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21年前の電動ハンドガン(1.2万円)と、最新最高級カスタムモデル(9万円)の戦闘力を比較してみた
2025年12月30日 06:30
高校時代にサバゲーにハマっていた筆者だが、卒業と同時に主に金銭面の事情からいったん引退。ところが2022年5月、約20年ぶりに復帰し、今では毎週のようにフィールドへ通っている。
復帰してまず驚いたのが、エアガン(エアーソフトガン)の進化だ。筆者が遊んでいた当時は、空気の圧力で1発ずつBB弾を撃ち出す「エアーコッキングガン」が主流。一部の「大人のプレーヤー」がコンプレッサーでエアタンクに圧縮空気を充填し、「ガスガン」を運用している……そんな時代だった。もちろん、電動ガンなど影も形もなかった。
ところが現在のサバゲーはまったくの別世界。圧倒的主流派は「電動ガン」。さらに、2004年には東京マルイが電動ハンドガン第1号機として「グロック18C」を発売。セミオート、フルオートの切り替えができ、ガスガンのように気温に左右されないため、1年を通して安定した性能を発揮するサブウェポンとして人気を集めている。
とはいえ、発売から20年以上が経過したこともあり、さすがに当時のままでは性能面で物足りない。そこで現在は、エアガンショップやカスタムメーカー各社から、高精度強化パーツや、カスタムメニューが数多く提供されている。
その中でも注目のカスタムが、2025年9月に登場したAIRSOFT97(販売)/SPARK(開発・製造)の「PERFECT MAXIMA」。詳しくは後述するが、内部パーツを総入れ替えする勢いでアップグレードし、「電動ハンドガンなのに長物(ライフル)と撃ち合える」レベルの戦闘力を実現したという。
そこで今回は、発売から21年が経過したノーマルの電動ハンドガン(約1.2万円)と、最新のカスタムパーツをフルで組み込んだ総額約9万円のカスタム電動ハンドガンを比較。はたして性能はどれほど変わるのか、その「進化のギャップ」をじっくりと見ていただこう。
21年前から愛され続けている東京マルイの電動ハンドガン
まずお伝えしておきたいのは、東京マルイの電動ハンドガンシリーズは非常によくできたエアガンであるということだ。ラインナップは「グロック18C」「M93R」「H&K USP」「M9A1」「ハイキャパE ガバメントモデル」「HK45」など人気モデルが揃い、価格は1万7,800円~1万9,800円と手ごろだ。
インナーバレルはライフル(長物)より短いものの、30m先のヘッドショットを狙えるレベルの精度を持つ。また、100連マガジンのほか、ドットサイトやサイレンサーを装着できる「アタッチメントマウントレイル」など、拡張性の高い純正オプションも用意されている。
パワーソースは専用の「7.2Vニッケル水素マイクロ500バッテリー」。スライドを外して押し込むだけで装着でき、レバー操作で簡単に取り外せる。扱いがシンプルな上、ガスを使わないためランニングコストも低い。特に室内フィールドでサバゲーを始めたい初心者には最適な1丁と言える。
一方で、弱点もある。それはトリガーの「キレ」がやや物足りない点だ。ニッケル水素バッテリは昨今主流のリポバッテリと比べると出力が控えめで、トリガーを引いてから発射されるまで明確なタイムラグがある。「ウィッ…ポン!」といった感覚で、セミオートでの連射時には特に気になってくる。
このため多くのサバゲープレーヤーが、リポバッテリ運用に対応させるための「リポ化」カスタムを施している。これによりトリガーレスポンスは大幅に改善されるが、注意すべき点がある。リポ化はメーカー非推奨の改造であり、東京マルイの無償サポート対象外となってしまうのだ。故障してもカスタムショップで有償修理を依頼できるが、東京マルイの手厚いサポートを失うリスクがあることは覚えておきたい。
約9万円の最高級カスタム「PERFECT MAXIMA」はココがスゴイ
AIRSOFT97はハンドガン向けに「MAXIMA+」(4万3,230円)、「MAXIMA++」(4万3,230円+1万6,720円)、「PERFECT MAXIMA」(4万3,230円+4万6,530円)の2種類のカスタムメニューを用意している(価格は「ハイキャパE ガバメントモデル」の場合)。カスタムメニューの内訳は下記の通りだ。
| MAXIMA+ | MAXIMA++ | PERFECT MAXIMA | |
|---|---|---|---|
| モーター | - | ブラシレスモーター | |
| 電子トリガー | - | PERUN AB++ | |
