あり)
追加と更新-
高度な参照文末脚注の表示
文末脚注の追加と更新-
引用文献の表示
引用文献の追加と更新-
キャプションの表示
キャプションの追加と更新-
目次の表示
目次の追加と更新-
校正スペルチェックの表示
代替スペル候補の表示
文章校正-
文字カウント
マクロマクロの実行-
ファイルの表示ファイルを開くときの拡大レベル160%
保存済み拡大レベル-
使用できる表示モードの種類1
ウインドウの分割-
【表5】ExcelにおけるiPad版、Mac版、Windows版の違い
機能機能の操作Excel for iPadExcel for MacExcel for Windows
ファイルの表示表示するときの拡大レベル150%保存時の状態保存時の状態
使用できる表示モードの種類1複数複数
ウインドウの分割-
データの並べ替えとフィルター処理スライサー--
タイムライン--
条件付き書式表示
追加と更新-
データの入力規則オプションの表示と選択
ルールの追加と更新-
ピボットテーブル表示
更新
並べ替えとフィルター処理
新規追加-
マクロマクロの実行-
外部データファイルの更新-
コメント表示と削除
追加と編集-
印刷ワークシートの印刷
【表6】PowerPointにおけるiPad版、Mac版、Windows版の違い
機能機能の操作PowerPoint for iPadPowerPoint for MacPowerPoint for Windows
ビデオ再生、追加、変更-
削除
オーディオ再生、追加、変更-
削除
スライドの切り替え追加、削除、変更
スライド アニメーション再生
追加-
削除と変更-
印刷スライドの印刷
スライドの整理再配置、追加、削除
背景画像表示
追加と変更-
削除-
コメント表示
追加、削除、変更-

 この表に載っていない点についても、実際にはiPad版にはないものがある。例えば筆者は、Excelでグラフを作成するときには、スプレッドシート内に貼り付ける図の形で作成した後、シートに変換するという作業を行なっているのだが、Excel for iPadではその機能が見当たらなくて少々困った。また、個人的には使っていないが、Excelでマクロを積極的に活用しているユーザーも、マクロが使えないのは不便かもしれない。また、PowerPointでオーディオやビデオを多用している場合は、これらを再生できないのも不便だろう(なお、いずれも編集時に削除することは可能)。

 このように、機能的にはPC版には敵わないは事実で、PCと同じことをiPad for Officeでやりたいと思っているとがっかりするだろう。しかし、筆者が冒頭で述べたように、モバイルクラウド用のツールとして、外出先で急に修正を頼まれたときに、編集してメールで返信するという使い方には十分な機能を持っていると思う。つまり、一から文章を作成するときは、カフェなどの机や電源が使えるところに行って作業し、ちょっとした修正で済むのならiPadを出してさっと作業する、そういう用途にぴったりだと言える。

 iPadでもiOS 8世代になってサードパーティ製のIMEが使えるようになった。現時点ではOS側の都合で、さまざまな制限があるが、筆者が普段慣れているATOKがタブレットでも使えるのは大変ありがたく、仕事の能率も上がりそうだ。むろん、Androidの側にはこうした制限はないので、ATOKの機能もフル機能が使える。その意味で、早くOffice for Android Tabletがリリースされて欲しいものだ。すでにニュース(別記事)になっている通り、2015年の初頭にリリース予定であるので、期待したいところだ。

Office for iPadを利用するにはMicrosoftアカウントの入力が最初の作業になる。Microsoftアカウントを入力しなくても利用できるが、文書の閲覧しかできない
Office 365 Solo、Office Premiumなどのサブスクリプションが紐付いているMicrosoftアカウントでログインする
2段階認証を有効にしている場合にはそれが求められる。WebブラウザからOneDriveにログインする機会が多い人は、アカウントの保護のために2段階認証は絶対有効にすべきだ。詳しくはMicrosoftのWebサイトを参照
最初のログイン時に表示される最新情報、ここからDropboxの設定などが行なえる。もちろん設定メニューからも設定はできる
Word for iPadを利用して文章を作成している画面。Wordだと文章入力になるので、一から文章を入力してもさほど苦にならない。iOSのソフトウェアキーボードはよくできているので、それなりの速度で入力することができる。画面は先日販売開始されたばかりのATOK for iOS
ファイルの保存はクラウドストレージへの自動保存が標準だが、オフにすることもできる
Excel for iPadを利用しているところ。このようにグラフまで作成できる、ちょっとした編集ぐらいだったらタッチでも十分に操作可能
PowerPoint for iPadの画面。スライドショーの機能も用意されているので、iPadに外部出力アダプタを接続すればプレゼンテーションにも使える。ただし動画と音声には非対応

Office 365 Soloに含まれているOneNoteを利用したメモ書きのソリューション

 このように、新しいOfficeの真髄というのは、OneDriveというクラウドストレージを介することで、“ハイブリッドクラウド”となるPC(WindowsないしはMac)からも、モバイルクラウドになるスマートフォンやタブレット(iOSないしはAndroid)からも、そしてブラウザクラウドとなるWebブラウザからも文章にアクセスして編集することが可能になる。

