レビュー

Maxwell世代のハイエンド「GeForce GTX 980」ベンチマーク速報

GeForce GTX 980

 NVIDIAは9月19日(日本時間)、Maxwellアーキテクチャを採用するハイエンドGPU「GeForce GTX 980」および「GeForce GTX 970」を発表した。今回、新GPUの発表に先立ち、上位モデルのGeForce GTX 980を借用する機会が得られたので、ベンチマーク結果をお届けする。下位モデルのGeForce GTX 970や、比較対象製品を追加した詳細なベンチマークレポートも近日中に予定している。

Maxwellアーキテクチャを採用したハイエンドGPU

 GeForce GTX 980(以下GTX 980)は、Maxwellアーキテクチャを採用した新GPUコア「GM204」を採用したハイエンドクラスのGPUである。GTX 980のGM204コアは、2,048基のCUDAコアと128基のテクスチャユニット、64基のROPユニットを備え、256bitのメモリインターフェイスで、7GHz動作のGDDR5メモリと接続されている。

 GTX 980は自動オーバークロック機能の「GPU Boost 2.0」に対応しており、GPUコアは、ベースクロック1,126MHz、ブーストクロック1,216MHzで動作する。TDPは165W。

 GTX 980で採用されたGM204コアは、既存のKeplerアーキテクチャ採用GPUと同じく28nmプロセスで製造されたGPUコアだが、電力効率に優れたMaxwellアーキテクチャの採用により、1.4倍のCUDAコア性能と、2倍の電力性能比を実現している。このため、Kepler世代のGPUとは、CUDAコアの数だけで性能の優劣を判断することはできない。

【表1】主な仕様

GeForce GTX 980GeForce GTX 970GeForce GTX 780 Ti
アーキテクチャMaxwell(GM204)Maxwell(GM204)Kepler(GK110)
製造プロセス28nm28nm28nm
GPU ベースクロック1,126MHz1,050MHz875MHz
GPU ブーストクロック1,216MHz1,178MHz928MHz
CUDAコア数2,048基1,664基2,880基
テクスチャユニット128基104基240基
メモリ容量4GB GDDR54GB GDDR53GB GDDR5
メモリクロック7.0GHz7.0GHz7.0GHz
メモリインターフェース256bit256bit384bit
ROPユニット64基56基48基
TDP165W145W250W
価格549ドル329ドル699ドル

 今回借用したNVIDIA製GPUは、GTX 980のリファレンスボードだ。基板表面には、GeForce GTX TITAN/GTX 780シリーズで採用されてきた、金属製のフレームが特徴の2スロット占有型GPUクーラーを搭載。基板裏面には、放熱版としての役割も兼ねた金属製のバックプレートを備えている。

 基板上部には、SLI端子と補助電源供給用の6ピンコネクタをそれぞれ2基ずつ用意。ディスプレイ出力端子には、DVI-IとHDMI 2.0を各1系統ずつと、DisplayPort 3系統を搭載している。

【記事修正:2015年1月30日】NVIDIAよりGeForce GTX 970のスペックに誤りがあったとのアナウンスがありました。ROP数は64基から56基、L2キャッシュが2,048KBから1,792KBとなります。記事中の当該箇所を修正しました。

基板表面。金属製フレーム採用の2スロット占有型GPUクーラーが、基板の全面を覆っている
基板裏面。全面を金属製のバックプレートで覆っている
SLI端子は2基搭載。3-Way SLIに対応
補助電源コネクタは6ピン2系統
ディスプレイ出力端子。5系統の出力端子のうち、4系統を同時に利用可能

ベンチマーク結果

 それではベンチマーク結果の紹介に移りたい。今回は、検証時間と調達できた機材の関係上、AMDのシングルGPU最上位モデル「Radeon R9 290X」(以下R9 290X)との比較結果のみを紹介する。

【表2】テスト機材
GPUGTX 980R9 290X
CPUIntel Core i7-4790K

ASUS MAXIMUS VII GENE
メモリDDR3-1600 8GB×2(9-9-9-24、1.50V)
ストレージ120GB SSD(Intel SSD 510シリーズ)
電源Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD)
グラフィックスドライバGeForce 344.07 DriverCatalyst 14.7 Beta
OSWindows 8.1 Pro Update 64bit

