期日:11月15日~11月19日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center
Sands Expo and Convention Center
Las Vegas Hilton
現在PCのデスクトップおよびノートブックPCのチップセットを作っている主なベンダーと言えば、Intel、VIA Technologies、SiS(Slicon Integrated Systems)、ALi(Acer Labratory Inc.)の4社だと言える。このうち、Intel、SiSはCOMDEXには参加していなかったが、VIAとALiに関しては出展しており、いくつかの新しいチップセットなどを公開していた。
●逆襲に燃えるALiはAladdin K7を初めて一般向けに公開
今回のチップセット業界における最も大きなニュースはALiが複数のチップセットを展示していたことだろう。ここ1年ほどCPUバスの主流がP5バス(Socket 7)からP6バス(SC242/PGA370)に移っていったあたりから、ALiは新しい製品も発表しなくなり、元気がなくなっていた(ライバルのVIAがApollo Proシリーズで多くの顧客を獲得していったのとは対照的だった)。
これにはきちんとした理由がある。それがP6バスの特許ライセンスの問題だ。VIAやSiSが昨年の終わりのIntelとP6バスのライセンスに関して合意をしたのに対して、ALiからは長らくその発表はなかった。しかし、6月26日に合意が成立し現在ではALiはP6バスのチップセットを販売することができるようになっている。こうした背景もあってか、最近のALiはアグレッシブに新製品の発表を行なっており、失地回復を狙っている。
ALiのブースに展示されていたAladdin K7。見てわかるようにシルクにはシールが貼ってあるだけで、実際には動作しているデモは公開されなかったので、まだメカニカルサンプルである可能性が高い |
今回のALiブースで最も注目なのはAladdin K7と呼ばれるAthlon用のチップセットが用意されている点だろう。Aladdin K7はノースブリッジがM1648、サウスブリッジがM1535Dとなっており、
というスペックになっているという。現時点では出荷時期、価格などこれ以上の詳細は明らかになっていないが、ALiのAladdin K7が市場に登場するとなると、マザーボードメーカーはAMD-750(やその後継となるAMD-760)、VIAのApollo KX133、ALiのAladdin K7と多くの選択肢の中から選択できるようになる。これはAthlonのプラットフォームにとって非常によいニュースだと言える。
この他、ALiのブースでは9月に発表されたNVIDIAのRIVA TNT2を内蔵したP6バス用統合型チップセットであるAladdin TNT2(以前はAladdin Pro IIIで呼ばれていた製品)を展示していた。スペックは次のようなものだ。
COMPUTEXでのレポートでも述べたとおり、ビデオメモリとチップセット間のバスは64ビットになっており、RIVA TNT2が内蔵しているというよりはその廉価版であるRIVA TNT2 m64が内蔵されていると考えていいだろう。
ALiのAladdin TNT2。NVIDIAのRIVA TNT2相当のグラフィックスコアが統合されている | Aladdin TNT2を搭載したASUSTeK ComputerのP3A |
●ハードウェアジオメトリ演算をサポートするAladdin7
ALiのAladdin7。ArtXのグラフィックスアクセラレータが統合されており、ハードウェアジオメトリ演算機能も持っている |
また、ALiは先日発表されたばかり(関連記事)のAladdin7を搭載したマザーボードを実際に動作させてデモンストレーションした。Aladdin7はArtX(SGIの社員がスピンアウトして設立した新興のビデオチップメーカーのグラフィックスコアを内蔵しているSocket 7用のチップセットだ。
実は昨年のCOMDEXでALiはAladdin VIというチップセットを限定された顧客向けに公開していたのだが、一度そのプランは破棄されていた(COMDEXでの顧客の反応があまり良くなかったためだと言われている)。しかし、一時は今年中にも消えてしまうと思われていたSocket 7が意外にもしぶとく生き残っている。11月11日の記事で述べられているK6-2+や初日のレポートにおけるK6-2/533MHzのようにSocket 7のCPUをさらにパフォーマンスアップしていく計画があり、最新の機能をサポートしたチップセットが必要となりつつあるため、復活したという次第だ。
Aladdin7のスペックは以下のようになっている。
