レビュー
明日発売のGeForce RTX 2070の実力をベンチマーク
2018年10月16日 22:00
発表済みのGeForce RTX 20シリーズで唯一未発売となっていた「GeForce RTX 2070」が、10月17日に発売される。今回、発売に先立ってGeForce RTX 2070のFounders Editionをテストする機会が得られたので、ベンチマークテストでその実力を確認してみた。
TU106コア採用のハイエンドGPU「GeForce RTX 2070」
GeForce RTX 2070は、Turingアーキテクチャに基づいて12nm FFNプロセスで製造されたハイエンドGPU。GPUコアには上位2機種のいずれとも異なるTU106コアを採用しており、上位GPUでサポートされるSLI(NVLink)が省略されている。
メモリに14Gtps動作のGDDR6メモリを搭載し、256bitのメモリインターフェイスでGPUと接続している。これにより、メモリ帯域は上位のGeForce RTX 2080と同じ448GB/secに達する。
GeForce RTX 20 シリーズとGeForce RTX 2070のおもな仕様は以下の通り。NVIDIA純正のFounders Editionは一部の仕様が標準仕様と異なるためカッコ書きで記載した。
【表1】GeForce RTX 20 シリーズのおもな仕様 | |||
---|---|---|---|
モデルナンバー | GeForce RTX 2070 | GeForce RTX 2080 | GeForce RTX 2080 Ti |
アーキテクチャ | Turing | ||
製造プロセス | 12nm FFN | ||
GPUコア | TU106 | TU104 | TU102 |
Streaming Multiprocessor | 36基 | 46基 | 68基 |
CUDAコア | 2,304基 | 2,944基 | 4,352基 |
Tensorコア | 288基 | 368基 | 544基 |
RTコア | 36基 | 46基 | 68基 |
テクスチャユニット | 120基 | 184基 | 272基 |
ROPユニット | 64基 | 64基 | 88基 |
ベースクロック | 1,410MHz | 1,515MHz | 1,350MHz |
ブーストクロック | 1,620MHz (1,710MHz) | 1,710MHz (1,800MHz) | 1,545MHz (1,635MHz) |
メモリ容量メモリ容量 | 8GB GDDR6 | 8GB GDDR6 | 11GB GDDR6 |
メモリスピード | 14.0Gtps | 14.0Gtps | 14.0Gtps |
メモリインターフェース | 256bit | 256bit | 352bit |
メモリ帯域 | 448GB/sec | 448GB/sec | 616GB/sec |
SLI対応 | ─ | 対応(NVLink) | 対応(NVLink) |
消費電力 | 175W (185W) | 215W (225W) | 250W (260W) |
価格 | 499ドル (599ドル) | 699ドル (799ドル) | 999ドル (1,199ドル) |
※カッコ内はFounder Edition仕様 |
GeForce RTX 2070のFounders Editionは、デュアルファンタイプのGPUクーラーを採用しており、基本的なデザインは上位2機種を踏襲している。
ただし、GeForce RTX 2070 Founders Editionは上位2機種より一回り小さなカードとなっており、SLI用インターフェイスが省略され、補助電源コネクタの搭載位置も変更されている。
画面出力端子には、DisplayPort 1.4×2基、HDMI 2.0×1基、DVI-D×1基、VirtualLink(USB Type-C)×1基を備えている。
テスト機材
今回のテストではGeForce RTX 2070との性能比較用として、上位モデルのGeForce RTX 2080と、従来のハイエンドGPUであるGeForce GTX 1080を用意した。いずれもNVIDIA純正のFounders Editionだ。
ビデオカードのテストに用いるのは、6コア/12スレッドCPUのCore i7-8700Kを搭載したIntel Z370環境。グラフィックスドライバには、GeForce RTX 2070はレビュアー用ドライバの「GeForce Game Ready Driver 416.33」、ほかのGPUにはテスト時点で配布されている最新版ドライバ「GeForce Game Ready Driver 416.34」を利用した。
【表2】テスト機材一覧 | |||
---|---|---|---|
GPU | GeForce RTX 2070 | GeForce RTX 2080 | GeForce GTX 1080 |
CPU | Intel Core i7-8700K | ||
CPUクーラー | ASUS ROG RYUJIN 240 | ||
マザーボード | ASUS PRIME Z370-A (UEFI: 1412) | ||
メモリ | DDR4-2666 8GB×2 (2ch、16-18-18-36、1.35V) | ||
システム用ストレージ | Samsung SSD 950 PRO (256GB SSD/M.2-PCIe 3.0 x4) | ||
アプリケーション用ストレージ | SanDisk Ultra 3D SSD (1TB SSD/SATA 6Gbps) | ||
