レビュー

NVIDIA、TITAN Xに肉薄し980を圧倒する「GeForce GTX 980 Ti」

~価格は649ドルから

「GeForce GTX 980 Ti」リファレンスカード

 NVIDIAは6月1日(日本時間)、Maxwellアーキテクチャを採用するハイエンドGPU「GeForce GTX 980 Ti」を発表した。上位下位モデルと比較したベンチマークレポートをお届けしよう。

GeForce GTX TITAN Xと同じ「GM200」ベースのハイエンドGPU

 GeForce GTX 980 Tiは、3月に登場した「GeForce GTX TITAN X」と同じGM200コアを採用するハイエンドGPU。GM200コアは、28nmプロセスで製造されたMaxwellアーキテクチャ採用のハイエンド向けGPUコアで、現在のところ同コアを採用しているGeForce製品は、GeForce GTX 980 TiとGeForce GTX TITAN Xのみ。

 GeForce GTX 980 TiのGM200コアは、2,816基のCUDAコアと、176基のテクスチャユニット、96基のROPユニットを備える。フルスペック版GM200を採用するGeForce GTX TITAN Xと比べると、256基のCUDAコアと16基のテクスチャユニットが無効化されたことになる。GPUの動作クロックは1,000MHz(Boostクロック1,075MHz)で、これはGeForce GTX TITAN Xと同等。

 VRAMには7GHz相当で動作する6GBのGDDR5メモリを搭載。GPUとメモリを結ぶメモリインターフェイスは384bitで、メモリ帯域幅は336.5GB/sec。メモリ容量はGeForce GTX TITAN Xの12GBから半減したが、メモリクロックやメモリインターフェイスに変更はない。また、レビュアーズガイドによれば、GeForce GTX 980 TiのL2キャッシュ容量は3,072KB。これもGeForce GTX TITAN Xと同じスペックだ。

【表1】GeForce GTX 980 Tiの主なスペック

GeForce GTX 980 TiGeForce GTX TITAN XGeForce GTX 980
アーキテクチャMaxwell(GM200)Maxwell(GM200)Maxwell(GM204)
製造プロセス28nm28nm28nm
GPU ベースクロック1,000MHz1,000MHz1,126MHz
GPU ブーストクロック1,075MHz1,075MHz1,216MHz
CUDAコア数2,816基3,072基2,048基
テクスチャユニット176基192基128基
メモリ容量6GB GDDR512GB GDDR54GB GDDR5
メモリクロック7.0GHz7.0GHz7.0GHz
メモリインターフェイス384bit384bit256bit
ROPユニット96基96基64基
TDP250W250W165W
価格649ドル999ドル499ドル
(549ドルから改定)

 今回、NVIDIAから借用できたのはGeForce GTX 980 Tiのリファレンスカードだ。ハイエンド製品ではお馴染みとなった金属製の外装を持つ2スロット占有のGPUクーラーを搭載。カラーリングは下位モデルのGeForce GTX 980と同じく、銀をベースカラーとしている。

 ディスプレイ出力インターフェイスは、DisplayPort×3、HDMI 2.0×1、DVI-I×1。基板上部には2基のSLIコネクタと、補助電源コネクタ(8ピン+6ピン)を備える。

ボード表面。黒を基調としていたGeForce GTX TITAN Xとは異なり、銀を基調としたカラーリングを採用
ボード裏面。GeForce GTX 980のリファレンスカードが備えていたバックプレートは備えていない
ブラケット部。画面出力端子は、HDMI 2.0、DVI-I各1基と、DisplayPortが3基
SLIコネクタは2基装備
補助電源コネクタは8ピン+6ピン仕様

ベンチマーク結果

 それでは、GeForce GTX 980 Tiの性能をベンチマークで探っていきたい。今回の比較対象として、上位モデルのGeForce GTX TITAN Xと、下位モデルのGeForce GTX 980を用意、Maxwell世代のGeForceラインナップで隣接する2製品と比較する。比較製品はいずれもNVIDIAのリファレンスカードを使用している。
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【表2】テスト環境

GTX 980 TiGTX TITAN X/GTX 980
CPUIntel Core i7-4790K
マザーボードASUS MAXIMUS VII GENE
メモリDDR3-1600 8GB×2
(9-9-9-24、1.50V)
ストレージ120GB SSD(Intel SSD 510シリーズ)
電源Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD)
グラフィックスドライバGeForce 352.90GeForce 352.86
OSWindows 8.1 Pro Update(64bit)

