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輝度ムラ補正、USB Type-C入力、KVMまで付いたデザイナー向け4Kモニターが10万円切り!BenQ「PD2705U」

画質も使い勝手もコストも大事なリアルクリエイターに贈る現実解の4Kモニター

BenQのAQCOLORシリーズの最新モデル「PD2705U」。4K解像度、sRGB/Rec.709カバー率99%、HDR10対応といった基本仕様をベースに高画質を実現。さらに、上位のPD2725Uの優れた設計を継承、一部機能を強化した意欲的なクリエイター向け製品だ

 PCのスペックは割と「大は小を兼ねる」ことが多いが、液晶モニターではそれが通用しないことが多い。例えばゲーム向けとクリエイティブワーク向けでは要求されるスペックに違いがありすぎ、そのすべてをカバーできるモニターは(筆者の知る限り)ない。

 ゲームならリフレッシュレートや応答速度、暗部強調といった機能が有用だが、クリエイティブ系ワーク向きなら表示できる色域や色の正確さ、色ムラのなさなどが重要になる。

 今回紹介するBenQ「PD2705U」は、27型の4K IPSパネルを採用したデザイナー向けブランド“AQCOLOR”シリーズの最新モデルだ。

 BenQのデザイナー向け4K液晶というとロングセラーのスタンダードモデル「PD2700U」や、昨年レビューした高機能モデル「PD2725U」が存在しており、PD2705Uは前者の後継モデル。しかし、PD2725Uのエッセンスを可能な限り取り込んで大きな進化を遂げている。それでいてコスト面も意識しており、実売で3万円程度安い(PD2725Uは実売12万円台、PD2705Uは実売8〜9万円前後)。

装飾を省いたデザインは、作業者の思考を邪魔しない優れたもの
クリエイター向けモニターでは光りモノやSF風のデザインは好まれない。その点PD2705Uは装飾を省いてスッキリとまとまっている。ケーブルのコネクタはカバーで隠す
映像入力の数はPD2700Uと同じく3ポートだが、PD2700UがHDMI/DisplayPort/Mini DisplayPortという構成だったのに対して、PD2705UではHDMI/DisplayPort/USB Type-C。ノートPCの映像入力と給電をケーブル1本で実現できるType-C対応は非常に大きい
OSDの操作ボタンは右側背面。使い勝手は悪くないのだが、後述のHotkey Puck G2はさらに使い勝手がよい
BenQの液晶モニターと言えばカラーモードや輝度、映像ソースなどをサッと選べる専用コントローラが特徴。PD2705Uにも上位モデルと同じ「Hotkey Puck G2」が同梱されている。前身のPD2700Uには同梱されなかっただけに、ここも大きな進化と言えよう
PD2705Uのに付属するケーブル類(電源ケーブル除く)。Type-Cを含めて各入力に対応したケーブルが用意されているので、あとから買い足す必要がない

PD2725U、PD2700Uとはどこが違うのか?

 まずPD2725U、PD2700UとPD2705Uの違いを明らかにしておきたい。

(1) HDR対応と輝度 ~輝度ムラ補正がこの価格で手に入る!

 PD2725UはHDR10のほかDisplayHDR 400にも対応しており、最大輝度も400cd/平方mとなっていたが、PD2705UはPD2700Uと同じHDR10のみの対応、最大輝度も同じ350cd/平方mとなる。PD2725Uの売りでもあった「輝度ムラ補正」機能はPD2705Uにも標準搭載。同機能を搭載していないPD2700Uとの決定的な違いの1つだ。

 液晶モニターを選別するにあたり色域や色差(ΔE)が重視されることが多いが、作品の質に影響するという面では輝度ムラも疎かにできない。映像制作において必須とも言える輝度ムラのない映像が、実売10万円を切るモデルで得られるという点はすばらしい。

デザイナー向け液晶モニターと謳うだけあって、輝度や色のムラ、液晶特有のジラジラとした感じのない“フラットな”映像が得られる。PD2725Uよりも若干下側のベゼルが太くなっているが、些細な変更だ
輝度ムラは写真では分かりにくいため、Photoshopでトーンカーブを調整してムラが目立つように調整してみた。輝度ムラ補正を切った状態(写真左)では画面の周辺部が暗くなりやすいが、ムラ補正を有効にすると(デフォルトでオン)確かにムラが減っている(写真右)。目視では補正をしなくともムラ補正の効き目を確認することができた。実際のクリエイティブワークにおいても、ユニフォーミティの高い映像が得られる。輝度ムラ補正がついて安価、というのがPD2705Uの一番のポイントだ
ムラ補正の有効/無効はOSDから設定できる

