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新年は広いシステムドライブでゆったりと過ごそう!無料ソフト「Clonezilla」を使ったSSDの引っ越し手順

 ちょっと古めのノートPCだと、内蔵するシステムドライブ用SSDの容量が120~240GB前後ということも珍しくはない。日常的に使うアプリや細々したファイルで一杯になったシステムドライブを眺めながら、だましだまし使っているというユーザーもいるはずだ。大容量SSDに換装すればいいのは分かっているが、Windows 11や各種アプリの再インストール、設定を復旧する手間まで考えると気が重い……。

 そんな人たちにオススメしたいのが、フリーソフトの「Clonezilla」を利用したシステムドライブの引っ越しプランだ。この「プラン」では、今使っているシステムドライブの中身を、大容量の新しいSSDに丸ごとコピーしてしまうため、再インストールや設定の復旧作業は必要ない。システムドライブの換装に対応したPCであれば、比較的簡単に引っ越しができる。

内部にアクセスできるかどうかと利用できるSSDを確認

 Clonezillaは、SSDやHDDなどのストレージやパーティションの内容を「バックアップ」したり、保存しておいたバックアップファイルからドライブの内容を「リストア」したりできるツールだ。その機能の1つとして、あるストレージの内容を別のストレージにそのままコピーする「クローン」機能をサポートしている。

 このクローン機能を利用すると、Windows 11のシステムファイルやブートファイル、インストールされたアプリ、今まで使ってきた設定情報やファイルなどもそのままコピーできる。

 システムドライブをクローンした新SSDを今まで使ってきたPCに挿せば、今まで使ってきた環境がすぐに復活する。再インストールの手間を省きたいというユーザーにとっては非常に魅力的な機能である。

 またClonezillaには、今まで使ってきたドライブをバックアップする機能もある。この機能を使って安定した状況をバックアップしておけば、何かあったときでもすぐに元に戻せる。こうしたバックアップ&リストアツールの殆どは有料であることが多いのだが、Clonezillaはフリーソフトなので利用のハードルが低い。

 こうしたシステムドライブの引っ越しをする場合、まずはM.2スロットやシャドウベイにアクセスできる構造であるかを確認する必要がある。内部が広いミドルタワーケースタイプのデスクトップPCや、コンパクトだがメモリスロットやM.2スロットへのアクセスが容易なミニPCでは、基本的には問題なく作業できる。

今回使うGMKtekのミニPC「NucBox K8」では、天板と内部パネルを外すだけでM.2スロットにアクセスできる

 しかし最近主流の薄型ノートPCでは、メモリスロットやM.2スロットへのアクセスがかなり難しいモデルが多い。メーカーが保守マニュアルを公開しているモデルなら、それに従って作業したい。また換装手順を動画で公開してるメーカーも多いので、そういった動画も参考になるだろう。

 また薄型ノートPCの場合、組み込めるストレージのサイズや規格にも注意したい。ごく稀なことだが、今回のような用途で使う自作PC向けの「2280サイズ(Type 2280)のM.2 SSD」に対応していないことがある。また古いノートPCでは、2.5インチサイズのHDDやSSDを利用していることも多い。メーカーのWebサイトやスペック欄をよく確認して、換装用のSSDを準備したい。

特に薄型ノートPCの場合、交換用のSSDを購入する前にどんな形状のストレージに対応するかを確認したい
古いローエンドモデル、特に光学ドライブも搭載するノートPCでは、低価格な2.5インチSSDを利用していることもある

 もう1つ、メーカーPCではシステムドライブにBitLockerによるロックや暗号化が行なわれていることが多い。クローン作業を行なう前に、そうしたロックや暗号化を解除しておこう。というのもそうした暗号化が行なわれたドライブでもクローンはできるのだが、パーティションの拡張がうまくいかないからだ。

システムドライブにこうしたカギのかかったアイコンが付いている場合は、BitLockerや暗号化が行なわれている

Clonezillaを実行するUSBメモリを準備する

 Clonezillaは日頃Windows 11で使っている一般的なアプリとは異なり、テキストベースの選択肢を選んでいくスタイルなので、慣れないうちはちょっと難しいと感じるだろう。とはいえ現状のバージョンではきちんと日本語もサポートされているし、難しい言葉ではないのでよく読めば理解できるはずだ。今回は細かく手順を追って作業内容を紹介する。

 また、今回のテストでシステムSSDを換装するのはGMKtekのミニPC「NucBox K8」。システムドライブとして利用している256GBのM.2 SSDを、2TBのM.2 SSDに換装する。NucBox K8はM.2スロットを2基装備しているので、2TBのSSDを2基目のM.2スロットに挿してクローン作業を行なった。2基のM.2スロットを持たないPCでも、USB接続の外付けSSDケースなどを使えば同じことが可能だ。

USB接続の外付けSSDボックスにSSDを組み込んでクローン作業を行なうことも可能

 まずはClonezillaのWebサイトから、Clonezillaをダウンロードしよう。ダウンロードしたClonezillaのファイルを、フォーマットしたUSBメモリにコピーしてClonezillaを起動できるUSBメモリを作る。今回は安定版の「stable」ではなく、最新版に近いが安定性の高い「alternative stable」を利用した。

