レビュー
メモリ16GBが魅力の準ハイエンドGPU「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」
2024年1月23日 23:00
1月24日より、NVIDIAの新型GPU「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」が発売される。
GeForce RTX 40 SUPERシリーズの第2弾製品として、国内販売価格が11万5,800円からとされている新型GPUのパフォーマンスを、ベンチマークテストでチェックする。
799ドルの準ハイエンド級GPU「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」
GeForce RTX 4070 Ti SUPERは、Ada Lovelaceアーキテクチャに基づいてTSMCの4Nプロセスで製造されたGPUコア「AD103」を採用する準ハイエンド級のGPU。66基のSMが有効化されており、8,448基のCUDAコアや66基のRTコア、264基のTensorコアなどが利用できる。
VRAMには21Gbps動作のGDDR6Xメモリを16GB搭載しており、GPUと256bitのメモリインターフェイスで接続することによって約672GB/sのメモリ帯域幅を実現している。バスインターフェイスはPCIe 4.0 x16で、TGPは285W。
GeForce RTX 4080と同じAD103コアを採用したことで、VRAMの容量と帯域幅が従来のGeForce RTX 4070 Tiより強化されたことが特徴だ。
【表1】GeForce RTX 4070 Ti SUPERの主な仕様 | |||
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GPU | GeForce RTX 4070 SUPER | GeForce RTX 4070 Ti | GeForce RTX 4080 |
アーキテクチャ | Ada Lovelace (AD103) | Ada Lovelace (AD104) | Ada Lovelace (AD103) |
製造プロセス | TSMC 4N | TSMC 4N | TSMC 4N |
SM | 66基 | 60基 | 76基 |
CUDAコア | 8,448基 | 7,680基 | 9,728基 |
RTコア | 66基 (第3世代) | 60基 (第3世代) | 76基 (第3世代) |
Tensorコア | 264基 (第4世代) | 240基 (第4世代) | 304基 (第4世代) |
テクスチャユニット | 264基 | 240基 | 304基 |
ROPユニット | 112基 | 80基 | 112基 |
ベースクロック | 2,340MHz | 2,310MHz | 2,205MHz |
ブーストクロック | 2,610MHz | 2,610MHz | 2,505MHz |
L2キャッシュ | 48MB | 48MB | 64MB |
メモリ容量 | 16GB (GDDR6X) | 12GB (GDDR6X) | 16GB (GDDR6X) |
メモリスピード | 21Gbps | 21Gbps | 22.4Gbps |
メモリインターフェイス | 256bit | 192bit | 256bit |
メモリ帯域幅 | 672GB/s | 504GB/s | 716.8GB/s |
NVENC | 第8世代×2基 | 第8世代×2基 | 第8世代×2基 |
PCI Express | PCIe 4.0 x16 | PCIe 4.0 x16 | PCIe 4.0 x16 |
消費電力 (TGP) | 285W | 285W | 320W |
GeForce RTX 4070 Ti SUPER搭載ビデオカード、Palit GeForce RTX 4070 Ti SUPER JetStream OC
従来のGeForce RTX 4070 Tiがそうであったように、GeForce RTX 4070 Ti SUPERにもNVIDIA純正のFounders Editionは用意されない。このため、今回のテストに際してNVIDIAから借用したのはPalit製のビデオカード「GeForce RTX 4070 Ti SUPER JetStream OC」だった。
3基の冷却ファンを備える大型GPUクーラーを搭載するPalit GeForce RTX 4070 Ti SUPER JetStream OCは、GPUのブーストクロックを2,610MHzから2,640MHzに引き上げたオーバークロック仕様のビデオカード。補助電源コネクタは16ピンで、占有スロット数は3.1、映像出力端子はHDMI 2.1a(1基)とDisplayPort 1.4a(3基)。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti SUPER Trinity Black Edition 16GB GDDR6X
