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GeForce RTX 4070 SUPERはどのぐらい性能アップ?一通り検証してみた

 NVIDIAが1月9日に発表した新型GPU「GeForce RTX 40 SUPER」シリーズの第1弾製品として、「GeForce RTX 4070 SUPER」が1月17日に発売される。

 国内販売価格が8万6,000円からと想定されている新型GPUのパフォーマンスをベンチマークテストでチェックしてみよう。

599ドルのミドルレンジGPU「GeForce RTX 4070 SUPER」

 GeForce RTX 40 SUPERシリーズ第1弾として登場するGeForce RTX 4070 SUPERは、Ada Lovelaceアーキテクチャに基づいてTSMCの4Nプロセスで製造されたGPUコア「AD104」を採用するミドルレンジGPU。アーキテクチャや製造プロセスは従来のGeForce RTX 40シリーズから変更されていない。

 GeForce RTX 4070 SUPERのAD104コアでは、56基のSMが有効化されており、7,168基のCUDAコアや56基のRTコア、224基のTensorコアなどが利用できる。VRAMには21Gbps動作のGDDR6Xメモリを12GB搭載しており、GPUと192bitのメモリインターフェイスで接続することによって約504GB/sのメモリ帯域幅を実現している。バスインターフェイスはPCIe 4.0 x16で、TGPは220W。

【表1】GeForce RTX 4070 Superの主な仕様
GPUGeForce RTX 4070 SUPERGeForce RTX 4070GeForce RTX 4070 Ti
アーキテクチャAda Lovelace (AD104)Ada Lovelace (AD104)Ada Lovelace (AD104)
製造プロセスTSMC 4NTSMC 4NTSMC 4N
SM56基46基60基
CUDAコア7,168基5,888基7,680基
RTコア56基 (第3世代)46基 (第3世代)60基 (第3世代)
Tensorコア224基 (第4世代)184基 (第4世代)240基 (第4世代)
テクスチャユニット224基184基240基
ROPユニット80基64基80基
ベースクロック1,980MHz1,920MHz2,310MHz
ブーストクロック2,475MHz2,475MHz2,610MHz
L2キャッシュ48MB36MB48MB
メモリ容量12GB (GDDR6X)12GB (GDDR6X)12GB (GDDR6X)
メモリスピード21Gbps21Gbps21Gbps
メモリインターフェイス192bit192bit192bit
メモリ帯域幅504GB/s504GB/s504GB/s
NVENC第8世代×1基第8世代×1基第8世代×2基
PCI ExpressPCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x16
消費電力 (TGP)220W200W285W

GeForce RTX 4070 SUPER Founders Edition

 今回テストするのは、NVIDIAより借用したGeForce RTX 4070 SUPERのFounders Editionだ。

 表裏にファンを配置するカード設計はGeForce RTX 4070 Founders Editionとよく似ているが、カラーリングが変更されており、ヒートシンクからバックプレートまで黒で統一されている。補助電源コネクタは16ピンで、映像出力端子はHDMI(1基)とDisplayPort(3基)。

GeForce RTX 4070 SUPER Founders Edition
裏面側にはバックプレートと冷却ファンを搭載
GPUクーラーは2スロットを占有する
映像出力端子にはHDMI(1基)とDisplayPort(3基)を搭載
補助電源コネクタは16ピン
8ピン×2本を16ピンに変換するアダプタが付属する
GeForce RTX 4070 Founders Edition(左)との比較。カラーリングが変更されている
GeForce RTX 4070 SUPER Founders EditionのGPU-Z実行画面

テスト環境と比較用GPU

 GeForce RTX 4070 SUPER Founders Editionを検証するにあたり、比較対象として従来モデルからGeForce RTX 4070のFounders Editionと、GeForce RTX 4070 Tiを搭載する「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti AMP Extreme AIRO」用意した。

 各ビデオカードのテスト時動作仕様は以下の通り。GPUドライバについては、GeForce RTX 4070 SUPER Founders Editionにレビュアー向けドライバ「546.52」、比較用GPU2製品には「546.33」を導入している。

【表2】各ビデオカードの動作仕様
GPUGeForce RTX 4070 SUPERGeForce RTX 4070GeForce RTX 4070 Ti
ビデオカードベンダーNVIDIANVIDIAZOTAC
製品型番Founders EditionFounders EditionZT-D40710B-10P
ベースクロック1,980MHz1,920MHz2,310MHz
ブーストクロック2,475MHz2,475MHz2,700MHz
メモリ容量12GB (GDDR6X)12GB (GDDR6X)12GB (GDDR6X)
メモリスピード21Gbps21Gbps21Gbps
メモリインターフェイス192bit192bit192bit
メモリ帯域幅504GB/s504GB/s504GB/s
PCI ExpressPCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x16
Power Limit220W200W285W
温度リミット83℃83℃84℃
Resizable BAR有効有効有効
GPUドライバGRD 546.52 (31.0.15.4652)GRD 546.33 (31.0.15.4633)GRD 546.33 (31.0.15.4633)
GeForce RTX 4070 Founders Edition
GeForce RTX 4070 Founders EditionのGPU-Z実行画面
GeForce RTX 4070 Ti搭載ビデオカード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti AMP Extreme AIRO」
ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti AMP Extreme AIROのGPU-Z実行画面

