レビュー
Samsung、第3世代のNVMe/PCIe SSD「970 PRO」、「970 EVO」
2018年4月25日 00:00
Samsung Electronicsは、NVMe/PCIe準拠M.2 SSD新モデル「970 PRO」および「970 EVO」の2モデルを発表した。同社第3世代となるNVMe/PCIe SSDで、従来モデルと比べてアクセス速度や耐久性の向上を実現している。今回、970 PROおよび970 EVOをいち早く試用する機会を得たので、特徴や性能を見ていきたいと思う。
「Phoenix Controller」と64層 3D NAND「V-NAND」を採用し、性能と耐久性を向上
今回発表された「970 PRO」および「970 EVO」は、2016年に登場したNVMe/PCIe SSD「960 PRO」および「960 EVO」の後継として位置付けられるSSD新モデルだ。いずれも、フォームファクタはM.2 2280を採用しており、接続インターフェイスはPCI Express 3.0 x4、プロトコルはNVM Express 1.3に準拠している。容量は、970 PROは512GBまたは1TB、970 EVOは250GB/500GB/1TB/2TBをラインナップする。
970 PROおよび970 EVOは、従来モデルと比べてアクセス性能の向上に加えて、耐久性が向上されている点が大きな特徴となっている。それぞれのスペックは表1と表2にまとめたとおりだが、シーケンシャルリードこそ従来モデルと同等の速度だが、シーケンシャルライトやランダムアクセス速度は従来モデルから大きく向上。なかでも、ランダムアクセス速度は、低QD環境から高QD環境まで一様に速度が向上しており、一般的なPCやワークステーションなど、さまざまな環境で作業効率を高めるとしている。
【お詫びと訂正】初出時に、NVMe 1.4準拠としておりましたが、1.3の誤りです。お詫びして訂正させていただきます。
【表1】970 PROのおもな仕様 | ||
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容量 | 512GB | 1TB |
フォームファクタ | M.2 2280 | |
インターフェース | PCI Express Gen3 x4 | |
プロトコル | NVMe 1.3 | |
NANDフラッシュメモリ | 64層 V-NAND MLC | |
コントローラ | Phoenix | |
DRAMキャッシュ容量 | 512MB LPDDR4 | 1GB LPDDR4 |
シーケンシャルリード | 3,500MB/s | |
シーケンシャルライト | 2,300MB/s | 2,700MB/s |
ランダムリード(4KB/QD1/Thread1) | 15,000IOPS | |
ランダムライト(4KB/QD1/Thread1) | 55,000IOPS | |
ランダムリード(4KB/QD32/Thread4) | 370,000IOPS | 500,000IOPS |
ランダムライト(4KB/QD32/Thread4) | 500,000IOPS | 500,000IOPS |
総書き込み容量 | 600TBW | 1,200TBW |
保証期間 | 5年 |
【表2】970 EVOのおもな仕様 | ||||
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容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB |
フォームファクタ | M.2 2280 | |||
インターフェース | PCI Express Gen3 x4 | |||
プロトコル | NVMe 1.3 | |||
NANDフラッシュメモリ | 64層 V-NAND TLC | |||
コントローラ | Phoenix | |||
DRAMキャッシュ容量 | 512MB LPDDR4 | 1GB LPDDR4 | 2GB LPDDR4 | |
シーケンシャルリード | 3,400MB/s | 3,500MB/s | ||
シーケンシャルライト | 1,500MB/s | 2,300MB/s | 2,500MB/s | |
ランダムリード(4KB/QD1/Thread1) | 15,000IOPS | |||
ランダムライト(4KB/QD1/Thread1) | 50,000IOPS | |||
ランダムリード(4KB/QD32/Thread4) | 200,000IOPS | 370,000IOPS | 500,000IOPS | |
