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百均の製品とそれ以外、耐傷性に違いはある? iPhone用保護シート14製品を比較してみた
2019年8月15日 11:00
スマートフォンを安全かつ快適に使うために欠かせないのが、画面に貼り付ける保護シートだ。画面の保護のほか、反射防止や指紋防止、ブルーライトカットなどさまざまな機能を備えており、人気のスマートフォンともなると、機能ごとに複数の製品を発売しているメーカーも珍しくない。
ところでこの保護シート、近年は百均こと百円均一ショップで販売されるケースも増えてきている。家電量販店などで購入できるアクセサリメーカーの製品との価格差はゆうに10倍だ。とくにここ1~2年は、フィルムタイプより貼りやすく人気の高いガラスタイプまでもが扱われるようになり、一部の百均ではすでにガラスのみの取り扱いとなっている。
実際、百均で取り扱われている製品と、家電量販店などで扱われているアクセサリメーカーの製品とは、何が違うのだろうか。今回は、iPhone XS/X用の保護シート14製品をピックアップし、傷のつきにくさ(耐傷性)のほか、製品の貼りやすさや気泡防止、指紋防止など複数の項目で評価を行ない、どのような違いがあるのかを探ってみた。
ガラス7製品、フィルム7製品をリストアップ
今回は編集部で調査したiPhone XS/X用の保護シートの売れ筋製品のうち、「光沢あり」のベーシックなモデル10製品をピックアップ。さらに百均で販売されているガラス3製品、フィルム1製品を加え、計14製品(ガラス7製品、フィルム7製品)を対象としている。
まずは事前評価として、同梱品の内容や貼りやすさなど、基本機能をチェックした。以下の評価項目中の「品質精度」は、製品の加工精度だけでなく、ガラスタイプには欠かせない端のラウンド加工の有無や、貼付時に本体を傷から守る表面シートの有無といった項目も含めて採点している。
また今回はブルーライトやつや消し機能がないスタンダードな製品のみが対象であるため、差が出にくい透明度の項目は省略している。付属品については、種類が多ければ必ずしも優秀というわけではないので、「ホコリ除去シール」、「アルコールシート」、「クリーニングクロス」の基本セットに対する過不足をコメント欄に記載し、点数としては評価していない。
ガラスタイプ
ラスタバナナ「GP1309IP858」
硬度9H、厚さ0.33mm。機能はひととおり揃っているが、位置合わせのための補助ツール類は特になく、またクリーナー類ではアルコールシートが添付されないなど、パッケージは必要最小限の印象。
貼り易さ:★★★☆☆
気泡防止:★★★★★
指紋防止:★★★★☆
品質精度:★★★★☆
Simplism「TR-IP18S-GL-CC」
硬度10H、厚さは非公開。ケーブル穴を基準に位置を合わせる独自ツールにより貼付時にズレにくく、また気泡も入りにくい。貼付後に表面の保護シートを剥がす方式なので作業中に傷がつきにくい。
貼り易さ:★★★★★
気泡防止:★★★★★
指紋防止:★★★★★
品質精度:★★★★★
MSソリューションズ「LP-IPSFG」
硬度9H、厚さ0.33mm。パッケージを兼ねるPPケースにスマートフォン本体をはめ込んで貼り付け作業を行なうため位置がずれにくく、気泡も入りにくい。クリーナー類は標準的。
貼り易さ:★★★★★
気泡防止:★★★★★
指紋防止:★★★★☆
品質精度:★★★★☆
Nimaso「NI-BEST-001」
Amazonで購入。硬度9H、厚さ0.26mm。今回紹介する中で唯一の2枚セット。スマートフォン本体にガイド枠を装着し、それにはめ込むように貼るため位置がズレる心配がない。気泡抜きのヘラも添付されるなど付属品は充実。
