イベントレポート
【AMDブース編】モバイル向けRadeon R9/R7/R5 M200とMantle対応Catalyst 14.1
~VESAが策定したDockPortの意外な正体とは
(2014/1/10 09:21)
米AMDは、1月14日(現地時間)に発表する予定のメインストリーム向けAPU「Kaveri」を中心としたソリューションを同社ブースに展示しているが、それと同時にいくつかの次世代ソリューションを紹介している。その中にはノートPC向けの最新GPU、Catalystと呼ばれるAMDのGPU向けのデバイスドライバの最新版、またVESAで標準規格と認証されたDockPortなどのソリューションを紹介していた。
本レポートでは、そうしたAMD関連の話題で、これまでの記事では伝え切れていなかった話題をお伝えしてきたい。
従来製品をリネームしたRadeon R9/R7/R5 M200シリーズを発表
今回AMDが発表したRadeon R9/R7/R5 M200シリーズは、2014年型のノートPC向けGPUとなる。以前はMobility RadeonとしてリリースされていたノートPC向けのGPUで、デスクトップPC向けがRadeon Rシリーズにブランド名が変更されたことに合わせて、ノートPC向けもRadeon R9/7/5 M200シリーズと、ブランド名が同じスキームに変更された。
しかし、この新しい製品に利用されているダイは、Radeon HD 8000Mシリーズのダイを転用したもので、基本的にはRadeon HD 8000Mシリーズと機能や性能は同じ。ダイは上位製品となるRadeon R9 M290XがPitcairn、下位製品となるRadeon R7 M265/R5 M230がOlandsがベースになっている。
このため、性能もほぼRadeon HD 8000Mシリーズに近いモノになっており、最上位SKUとなるRadeon R9 M290Xは、昨年(2013年)の5月に発表されたRadeon HD 8970Mとほぼ同等のスペック。True Audioなどには対応しない。ただし、GCN世代であることには変わらないので、Direct3D 11.2、OpenGL4.2、Mantleなど最新APIには対応する。なお、別途新アーキテクチャに基づいたGPUも計画されており、第2四半期頃に投入する予定であると説明している。
ブランド | Radeon R9 M200 | Radeon R7 M200 | Radeon R5 M200シリーズ |
---|---|---|---|
SKU | Radeon R9 M290X | Radeon R7 M265 | Radeon R5 M230 |
ダイ | Pitcairn | Olands | Olands |
エンジンクロック | 850MHz(Turbo時900MHz) | 最大825MHz | 最大1GHz |
アーキテクチャ | GCN | GCN | GCN |
コンピュートユニット | 20 | 最大6 | 最大5 |
ストリームプロセッサ | 1,280 | 最大384 | 最大320 |
メモリスピード | 4,800MHz | 最大3,200MHz | 最大1,600MHz |
メモリ | 256bit 4GB GDDR5 | 128bit 2GB DDR3 | 64bit 2GB DDR3 |
今回の発表は新製品の発表というよりは、そのリネームされたモバイルGPUが搭載されたノートPCのお披露目という側面が強く、MSIの「GX70」、Dellの「ALIENWARE M17」、CLEVOの「P150SM」などが展示されていた。また、Radeon R7 M265はLenovoのゲーミングPCである「G-410」/「G-510」に、Radeon R5 M230は「G-450」/「G-510」に加えて「IdeaPad S410」に搭載されることが明らかにされた。
Mantle、True Audioのサポートが追加された新ドライバが間もなくリリース
AMDのデバイスドライバソフトウェアスイートのCatalystは、AMDのAPUおよびGPUのグラフィックスドライバになっており、1カ月に1度ほどバージョンアップが行なわれている。ちなみに、バージョンは「13.12」や「13.1」のように2桁の整数+1桁ないしは2桁の小数点という数字で示される。前の2桁の数字が年を示しており、後ろの小数点以下が月を示している。つまり13.1なら2013年1月にリリースされたドライバ、13.12なら2013年12月にリリースされたドライバであることを示す。
グラフィックスのデバイスドライバとは言えコードで書かれている以上、完璧なモノというのはいつまでも完成することはなく、常にバージョンアップされており、バグや性能が改善されることがある。AMDによれば、一昨年(2012年)の末にリリースされたドライバ(12.12)と昨年の末にリリースされたドライバ(13.12)を比較した場合、PCゲームによっては最大35%にもおよぶ性能向上、平均すると10%程度の性能向上が実現されたのだという。
この1年で改善された機能は多数あるそうだが、ハイライトになったのはCrossFire構成時に多数のフレームがドロップするという問題を改善したFrame Pacing、内蔵GPUと単体GPUの両方があるときにアプリケーションがどちらを使うのかを切り替えるEnduro Technologyの新機能、オーバークロック時にGPUの温度のターゲットを設定する機能、Windows 8.1の機能の追加などが大きなトピックになった。
2014年向けのドライバの開発は進んでおり、現在14.1(つまり2014年1月版)のドライバの準備が進んでいるという。すでにβ版の開発が進んでおり、そこには今後登場するMantle版「Battlefield 4」で性能向上させる為の機能改善、前出のFrame Pacingの拡張により非対称なGPU(例えば内蔵GPUと単体GPU)がある場合や4K出力時の性能向上、ハードウェアに搭載されていたがドライバのサポートは済んでいなかったTrueAudioのサポートなどが追加される。また、Linuxの新ディストリビューションにも対応する予定で、Ubuntu 13.10、openSUSE13.1、RHEL 6.5をサポートする。
VESAが策定したDockPortの正体はかつてLightning Boltと呼ばれていたあの規格
また、別記事でも紹介しているように、ビデオ関連の標準化団体であるVESAはDisplayPort経由でUSBなどのインターフェイスの利用可能にする拡張仕様「DockPort」を策定した。実はこのDockPortの策定にAMDが密接に関係しており、AMDがVESAに対して規格の提案などを行ない、それが標準仕様として策定されたのだという。
実はこのDockPort、AMDが2012年にLightning Boltとして提案していた規格がVESAの標準仕様として採用されたものであることがAMDへの取材でわかった。AMDはこのLightning Boltを2012年にシアトルで開催したAFDSにおいて提案していた(別記事参照)が、その後特に具体的な動きが無かったのだが、ここに来て華麗なリリースを遂げたわけだ。
DockPortは、現状のDisplayPortコントローラとほぼ同コストでDockPort搭載にするだけで対応できるし、ケーブルもDisplayPortのケーブルをそのまま利用できるので、ディスプレイとUSBの両方をPCから周辺機器に出力できる。既存のUSB機器がそのまま利用できるのが大きなメリットと言える。
AMDはこのDockPortを、2014年の低消費電力プロセッサとなるMullinsのリファレンスデザインとなる「Project Discovery」に搭載しているほか、同時に展示されている超小型デスクトップPCや、ゲーミングタブレット用のドッキングベースの接続インターフェイスにこのDockPortを利用しているのだという。正直、AMDだけの独自規格となるLightning Boltでは普及は難しいと思ったが、VESAで標準化されたとなれば採用メーカーが増える。そうした意味で、今後のWindows PCではこのDockPortが搭載されていく可能性は十二分にあると言え、今後の動向には注目したいところだ。