| 吸排気系チューニング | - | アクセレートOリング | アクセレートシリンダー改、アクセレートOリング、高効率ピストンヘッド |
| メカ系チューニング | - | ベアリングパッケージ(ボールベアリング軸受、シム調整) | |
| インナーバレル | 日本製 6.01 mm 精密ステンレスバレル | ||
| 電装系チューニング | 高性能SBD「バリカタ」(スイッチ焼けを抑制) | - | |
| バッテリ端子 | XT30 | ||
| セクターギア | オリジナル「極(きわみ)」強化セクターギア | ||
| タペットプレート | オリジナル「極」強化タペットプレート | ||
| スプリング | オリジナル「極」強化スプリング | ||
| 同梱バッテリ | 7.4V/700mAh リポバッテリ1本(XT30端子仕様) | ||
| 初速 | 0.20g BB弾で 80m/s以上 | ||
| 保証 | 2カ月間の内部破損保証 | ||
| 価格 | 4万3,230円 | 4万3,230円+1万6,720円=5万9,950円 | 4万3,230円+4万6,530円=8万9,760円 |
……と、いかにもPC Watch的にスペック表をしれっと掲載しても、ピンと来ない方も多いことだろう。2022年5月にサバゲーに復帰したばかりの筆者も、当時であればまったく理解できないと思う。というわけでSPARKより、特別に各パーツの写真と資料をいただいたので、主要パーツについて解説していこう。
PERFECT MAXIMAの最重要パーツが、SPARK 電動ハンドガン用ブラシレスモーター。純正のブラシ付きDCモーターとは異なり、摩耗が少なく、電力から回転への変換効率が高い。トリガーを引いてから発射されるまでのセミオートレスポンスと、射撃後に動作停止がすばやいことによりキレのよさを実現している。また低消費電力もブラシレスモーターの長所だ。
モーターやスプリングを交換するとメカボックスへの負担が増加する。そこで組み込まれているのが、オリジナルの「極(きわみ)強化セクターギア」。これはSPARKが開発した電動ハンドガン用の強化セクターギア。セクターギアはピストンを引くという役割を持っており、歯数が少なく、その急激な動作を担うため、特に負担が大きい。そのため威力を限界まで高める一方で、強化セクターギアにより必要十分な耐久性を確保しているわけだ。なおメカボックス全体の負担が大きくなりすぎないように、あえて一部パーツは純正品を流用しているとのことだ。
高い精度を出すために重要なのが「吸排気系チューニングパッケージ」。「アクセレートシリンダー改」「アクセレートOリング」「高効率ピストンヘッド」により、吸排気系の高効率化が施されている。高効率化(気密が高まること)により初速も向上するが、射撃時の「エアの噴出量」も均一化される。これによって初速のブレが抑えられることで、弾道の縦方向のブレが少なくなる。結果、高い命中精度を実現するわけだ。
メカボックス内の最後の仕上げとして施されているのが「ベアリングパッケージ」。純正の軸受の代わりに高精度ボールベアリングを各ギアの軸受に組み込み、1丁ごとの個体差に合わせて「シム調整」を実施することで適切なクリアランス(隙間)を確保。もちろんグリスアップも施されている。これにより動作時の振動や摩擦抵抗を抑えることで、レスポンスやサイクルが向上する。射撃時の雑味(動作音)も低減される。
昨今の電動ガンの多くに電子トリガーは搭載されている。PERFECT MAXIMAに採用されている「PERUN AB++」は、ピストンをあらかじめ後退位置で保持することで発射レスポンスを向上させる「プリコッキング」や、モーターのオーバーランによるバーストを防いだり、ピストンの停止位置を安定化させる「アクティブブレーキ」機能を搭載した高機能電子トリガー。また、1セル3.7Vで動作するバッテリ保護や、電子ヒューズなどのトラブル防止機能も搭載されている。コネクタは、電気効率とコンパクトさを重視して「XT30」を採用。電動ハンドガンは内部パーツが詰まっているので、電子トリガーを搭載する際のケーブルの長さ、取り回しが難しい。個人的にはプロのメカニックにまかせたい作業だ。
本製品で親切なのがLayLaxの「GIGA TEC EVOリポバッテリー7.4V」(700mAh、30C)が同梱されていること。前述の通り電動ハンドガンは内部スペースに余裕がないので、バッテリのケーブルも適切な長さでないと接続できなかったり、収まらない可能性がある。MAXIMA+、MAXIMA++、PERFECT MAXIMA用にケーブルを適切な長さに調節し、XT30を取り付けたバッテリであれば、間違いなく装着可能。はんだ付けに自信があるのであれば、標準同梱品を参考に、2本目以降は自分で端子を装着してもよいだろう。