ClonezillaのWebサイトの左にある「Download」をクリック
今回は「alternative stable」をクリック
システムやファイルの指定が正しいことを確認して「Download」ボタンをクリック
するとこの画面になり、しばらく経つと自動でClonezillaのダウンロードが始まる
ダウンロードした左のzipファイルをダブルクリックすると、Clonezillaの実行ファイルが表示される
USBメモリをPCに挿してFAT32でフォーマットし、先ほど開いたzipファイルの中身をそのままコピーする
これでClonezillaを実行できるUSBメモリが作成できた

SSDを増設してシステムドライブの内容をクローン

 実際のクローン作業を始めよう。NucBox K8の天板と内部パネルを外し、クローン用のデータを書き込むM.2 SSDを、空いているM.2スロットに挿す。先ほど作ったClonezilla起動用のUSBメモリをNucBox K8に挿して電源を入れて、UEFIの設定画面を呼び出そう。この辺の作業内容はPCによって大きく変わるので、今回はUSBメモリから起動したClonezillaでの作業内容を中心に紹介する。

換装用のSSDはMicronのM.2 SSD「Crucial T710 CT2000T710SSD8-JP」。高性能だが発熱が低く、扱いやすくて信頼性が高いM.2 SSDの1つだ。余談だがCrucialブランドの撤退は本当に惜しい
換装用のM.2 SSDを空いているM.2スロットに挿す
M.2 SSDの換装作業が残っているので内部パネルだけ戻し、ClonezillaのUSBメモリをUSBポートに挿す
PCの電源を入れたらUEFIの設定画面を呼び出し、ブートメニューからUSBメモリを選択してPCを再起動する
Clonezillaの起動画面だ。「Clonezilla Live(VGA 800x600)」か、「Clonezilla Live(VGA 800x600 To Ram)」が成功しやすかったのでどちらかを選んでEnterキー
使用する言語の選択画面だ。日本語を選んでEnterキー
キーボードレイアウトの設定画面だ。今使っているキーボードの設定をそのまま使うなら「Keep」でEnterキー
Clonezillaのユーザーインターフェイスか、コマンドラインでの操作を行なうかの選択画面。今回は前者で作業するのでそのままEnterキー
動作モードの設定画面。今回はストレージの内容をそのままコピーするので「Device-Device」に移動してEnterキー
「Expert」モードで細かい設定を行なうかどうかを設定する画面。今回は「Beginner」モードで問題ないのでEnterキー
クローンモードの選択画面。今回はSSDの内容をそのままコピーするので「disk to local disk」を選択してEnterキー
『コピー元のドライブ』を選択する画面。間違えないように256GBのSSDを選択してEnterキー
『コピー先のドライブ』を選択する画面。2TBのSSDを選択してEnterキー
ファイルシステムのチェックなどをするかしないかの画面。基本的にここは何も変更せずにEnterキーでOK
コピー先のドライブのパーティションを設定する画面。非常に重要な設定画面であり、「-K1 適切にパーティションテーブルを作成」を選択した状態であることを確認してEnterキー
作業中のログファイルをどこに保存するかを指定する画面。一番上で問題ないので、そのままEnterキー
作業が終わった後にPCをどうするかを設定する画面。作業後にはM.2 SSDを差し替えなければならないので、「シャットダウン」に移動してEnterキー
クローン作業が始まる前に、コピー先のドライブの中身が消えてしまうことに対する警告メッセージが流れる。2回YとEnterキーを押すと、実際のクローン作業が始まる
パーティション作成やクローン作業は自動で進むので、PCを放置してシャットダウンされるまで待つ

クローン元のSSDを抜いて起動すればシステムの引っ越し完了

 Clonezillaによるクローン作業が終了してPCがシャットダウンしたことを確認したら、念のため電源ケーブルを抜いてしばらく待つ。通電していないことを確認して天板パネルを外し、今まで使ってきた256GBのM.2 SSDを外す。クローンした2TBのみの状態であることを確認してから電源ケーブルを挿してPCを起動し、システムドライブの残り容量が増えていることを確認しよう。

天板パネルを外して、今まで使ってきた256GBのM.2 SSDを外す
PCを起動すると、今まで使ってきた環境がそのまま起動する
システムドライブを開くと、空き容量が2TBまで増えていることが分かる

 ここまででシステムのお引っ越し作業は終わりだ。分かりやすいメニュー形式で設定を確認しながら進められるので、こうしたツールに慣れていないユーザーでも迷う部分は少ないだろう。ただしコピー元とコピー先を間違えると大変なことになるので(笑)、その手順のところだけは十分注意しながら作業したい。

 ちなみに検証作業中に何回かClonezillaが起動せず、作業メニューに入れなくなることがあった。その場合はUSBメモリをFAT32でフォーマットし、Clonezillaのファイルをコピーし、作業用USBメモリを作り直すとよい。また、こうしたシステムドライブのクローンツールを付属しているSSDメーカーもあるので、そうしたツールを使っても良いだろう。