NVIDIAから借用したPalit製ビデオカードのほかに、ZOTACからもGeForce RTX 4070 Ti SUPER搭載ビデオカードが届いた。今回こちらのカードはテストしないが、その外観を写真で紹介しよう。
ZOTACから届いたカードは、「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti SUPER Trinity Black Edition 16GB GDDR6X」で、3基の冷却ファンを搭載する大型GPUクーラーを搭載しているが、こちらは占有スロット数が2.5に抑えられているほか、GPUやVRAMクロックも定格仕様に準拠している。
補助電源コネクタは16ピンで、映像出力端子はHDMI 2.1a(1基)とDisplayPort 1.4a(3基)。補助電源用の変換アダプタ(8ピン×2本→16ピン)と、カードを支えるサポートステイが同梱されている。
テスト環境と比較用GPU
GeForce RTX 4070 Ti SUPERを検証するにあたり、比較対象として従来モデルのGeForce RTX 4070 Tiを搭載する「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti AMP Extreme AIRO」と、GeForce RTX 4080のFounders Editionを用意した。
各ビデオカードのテスト時動作仕様は以下の通り。GPUドライバについては、GeForce RTX 4070 Ti SUPERにレビュアー向けドライバ「551.15」、比較用GPU2製品には「546.33」を導入している。
【表2】各ビデオカードの動作仕様 | |||
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GPU | GeForce RTX 4070 Ti SUPER | GeForce RTX 4070 Ti | GeForce RTX 4080 |
ビデオカードベンダー | Palit | ZOTAC | NVIDIA |
製品型番 | GeForce RTX 4070 Ti SUPER JetStream OC | ZT-D40710B-10P | Founders Edition |
ベースクロック | 2,340MHz | 2,310MHz | 2,205MHz |
ブーストクロック | 2,640MHz | 2,700MHz | 2,505MHz |
メモリ容量 | 16GB (GDDR6X) | 12GB (GDDR6X) | 16GB (GDDR6X) |
メモリスピード | 21Gbps | 21Gbps | 22.4Gbps |
メモリインターフェイス | 256bit | 192bit | 256bit |
メモリ帯域幅 | 672GB/s | 504GB/s | 716.8GB/s |
PCI Express | PCIe 4.0 x16 | PCIe 4.0 x16 | PCIe 4.0 x16 |
Power Limit | 285W | 285W | 320W |
温度リミット | 84℃ | 84℃ | 83℃ |
Resizable BAR | 有効 | 有効 | 有効 |
GPUドライバ | GRD 551.15 (31.0.15.5115) | GRD 546.33 (31.0.15.4633) | GRD 546.33 (31.0.15.4633) |
各ビデオカードを搭載するベース機材には、Ryzen 7 7800X3Dを搭載したAMD X670E環境を用意した。
そのほかの機材や条件については以下の通り。
【表3】テスト機材 | |
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CPU | Ryzen 7 7800X3D (8コア/16スレッド) |
CPUリミット設定 | PPT=162W、TDC=120A、EDC=180A、TjMax=89℃ |
CPUクーラー | ASUS TUF GAMING LC 240 ARGB (ファンスピード=100%) |
マザーボード | ASUS TUF GAMING X670E-PLUS [UEFI=2214] |
メモリ | DDR5-5200 16GB×2 (2ch、42-42-42-84、1.1V) |
システム用SSD | CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4) |
アプリケーション用SSD | CFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/USB 10Gbps) |
電源 | 玄人志向 KRPW-PA1200W/92+ (1200W/80PLUS Platinum) |
OS | Windows 11 Pro 23H2 (build 22631.3007、VBS有効) |
電源プラン | バランス |
計測 | ラトックシステム RS-BTWATTCH2 |
室温 | 約25℃ |
ベンチマーク結果
