レビュー
NVIDIA、TITAN Xに肉薄し980を圧倒する「GeForce GTX 980 Ti」
~価格は649ドルから
(2015/6/1 07:00)
NVIDIAは6月1日(日本時間)、Maxwellアーキテクチャを採用するハイエンドGPU「GeForce GTX 980 Ti」を発表した。上位下位モデルと比較したベンチマークレポートをお届けしよう。
GeForce GTX TITAN Xと同じ「GM200」ベースのハイエンドGPU
GeForce GTX 980 Tiは、3月に登場した「GeForce GTX TITAN X」と同じGM200コアを採用するハイエンドGPU。GM200コアは、28nmプロセスで製造されたMaxwellアーキテクチャ採用のハイエンド向けGPUコアで、現在のところ同コアを採用しているGeForce製品は、GeForce GTX 980 TiとGeForce GTX TITAN Xのみ。
GeForce GTX 980 TiのGM200コアは、2,816基のCUDAコアと、176基のテクスチャユニット、96基のROPユニットを備える。フルスペック版GM200を採用するGeForce GTX TITAN Xと比べると、256基のCUDAコアと16基のテクスチャユニットが無効化されたことになる。GPUの動作クロックは1,000MHz(Boostクロック1,075MHz)で、これはGeForce GTX TITAN Xと同等。
VRAMには7GHz相当で動作する6GBのGDDR5メモリを搭載。GPUとメモリを結ぶメモリインターフェイスは384bitで、メモリ帯域幅は336.5GB/sec。メモリ容量はGeForce GTX TITAN Xの12GBから半減したが、メモリクロックやメモリインターフェイスに変更はない。また、レビュアーズガイドによれば、GeForce GTX 980 TiのL2キャッシュ容量は3,072KB。これもGeForce GTX TITAN Xと同じスペックだ。
GeForce GTX 980 Ti | GeForce GTX TITAN X | GeForce GTX 980 | |
アーキテクチャ | Maxwell(GM200) | Maxwell(GM200) | Maxwell(GM204) |
製造プロセス | 28nm | 28nm | 28nm |
GPU ベースクロック | 1,000MHz | 1,000MHz | 1,126MHz |
GPU ブーストクロック | 1,075MHz | 1,075MHz | 1,216MHz |
CUDAコア数 | 2,816基 | 3,072基 | 2,048基 |
テクスチャユニット | 176基 | 192基 | 128基 |
メモリ容量 | 6GB GDDR5 | 12GB GDDR5 | 4GB GDDR5 |
メモリクロック | 7.0GHz | 7.0GHz | 7.0GHz |
メモリインターフェイス | 384bit | 384bit | 256bit |
ROPユニット | 96基 | 96基 | 64基 |
TDP | 250W | 250W | 165W |
価格 | 649ドル | 999ドル | 499ドル (549ドルから改定) |
今回、NVIDIAから借用できたのはGeForce GTX 980 Tiのリファレンスカードだ。ハイエンド製品ではお馴染みとなった金属製の外装を持つ2スロット占有のGPUクーラーを搭載。カラーリングは下位モデルのGeForce GTX 980と同じく、銀をベースカラーとしている。
ディスプレイ出力インターフェイスは、DisplayPort×3、HDMI 2.0×1、DVI-I×1。基板上部には2基のSLIコネクタと、補助電源コネクタ(8ピン+6ピン)を備える。
ベンチマーク結果
それでは、GeForce GTX 980 Tiの性能をベンチマークで探っていきたい。今回の比較対象として、上位モデルのGeForce GTX TITAN Xと、下位モデルのGeForce GTX 980を用意、Maxwell世代のGeForceラインナップで隣接する2製品と比較する。比較製品はいずれもNVIDIAのリファレンスカードを使用している。
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GTX 980 Ti | GTX TITAN X/GTX 980 | |
---|---|---|
CPU | Intel Core i7-4790K | |
マザーボード | ASUS MAXIMUS VII GENE | |
メモリ | DDR3-1600 8GB×2 (9-9-9-24、1.50V) | |
ストレージ | 120GB SSD(Intel SSD 510シリーズ) | |