ランダムライト(4KB/QD32/Thread4) | 350,000IOPS | 450,000IOPS | 480,000IOPS | |
総書き込み容量 | 150TBW | 300TBW | 600TBW | 1,200TBW |
保証期間 | 5年 |
速度向上を実現する要因となっているのが、最新のコントローラとNANDフラッシュメモリの採用だ。コントローラは、双方ともPhoenix Controller。Phoenix Controllerは、従来モデルで採用されていたPolaris Controller同様5コアを内蔵。このうち1つのコアでホスト側との通信効率を改善。その他のコアも従来より動作クロックが高められており、アクセス速度を向上させた。
NANDフラッシュメモリは、いずれも64層の最新世代3D NAND「V-NAND」を採用。970 PROでは1セルあたり2bitのデータを格納するMLC仕様、970 EVOでは1セルあたり3bitのデータを格納するTLC仕様となる。Phoenix Controllerはこの64層 V-NANDに最適化されており、NANDフラッシュメモリの性能を最大限に引き出すことにより、高速なアクセス速度が実現されているわけだ。
いずれの製品も、基板上には片面にのみチップが実装されている。今回は、容量1TBの970 PROと、容量2TBの970 EVOの2製品を試用したが、どちらも基板上にはコントローラのPhoenix Controllerとキャッシュメモリ用のLPDDR4チップ、NANDフラッシュメモリチップが2個の4チップのみが搭載されている。
TLC仕様のNANDフラッシュメモリを採用する970 EVOでは、従来モデル同様に、NANDフラッシュメモリの一部をSLCキャッシュとして利用することで、TLC仕様NANDフラッシュメモリの弱点となる書き込み速度の遅さを改善する「Intelligent TurboWrite」機能を搭載している。
Intelligent TurboWrite機能の仕様は表3にまとめたとおりで、キャッシュ領域は、固定領域と、アクセス状況に応じて動的に容量が変化するIntelligent領域が用意される。大容量の書き込みが発生してキャッシュ領域があふれた場合には、書き込み速度が低下することにはなるが、動的に領域を拡張するIntelligent領域が用意されていることで、キャッシュヒット率を高め、速度が低下する割合を低減している。
容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB | |
---|---|---|---|---|---|
TurboWrite領域容量 | 標準 | 4GB | 4GB | 6GB | 6GB |
Intelligent | 9GB | 18GB | 36GB | 72GB | |
合計 | 13GB | 22GB | 42GB | 78GB | |
シーケンシャルライト速度 | TurboWrite有効時 | 1,500MB/s | 2,300MB/s | 2,500MB/s | 2,500MB/s |
TurboWrite無効時 | 300MB/s | 600MB/s | 1,200MB/s | 1,250MB/s |
耐久性の向上も大きなポイントだ。スペックをまとめた表にもあるように、容量によって耐久性は異なるものの、970 PROの1TBモデルでは総書き込み容量が1,200TBWに達している。970 EVOはTLC仕様のNANDフラッシュメモリを採用するため970 PROにはやや劣るものの、それでも1TBモデルで600TBW、2TBモデルでは1,200TBWに達している。
いずれも従来モデルに比べて総書き込み容量は1.5倍に増えており、耐久性は申し分ないと言っていいだろう。あわせて、製品の保証期間は、970 EVOの耐久性の向上に合わせて5年間へと延長されている(970 PROは従来同様5年間)。
NVMe/PCIe SSDには、長時間アクセスが続くと、コントローラやNANDフラッシュメモリの発熱の影響により速度が低下することがある、という問題がある。そこで、970 PROと970 EVOでは、熱への対策が従来よりもさらに強化されている。
基板裏面側に熱伝導性に優れる銅箔を積層した製品ラベルを貼ることで熱の発散性を高めている点は従来同様だが、加えてPhoenix Controllerチップ表面をニッケルでコーティングし、コントローラの熱をより発散しやすいようになっている。
また、コントローラやNANDフラッシュメモリの発熱を制御する「Dynamic Thermal Guard」機能の搭載により、従来よりも熱による速度低下が始まるまでの時間が延長され、速度が低下したあとの速度低下の割合も低減されているという。
