COMPUTEX TAIPEI 2000レポート【チップセット編】ALi、SiS、VIAの3社が注目の新製品を続々リリース
会場:Taipei International Convention Center(TICC)
ALi(アリ)はSuper 7時代にはAladdin Vで、3社の中でも飛び抜けて採用例が多かったが、P6バス(Pentium III/Celeronのシステムバス)の利用ライセンスをIntelから付与してもらうのが、ほかの2社に比べて遅くなってしまったため、P6バスのチップセット(Aladdin Pro IIやAladdin TNT2、Aladdin Pro IV)などを出荷したものの、少なくともデスクトップPC市場では大きなシェアをとるには至っていない。その代わり、SiS、VIAといったほかのメーカーが力を入れていないモバイル市場に注力しており、台湾ベンダのモバイルPentium III、モバイルCeleron搭載パソコンなどに食い込むことに成功している。しかし、Super 7時代のような栄光はもはやないと言ってよい。 そうしたALiが一発大逆転を狙って、今回のCOMPUTEXに展示したのが、266MHzのDDR SDRAMに対応したAthlon Duron用のチップセットであるAladdin K7(M1647)だ。Aladdin K7は、昨年のCOMDEX/Fallでも展示されていたが、その時点ではシリコンの上に文字なども書かれていなかった、本当に動作するバージョンなのか怪しいものであったが、その当時でもDDR SDRAMに対応していると説明するボードにかかれているなど、そういった意味ではAthlon Duron用チップセットとしては、初めてDDR SDRAMに対応したチップセットだった(あくまで初めて“公開された”という意味でだが)。ただ、その当時は型番がM1648だったのだが、今回展示されていたAladdin K7はM1647になっていた。 Aladdin K7(M1647)のスペックは以下のようになっている。
・システムバス:200/266MHz ・メモリ:PC100/133 SDRAM、DDR SDRAM(200/266) ・AGP:4X ・パッケージ:528ピンBGA
同社のチン・ウー社長によれば「実際にマザーボード上には両方のソケットをつけることはできず、あくまでどちらかの対応になる」ということで、IntelがMTHを利用して行なったような1つのマザーボードでDirect RDRAMとSDRAMの両方のソケットを用意したように、SDRAMとDDR SDRAMの両方のソケットを搭載するといったことはできないそうだ。また、他社(具体的にはVIA Technologies)が先にP6バス(Pentium III/Celeron用)のDDR SDRAM対応チップセットを先に出すのに対して、「ALiはAthlon用のDDR SDRAMチップセットをP6バス用よりも先に出荷する」とのべ、AMDのプラットフォームではDDR SDRAMが標準となるだろうから、先にAthlon用のDDR SDRAMを出荷するという意向を明らかにした。 なお、情報筋によれば、ALiはM1647、M1648、M1657という3つのAthlon Duron用チップセットを計画している。スペックは以下のようになっている。
Slot AとSocket Aに両対応 システムバス:200/266MHz メモリ:PC100/133 SDRAM、DDR SDRAM(200/266) 統合型チップセット AGP 4Xスロット
M1657
さらに、ウー社長はAMDが今年後半にリリースを予定している、モバイル向けプロセッサ“Corvette(コルベット)”にも対応させる予定を明らかにした。Aladdin K7に同社のモバイル向けノースブリッジ(M1535/M1535+)を組み合わせれば、「Corvetteを利用したノートパソコンも実現可能である」とし、モバイル分野での同社のアドバンテージをアピールした。さらにはモバイル向けのAthlon用統合型チップセット(具体的にはM1648のモバイル版のことを指していると思われる)の可能性を示唆した。 このほか、ALiでは「Aladdin CyberBlade(M1632M)と呼ばれる、Trident Microsystemsのグラフィックスコアを統合したモバイル向けP6バスチップセット(モバイルPentium III/モバイルCeleron用)を展示していた。スペックは以下のようになっている。
・システムバス:100+MHz ・EDO/VCM/PC100/PC133 SDRAM ・Trident CyberBladeコア(SMA)
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SiS(シス)はAthlon用チップセットであるSiS730S(別記事参照)をリリースしたが、それ以外にもSiS630S、SiS630Eというチップセットをリリースしている。ただし、これらの2製品はその製品名からもわかるように、昨年SiSがリリースしたSiS630のリファイン版およびローコスト版だ。SiS630はノース、サウスという2つのチップを1つに統合したチップセットで、サウンド、モデム、イーサネットといった複数の機能を統合した統合率の高いチップセットとして、日本でも日本IBMがAptivaシリーズに採用するなど高い評価を受けている。 今回明らかにされたSiS630Sは簡単にいってしまえば、SiS630に外部AGPスロットを追加したものだ。SiS630では外部AGPスロットを追加することはできず、A-DIMMというビデオメモリの搭載されているメモリカードを追加することで、SMA(メインメモリの一部を64bitとして利用する)で利用するメインメモリの64bit幅とA-DIMMの64bit幅をあわせて128bitとしてビデオメモリにアクセスできるようにして3D描画パフォーマンスをあげるというアップグレードしかできなかった。 しかし市場では、Intel 815/815E、VIA TechnologiesのProSavage PM133など、内蔵のグラフィックスコアと外部AGPスロットを切り替えて利用できるようにしている統合型チップセットがトレンドになりつつある。