 もう1つ筆者の個人的な使い方について紹介しておこう。それは、もう1つのOfficeのアプリケーションであるメモアプリの「OneNote」の活用法だ。現在のOneNoteは、OneDriveにデータをアップロードできるようになっており、クラウドと同期する使い方が標準になっている。筆者は、OneNoteがリリースされた当時からメモアプリとして使い続けている。その最大の理由は、録音した時間軸とメモを取った時間軸を一致して表示する機能があるからで、取材時には基本的にWindowsデスクトップアプリのOneNoteで録音しながらメモを取っている。そうしておくことで、取材が終わった後で、メモを見ながらさっと記事を書けるし、メモだけでは不明瞭な場合には、すぐに必要な部分だけを聞き直して、話者が言おうとしていることをより正確に記事に反映できる。

 ただ、筆者のような記者の仕事をしていると、常に椅子に座って机のあるところでだけで取材できるかというとそんなことはない。例えば展示会の会場を取材するとき、会見後に登壇者が記者に囲まれて応じてくれる場合などには机に座ってメモを取ることはできないので、仕方なく紙でメモを取っていた。紙のメモの問題点は、なくしてしまう可能性があることだ。記者にとって、取材時のメモは命の次に大事と言ってもよいモノだ。もしなくしてて、それで仕事ができなくなるだけならまだいいが、取材先に迷惑をかけることにでもなれば大問題だ。このため、紙のメモを使わずに、確実にメモを取るにはどうしたらいいか、これは記者の仕事をしていれば誰もが直面する問題だ。

 そこで、最近ではOneNoteの手書きメモ機能を利用している。以前は普通のスマートフォンにタッチペンを利用していたのだが、Samsung ElectronicsのGalaxy Note Edge(NTTドコモ SC-01G)に買い替えて、デジタイザペンを利用してメモを取っている。このソリューションの素晴らしいところは、入力したメモが全てクラウドに自動アップロードされ、不幸にもスマートフォンを紛失したとしてもデータはクラウドに残るし、リモートワイプできるように設定しておけばデータが流出して取材先に迷惑をかけることも防ぐことができる点だ(あらかじめ端末を暗号化し、パスワードロックをかけておくのは言うまでもない)。

 スマートフォンを利用して記録したメモは、そのままクラウドへアップロードされる。机に座って記事を書くときにPCのOneNoteを開くと、スマートフォンで作成したメモが同期されているので、わざわざスマートフォンをカバンから出すことなく記事の執筆に取りかかれている。このように、マルチデバイスの機能を活用すると、こうした使い方が可能になり、生産性を向上させることに繋がると思う。筆者のこうした使い方は記者であればこそだとは思うが、ビジネスパーソンでもちょっと思いついたこと、気がついたことをスマートフォンのOneNoteでメモを取ってクラウドに同期させておけば、PCのPowerPointで企画書を作る時などにそれを参照しながら作業すれば便利だろう。

 余談になるが、MicrosoftではOffice 365 Solo/Office Premium搭載PCを購入したユーザーを対象にしたキャンペーンを行なっており、「できるポケット OneNote 2013 基本マスターブック」や「できるポケット Excel 関数 全事典」を期間限定でOneNote型式の電子書籍で無償提供している。詳しくは別記事MicrosoftのWebサイトを閲覧して頂きたいが、OneNoteを使ったことが無いユーザーでこれからOffice 365 Solo/Office Premiumで使い始めるという人はぜひゲットしてみるといいだろう。

 最後に、ビジネスパーソンであろうが、パーソナルユーザーであろうが、長短の違いはあれ人生は有限であることは誰にとっても同じだ。従って、少しでも生産性を上げればそれだけほかのことをやる時間を増やすことができ、より豊かな生活ができたり、ほかの仕事をやることができるようになる。その意味で、このようにマルチデバイス化された新しいOfficeの機能を活用して生産性を向上させることは、誰にとってもメリットがあることだと筆者は考えている。少しでも生産性を向上させたいという意欲のあるユーザーであれば、Office 365、OneDriveなどのクラウドストレージ、そしてOffice for iPadに代表されるようなモバイル機器向けのOfficeなどを活用して生産性の向上に取り組んでみてはいかがだろうか。

Android版のOneNoteとGalaxy Note Edge(NTTドコモSC-01G)を利用して手書きメモを取っている様子。スタイラスペンだと細かい文字を書くのは難しいが、Galaxy Noteシリーズのようにデジタイザーペンを備えているスマートフォンだと細かな文字も書ける
PC版のOneNoteで手書きメモを同期したところ。こうしたメモがすぐクラウド経由でPCで見ることができるので、仕事の能率がアップする
OneNoteでできるシリーズ解説書を無償で読めるキャンペーンが行なわれている。Office Premium搭載PCまたはOffice 365 Soloを購入したユーザーが対象となる

(笠原 一輝)