(2) 色域とカラーモード ~MacBook用の「M-Book」モードの搭載

 PD2725UとPD2705Uに共通するカラーモードは「デザイン/CAD/CAM/暗室/DICOM/HDR/ブルーライト軽減/M-Book/Rec.709/sRGB/ユーザー」の11種類。PD2725Uでお目見えしたMac向けの「M-Book」モードは健在だ。

 その一方でPD2705UではDisplay P3とDCI-P3には対応していない。sRGBおよびRec.709のカバー率は99%と高い(PD2725Uは100%)ため、sRGBやRec.709をターゲットにして作品を制作しているなら十分と言える。この点がPD2725UかPD2705Uかを選ぶ際の最も大きなポイントとなるだろう。

カラーモードは上位モデルであるPD2725Uよりは少なくなったが、クリエイティブワーク向けのモードが揃っている
Macユーザー、特にノート型Macの外部モニターとして使いたい時に威力を発揮するのが「M-Book」モード。Macの液晶ディスプレイに近い発色になるよう調整されているので(上)、sRGB(下)等で使うよりも“違和感が小さい”。発色が全く同じになるわけではないが、調整なしでここまで色味を揃えられるのはありがたい
画面の左右で異なるカラーモードを比較しながら作業できるデュアルビュー。店頭デモ用機能のように思えるが、CGでモデリングする側をコントラスト強めのCAD/CAMモード、プレビュー側をM-Bookにする等の使い方が考えられる
暗いスタジオの中等で作業する際に、撮影した画像を確認する時に有用なのが「暗室」モード。微妙な階調の違いがsRGB等よりも格段に見やすくなる

(3) インターフェイス ~専用コントローラやType-C対応が作業効率を高める

 映像出力の構成も若干変更された。PD2725UはHDMI×2+DisplayPort+Thunderbolt 3という構成だったが、PD2705UではHDMI+DisplayPort+USB Type-C(DisplayPort Alt Mode)というシンプルな構成に変更された。

 Thunderbolt 3からUSB Type-Cに変わったことで、PD2705Uからデイジーチェーンで別のモニターに接続することはできなくなったが、USB Type-Cケーブル1本で映像出力と同時にノートPCへの給電ができるという根本的な使い勝手に関しては何も変わっていない。

 USB Power Deliveryも最大65W(PD2725Uと同じ)あるため、薄型ノート程度であればACアダプタレスで運用できるようになる。この場合ノートPC側のUSB Type-CがPower Delivery対応であることが必須であることは言うまでもない。

PD2705UのUSB Type-CはPower Delivery対応で最大65Wの給電が可能。USB Type-Cを添えた14型までのMacBookシリーズなら問題なくケーブル1本で動かすことができる。もちろんカラーモードはM-Bookモードで決まりだ
PD2705Uから同梱のUSB Type-CケーブルでM2搭載のMacBook Airに接続した時の情報を見ると、確かに65W給電であることが示されていた(赤線部分)

(4) スタンド ~フラットな台座は意外と効く

 PD2705Uのスタンドは、PD2700Uとは異なり、PD2725Uに近いのだが、微妙に仕様は異なる。上下角(チルト)や左右の首振り(スイベル)、さらに上下位置調整や90度回転(ピボット)にも対応する“全部入り”スタンドだが、上下位置の調整範囲がPD2725Uの150mmから110mmに若干狭められた。液晶位置を一番高くして使いたいという人以外にはあまり関係ない変更と言える。

 個人的にこのシリーズで高く評価しているのはスタンド基部だ。PD2705Uでもフラットな1枚板状になっているため、小物を載せたり、キーボードの一時退避場所としたりして、卓上のスペースを有効活用することができる。ちなみにPD2705Uの方がスタンド基部の奥行きが16mm程短くなっている。

PD2705Uのスタンドはチルト(-5〜20度)やスイベル(左右15度)のほか、上下位置調整にも対応。上下の調整範囲は110mmに若干狭められた

下位モデルながら使い勝手も改善

 PD2705Uで新たに追加された要素もある。

(1)モニター側面に便利なポート類を装備

 モニター右側面のヘッドフォン&USBポートは、PD2700UにもPD2725Uにもなかった機能だ。ヘッドフォン端子がアクセスしにくい背面にあったPD2725Uとは対照的に、PD2705Uではモニター右側面に出たことで使い勝手が格段に向上。このUSB Type-AおよびType-Cポートは、USBメモリのみならず、クリエイティブ系アプリにつきもののドングルをサッと挿したい時にも有効だ。