 今回実施したベンチマークテストは、3DMark(グラフ1、2、3、4、5)、3DMark11(グラフ6)、アサシンクリード ユニティ(グラフ7)、 ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド(グラフ8)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ9)、PSO2キャラクタークリエイト体験版 ver. 2.0(グラフ10)。

 3DMarkのテストの中でもっとも負荷の高いFire Strikeは、標準、Extreme、Ultraの3パターンで測定を行なった。ここでGeForce GTX 980 Tiは、上位モデルのGeForce GTX TITANに2%前後まで迫り、下位モデルのGeForce GTX 980に22~30%ほどの大差を付けた。テストが高解像度かつ高負荷になるたび、下位モデルとの差を広げる一方、上位との差はむしろ縮まっており、最高負荷のUltraでは、GeForce GTX TITAN Xとのスコア差がなくなっている。

 描画負荷の軽いSky DiverやCloud Gateでは、CPU側がボトルネックになってしまい、GeForce GTX 980との差を縮められているが、GeForce GTX TITAN Xとの差は総合スコアで2%未満、グラフィックススコアでも4%未満に抑えている。

【グラフ1】3DMark - Fire Strike (1,920×1,080ドット)
【グラフ2】3DMark - Fire Strike Extreme (2,560×1,440ドット)
【グラフ3】3DMark - Fire Strike Ultra (3,840×2,160ドット)
【グラフ4】3DMark - Sky Diver
【グラフ5】3DMark - Cloud Gate
【グラフ6】3DMark11 [Extreme]

 現在のゲームタイトルの中でも、特にGPUに高い描画性能が求められるアサシンクリード ユニティでは、フレームレートでGeForce GTX 980に20~130%という大きな差を付け、GeForce GTX TITAN Xに遜色ない数値を記録した。

 ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークでも、GeForce GTX 980に14~33%の差を付け、GeForce GTX TITAN Xとのスコア差は3%未満となっており、GeForce GTX 980 Tiの性能がGeForce GTX TITAN Xにかなり近く、GeForce GTX 980を圧倒するものであることが分かる。

【グラフ7】 アサシンクリード ユニティ
【グラフ8】 ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク

 MHFベンチマーク【大討伐】と、PSO2キャラクタークリエイト体験版 ver. 2.0でも、GTX TITAN Xに肉薄し、GeForce GTX 980を大きく引き離すという傾向は変わらない。

【グラフ9】 MHFベンチマーク【大討伐】
【グラフ10】 PSO2キャラクタークリエイト体験版 ver. 2.0

 ベンチマーク比較の最後に、消費電力の測定結果を紹介する。消費電力は、サンワサプライのワットチェッカーを用いて、アイドル時と、各ベンチマーク実行時の最大消費電力を測定した。

 アイドル時の消費電力は、各GPUが50W台半ばの範囲に集まっており、大きな差は見られない。ベンチマーク実行中の消費電力については、GeForce GTX TITAN XとGeForce GTX 980 Tiが300W台の前半から半ばで同程度の電力を消費する一方、GeForce GTX 980は上位2製品より60~80W程度低い数値を記録した。

 GeForce GTX 980 TiとGeForce GTX 980の消費電力差は、おおよそ20~30%程度であり、この数字はベンチマークスコアの差に近い。性能向上分だけ消費電力が増したという結果であり、GeForce GTX 980 Tiの電力性能比については、GeForce GTX 980と同程度であると言える。

【グラフ11】 システム全体の消費電力

最上位GPUに匹敵する性能をより安価に実現するGeForce GTX 980 Ti

 以上のベンチマーク結果から、GeForce GTX 980 Tiが持つ性能が、最上位GPUであるGeForce GTX TITAN Xに迫るものであり、下位モデルでGM204コアを採用するGeForce GTX 980との間には大きな差が存在していることが確認できた。

 記事執筆時点で、GeForce GTX 980 Tiの販売価格は649ドルとされており、上位のGeForce GTX TITAN X(999ドル)との間には350ドルもの差がある。安価なモデルであれば、10万円を切る価格で入手できる可能性もある。

 3-wayや4-way SLIを構築し、超高解像度かつ高画質でゲームを楽しもうとする場合、GeForce GTX TITAN Xとのメモリ容量の差が効いてくることもあり得るが、単体で利用する分にはメモリを使い切るよりも先にGPU性能が足りなくなる。強力なシングルGPU環境の構築を望むユーザーにとって、GeForce GTX 980 Tiは、より現実的かつ魅力的な選択肢となりそうだ。

(三門 修太)