 実施したベンチマークテストは「Battlefield 4」(グラフ1、2)、「3DMark」(3、4、5、6、7)、「3DMark11」(グラフ8)、「ファイナルファンタジーXIV」(グラフ9)、「MHFベンチマーク【大討伐】」(グラフ10)、「PSO2ベンチマーク ver 2.0」(グラフ11)。

 まず確認したのは「Battlefield 4」の結果だ。描画負荷の低い「1,920×1,080ドット@描画品質:中」設定時は、両GPUともフレームレートが頭打ちになっているが、ほかの条件ではGTX 980がR9 290Xとほぼ同等、または上回るパフォーマンスを発揮した。特に、「1,920×1,080ドット@描画品質:最高」設定時には、AMDの独自API「Mantle」でパフォーマンスの向上したR9 290Xに約17%もの差をつけており、GTX 980は、Battlefield 4においてR9 290Xを超える性能を持っていると言って良いだろう。

【グラフ1】Battlefield 4[描画設定:中]
【グラフ2】Battlefield 4[描画設定:最高]

 Futuremark 3DMark系のベンチマークテストでは、Radeonが優勢な傾向のあった最新版の「3DMark」において、4種類のテスト全てでGTX 980がR9 290Xを上回った。両GPUのスコア差は6~14%程度で、最も大きな差がついたのは、最も負荷の高い「Fire Strike」のExtremeプリセット実行時だった。

 1世代前のベンチマークテストである3DMark11では、Extreme プリセット実行時にGTX 980がR9 290Xを約24%上回っており、3DMarkではGTX 980が完勝と言える結果となった。

【グラフ3】3DMark-Fire Strike[Default]
【グラフ4】3DMark-Fire Strike[Extreme]
【グラフ5】3DMark-Sky Diver[Default]
【グラフ6】3DMark-Cloud Gate[Default]
【グラフ7】3DMark-Ice Storm Extreme[Default]
【グラフ8】3DMark11[Extreme]

 ファイナルファンタジーXIVでは、実施したすべての条件でGTX 980がR9 290Xを上回った。描画品質を高めるとR9 290Xが差を詰めているが、最も描画負荷の高い「3,840×2,160ドット@最高品質」時でも、GTX 980が約15%の優位を保っている。

 MHFベンチマークでは、1,920×1,080ドット時はGTX 980がR9 290Xに約12%の差をつけて上回っているものの、3,840×2,160ドット時にはR9 290Xに逆転されてる。もっとも、逆転されたとは言え、スコア差は無いに等しく、MHFベンチマークでもGTX 980が優勢という傾向に変わりはない。

 高負荷時にGeForceが有利になる傾向のあるPSO2ベンチマークでは、GTX 980がR9 290Xを圧倒。1,920×1,080ドット時に約1.5倍、仮想フルスクリーンによる3,840×2,160ドット時には2.1倍もの差をつけている。

【グラフ9】ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
【グラフ10】MHFベンチマーク【大討伐】
【グラフ11】PSO2キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0

 最後に、各ベンチマークテスト実行時の最大消費電力を比較した。消費電力の測定は、サンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」で行なった。

 アイドル時の消費電力については、GTX 980が55Wを記録。これはR9 290Xより6W低い結果である。一方、ベンチマークテスト実行中の消費電力については、GTX 980がR9 290Xより78~120Wも低い電力を記録。R9 290Xが全てのテストで300Wを超えているのに対し、GTX 980は全てのテストで消費電力が200W台に留まった。

【グラフ12】システム全体の消費電力

実性能でR9 290Xを上回り、電力性能比では圧倒

 以上の通り、Maxwellアーキテクチャ採用の新ハイエンドGPU、GTX 980のパフォーマンスを競合製品となるR9 290Xと比較した。今回実施したベンチマークテストでは、終始R9 290Xより優位な結果を記録し、それを100W近く低い消費電力で実現しているのだから驚きだ。

 今回はR9 290Xとの比較しか行なえていないが、GTX 980が競合製品に対して実性能と電力性能比の両面で優位性を持っていることが確認できた。Keplerアーキテクチャを採用するGeForce GTX 700シリーズとの比較については、次回のレビューで確認する。

(三門 修太)