レビュー

是が非でも入れたいRadeon RX 480修正版ドライバ「16.7.1」

~従来ドライバより性能向上。10W前後の電力カットも

 AMDは日本時間の7月8日、Radeon RX 480の不具合修整を目的とした最新ドライバ「Radeon Software Crimson Edition 16.7.1」を公開した。今回は、同ドライバを適用したRadeon RX 480の性能と消費電力がどのように変化するのかを、ベンチマークテストでチェックした結果を紹介する。

PCI Expressスロットからの過剰な電力供給を改善

 Radeon Software Crimson Edition 16.7.1では、4日に掲載した「リファレンス仕様のRadeon RX 480が規格上限である75W以上の電力がPCI Expressから供給されていた不具合」を修整するためにリリースされたドライバだ。

 この不具合は、電力供給の配分を見直すことで対応。また、Radeon Settingに新項目「Compatibility Mode」を実装し、同モードを有効化した場合、性能への影響を最小限に抑えつつビデオカードの消費電力を引き下げる。

 そのほか、一部のゲームでPolarisアーキテクチャ採用GPUの性能を最大3%改善したほか、複数のバグフィックスが盛り込まれた。

Radeon Settingのゲーム設定に「Compatibility Mode」が追加された。標準ではオフになっており、グローバル設定、またはゲームタイトル別にオン/オフを設定できる

ベンチマーク結果

 さて、それでは新ドライバを適用したRadeon RX 480の性能を確認していこう。テストに使用した機材は以下の表に記載した。

【表】テスト機材
GPURadeon RX 480 8GB
CPUIntel Core i7-6700K
マザーボードASUS Z170-A
メモリDDR4-2133 8GB×2(15-15-15-35、1.20V)
ストレージ256GB SSD(CFD CSSD-S6T256NHG6Q)
電源玄人志向 KRPW-TI700W/94+(700W 80PLUS TITANIUM)
グラフィックスドライバRadeon Software Crimson Edition 16.7.1(Compatibility Mode)Radeon Software Crimson Edition 16.7.1Radeon Software Crimson Edition 16.6.2
OSWindows 10 Pro 64bit
Radeon RX 480のリファレンスモデル。VRAM容量は8GB

 今回のテストでは、Radeon Software Crimson Edition 16.7.1(以下16.7.1)の通常モードとCompatibility Modeに加え、Radeon RX 480の初期ドライバであるRadeon Software Crimson Edition 16.6.2(以下16.6.2)でベンチマークスコアを取得している。

 実行したベンチマークテストは、3DMark(グラフ1、2、3、4、5)、Ashes of the Singularity(グラフ6)、アサシンクリード シンジケート(グラフ7)、Witcher 3(グラフ8)、ダークソウルIII(グラフ9)、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(グラフ10)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ11)。

 16.7.1の標準モードは、ほぼ全てのテストで旧ドライバである16.6.2のスコアを2%前後上回っており、性能の改善は多くのタイトルで実現されていることが分かる。

 一方、消費電力の削減を目的とした16.7.1のCompatibility Modeのスコアは、16.7.1の標準モード比で2~3%ほど低い数値となったが、16.6.2とはほぼ同程度と言って差し支えない結果となっている。

【グラフ1】3DMark - Fire Strike(1,920×1,080ドット)
【グラフ2】3DMark - Fire Strike Extreme(2,560×1,440ドット)
【グラフ3】3DMark - Fire Strike Ultra(3,840×2,160ドット)
【グラフ4】3DMark - Sky Diver
【グラフ5】3DMark - Cloud Gate
【グラフ6】Ashes of the Singularity: Benchmark(1,920×1,080ドット)
【グラフ7】アサシンクリード シンジケート
【グラフ8】Witcher 3
【グラフ9】ダークソウルIII
【グラフ10】ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
【グラフ11】MHFベンチマーク【大討伐】

 性能については16.6.2より有利な16.7.1だが、肝心の消費電力についてはどうなっているのか。各ベンチマークテスト実行中の最大消費電力をワットチェッカーで測定、比較した。

 16.7.1の標準モードの最大消費電力は、電力消費問題を抱えていた旧ドライバである16.6.2より高くなっている。電力配分でPCI Expressからの過剰な電力供給を改善したというAMDの説明と、最大消費電力が増加しているという測定結果から、16.7.1ではPCI Expressから過剰に供給していた分の電力を、6ピンの補助電源コネクタから供給するように調整したのであろうことが伺える。

 一方、Compatibility Modeに関しては、ほとんどのテストで16.7.1の標準モードや16.6.2よりも低い消費電力となっている。大きな差の付いた3DMark Fire Strikeでは、16.6.2より12W、16.7.1の標準モードからは20Wも低い電力を記録した。

【グラフ12】システム全体の消費電力

 最後に、3DMarkのFire Strike Stress Testsを20ループ実行した際に取得した、GPUクロックのモニタリング結果を紹介する。なお、GPUクロックについてはGPU-Z 0.8.9を利用して測定した。

 16.7.1の標準モードと16.6.2がテスト全体を通じておおよそ1,200MHz前後であるのに対し、Compatibility ModeのGPUクロックは1,100MHz前後で推移している。Radeon RX 480のGPUクロックは、ベースクロック1,120MHz、ブーストクロック1,266MHzというスペックであり、Compatibility Modeでは消費電力を削減するために、高負荷時はベースクロック付近までクロックが引き下げられていることが分かる。

【グラフ13】3DMark - Fire Strike Stress Test実行中のGPUクロック推移

Radeon RX 480ユーザーなら適用すべき新ドライバ

 以上の通り、不具合の解消を図ったRadeon Software Crimson Edition 16.7.1は、性能で従来のドライバをはっきりと上回っている。また、新たに実装されたCompatibility Modeは、従来のドライバから10W前後の電力をカットしながら、同程度の性能を発揮することができる。

 リファレンス版Radeon RX 480のユーザーなら、この新ドライバをぜひとも適用すべきだろう。