レビュー
AKiTiOのThunderbolt 3外付けGPUボックス「Node Titan」で遊ぶ
2020年3月27日 11:00
OWC傘下のAKiTiOから、Thunderbolt 3接続の外付けGPUボックス「Node Titan」が発売となった。価格は54,000円だが、現在セール価格としてAmazonにて48,600円で販売中だ。今回、AKiTiOからサンプルをお借りできたので、簡単にレビューしていきたい。
これまでも他社から同様のThunderbolt 3ボックスは発売されているが、Node Titanは650Wという大容量電源を搭載し、ノートPCに対して85Wの給電が可能な点が特徴。その一方で、他社製品に実装されているUSB 3.0 HubやGigabit Ethernetといったドッキングステーション的な要素は一切なく、あっさりしている。
もっとも、一般的にThunderbolt 3に接続可能なノートPCは13.3型以上が主流であり、内蔵のキーボードの操作性はそこまで悪くないし、マウスが必要だとしても、接続するUSBポートぐらいは空いているだろう。また、ネットワークに関しても、レイテンシにシビアなゲームなど特段の理由がないかぎり、無線LANでも十分だろう。
さらに言えば、最近のGeForce RTXシリーズにはUSB Type-Cポートがあり、USB機器の接続にそれを活用する手もある。とは言え、Node Titan自体はノートPCの周辺機器との接続をも考慮した製品ではなく、GPUの使用に特化したモデルであることに代わりはない。
さてNode Titanの本体だが、スチールのフレームをアルミのパネルで囲った構造であり、剛性・質感ともにかなり高い。上部にプッシュでポップアップ可能なキャリングハンドルを装備しており、持ち運びを容易にしてくれる。外出先に持っていくのはもちろんのこと、設置時のわずかの時間ですら、このハンドルがかなり役に立ったと感じた。
Node Titanは電源を底部に設置していて、その上にThunderbolt 3→PCI Express変換基板やビデオカードを載せる構造となっている。これにより横幅135mmを実現しており、電源をビデオカードと平行に設置した「Razer Core X Chroma」(168mm)や「PowerColor THUNDERBOLT3 eGFX enclosure」(172mm)と比較して抑えられている。奥行きもこの2製品より短く、設置面積が少ないのはすばらしい。
その一方で、内部はかなり広々としており、フルレングスのビデオカードすら余裕で入る。手持ちの「GeForce GTX 1080 Founders Edition」やColorful製のGeForce GTX 1660はもちろんのこと、自身で8cmファンを前面に設置した「Xeon Phi 5110P」も難なく飲み込んでしまった(余談だが、OS上から問題なく認識されたが、動作検証したCHUWI HiGameはAbove 4G Decoding非対応のため利用できない)。これなら、3.5スロット分利用するビデオカードでも余裕で入りそうだ。
また、ツールレス設計となっており、後部のネジ2本を回して後ろにカバーをスライドするだけで上部カバーが取り外せ、内部にアクセスできるのは秀逸。ビデオカードの装着ネジも長いタイプで手回し可能。とにかく楽チンで、いろいろカードを差し替えて使いたいユーザーにはうれしい(そんな人は筆者以外いないと思うが)。
側面はフルメッシュとなっていて、底面の排気ファンでケース内を負圧にしてビデオカードを冷却する仕組み、一般的なPCケースよりかなりビデオカードに外気が送れる仕組みのためか、ColorfulのGeForce GTX 1660利用時の高負荷時でも温度は62℃で頭打ちとなった。冷却性についての心配は皆無だろう。ファンの騒音も抑えられており、動作中かなり静かだった。
ディスプレイをどこに接続すべきか
今回のテストはCHUWIの「HiGame」で行なった。この小型デスクトップは、Thunderbolt 3を備えているだけでなく、CPUにKaby Lake-G(Core i5-8305G)を採用していて、「Intel HD Graphics 630」、「Radeon RX Vega M GL Graphics」という2つのCPUをすでに搭載しているのが特徴。これにさらにGeForceを加えたらどうなるか? というのが今回の検証のテーマだ。なお、HiGameのメモリは、標準の8GBから16GBに増設している。