 各ビデオカードを搭載するベース機材には、Ryzen 7 7800X3Dを搭載したAMD X670E環境を用意した。

 そのほかの機材や条件については以下の通り。

【表3】テスト機材
CPURyzen 7 7800X3D (8コア/16スレッド)
CPUリミット設定PPT=162W、TDC=120A、EDC=180A、TjMax=89℃
CPUクーラーASUS TUF GAMING LC 240 ARGB (ファンスピード=100%)
マザーボードASUS TUF GAMING X670E-PLUS [UEFI=2214]
メモリDDR5-5200 16GB×2 (2ch、42-42-42-84、1.1V)
システム用SSDCORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
アプリケーション用SSDCFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/USB 10Gbps)
電源玄人志向 KRPW-PA1200W/92+ (1200W/80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro 23H2 (build 22631.3007、VBS有効)
電源プランバランス
計測ラトックシステム RS-BTWATTCH2
室温約25℃

ベンチマーク結果

 今回実施したベンチマークテストは、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「エーペックスレジェンズ」、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」、「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」、「サイバーパンク2077」、「Blender Benchmark」、「Cinebench 2024」、「Adobe Camera Raw」。

3DMark

 3DMarkでは、リアルタイムレイトレーシングを含む新世代テストの「Speed Way」、「Port Royal」、「Solar Bay」と、旧世代のテストである「Time Spy」、「Fire Strike」を実行した。

 GeForce RTX 4070 SUPERは、3つの新世代テストにおいてGeForce RTX 4070のスコアを17~19%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを8~12%下回った。

 一方、旧世代のテストでは、GeForce RTX 4070を9~13%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを6~9%下回っている。

【グラフ01】3DMark「Speed Way」
【グラフ02】3DMark「Port Royal」
【グラフ03】3DMark「Solar Bay」
【グラフ04】3DMark「Time Spy」
【グラフ05】3DMark「Fire Strike」

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは、グラフィックプリセットを「最高品質」に設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)でテストを実行。スコアと平均フレームレートを比較した。

 GeForce RTX 4070 SUPERは、GeForce RTX 4070のスコアを6~14%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを3~9%下回った。平均フレームレートついてもスコアと同じくらいの差がついている。

【グラフ06】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「スコア」
【グラフ07】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「平均フレームレート」

エーペックスレジェンズ

 エーペックスレジェンズでは、描画品質をできる限り高く設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)で平均フレームレートを計測した。上限フレームレートは300fps。

 GeForce RTX 4070 SUPERは、GeForce RTX 4070を3~15%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを1~6%下回った。なお、WQHD以下では上限フレームレートに達することがあるため、平均フレームレートの差がやや小さくなる傾向がみられる。

【グラフ08】エーペックスレジェンズ

STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール

 STREET FIGHTER 6 ベンチマークツールでは、グラフィックプリセットを最高の「HIGHEST」設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)でテストを実行。各シーンの平均フレームレートを比較した。上限フレームレートは「FIGHTING GROUND」が60fps、「BATTLE HUB/WORLD TOUR」が120fps。

 メインコンテンツであるFIGHTING GROUNDについては、全てのGPUが全ての画面解像度で上限の60fpsに達しており、同等のパフォーマンスを発揮している。

 BATTLE HUBとWORLD TOURに関しても、WQHD以下では上限の120fpsに達して横並びの結果となっているが、4KではGeForce RTX 4070 SUPERがGeForce RTX 4070を12~13%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを5~8%下回った。

【グラフ09】STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール「フルHD/1080p」
【グラフ10】STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール「WQHD/1440p」
【グラフ11】STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール「4K/2160p」

ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON

 ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONでは、グラフィックプリセットを「最高」に設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)で平均フレームレートを計測した。上限フレームレートは120fps。

 フルHDとWQHDでは、各GPUが上限の120fpsをほぼ維持しており横並びの結果となっている。GeForce RTX 4070 SUPERが平均87.6fpsを記録した4Kでは、GeForce RTX 4070を約16%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを約7%下回った。

【グラフ12】ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(v50)