そうしたトレンドに乗り遅れないように、A-DIMMの仕組みを廃止し、新しく外部AGPスロットを利用できるようにしたのがSiS630Sなのだ。 SiSのトーマス・ツイ氏によれば「当社の顧客でA-DIMMを必要としていたところはほとんどなく、故に取り外した」と述べた。 しかし、SiSのメインの顧客はそうしたアップグレードパスを必要とするようなパワーユーザーではなく、どちらかといえば初心者ユーザーに対して販売しているような大手PCメーカーだ。たとえば、日本でいわゆる10万円以下PCとして販売されている、NECや富士通、日本アイ・ビー・エムといった大手メーカー製PCにはSiSのチップセットが採用されている。そうした大手PCメーカーは外部AGPスロットのようなアップグレードパスを必要としていない初心者をターゲットにしており、そうしたメーカーにとっては外部AGPスロットなどコストアップ要因でしかない。そこで、SiSはSiS630Eというローコスト版を用意している。SiS630EはSiS630Sから外部AGPスロットと、セカンドディスプレイやテレビアウトのコストアップにつながりそうな要因を削除し、かつチップの値段をさらに下げたというのだ。 既に述べたように、日本でも多くのメーカー製PCに採用されているSiS630シリーズは、統合性の高さやコストパフォーマンスという点で高い評価を受けており、今回のリファインでさらに評価をあげる可能性は高い。自作PCユーザーにはあまり評価が高くないSiSのチップセットだが、今後もメーカー製PCの中でお目にかかる機会は増えそうだ。
チップセット事業において非常に好調な状態が続いているVIA Technologies(VIA、ビアテクノロジーズ)は、ここCOMPUTEXでもやや小さめなブースながら、通行に混雑するほどににぎわいを呈していた。今回発表された新製品は2製品で、1つは初日のレポートでもふれたように、Socket AのAthlon Duron用のApollo KT133だ(別記事参照)。もう1つが、P6バス(Pentium III/Celeronのシステムバス)用の統合型チップセットであるProSavage PM133だ。
ProSavage PM133(以下PM133)は、昨年春に発表されたS3とVIAの提携(その後VIAはS3のグラフィックス部門を買収した)に基づき作られたチップセットで、S3のSavage4のグラフィックスコアを内蔵したチップセットだ。つまり、「Apollo Pro133A+Savage4=ProSavage PM133」となるようだ。基本的にはSavage4が内蔵されている以外の機能はApollo Pro133Aと同等と言ってよい。その証拠にApollo Pro133Aには2バージョンがある。それがVT82C694XとVT82C694Zだが、このうちPM133はVT82C694Zとピン互換で、マザーボードメーカーは一枚の基板(PCB)を作るだけで、Apollo Pro133A(統合なし)、ProSavage PM133(統合あり)の2種類のマザーボードを作ることが可能になる(このあたりはPlatform2000のレポートでふれたことと変更はない)。 さらに、VIAは初日に開催した「DDR266: Revving up PC System Performance」と題したセミナーの中で、同社のDDR SDRAMチップセットロードマップを公開した。この中でVIAは2000年中にDDR SDRAMに対応したチップセット「Pro2000」を出荷すると述べている。それぞれP6バス用の「P6-DDR」、EV6バス用の「K7-DDR」の2製品があると説明されており、これはOEMメーカー向けのロードマップの中で述べられている「PX266」(Pentium III/Celeron用)、「KX266」(Athlon/Duron用)の3製品のことを指していると思われる。まずP6バス用の「PX266」(Pro2000 P6-DDR)を7月にサンプル出荷(製品出荷ではなく、OEMメーカーに対して設計に必要なサンプルを出荷すること)を開始し、EV6バス用の「KX266」に関しては第3四半期中のサンプル出荷を目指しているということで、第4四半期には製品出荷にこぎ着けたいという意向であるそうだ。 その後に関しても基本的には、Platform2000時と同じで、統合型チップセットのDDR SDRAM版PM266(P6バス用)を第4四半期にサンプル出荷、KM266(EV6バス用)を2001年第1四半期にサンプル出荷する意向を持っている。なお、Platform2000の時点ではPM266/KM266のグラフィックスコアはSavage2000だったが、最近Savage4コアに変更された。 今回新たに追加されたのがサーバー/ワークステーション用DDR SDRAMチップセットである「P-DDR Server」(2001年前半にサンプル出荷)、「Apollo Pro2001」(出荷時期未定)の2製品だ。P-DDR ServerはIA-32となっており、おそらくPentium III/Pentium III Xeonなどに対応するものと思われる製品だ。さらにApollo Pro2001はPC-2600という2.6GB/秒のバンド幅を実現する次世代DDR SDRAMメモリモジュールに対応するIA-32向けチップセットだが、出荷時期、対応するIA-32の種類(Pentium IIIなのかWillametteなのか)も含めてまだ未決定であるようだ。 なお、このほか筆者の独自取材によりVIAがPL133、KL133というチップセットの計画を持っていることが明らかになった。PL133、KL133はそれぞれPM133、KM133(Savage4コアを内蔵したAthlon Duron用統合型チップセット)のローコスト版で、それぞれ外部AGPスロットの機能を省いたものだ。ちょうどSiS630SとSiS630Eの関係と同じようになっている。
□COMPUTEX TAIPEI 2000のホームページ(英文) (2000年6月9日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング] |
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