今回実施したベンチマークテストは、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「エーペックスレジェンズ」、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」、「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」、「サイバーパンク2077」、「Blender Benchmark」、「Cinebench 2024」、「Adobe Camera Raw」。
3DMark
3DMarkでは、リアルタイムレイトレーシングを含む新世代テストの「Speed Way」、「Port Royal」、「Solar Bay」と、旧世代のテストである「Time Spy」、「Fire Strike」を実行した。
GeForce RTX 4070 Ti SUPERは、3つの新世代テストにおいてGeForce RTX 4070 Tiのスコアを4~11%上回り、GeForce RTX 4070 Tiを14~15%下回った。
一方、旧世代のテストでは、GeForce RTX 4070 TiとFire Strikeで同等、Time Spyで約2%上回り、GeForce RTX 4080を9~11%下回っている。
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは、グラフィックプリセットを「最高品質」に設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)でテストを実行。スコアと平均フレームレートを比較した。
GeForce RTX 4070 Ti SUPERは、GeForce RTX 4070 Tiのスコアを2~12%上回り、GeForce RTX 4080を4~14%下回った。平均フレームレートついてもスコアと同じくらいの差がついている。
エーペックスレジェンズ
エーペックスレジェンズでは、描画品質をできる限り高く設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)で平均フレームレートを計測した。上限フレームレートは300fps。
フルHDでは全てのGPUが上限フレームレートに達して横並びとなっている。WQHD以上の解像度では、GeForce RTX 4070 Ti SUPERがGeForce RTX 4070 Tiを1~6%上回り、GeForce RTX 4080を3~12%下回った。
STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール
STREET FIGHTER 6 ベンチマークツールでは、グラフィックプリセットを最高の「HIGHEST」設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)でテストを実行。各シーンの平均フレームレートを比較した。上限フレームレートは「FIGHTING GROUND」が60fps、「BATTLE HUB/WORLD TOUR」が120fps。
メインコンテンツであるFIGHTING GROUNDについては、全てのGPUが全ての画面解像度で上限の60fpsに達しており、パフォーマンスに差はみられない。
BATTLE HUBとWORLD TOURに関しても、WQHD以下では上限の120fpsに達して横並びの結果となっているが、4KではGeForce RTX 4070 Ti SUPERがGeForce RTX 4070 Tiを2~5%上回り、GeForce RTX 4080を1~3%下回った。
ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON
ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONでは、グラフィックプリセットを「最高」に設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)で平均フレームレートを計測した。上限フレームレートは120fps。
フルHDとWQHDでは、各GPUが上限の120fpsに達してほぼ横並びの結果となっている。GeForce RTX 4070 Ti SUPERが平均103.4fpsを記録した4Kでは、GeForce RTX 4070 Tiを約10%上回り、GeForce RTX 4080を約10%下回った。
サイバーパンク2077
サイバーパンク2077では、グラフィックプリセット「レイトレーシング:ウルトラ」に設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)で平均フレームレートを計測した。テスト時はDLSS 3による超解像とフレーム生成を有効化しており、超解像の設定はフルHDとWQHDが「クオリティ」、4Kは「パフォーマンス」。
GeForce RTX 4070 Ti SUPERは、フルHDでGeForce RTX 4070 Tiを約2%下回ったものの、WQHD以上では約2%上回った。一方、上位モデルのGeForce RTX 4080を16~18%下回っている。
Blender Benchmark