サイバーパンク2077

 サイバーパンク2077では、グラフィックプリセット「レイトレーシング:ウルトラ」に設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)で平均フレームレートを計測した。テスト時はDLSS 3による超解像とフレーム生成を有効化しており、超解像の設定はフルHDとWQHDが「クオリティ」、4Kは「パフォーマンス」。

 GeForce RTX 4070 SUPERは、GeForce RTX 4070を13~18%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを11~12%下回った。

【グラフ13】サイバーパンク2077(v2.1)

Blender Benchmark

 Blender Benchmarkでは、3つのシーン(monster、junkshop、classroom)をGPUレンダリングした際のレンダリング速度を比較した。

 GeForce RTX 4070 SUPERのレンダリング速度は、GeForce RTX 4070を16~19%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを2~5%下回った。

【グラフ14】Blender Benchmark

Cinebench 2024

 Cinebench 2024では、最低実行時間10分でGPUレンダリングを実行したさいのスコアを比較した。

 GeForce RTX 4070 SUPERが記録したスコアは「19,359」で、GeForce RTX 4070を約10%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを約4%下回った。

【グラフ15】Cinebench 2024「GPU」

Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」

 Adobe Camera Rawでは、2,400万画素のRAWファイル×20枚に対して「AIノイズ除去(適用量=50)」を実行。1分あたりの処理枚数(Frame per minute)を比較した。

 GeForce RTX 4070 SUPERは分速10.68枚の処理速度を記録。GeForce RTX 4070を約14%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを約4%下回った。

【グラフ16】Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」

システム消費電力とワットパフォーマンス

 ラトックシステムのワットチェッカー「RS-BTWATTCH2」を使用して、アイドル時の最小消費電力と、各ベンチマーク実行中の平均消費電力と最大消費電力を計測した。

 GeForce RTX 4070 SUPERのアイドル時消費電力は71.7Wで、これは全体ベストのGeForce RTX 4070の71.3Wとほぼ同等と言える低い数値だ。なお、GeForce RTX 4070 Tiについては90.7Wと明らかに高い数値となっているが、これはビデオカードがオーバークロック仕様かつLEDイルミネーション機能搭載であることなどが影響しているものと考えられる。

 ベンチマーク実行中の平均消費電力は、GeForce RTX 4070 SUPERが239.1~331.9Wで、最小を記録したGeForce RTX 4070の224.8~303.1Wと、最大を記録したGeForce RTX 4070 Tiの256.6~398.9Wの中間に位置している。

【グラフ17】システム消費電力(平均/最大)

 ベンチマークスコアと平均消費電力から、各システムのワットパフォーマンスを算出して比較グラフを作成。さらに、GeForce RTX 4070のワットパフォーマンスを基準に指数化したグラフも用意した。なお、ワットパフォーマンスの比較はグラフを見やすくする目的で、3DMark「Solar Bay」の数値は10分の1、Adobe Camera Rawの数値は1,000倍にしている。

 GeForce RTX 4070 SUPERのワットパフォーマンスは、GeForce RTX 4070比で103~109%となっており、同じFounders EditionのGeForce RTX 4070や、オーバークロック仕様のGeForce RTX 4070 Tiをやや上回った。

 システム消費電力ベースでワットパフォーマンスを比較する場合、ビデオカードの設計や個体差などのほか、システム消費電力に占めるGPU消費電力の割合なども影響する点を考慮する必要はあるが、少なくとも従来のGeForce RTX 40シリーズより電力効率が悪くなっていることはなさそうな結果ではある。

【グラフ18】システムのワットパフォーマンス
【グラフ19】システムのワットパフォーマンス比較(GeForce RTX 4070比)

10万円以下で買える高性能GPU「GeForce RTX 4070 SUPER」

 GeForce RTX 4070 SUPERの性能は、GPUコアのスペック通り、GeForce RTX 4070よりもGeForce RTX 4070 Tiに近いものとなっていた。

 国内想定売価の8万6,000円はあくまで最低価格であると思われるが、これは1月16日時点でのGeForce RTX 4070搭載ビデオカードの最安値に近い価格だ。GeForce RTX 4070 SUPER自体のコストパフォーマンスはもちろんのこと、その発売によって既存のミドルレンジGPUの価格を引き下げることも期待したい。

RTX 4070 SUPERを動画でも解説!実機動作も見せます

 1月16日(火)23時より、GeForce RTX 4070 SUPERをライブ配信で解説します。スペック、特長から従来モデルとのベンチマーク対決、実動デモなど盛りだくさんの内容でお届け!解説はKTU・加藤勝明氏、MCは改造バカ・高橋敏也氏です。(ライブ終了後は即アーカイブを視聴いただけます)