貼り易さ:★★★★★
気泡防止:★★★★★
指紋防止:★★★★★
品質精度:★★★★☆
大創産業「液晶保護フィルムNo.119」
ダイソーで購入。硬度は非公開、厚さ0.33mm。位置合わせのための補助ツール類は特になく、またクリーナー類ではアルコールシートが添付されないなど、パッケージは必要最小限の印象。
貼り易さ:★★★☆☆
気泡防止:★★★★★
指紋防止:★★★★☆
品質精度:★★★★☆
キャンドゥ(山田化学)「No.1757」
キャンドゥで購入。硬度9H、厚さは非公開。位置合わせのための補助ツール類やクリーナー類はなく、本体のみのパッケージ。指紋防止とあるが、他社に比べると付着しやすい印象。
貼り易さ:★★★☆☆
気泡防止:★★★★★
指紋防止:★★☆☆☆
品質精度:★★★★☆
フィルムタイプ
エレコム「PM-A18BFLGLPS」
便宜上フィルムタイプに分類しているが、ガラスとシリコンのハイブリッドで、硬度は9H。剥離シートは分割されていないが、ガラス同様厚みがあるため貼付は容易。気泡は入りやすいが次第に抜ける。貼付後に表面の保護シートを剥がす方式なので作業中に傷がつきにくい。端がラウンド加工されていないのがネック。同梱品にアルコールシートは含まれない。
貼り易さ:★★★★☆
気泡防止:★★★★☆
指紋防止:★★★★★
品質精度:★★★☆☆
Simplism「TR-IP18S-PF-SKCC」
剥離シートは2分割で、ケーブル穴を基準に位置を合わせる独自ツールを使うためズレにくい。ただし気泡は入りやすく、また抜けにくい印象。貼付完了後に表面の保護シートを剥がす方式で、作業中に傷がつきにくい。付属品のスクレーパーはスマートフォンスタンドとして利用可能。
貼り易さ:★★★★★
気泡防止:★★☆☆☆
指紋防止:★★☆☆☆
品質精度:★★★★★
エレコム「PM-A18BFLFPAGN」
剥離シートは分割されておらず1枚で貼り付けるタイプ。画面上のノッチ部のカットが波打った独特の形状なのは好みが分かれそう。気泡は跡が残りやすく、指紋もつきやすい印象。フィルムとしてはかなり分厚く、また端がラウンド加工されていないのがネック。同梱品にアルコールシートは含まれない。
貼り易さ:★★☆☆☆
気泡防止:★★☆☆☆
指紋防止:★★☆☆☆
品質精度:★★★★☆
MSソリューションズ「LP-IPSFLGSAS」
パッケージは最小限だが、剥離シートは3分割タイプで、はがす順番も明記されており位置合わせはしやすい。同梱品にアルコールシートは含まれない。
貼り易さ:★★★★★
気泡防止:★★★★★
指紋防止:★★★★☆
品質精度:★★★★☆
ラスタバナナ「G1304IP858」
硬度約2H、厚さ約0.16mmとかなり薄い部類に入る。剥離シートは2分割だが、ケーブルを使ってフィルムの位置を固定する独自の仕組みにより位置合わせはしやすい。同梱品にアルコールシートは含まれない。カメラレンズ用フィルムつきとあるが今回のパッケージには見当たらず。
貼り易さ:★★★★★
気泡防止:★★★★☆
指紋防止:★★★★☆
品質精度:★★★☆☆
ナカバヤシ「SMF-IP181FLST」
硬度3H。通常フィルムの半分の薄さをアピールしており、シールと見紛うほど薄いが、それゆえ貼り直しはほぼ不可能。シートが3分割されているので位置を合わせやすいが、気泡は細かい点のような跡が残りやすい。また他製品に比べ若干滑りにくいようだ。同梱品にアルコールシートおよびホコリ除去シールは含まれない。
貼り易さ:★★★★★
気泡防止:★★★☆☆
指紋防止:★★☆☆☆
品質精度:★★☆☆☆
大創産業「液晶保護フィルムNo.137」