 このUSBポートの速度はデフォルトでUSB 2.0(480Mbps)だが、OSDでUSB 3.0に変更することもできる。ただUSB 3.0にした場合、4K表示時のリフレッシュレートが30Hzに落ちてしまう(帯域の問題)。ストレージよりも入力デバイスやオーディオ、ドングルといった速度が重視されないUSBデバイス向けだ。

右側面にUSBポートやヘッドフォン端子を設けたことで、PD2725Uよりも使い勝手が向上している。“抜き差し”が頻発する現場を経験した方なら、その意義はすぐに分かるはず
側面のUSBポートの速度はデフォルトがUSB 2.0だが、USB 3.0仕様にすることもできる。ただし4K表示時のリフレッシュレートが30Hzになるので、USB 2.0のままで使うメリットの方が大きい

(2) カラー認証プログラムの拡大

 今時のクリエイター向け液晶モニターは工場出荷時の個別キャリブレーション済みなのはベースライン。CalMANやPantoneといった外部機関によるカラー認証も取得しているのが普通だ。

 PD2705UもCalMAN認証やPantoneカラー認証を取得しているが、PD2725Uの時にはなかった「Pantone SkinTone Validated」認証も取得した。これはPantone SkinToneガイドで定義された“肌色”を忠実に表現できるモニターであることを示している。

 BenQはこのPANTONE SkinTone Validatedプログラムと提携した初期の1社であり、PD2705Uにこの認証が追加されたのも当然の流れと言える。被写体に人物が多いという人はぜひ試していただきたいものだ。

 また、色とは関係はないがPD2705Uではブルーライト軽減やフリッカーフリー機能について、テュフ・ラインランド(TUV)社の認証も取得している。PD2725Uでは単に記載がなかっただけの可能性もあるが、長時間眼を酷使しやすいクリエイターにとっては“より安心して使える”機能の証明が付いたといったところだろう。

PD2705Uの認証一覧。CalMANやPantoneはPD2725Uと共通だが、PD2705UではPantone Skintone Validatedが追加。さらにフリッカーフリーやブルーライト軽減機能についてもTUV社による認証を取得している

(3) KVMは最大3系統入力から切り替え可能に

 液晶モニター側のUSBポートに接続されたUSBデバイスを入力ソース切り替えと同時に切り替える「KVM」機能もPD2725Uから継承されている。

 だがPD2725UのKVMはUSB Type-C(Thunderbolt 3)とその他入力で切り替えるため、少なくとも1台のPCはUSB Type-Cがないと上手く運用できない(Type-A→Type-Cケーブルで接続すれば良いだけだが……)。

 しかしPD2705UではアップストリームのType-Bを2系統+USB Type-Cの3ポートからKVMを構成できる。USB Type-Cに接続したPCがある場合は、KVMの切り替え先に必ずUSB Type-Cが入る(Type-B×2だけでKVMを構成できない)という制約があるものの、これは地味ながら使い勝手向上と言えるだろう。Type-Bのみで構成する場合、1系統はHDMIに、もう片方はDisplayPortと連動する。

PD2705Uのマニュアルより抜粋。PD2705UのType-BポートはUSB1側がDisplayPortに、USB2側がHDMIと連動するようになっている
USB Type-C接続のPCがある場合のKVMはUSB Type-CとHDMIもしくはDisplayPortの一方で切り替える(上)。USB Type-C接続のPCがない場合はその限りではない(下)
2台のPCでキーボードとマウスを共有しつつ、入力ソースも切り替えたいという使い方をするにはKVM機能が必須。PD2705UではType-Bのアップストリームが2系統になったため、デスクトップPC×2の環境でも運用しやすい
1セットのキーボードマウスを本機のKVM機能を用いてWindowsノートとMacBookで共有してみた

一段上の作業環境を構築できる

 ノートPCのディスプレイはどんどん品質が良くなってきているが、どうしても狭さが作業を滞らせやすい。コンテンツ全体をざっくり見る程度なら小さいモニターでもよいが、広い範囲で細かいディテールを見ようとすると、やはり27型4Kくらいの大きさがないと辛い(老眼的にも)。

 今回筆者は主にMacBook AirとPD2705Uを組み合わせて使用したが、特に違和感なくLightroom ClassicやPremiere Pro等で作業することができた。DCI-P3やDisplay P3といった今時のデバイス向けカラーモードはないが、sRGBやRec.709のコンテンツをメインに手がけているクリエイターは多いはず。

 それならば、sRGB/Rec.709を高画質で表示できて、多機能でありつつもコストを抑えることができる本機は、モニター選びの現実解となり得るのではなかろうか。

より大きな31.5型パネルを用いた姉妹モデル「PD3205U」も発売中だ。こちらは実売10万円前後で流通している