レビュー
GeForce RTX 4070 SUPERはどのぐらい性能アップ?一通り検証してみた
2024年1月16日 23:00
NVIDIAが1月9日に発表した新型GPU「GeForce RTX 40 SUPER」シリーズの第1弾製品として、「GeForce RTX 4070 SUPER」が1月17日に発売される。
国内販売価格が8万6,000円からと想定されている新型GPUのパフォーマンスをベンチマークテストでチェックしてみよう。
599ドルのミドルレンジGPU「GeForce RTX 4070 SUPER」
GeForce RTX 40 SUPERシリーズ第1弾として登場するGeForce RTX 4070 SUPERは、Ada Lovelaceアーキテクチャに基づいてTSMCの4Nプロセスで製造されたGPUコア「AD104」を採用するミドルレンジGPU。アーキテクチャや製造プロセスは従来のGeForce RTX 40シリーズから変更されていない。
GeForce RTX 4070 SUPERのAD104コアでは、56基のSMが有効化されており、7,168基のCUDAコアや56基のRTコア、224基のTensorコアなどが利用できる。VRAMには21Gbps動作のGDDR6Xメモリを12GB搭載しており、GPUと192bitのメモリインターフェイスで接続することによって約504GB/sのメモリ帯域幅を実現している。バスインターフェイスはPCIe 4.0 x16で、TGPは220W。
GPU | GeForce RTX 4070 SUPER | GeForce RTX 4070 | GeForce RTX 4070 Ti |
---|---|---|---|
アーキテクチャ | Ada Lovelace (AD104) | Ada Lovelace (AD104) | Ada Lovelace (AD104) |
製造プロセス | TSMC 4N | TSMC 4N | TSMC 4N |
SM | 56基 | 46基 | 60基 |
CUDAコア | 7,168基 | 5,888基 | 7,680基 |
RTコア | 56基 (第3世代) | 46基 (第3世代) | 60基 (第3世代) |
Tensorコア | 224基 (第4世代) | 184基 (第4世代) | 240基 (第4世代) |
テクスチャユニット | 224基 | 184基 | 240基 |
ROPユニット | 80基 | 64基 | 80基 |
ベースクロック | 1,980MHz | 1,920MHz | 2,310MHz |
ブーストクロック | 2,475MHz | 2,475MHz | 2,610MHz |
L2キャッシュ | 48MB | 36MB | 48MB |
メモリ容量 | 12GB (GDDR6X) | 12GB (GDDR6X) | 12GB (GDDR6X) |
メモリスピード | 21Gbps | 21Gbps | 21Gbps |
メモリインターフェイス | 192bit | 192bit | 192bit |
メモリ帯域幅 | 504GB/s | 504GB/s | 504GB/s |
NVENC | 第8世代×1基 | 第8世代×1基 | 第8世代×2基 |
PCI Express | PCIe 4.0 x16 | PCIe 4.0 x16 | PCIe 4.0 x16 |
消費電力 (TGP) | 220W | 200W | 285W |
GeForce RTX 4070 SUPER Founders Edition
今回テストするのは、NVIDIAより借用したGeForce RTX 4070 SUPERのFounders Editionだ。
表裏にファンを配置するカード設計はGeForce RTX 4070 Founders Editionとよく似ているが、カラーリングが変更されており、ヒートシンクからバックプレートまで黒で統一されている。補助電源コネクタは16ピンで、映像出力端子はHDMI(1基)とDisplayPort(3基)。
テスト環境と比較用GPU
GeForce RTX 4070 SUPER Founders Editionを検証するにあたり、比較対象として従来モデルからGeForce RTX 4070のFounders Editionと、GeForce RTX 4070 Tiを搭載する「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti AMP Extreme AIRO」用意した。
各ビデオカードのテスト時動作仕様は以下の通り。GPUドライバについては、GeForce RTX 4070 SUPER Founders Editionにレビュアー向けドライバ「546.52」、比較用GPU2製品には「546.33」を導入している。
GPU | GeForce RTX 4070 SUPER | GeForce RTX 4070 | GeForce RTX 4070 Ti |
---|---|---|---|
ビデオカードベンダー | NVIDIA | NVIDIA | ZOTAC |
製品型番 | Founders Edition | Founders Edition | ZT-D40710B-10P |
ベースクロック | 1,980MHz | 1,920MHz | 2,310MHz |
ブーストクロック | 2,475MHz | 2,475MHz | 2,700MHz |
メモリ容量 | 12GB (GDDR6X) | 12GB (GDDR6X) | 12GB (GDDR6X) |
メモリスピード | 21Gbps | 21Gbps | 21Gbps |
メモリインターフェイス | 192bit | 192bit | 192bit |
メモリ帯域幅 | 504GB/s | 504GB/s | 504GB/s |
PCI Express | PCIe 4.0 x16 | PCIe 4.0 x16 | PCIe 4.0 x16 |
Power Limit | 220W | 200W | 285W |