電源 | 玄人志向 KRPW-TI700W/94+ (700W 80PLUS Titanium) | ||
グラフィックスドライバ | GeForce Game Ready Driver 416.33 | GeForce Game Ready Driver 416.34 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit (Ver 1803 / build 17134.345) | ||
電源設定 | 高パフォーマンス | ||
室温 | 約27℃ |
ベンチマーク結果
今回実行したベンチマーテストは、「3DMark(グラフ1~5)」、「VRMark(グラフ6~7)」、「Ashes of the Singularity: Escalation(グラフ8)」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク(グラフ9)」、「INAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(グラフ10)」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION(グラフ11)」、「アサシン クリード オデッセイ(グラフ12)」、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(グラフ13)」、「モンスターハンター:ワールド(グラフ14)」、「オーバーウォッチ(グラフ15)」、「ニーア オートマタ(グラフ16)」、「ゴーストリコン ワイルドランズ(グラフ17)」。
3DMarkのDirectX 12テスト「Time Spy」において、GeForce RTX 2070のスコアは上位モデルGeForce RTX 2080の約85~86%に相当し、GeForce GTX 1080に約21~24%の差をつけて上回った。
DirectX 11テストのFire StrikeでもGeForce RTX 2080比で約83~88%のスコアを記録しているが、GeForce GTX 1080に対するアドバンテージは約5~7%に縮小している。
VRMarkでは、GPU負荷の低いOrange RoomはCPU要因でフレームレートが頭打ちになっており、結果的にテストしたGPUのスコアは横並びになっている。
Cyan RoomとBlue Roomでは、GeForce RTX 2070はGeForce RTX 2080比で約79~80%のスコアを記録しており、これはGeForce GTX 1080を約30~36%上回るものだ。
Ashes of the Singularity: Escalationでは、フルHD~4Kまでの画面解像度で描画設定を最高の「Crazy」に設定し、DirectX 11とDirectX 12でベンチマークを実行した。
GeForce RTX 2070は、DirectX 11でのベンチマークにおいて、GeForce RTX 2080の88%前後のフレームレートを記録し、GeForce GTX 1080を約6~15%上回った。一方、DirectX 12ではGeForce RTX 2080比で80%前後となっており、GeForce GTX 1080との差も約1~5%に縮まっている。
3DMarkやVRMarkでは、DirectX 12テストで良好な結果を残してきたGeForce RTX 2070だが、ここではDirectX 12での性能がDirectX 11利用時を下回る結果となっており、必ずしもDirectX 12の方が良い結果になるとは限らないようだ。
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークでは、画面解像度が上がるほどGeForce GTX 1080を引き離しており、フルHDで約2%差であった差は、WQHDでは約9%、4k解像度では11%に拡大している。
一方、GeForce RTX 2080には画面解像度が上がるほど逆に差を広げられており、フルHD時にGeForce RTX 2080比で約93%であったスコアは、WQHDで約88%、4Kでは約81%にまで低下した。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONについては、公式ベンチマークでのスコア取得と、ゲーム本編でフレームレートの測定を行なった。
ベンチマークテストにおけるGeForce RTX 2070のスコアは、GeForce RTX 2080比で85%前後となっており、GeForce GTX 1080を約12%の差で上回った。
ゲーム本編で測定したフレームレートは、NVIDIAオプション無効時のフルHD解像度でCPU要因のフレームレート上限に到達したことでGeForce RTX 2080と同等の結果となっているが、それ以外の条件ではGeForce RTX 2080比で約83~88%だった。GeForce GTX 1080に対するアドバンテージは、NVIDIAオプション無効時に約10~13%、NVIDIAオプション有効時に約6~9%となっている。
アサシン クリード オデッセイでベンチマークモードを実行した結果、GeForce RTX 2070はGeForce RTX 2080比で約81~92%のフレームレートを記録した。GeForce GTX 1080に対するアドバンテージは約14~21%だった。
家庭用ゲーム機においては30fpsがターゲットのゲームなので、それを基準にすればGeForce RTX 2070は4K解像度でのプレイも狙える結果だ。WQHDでは惜しくも60fpsに届いていないが、画質設定を調整することで60fpsを狙うことは可能だろう。