電源 | Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD) | |
グラフィックスドライバ | GeForce 352.90 | GeForce 352.86 |
OS | Windows 8.1 Pro Update(64bit) |
今回実施したベンチマークテストは、3DMark(グラフ1、2、3、4、5)、3DMark11(グラフ6)、アサシンクリード ユニティ(グラフ7)、 ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド(グラフ8)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ9)、PSO2キャラクタークリエイト体験版 ver. 2.0(グラフ10)。
3DMarkのテストの中でもっとも負荷の高いFire Strikeは、標準、Extreme、Ultraの3パターンで測定を行なった。ここでGeForce GTX 980 Tiは、上位モデルのGeForce GTX TITANに2%前後まで迫り、下位モデルのGeForce GTX 980に22~30%ほどの大差を付けた。テストが高解像度かつ高負荷になるたび、下位モデルとの差を広げる一方、上位との差はむしろ縮まっており、最高負荷のUltraでは、GeForce GTX TITAN Xとのスコア差がなくなっている。
描画負荷の軽いSky DiverやCloud Gateでは、CPU側がボトルネックになってしまい、GeForce GTX 980との差を縮められているが、GeForce GTX TITAN Xとの差は総合スコアで2%未満、グラフィックススコアでも4%未満に抑えている。
現在のゲームタイトルの中でも、特にGPUに高い描画性能が求められるアサシンクリード ユニティでは、フレームレートでGeForce GTX 980に20~130%という大きな差を付け、GeForce GTX TITAN Xに遜色ない数値を記録した。
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークでも、GeForce GTX 980に14~33%の差を付け、GeForce GTX TITAN Xとのスコア差は3%未満となっており、GeForce GTX 980 Tiの性能がGeForce GTX TITAN Xにかなり近く、GeForce GTX 980を圧倒するものであることが分かる。
MHFベンチマーク【大討伐】と、PSO2キャラクタークリエイト体験版 ver. 2.0でも、GTX TITAN Xに肉薄し、GeForce GTX 980を大きく引き離すという傾向は変わらない。
ベンチマーク比較の最後に、消費電力の測定結果を紹介する。消費電力は、サンワサプライのワットチェッカーを用いて、アイドル時と、各ベンチマーク実行時の最大消費電力を測定した。
アイドル時の消費電力は、各GPUが50W台半ばの範囲に集まっており、大きな差は見られない。ベンチマーク実行中の消費電力については、GeForce GTX TITAN XとGeForce GTX 980 Tiが300W台の前半から半ばで同程度の電力を消費する一方、GeForce GTX 980は上位2製品より60~80W程度低い数値を記録した。
GeForce GTX 980 TiとGeForce GTX 980の消費電力差は、おおよそ20~30%程度であり、この数字はベンチマークスコアの差に近い。性能向上分だけ消費電力が増したという結果であり、GeForce GTX 980 Tiの電力性能比については、GeForce GTX 980と同程度であると言える。
最上位GPUに匹敵する性能をより安価に実現するGeForce GTX 980 Ti
以上のベンチマーク結果から、GeForce GTX 980 Tiが持つ性能が、最上位GPUであるGeForce GTX TITAN Xに迫るものであり、下位モデルでGM204コアを採用するGeForce GTX 980との間には大きな差が存在していることが確認できた。
記事執筆時点で、GeForce GTX 980 Tiの販売価格は649ドルとされており、上位のGeForce GTX TITAN X(999ドル)との間には350ドルもの差がある。安価なモデルであれば、10万円を切る価格で入手できる可能性もある。
3-wayや4-way SLIを構築し、超高解像度かつ高画質でゲームを楽しもうとする場合、GeForce GTX TITAN Xとのメモリ容量の差が効いてくることもあり得るが、単体で利用する分にはメモリを使い切るよりも先にGPU性能が足りなくなる。強力なシングルGPU環境の構築を望むユーザーにとって、GeForce GTX 980 Tiは、より現実的かつ魅力的な選択肢となりそうだ。