弾道の精度を向上させるためにMAXIMA+、MAXIMA++、PERFECT MAXIMAのすべてに搭載されているのが「da Vinci 雷禅 01インナーバレル」。これは「飛鋭改インナーバレル」を製造するda Vinciが手掛ける高精度ステンレスタイトインナーバレル。飛鋭改と同等の精度に加えて、一般的には6.08~6.10mmのところ、内径6.01mmという非常にタイトな内径で作られている。
インナーバレルの内径が狭いと、射撃時にBB弾の周囲から前方に逃げる「エア漏れ」が減少する。シリンダーから供給されたエアが効率的にBB弾を押し出すので、初速が向上するわけだ。ただし、このようなタイトバレルを使用する際には、粗悪なBB弾や、古く劣化したBB弾を使うと射撃時に詰まり、故障する可能性がある。ふさわしいBB弾を選び、品質管理にも注意を払う必要があるわけだ。
ノーマルとPERFECT MAXIMAの戦闘力を徹底チェック
さて最後にノーマルの「グロック18C」(以降、ノーマル)と、PERFECT MAXIMAのカスタムを施した「ハイキャパE ガバメントモデル」の実射性能を比較してみよう。
まずはセミオート。0.25g弾使用時の初速はノーマルが平均60.1m/sだったところ、PERFECT MAXIMAは約123%相当の平均75.0m/sを記録した。電動ハンドガンでこれだけの初速アップは驚異的だ。
次はフルオート。0.25g弾使用時の連射速度はノーマルが平均9.3発/秒だったところ、PERFECT MAXIMAは約143%相当の平均13.3発/秒を記録した。あまりハンドガンでフルオートは使用しないが(少なくとも筆者は)、連射速度が速いということは、それだけセミオートでのキレがいいということになる。
キレやレスポンスについては下記の動画でもぜひご確認いただきたい。ノーマルでは前述した通り「ウィッ…ポン!」と、ピストンが後退し、その後リリースされるのが明らかな動作音だが、PERFECT MAXIMAでは瞬時にピストンが解放され、動作音自体は低く抑えられているのが分かる。変則的な握り方をして、「高橋名人」のようなボタンの押し方でトリガーを押したとしても追従するだけの、レスポンスを備えていると言えるだろう。
最後に弾道だが、これについてはノーマルもかなり健闘している。ノーマル(グロック18C)のインナーバレル長は105mm。実売1.5万円前後の電動ハンドガンが箱出しでこれだけ当たるのは驚異的だ。しかしPERFECT MAXIMAはその上を行く。ノーマルが32m先でヘッドショットを数発で狙える精度だが、PERFECT MAXIMAはバリケードからはみ出しているこぶし大の部位を数発で当てられる精度だ。また同じぐらいの時間だけトリガーを引いてもPERFECT MAXIMAのほうが発射される弾数が多いし、着弾もまとまっている。
ノーマルも量産品という点では箱出しの精度は驚異的だが、AIRSOFT97のチューナーがカスタマイズし、調整を施したPERFECT MAXIMAが精度を数段階引き上げているということは紛れもない事実と言えよう。
費用対効果とハイエンドカスタム「PERFECT MAXIMA」の価値
上の動画を見て、「PERFECT MAXIMAは高価ではないか?」と感じる読者もいるだろう。しかし、これは単なる「パーツ交換」ではなく、「基本性能のボトルネックを根本から解消する」タイプのアップグレードに近いと言える。
自作PCの例で考えると、ビデオカード非搭載のデスクトップに5万円前後の「GeForce RTX 5060」を増設すれば、3Dグラフィックス性能は劇的に向上する。一方、すでにRTX 5080を搭載したマシンを40万円超のRTX 5090にアップグレードしても、投資に見合う体感差が得られるとは限らない。
今回の比較で、ノーマル電動ハンドガンからPERFECT MAXIMAへのアップグレードは、前者の「GeForce RTX 5060の増設」に限りなく近い変化だ。キレ、連射速度、命中精度、初速の向上など、すべてが「明確に分かる」レベルで違い、その性能向上に耐える内部補強が施されている。
PERFECT MAXIMAは筆者にとって、高校生時代に初めて購入した「MZ-2000」と、現在使っているデスクトップPCほどの進化を遂げた電動ハンドガンであることは間違いない。


































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