シャドウ オブ ザ トゥームレイダーのベンチマークにおいて、GeForce RTX 2070は83~86%のフレームレートを記録し、GeForce GTX 1080を約10~19%上回った。
GeForce RTX 2070はWQHD解像度で69fpsを記録しており、高解像で滑らかな描画を楽しむことができる。4K解像度でも37fpsというプレイ可能なレベルのフレームレートを記録しているが、本タイトルの場合はWQHD解像度で60fpsを狙った方が快適だろう。
モンスターハンター:ワールドで測定したGeForce RTX 2070のフレームレートは、GeForce RTX 2080比で約80~85%となっており、GeForce GTX 1080を約15~23%上回った。
プレイにさいしては30fps以上での動作が望ましい本体タイトルにおいて、GeForce RTX 2070が条件を満たすのはWQHD解像度以下だ。4K解像度でも画質設定を調整すれば30fpsは狙える可能性はあるが、WQHD解像度で60fpsを狙った方が快適だろう。
オーバーウォッチで測定したGeForce RTX 2070のフレームレートは、GeForce RTX 2080比で約82~85%で、GeForce GTX 1080を約6~10%上回った。
GeForce RTX 2070は全ての条件で60fpsを超えており、4K解像度でも快適なプレイが狙える。WQHD解像度以下であれば、リフレッシュレート120Hz以上のディスプレイとの組み合わせで、より滑らかな描画品質を得ることも可能だ。
ニーア オートマタはフレームレート上限のあるタイトルであり、今回のテスト環境では59fpsが実質的な上限となっている。GeForce RTX 2070はWQHD解像度まではフレームレート上限に到達している。
GeForce RTX 2070は4K解像度でも30fpsを超えているが、ニーア オートマタは60fpsがターゲットのゲームなので、最高画質設定で快適なプレイが望めるのはWQHD解像度までと言えるだろう。
ゴーストリコン ワイルドランズで測定したGeForce RTX 2070のフレームレートは、GeForce RTX 2080比で約84~88%で、GeForce GTX 1080を約9~11%上回った。
極めてGPU負荷の高い設定である「ウルトラ」の4K解像度を含め、GeForce RTX 2070は全ての条件で30fpsを超えている。GeForce RTX 2070は本タイトルを4K解像度でプレイできる実力を備えているが、PC版ならではの滑らかな描画を望むのであれば、WQHD解像度で画質を調整するのがベターだろう。
各GPUを搭載した状態で、アイドル時消費電力とベンチマーク中のピーク消費電力を測定した結果が以下のグラフだ。
GeForce RTX 2070のアイドル時消費電力は40Wで、これはGeForce RTX 2080と同等で、GeForce GTX 1080より3W高い結果だ。
ベンチマーク中のピーク消費電力について、GeForce RTX 2070は248~346Wを記録した。CPUのボトルネックによってGPUが十分な性能を発揮できていないVRMarkのOrange Roomを除いた場合、GeForce RTX 2080より8~56W低く、GeForce GTX 1080より13~50W高い結果となっている。
GPU情報表示ツールの「GPU-Z v2.12.0」のモニタリング機能を用いて、GeForce RTX 2070でファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークを4K解像度で実行した際のモニタリングデータをグラフ化した。なお、ファン回転数については2基のファンを個別にモニタリングできるが、ほぼ差のない結果であるため今回は「ファン1」の結果のみを表示している。
ベンチマーク実行中に到達したGPUのピーク温度は74℃、ファン回転数は約1,950rpmだった。GPUクロックはピーク時に1,980MHzに達しているが、おおむね1,800MHz前後で推移している。
ファン回転数の下限は約1,500rpmとなっており、これは以前のテストで測定したGeForce RTX 2080 TiやGeForce RTX 2080のFounders Editionと同様の結果だ。アイドル時の動作音がそこまで静かではない一方、回転数の変動幅が小さく抑えられているため、急激なファン回転数の増減によってノイズが目立つということが無い。
従来のハイエンドGPUを上回るGeForce RTX 2070の実力
GeForce RTX 2070は、GeForce RTX 20 シリーズの特徴的な機能であるリアルタイムレイトレーシングやDLSSを抜きにしても、従来のハイエンドGPUであるGeForce GTX 1080を上回る実力を備えている。
GeForce GTX 1070の後継GPUとして考えれば順当な性能向上を果たした製品と言えるが、性能の近いGeForce GTX 1080やGeForce GTX 1080 Tiの価格が下落している現在、GeForce RTX 2070は従来のGPUとの厳しい価格競争にさらされることになる。
GeForce RTX 2070がゲーマーの支持を獲得するには、DLSSやリアルタイムレイトレーシングの効果と性能を実際のゲームにおいて示すことが必要だろう。対応予定のタイトルは複数存在しているDLSSとリアルタイムレイトレーシングが、早期に利用できるようになることを期待したい。