PETとTPUのハイブリッドをアピールする。剥離シートは分割されておらず1枚で貼り付けるタイプだが、ガラス同様厚みがあるため貼付は容易。貼付後に表面の保護シートを剥がす方式なので作業中に傷がつきにくい。端がラウンド加工されていないのがネック。同梱品にアルコールシートは含まれない。
貼り易さ:★★★★★
気泡防止:★★★★☆
指紋防止:★★☆☆☆
品質精度:★★★★☆
上記を見ると、百均の製品はホコリ除去シールやクリーニングクロスなどのクリーナーが付属しないか、付属しても最小限の内容なのに対し、それ以外の製品はクリーナー一式はほぼ標準添付となっているのが特徴と言える。
このほか、貼付作業を容易にするためのキットが付属したり、位置合わせを容易にするために剥離シールを3分割するなど、ライバルメーカーとの差別化を図るための独自の工夫も見られる。もちろん例外もあるが、全体の傾向としては価格差のぶんだけの違いはある。
実際にアスファルトの路面上を滑らせて耐傷性をチェック
続いてテストの内容および結果を紹介する。
今回は、路上に落としたスマートフォンが画面を下にしたまま滑ったというシチュエーションを想定し、各製品を貼り付けたガラスに荷重をかけつつ、アスファルトの路面上を約1m滑らせ、その結果をまとめている。接触面に起伏があるため傷のつき方はランダムだが、紙ヤスリやスチールウールで画面を均一に擦る耐摩擦性試験よりも実環境に近い利点がある。
なお、同種のテストでは耐摩擦性に加えて耐衝撃性のチェックもよく行なわれるが、画面に鉄球を落下させるなど、現実にあまりないシチュエーションで行なわれがちということもあり、今回は省略している。そのため一般的にフィルムタイプが有利とされる、耐衝撃性や飛散防止機能は評価に含めていない。予めご了承いただきたい。
ガラスタイプ
まとめ
そもそも傷のつきやすさは、ガラスとフィルムで大きく異なる。ガラスの場合、ちょっとやそっとでは傷はなかなかつかないが、端などに深い傷がつくと、製品によってはガラスの細かい破片がこぼれるようになり、継続使用が難しくなる。今回のテストでこの破片こぼれの症状が見られた2製品は、いずれも百均の製品だった。
ただし表面層に傷がつかず内部に割れが生じただけならば、指にひっかからないため、見た目にこだわらなければ使い続けても支障はない(もちろんタッチパネルの感度に影響があれば別だ)。つまりガラスフィルムならではの特性はどの製品も同じなのだが、今回の結果を見る限り、百均の製品は、致命傷を負いやすい傾向が高いようだ。
一方のフィルムは、傷は比較的簡単につき、かつ表面層がえぐれるため、軽度の傷でも指先にひっかかり、操作のストレスになりやすい。ただしガラスタイプ(の未対策品)のような破片こぼれは材質的に起こり得ないので、安全性は高い。ガラスタイプと比べ、総じて価格と品質があまり連動していない印象を受けた。
まとめると、百均の製品とそれ以外の製品を比べると、百均の製品は継続利用に影響を及ぼす傷を受けやすいと言える。ただし大創産業の2製品のようにダメージはそこまで致命的ではなく、かつ最小限のクリーナーも付属するなど高価格帯の品と遜色ないパッケージは、コスパも考慮すれば悪い選択肢ではない。交換を数回行なったとしても、高価格帯の製品1枚より出費は少なくて済むからだ。
今回、製品を店頭で収集する過程でわかったのだが、百均では現在、フィルムタイプからガラスタイプへの急速な移行が進んでおり、フィルムタイプは、ブルーライトカットや鏡面タイプなど特殊機能を持った製品以外は、取り扱いが減りつつある。ガラスタイプに一本化されれば、品質もさらなる向上が期待でき、そうなると高価格帯の製品とのボーダーレス化はより進む可能性もありそうだ。