温度リミット | 83℃ | 83℃ | 84℃ |
Resizable BAR | 有効 | 有効 | 有効 |
GPUドライバ | GRD 546.52 (31.0.15.4652) | GRD 546.33 (31.0.15.4633) | GRD 546.33 (31.0.15.4633) |
各ビデオカードを搭載するベース機材には、Ryzen 7 7800X3Dを搭載したAMD X670E環境を用意した。
そのほかの機材や条件については以下の通り。
【表3】テスト機材 | |
---|---|
CPU | Ryzen 7 7800X3D (8コア/16スレッド) |
CPUリミット設定 | PPT=162W、TDC=120A、EDC=180A、TjMax=89℃ |
CPUクーラー | ASUS TUF GAMING LC 240 ARGB (ファンスピード=100%) |
マザーボード | ASUS TUF GAMING X670E-PLUS [UEFI=2214] |
メモリ | DDR5-5200 16GB×2 (2ch、42-42-42-84、1.1V) |
システム用SSD | CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4) |
アプリケーション用SSD | CFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/USB 10Gbps) |
電源 | 玄人志向 KRPW-PA1200W/92+ (1200W/80PLUS Platinum) |
OS | Windows 11 Pro 23H2 (build 22631.3007、VBS有効) |
電源プラン | バランス |
計測 | ラトックシステム RS-BTWATTCH2 |
室温 | 約25℃ |
ベンチマーク結果
今回実施したベンチマークテストは、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「エーペックスレジェンズ」、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」、「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」、「サイバーパンク2077」、「Blender Benchmark」、「Cinebench 2024」、「Adobe Camera Raw」。
3DMark
3DMarkでは、リアルタイムレイトレーシングを含む新世代テストの「Speed Way」、「Port Royal」、「Solar Bay」と、旧世代のテストである「Time Spy」、「Fire Strike」を実行した。
GeForce RTX 4070 SUPERは、3つの新世代テストにおいてGeForce RTX 4070のスコアを17~19%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを8~12%下回った。
一方、旧世代のテストでは、GeForce RTX 4070を9~13%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを6~9%下回っている。
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは、グラフィックプリセットを「最高品質」に設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)でテストを実行。スコアと平均フレームレートを比較した。
GeForce RTX 4070 SUPERは、GeForce RTX 4070のスコアを6~14%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを3~9%下回った。平均フレームレートついてもスコアと同じくらいの差がついている。
エーペックスレジェンズ
エーペックスレジェンズでは、描画品質をできる限り高く設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)で平均フレームレートを計測した。上限フレームレートは300fps。
GeForce RTX 4070 SUPERは、GeForce RTX 4070を3~15%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを1~6%下回った。なお、WQHD以下では上限フレームレートに達することがあるため、平均フレームレートの差がやや小さくなる傾向がみられる。
STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール
STREET FIGHTER 6 ベンチマークツールでは、グラフィックプリセットを最高の「HIGHEST」設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)でテストを実行。各シーンの平均フレームレートを比較した。上限フレームレートは「FIGHTING GROUND」が60fps、「BATTLE HUB/WORLD TOUR」が120fps。
メインコンテンツであるFIGHTING GROUNDについては、全てのGPUが全ての画面解像度で上限の60fpsに達しており、同等のパフォーマンスを発揮している。
BATTLE HUBとWORLD TOURに関しても、WQHD以下では上限の120fpsに達して横並びの結果となっているが、4KではGeForce RTX 4070 SUPERがGeForce RTX 4070を12~13%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを5~8%下回った。
ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON
ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONでは、グラフィックプリセットを「最高」に設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)で平均フレームレートを計測した。上限フレームレートは120fps。
フルHDとWQHDでは、各GPUが上限の120fpsをほぼ維持しており横並びの結果となっている。GeForce RTX 4070 SUPERが平均87.6fpsを記録した4Kでは、GeForce RTX 4070を約16%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを約7%下回った。
サイバーパンク2077
サイバーパンク2077では、グラフィックプリセット「レイトレーシング:ウルトラ」に設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)で平均フレームレートを計測した。テスト時はDLSS 3による超解像とフレーム生成を有効化しており、超解像の設定はフルHDとWQHDが「クオリティ」、4Kは「パフォーマンス」。
GeForce RTX 4070 SUPERは、GeForce RTX 4070を13~18%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを11~12%下回った。
Blender Benchmark
Blender Benchmarkでは、3つのシーン(monster、junkshop、classroom)をGPUレンダリングした際のレンダリング速度を比較した。
GeForce RTX 4070 SUPERのレンダリング速度は、GeForce RTX 4070を16~19%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを2~5%下回った。
Cinebench 2024
Cinebench 2024では、最低実行時間10分でGPUレンダリングを実行したさいのスコアを比較した。
GeForce RTX 4070 SUPERが記録したスコアは「19,359」で、GeForce RTX 4070を約10%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを約4%下回った。
Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」
Adobe Camera Rawでは、2,400万画素のRAWファイル×20枚に対して「AIノイズ除去(適用量=50)」を実行。1分あたりの処理枚数(Frame per minute)を比較した。
GeForce RTX 4070 SUPERは分速10.68枚の処理速度を記録。GeForce RTX 4070を約14%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを約4%下回った。
システム消費電力とワットパフォーマンス
ラトックシステムのワットチェッカー「RS-BTWATTCH2」を使用して、アイドル時の最小消費電力と、各ベンチマーク実行中の平均消費電力と最大消費電力を計測した。
GeForce RTX 4070 SUPERのアイドル時消費電力は71.7Wで、これは全体ベストのGeForce RTX 4070の71.3Wとほぼ同等と言える低い数値だ。なお、GeForce RTX 4070 Tiについては90.7Wと明らかに高い数値となっているが、これはビデオカードがオーバークロック仕様かつLEDイルミネーション機能搭載であることなどが影響しているものと考えられる。
ベンチマーク実行中の平均消費電力は、GeForce RTX 4070 SUPERが239.1~331.9Wで、最小を記録したGeForce RTX 4070の224.8~303.1Wと、最大を記録したGeForce RTX 4070 Tiの256.6~398.9Wの中間に位置している。
ベンチマークスコアと平均消費電力から、各システムのワットパフォーマンスを算出して比較グラフを作成。さらに、GeForce RTX 4070のワットパフォーマンスを基準に指数化したグラフも用意した。なお、ワットパフォーマンスの比較はグラフを見やすくする目的で、3DMark「Solar Bay」の数値は10分の1、Adobe Camera Rawの数値は1,000倍にしている。
GeForce RTX 4070 SUPERのワットパフォーマンスは、GeForce RTX 4070比で103~109%となっており、同じFounders EditionのGeForce RTX 4070や、オーバークロック仕様のGeForce RTX 4070 Tiをやや上回った。
システム消費電力ベースでワットパフォーマンスを比較する場合、ビデオカードの設計や個体差などのほか、システム消費電力に占めるGPU消費電力の割合なども影響する点を考慮する必要はあるが、少なくとも従来のGeForce RTX 40シリーズより電力効率が悪くなっていることはなさそうな結果ではある。
10万円以下で買える高性能GPU「GeForce RTX 4070 SUPER」
GeForce RTX 4070 SUPERの性能は、GPUコアのスペック通り、GeForce RTX 4070よりもGeForce RTX 4070 Tiに近いものとなっていた。
国内想定売価の8万6,000円はあくまで最低価格であると思われるが、これは1月16日時点でのGeForce RTX 4070搭載ビデオカードの最安値に近い価格だ。GeForce RTX 4070 SUPER自体のコストパフォーマンスはもちろんのこと、その発売によって既存のミドルレンジGPUの価格を引き下げることも期待したい。
1月16日(火)23時より、GeForce RTX 4070 SUPERをライブ配信で解説します。スペック、特長から従来モデルとのベンチマーク対決、実動デモなど盛りだくさんの内容でお届け!解説はKTU・加藤勝明氏、MCは改造バカ・高橋敏也氏です。(ライブ終了後は即アーカイブを視聴いただけます)