また、HiGameではIntel HD Graphics 630からDisplayPort 1基、Radeon RX Vega M GLからはHDMI 2基+DisplayPort 1基出ており、これらを経由して出力した場合と、外付けGPUから直接映像出力したさいに性能の変化が生まれるかどうかも注目したいところである。というのも、HiGame側にディスプレイを接続した場合、外付けGPUから描画したデータが転送されて戻ってきて、ボトルネックが生じることが予想されるためだ。
用意したビデオカードはGeForce GTX 1660とGeFoce GTX 1080で、ベンチマークには3DMarkを利用した。OSはWindows 10 Homeである。グラフの見方だが、(GPU名)+RadeonはHiGameのRadeon RX Vega M GLを経由した出力、(GPU名)+IntelはHiGameのIntel HD Graphics 630を経由した出力、単なるGPU名はそのGPUから直接の映像出力、ということである。
グラフを個別に解説するより、まとめて見てもらってから解説するが、負荷の高いTime SpyやFire Strikeよりも、負荷が低いNight RaidやSky Diverで、映像出力先の違いで性能に大きな差が生まれている点に注目したい。とは言えこれはものすごく単純なことで、負荷が高い3Dアプリケーションは描画フレーム数が少なく、転送に要する帯域が少ないため差が生まれないが、負荷が低い3Dアプリケーションは描画フレーム数が多くなるので転送が追いつかなくなり、それがボトルネックとして現れる、ということだ。
また、いくらオンチップでの実装で内蔵GPUより速いと言えども、GeForceでレンダリングされた映像は、PCI Express x8で接続されているRadeon RX Vega M GLよりも、CPUに内包されているIntel HD Graphics 630に転送したほうが、帯域幅が広くボトルネックが少ないということも明らかになったかたちだ。
ちなみに3DMarkでPCI Expressの帯域幅を計測する「PCI Express feature test」なる項目があり、これでHiGame側によるディスプレイ出力と、外付けGPU直のディスプレイ出力を比較してみたが、外付けGPUから出力したほうが4~50MB優れるという結果にとどまった。しかし、このテストはそもそもHiGameから転送する3Dデータが大きすぎて2~3fps程度でしか描画されず、HiGameに戻す画像転送に必要な帯域はほとんどない。そう考えると、このテストで出ている2.26GB/sのなかで、すべてをやりくりする必要があるのだろう。
Kaby Lake-Gに実装されているRadeon RX Vega M GLは、PCI Express 3.0 x8でCPUと接続されており、同テストでは6.52GB/sという値を示している。Thunderbolt 3はPCI Express 3.0 x4相当だが、実測値を逆算するとその理想値の7割程度ということだろう。
ちなみにThunderbolt 3を利用して外付けGPUを利用するさい、Windows 10ではどのGPUを使用するか、ユーザーが選択できるのだが、どうやらリスト方式ではなく2択になるようで、Radeon RX Vega M GLは自動的に省かれてしまった。また、RadeonにもGeForceにもゲームを録画する機能はあるのだが、どちらも正常に録画できなかった(NVIDIAコントロールパネルやGeForce Experience、Radeon Software自体は問題なく起動する)。ただ、Windows 10標準のゲームバーなら録画できた。
Node Titanはコンパクト、静音、良質デザイン、メンテナンスが容易など、外付けGPUボックスとしてはかなり完成度が高い。ただ本製品のみならず、Thunderbolt 3ボックスに共通して言えることだが、5万円という価格はアッパーミドルクラスのビデオカードを1枚買えてしまう価格であり、そこが最大のボトルネックだ。今後進むテレワークで、モビリティと高性能の両立を必要とするユーザーが増え、低価格化してくることを切に願いたい。