ArtXのグラフィックスコアの最も大きな特徴は、こうした統合型チップセットに採用されているグラフィックスコアとしては初めてハードウェアのジオメトリ演算(ハードウェアT&L)をサポートしていることと、グラフィックスコア自体が128ビットに対応していることだろう。スタンドアローンのグラフィックスアクセラレータでも2製品(GeFORCE 256とSavage2000)しか対応していないハードウェアジオメトリ演算に統合型チップセットが対応しているのだから驚きだ。
なお、ブースでは実際にAladdin7を利用してゲームをプレイすることができるようになっており、実際にその描画能力の高さを実感することができる。筆者もちょっとプレイしてみたが、確かに従来の統合型チップセットにはない描画能力の高さは印象的だった。なお、ArtXのホームページにはAladdin7の製品仕様が掲載されているが、そこには「100/66MHz CPU Front Side Bus, 1XXMHz ready」という気になる表現がある。これが噂もSocket 7の133MHzのことを意味しているのであれば、いったいCPUはどこが出すのだろう。もちろん、今となってはSocket 7を今後もやっていくと宣言しているのはAMDだけなので、当然AMDということになるのだが……Socket 7ファンには気になる製品ではある(ちなみに、AMDはSocket 7のFSB133MHz化に関しては何もコメントしていない)。
□Aladdin7のプロダクトブリーフ
http://www.artxinc.com/products/aladdin7.html
●VIAはDDR SDRAMのテクノロジ-デモを行なう
VIA Technologiesのブースでは、既に発表済みのチップセットであるApollo Pro133A、Apollo KX133のデモを行なっていたが、特に新しいチップセットなどの発表は無かった。本当であれば、第4四半期に発表される予定になっていたProMediaII(Savage4を内蔵したP6バス用の統合型チップセット)が展示されるはずなのだが、残念ながら今回はそうした新しい製品は特になかった(同社のCOMDEXの事前予告にはProMediaIIが展示されるとあったのだが)。
しかし、VIA Technologiesでは同社の次世代チップセットでサポートされることになる、DDR SDRAMのテクノロジーデモを行なっていた。DDR SDRAMはVIAがPC266と呼んでいる、133MHz(DDRで266MHz)のバージョンで、実際にDDR SDRAMを利用して動作するマシンが公開されていた。なお、AMDなどは同じ133MHzのDDR SDRAMを帯域(2.1Gバイト)からPC2100と呼んでいるが、「基本的には同じメモリであり、最終的にはPC266かPC2100のどちらかに名称は統一される」(VIA マーケティングディレクターのディアン・ヘイズ氏)ということだ。
ただ、今回のテクノロジ-デモに利用されていたチップセットはVIAのチップセットではなく、「MicronのDDR SDRAMに対応したワークステーション用のチップセットを利用している」(ヘイズ氏)ということで、残念ながら同社の次世代チップセットでDDR SDRAMを正式にサポートする「Apollo Pro266」ではなかった。ヘイズ氏によるとApollo Pro266のサンプルは2000年第2四半期、製品は第3四半期を予定しているということだ。AMDが次世代チップセットでDDR SDRAMをサポートするなどDDR SDRAMへの注目は高まっており、その普及の鍵を握る同社の動向からは今後も目が離せないだろう。
VIA Technologiesのブースで行なわれたDDR SDRAMのテクノロジーデモ | DDR SDRAMのデモに利用されたマシンの内部。VIAのチップセットではなくMicronのチップセットが採用されている |
□COMDEX/Fall '99のホームページ(英文)
http://www.zdevents.com/comdex/fall99/
□関連記事
【11月18日】COMDEX/Fall '99 会場レポート マザーボード(Intel以外のチップセット)編
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991118/comdex12.htm
【11月17日】COMDEX/Fall '99 会場レポート マザーボード(Intelチップセット)編
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991117/comdex11.htm
【11月16日】
Intel 820チップセットついに発表。搭載マザーボードも続々登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991116/intel1.htm
i820チップセット、i820搭載マザーボードリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991116/intel2.htm
('99年11月19日)
[Text by 笠原 一輝@ユービック・コンピューティング]