シーケンシャルリードで3,200MB/s超を記録
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。今回は、「CrystalDiskMark 6.0.0」と、「ATTO Disk Benchmark V3.05」の2種類のベンチマークソフトを利用した。テスト環境は以下にまとめたとおりだ。検証に利用したのは、970 PROの1TBモデルと、970 EVOの2TBモデルで、比較用として従来モデルとなる960 PROの1TBモデルと960 EVOの1TBモデルも用意し、同様のテストを行なった。
テスト環境 | |
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マザーボード | ASUS PRIME Z370-A |
CPU | Core i5-8400 |
メモリ | DDR4-2666 8GB×2 |
システム用ストレージ | Samsung SSD 840 PRO 256GB |
OS | Windows 10 Pro 64bit |
まず、CrystalDiskMark 6.0.0の結果を見ると、970 PRO、970 EVOともに、シーケンシャルアクセス速度はリード、ライトともほぼ公称値どおりのスコアが得られている。970 EVOのリードは数値上は前世代よりもじゃっかん下がっているが、ライトは大きく伸ばしており、全体として性能は向上していると言える。
【お詫びと訂正】初出時の970 EVOのCrystalDiskMarkの測定に不備があったため、計測をやり直しました。それにともない、画像および本文を変更しております。ご迷惑をおかけした読者、関係者の皆様にお詫びいたします。
ATTO Disk Benchmark V3.05の結果も、公称値に近い結果が得られている。970 PROではリードが3,500MB/s前後、ライトが2,700MB/s弱を記録。970 EVOもリードが3,500MB/s弱、ライトが2,500MB/s前後で、いずれも公称値に近い結果と、いずれも従来モデルを上回る結果が得られており、新製品の性能の高さが確認できる。
ところで、今回の検証は、マザーボードをケースに装着しない、いわゆるバラックの状態で行なったが、SSDをマザーボードのM.2スロットに装着するとともに、マザーボードに用意されているM.2 SSD用ヒートシンクを装着し、ヒートシンクにファンの風も当てるなど、ケースに装着して利用する状態を考慮して行なっている。
熱の影響を見るために、あえてSSD用ヒートシンクを外し、ファンの風もあたらない状況で、ATTO Disk Benchmark V3.05実行時のSSDの温度変化を見てみることにした。なお、SSDの温度変化については、PCのハードウェア情報を取得するツール「HWINFO64」を利用し、S.M.A.R.T.で得られるSSDの温度情報を記録することで取得した。また、計測開始時のSSDの温度は、いずれも40℃に合わせている。
以下が、温度変化をグラフにしたものだが、970 PROでは最高104℃、970 EVOでは最高98℃に達している。しかし、同じテストを960 PROと960 EVOでも行ったところ、970 PRO、970 EVOともに従来モデルに比べて温度の上昇速度が遅く、最高温度も低くなっていることがわかる。このあたりは、コントローラチップにニッケルコーティングを施すなどの熱対策が効果を発揮しているのだろう。
とはいえ、絶対的な温度はやはり高い。S.M.A.R.T.の情報なので、チップ表面温度がここまで上がるわけではないが、テスト中にチップに触れてみると、かなり高温となっていることがわかる。そのため、やはりヒートシンクを装着したり、最低限ファンの風を当てるなど、熱対策に気を遣う必要がありそうだ。
高性能SSDとして魅力的な選択肢
以上のように、970 PROおよび970 EVOは、性能の向上や耐久性の向上などの進化を実現しており、高性能SSDとしての魅力が大きく高まっている。とくに、TLC仕様のNANDフラッシュメモリを採用する960 EVOでも、耐久性の向上に伴い5年保証が付帯するようになった点は、コストパフォーマンスを追求するユーザーにメリットとなる。
今回のテストでは、ランダムアクセス速度については結果が振るわなかった部分もあるが、性能面、耐久性ともに現行最強レベルの製品と言える。最強の性能を求めるハイエンドゲーマーやエンスージアストユーザーなら、970 PROの選択が基本だ。コストパフォーマンス優先なら970 EVOをお勧めしたい。