Blender Benchmarkでは、3つのシーン(monster、junkshop、classroom)をGPUレンダリングした際のレンダリング速度を比較した。
GeForce RTX 4070 Ti SUPERのレンダリング速度は、GeForce RTX 4070 Tiを7~14%上回り、GeForce RTX 4080を15~17%下回った。
Cinebench 2024
Cinebench 2024では、最低実行時間10分でGPUレンダリングを実行したさいのスコアを比較した。
GeForce RTX 4070 Ti SUPERが記録したスコアは「24,760」で、GeForce RTX 4070 Tiを約23%上回り、GeForce RTX 4080を約9%下回った。
Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」
Adobe Camera Rawでは、2,400万画素のRAWファイル×20枚に対して「AIノイズ除去(適用量=50)」を実行。1分あたりの処理枚数(Frame per minute)を比較した。
GeForce RTX 4070 Ti SUPERは分速12.70枚の処理速度を記録。GeForce RTX 4070 Tiを約15%上回り、GeForce RTX 4080を約12%下回った。
システム消費電力とワットパフォーマンス
ラトックシステムのワットチェッカー「RS-BTWATTCH2」を使用して、アイドル時の最小消費電力と、各ベンチマーク実行中の平均消費電力と最大消費電力を計測した。
アイドル時消費電力がもっとも低かったのはGeForce RTX 4080の76.5Wで、GeForce RTX 4070 Ti SUPERはそれに次ぐ81.7Wを記録した。ワーストはGeForce RTX 4070 Tiの90.7Wだが、これにはRGB LEDやオーバークロックなどビデオカードの設計や仕様が影響している。
ベンチマーク実行中の平均消費電力は、GeForce RTX 4070 Ti SUPERが273.8~397.4Wを記録。GeForce RTX 4070 Ti SUPERが最小を記録した3DMark「Solar Bay」を除けば、最小を記録しているGeForce RTX 4070 Tiの256.6~398.9Wと、最大を記録したGeForce RTX 4080の275.5~412.6Wの中間に位置している。
ベンチマークスコアと平均消費電力から、各システムのワットパフォーマンスを算出して比較グラフを作成。さらに、GeForce RTX 4070 Tiのワットパフォーマンスを基準に指数化したグラフも用意した。なお、ワットパフォーマンスの比較はグラフを見やすくする目的で、3DMark「Solar Bay」の数値は10分の1、Adobe Camera Rawの数値は1,000倍にしている。
GeForce RTX 4070 Ti SUPERのワットパフォーマンスは、GeForce RTX 4070 Ti比で103~116%を記録。オーバークロック仕様のGeForce RTX 4070 Tiを上回ったが、GeForce RTX 4080を下回っている。
なお、ここで算出したワットパフォーマンスには、ビデオカードの設計と仕様、システムに占めるGPU消費電力の割合なども影響するため、GPU単体のワットパフォーマンスではない点には注意してもらいたい。
16GBに増強されたVRAMがGeForce RTX 4070 Ti SUPERのキーポイント
ゲームにおけるGeForce RTX 4070 Ti SUPERの性能は、GeForce RTX 4080よりもGeForce RTX 4070 Tiに近い結果が多くなっているが、CinebenchやAdobe Camera RAWのAIノイズ除去など、非ゲーム系のテストではGeForce RTX 4070 Ti明確に上回る結果も見られた。
いずれにせよ、16GBのVRAMを備えるGeForce RTX 4070 Ti SUPERは、準ハイエンド級のGPUに相応しい性能を備えており、これがNVIDIAが提示する国内販売価格の11万5,800円で買えるのであれば、極めて魅力的なGPUであると言える。
もっとも、同様に8万6,000円という国内価格が提示されていたGeForce RTX 4070 SUPERの最安値が9万5,480円であったことを考えると、11万5,800円に消費税の10%を掛けた13万円弱程度が最安、通常モデルは15万円前後あたりにはなりそうだ。
大容量のVRAMが必要なユーザーにとっては、それでもまだ魅力的な価格ではあるので、16GBのVRAMが必要か否かがGeForce RTX 4070 Ti SUPERを選択する際のキーポイントになるだろう。
KTU・加藤勝明氏がGeForce RTX 4070 Ti SUPERをライブ配信でレビューします。配信は1月23日(火)23時開始。製品の仕様、特長、ベンチマークによる性能測定を従来製品との比較を交えながらズバッと解説。実機の動作デモもアリ。MCは改造バカこと高橋敏也氏。(ライブ終了後は即アーカイブの視聴が可能になります)